国土技術政策総合研究所資料 - 国土技術政策総合研究所 横須賀庁舎

ISSN 1346-7328
国総研資料 第855号
平 成 27 年 6 月
国土技術政策総合研究所資料
TECHNICAL NOTE of
National Institute for Land and Infrastructure Management
J u n e 2 0 15
No.855
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した
平均海面水位の推定とその変動特性
内藤
了二・淺井
正・川口 浩二・猪股 勉
・辰巳 大介・成田 圭介
Estimation of Sea Level Rise Using the Tide Gauge Records in Port Areas
and Their Characteristics
Ryoji NAITO, Tadashi ASAI, Koji KAWAGUCHI, Tsutomu INOMATA,
Daisuke TATSUMI and Keisuke NARITA
国土交通省
国土技術政策総合研究所
National Institute for Land and Infrastructure Management
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, Japan
国土技術政策総合研究所資料
No. 855 2015 年 6 月
(YSK-N-316)
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した
平均海面水位の推定とその変動特性
内藤了二 *・淺井正 **・川口浩二 *** ・猪股勉 **** ・辰巳大介 ***** ・成田圭介 ******
要
旨
本資料では,全国10港湾を対象に,長期検潮記録から潮汐・気圧・地盤変動の影響を抽出・除去す
ることにより,ノイズ成分を除去して平均海面水位を推定する方法を設定し,その長期的な変動特性
を考察した.その結果,地盤変動を考慮してノイズ成分を除去したところ,水位の変動幅は数cm程
度に減少した.平均海面水位の年間上昇量を推定した結果,日本海側海域の4港湾のうち,3港湾で平
均海面水位に明瞭な上昇傾向がみられた.太平洋側海域の6港湾では,4港湾で上昇傾向であったが,
上昇量は場所毎に異なっていた.また,地盤変動量の把握へのGNSS測量に向けて,既存の検潮所に
おいてGNSS測量を用いた検潮所高さの測量を行い,検潮所高さの管理への適合性を確認した.最後
に,本資料の検討結果にもとづき,長期海面変動を検討する際の検潮記録等の整理に関するいくつか
の留意点をまとめた.
キーワード:長期検潮記録,平均海面水位,海面上昇,地盤変動,トレンド,GNSS測量,港湾
*
**
***
****
*****
******
沿岸海洋・防災研究部 主任研究官
沿岸海洋・防災研究部 沿岸防災研究室長
国立研究開発法人 港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域 海象情報研究チームリーダ
国立研究開発法人 港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域 海象情報研究チーム 研究官
(現 国土交通省 東北地方整備局 港湾空港部 品質確保室 技術評価係長)
国土交通省 港湾局 技術企画課 技術監理室 課長補佐
国土交通省 港湾局 技術企画課 技術監理室 技術企画係長
(現 国土交通省 東北地方整備局 仙台港湾空港技術調査事務所 建設管理官)
〒239-0826 横須賀市長瀬3-1-1 国土交通省国土技術政策総合研究所
電話:046-844-5024 Fax:046-844-5068
e-mail: [email protected]
i
Technical Note of NILIM
No. 855
June 2015
(YSK-N-316)
Estimation of Sea Level Rise Using the Tide Gauge Records in Port Areas
and Their Characteristics
Ryoji NAITO*
Tadashi ASAI **
Koji KAWAGUCHI ***
Tsutomu INOMATA ****
Daisuke TATSUMI *****
Keisuke NARITA ******
Synopsis
This paper presents a mean sea level (i.e. MSL) estimation method based on long-term records of tide
gauges by eliminating the influence of tide, atmospheric pressure and ground elevation. Then, to discuss sea
level rise, the MSL time series are estimated at ten tidal stations in port areas around Japan. The variation
of sea level fluctuation was reduced in a range of several centimeters by eliminating the above influences.
At three ports among four ports on the Japan Sea side, MSL tends to increase clearly. At four ports among
six ports on the Pacific side, MSL tends to increase, but annual rates of elevation vary from port by port.
Then, a field survey was conducted to evaluate the applicability of GNSS (i.e. global navigation satellite
system) leveling to maintain bench marks in tidal stations. Finally, based on the considerations in each
chapter, several points concerning the observation, analysis and maintenance of tidal records are
summarized to evaluate the long-term mean sea level trends such as sea level rise.
Key Words: long term statistics, mean sea level, sea-level rise, ground elevation, trend, GNSS - leveling,
port area
*
Senior Researcher of Coastal Marine and Disaster Prevention Department, NILIM
Head of Coastal Disaster Prevention Division Coastal Marine and Disaster Prevention Department, NILIM.
***
Head of Marine Information Group, Marine Information and Tsunami Field, PARI
****
Researcher Marine Information Group, Marine Information and Tsunami Field, PARI
*****
Deputy Director, Engineering Administration Office, Engineering Planning Division,
Ports and Harbours Bureau, MLIT
******
Chief Official, Engineering Administration Office, Engineering Planning Division,
Ports and Harbours Bureau, MLIT
3-1-1 Nagase, Yokosuka, 239-0826 Japan
Phone:+81-468-44-5024 Fax:+81-468-44-5068
e-mail:[email protected]
**
ii
目
次
1.はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
1.1 本研究の目的‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
1.2 本研究の背景‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
1.3 平均海面水位の経年変動量に関する研究‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
1.4 港湾域での潮位観測‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
1.5 本研究の構成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
2.平均海面水位の解析方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3
2.1 潮位観測 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3
2.2 気圧・潮汐補正 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
2.3 地盤変動補正 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4
2.4 平均海面水位の年間上昇量(トレンド)の推定 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6
3.長期的な海面変動への潮汐・気圧・地盤変動等の影響の検討‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
3.1 潮汐・気圧の影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
3.2 地盤変動の影響‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
3.3 海流の影響‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
3.4 ノイズ成分除去の妥当性確認 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
4.平均海面水位の長期的な変動特性
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13
4.1 平均海面水位の推定に関する研究動向 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥13
4.2 日本海側海域の経年変動特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14
4.3 太平洋・沖縄側海域の経年変動特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
5.GNSS測量を用いた検潮所高さ管理の現地調査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 17
5.1 検潮所高さ管理の現地調査‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 17
5.2 GNSS測量の適用性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18
6.長期海面変動を検討する際の検潮記録等の整理に関するいくつかの留意点‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20
6.1 平均海面水位変動の解析の各段階における留意点‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 21
6.2 潮位観測データ等の整理と管理手法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23
6.3 平均海面水位の解析等に用いる既往資料 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 25
7.結論‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26
8.あとがき‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27
謝辞‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27
参考文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 27
付録-A 検潮所の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 29
付録-B 電子基準点による地盤変動量 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 35
付録-C GNSS測量を用いた検潮所高さ管理に関する現地調査の概要‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
iii
36
iv
国総研資料 No.855
1. はじめに
因について論じている.永井ら(1996)は,1958年から
1995年まで久里浜湾を対象とし同一条件の検潮記録を整
1.1
本研究の目的
理して,月平均水面及び年平均水面の経年変動を求め,
本研究では,長期検潮記録から潮汐,気圧とあわせて
近傍の一等水準点平均成果(国土地理院による1969年と
地盤変動を除去した,平均海面水位を推定する方法を設
1990年の測量成果)と,同水準点と検潮所零位との基準
定するとともに,代表的な港湾で平均海面水位を推定し,
点測量から平均水位が2.03 mm/year上昇したと報告して
その変動特性を明らかにすることを目的とする.あわせ
いる.岩崎ら(2002)は,約30年間の検潮記録から地殻
て,得られた結果をもとに,長期海面変動を考慮した検
変動成分を除いた海水位変動を抽出し,海水温との関係
潮記録等の整理や管理に関するいくつかの留意点をまと
を調べ,東日本では平均年間3.1 mmの下降,西日本では
める.
2.4 mmの上昇傾向を示し,海水温の変動と一致したと報
告している.櫻井ら(2005)は、地盤の上下変動量を,
1.2
本研究の背景
各検潮所の取付水準点の標高と取付水準点から球分体ま
気候変動による平均海面水位の上昇は、沿岸域に様々
での比高を用いて,1970年から2003年の検潮記録から海
な影響を与える.平均海面水位とは,ある一定期間の海
面変動量を推定している.また,GPS連続測定結果から
面水位の平均値であり,潮位から天文潮等の影響を取り
1996年から2002年の地盤上下動の変化傾向を用いて海面
除くことにより求められる.
変動量を推定している.三浦ら(2013)は,GPS-P点な
日本の港湾背後域では,産業用地や住宅等の資産が,
らびに検潮所近傍の電子基準点を用いて,地盤上下変動
高密度に集積されている特徴がある.そのため,平均海
の除去の他に,気圧補正・潮汐補正を行ったデータから
面水位が上昇すると,港湾施設や海岸保全施設の相対的
海面変動量を推定している.気象庁(2015)は、地盤変
に設計上必要とされる天端高が不足することにより,背
動に伴い,東北・関東地方太平洋沿岸の潮位偏差に最大
後域での高波・高潮災害の増加等の社会活動への影響が
20 cmの段差が生じることを報告しており,海面変動を
大きくなることが懸念される.自然海岸では,浸食によ
正確に推定するには地盤変動を除去することが重要であ
る地形変化が生じることにより,砂浜や干潟の消失や,
る.
これにともなう場の環境変化などの影響が生じてくる.
港湾域の特徴としては,埋立地が多く,地盤変動の影
一方で,海面水位が上昇した場合は,橋梁等の下で,航
響を受けやすいことが考えられる.検潮記録から平均海
路等の水域施設で船舶の乾舷確保できないことが懸念さ
面水位の経年変動を精度良く算出するには,潮汐,気圧,
れる.
地盤変動等によるノイズの影響を取り除く必要があるが,
これに対して,気象庁は,日本沿岸での平均水位の変
その手法はこれまで確立されていない.また,前掲の永
動は明瞭でないと報告していることから(気象庁,2013a),
井ら(1996)の報告以降に,港湾域の検潮記録を対象と
個々の港湾等でも海面変動量を観測し,気候変動の影響
した研究例はない.
を把握する必要性が高い.そこで,各港湾の長期検潮記
録を用いて海面変動量を推定することにより,基礎的な
1.4
港湾域での潮位観測
資料として利用することが期待される.このことは,適
検潮記録から平均海面水位の年間上昇量を予測するに
応策の検討等,各地域の状況に合わせた対応を行う上で
は,精度よく同質のデータが長期間蓄積されていること
も重要である.
が必要である.平成 9 年から,全国の港湾 10 地点で(図
-1.1)で観測している.また,検潮記録のチェック及び
1.3
平均海面水位の経年変動に関する研究
解析・管理については一元的に行い,等質のデータが得
これまで,平均海面水位の経年変動や地盤変動に関わ
られるよう継続的に管理している.港湾では,これらの
る研究例には以下の報告がある.檀原(1970)は,日本
地点以外にも多数の検潮所が全国各地に設置されており,
では地殻変動が激しく,黒潮や親潮などの海況が不安定
検潮記録は港湾工事用基準面の確認・設定,海上工事の
であるため,年平均潮位値を用いて,広い海域に共通す
施工管理や航路浚渫完成後の海図水深測定等を主な利用
る海水準の変動とそれからのずれとしての地殻上下変動
目的として用いられている.
を論じている.村上ら(1992)は,1950年頃から1990年
潮位の観測機関は,国土交通省地方整備局と北海道開
までの検潮記録を収集して,観測基準面の変動を取り除
発局以外に国土地理院,気象庁,海上保安庁,各都道府
いた平均海面水位の経年変動や潮位の変動特性とその要
県等他機関にわたっており,海岸昇降検知センターは各
-1-
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
機関がそれぞれの目的により設置している験潮場の検潮
記録から地殻変動を検知し、地震予知研究をはじめとし
た地球科学の研究に役立てるため,これら資料を統一し
た形で迅速に取りまとめて公表している(国土地理院,
2013b).
1.5
本研究の構成
第1章では,本研究の位置付けと,目的を示す.第2章
では,海面変動に影響を及ぼす地盤変動等の影響を除去
した解析手法を確立するため,これらのノイズ成分を除
去した平均海面水位の解析手法を設定する.第3章では,
長期的な海面変動への様々な要因を抽出し,ノイズ成分
除去の妥当性について確認を行う.第4章では,図-1.1
に示す港湾10地点で平均海面水位を推定し,その年間上
昇量(トレンド)を推定し,平均海面水位の長期的な変
動特性について考察する.第5章では,GNSS測量を適用
した検潮所高さの変動の把握について現地調査を行い,
地 盤 変 動 の 監 視 結 果 を も と に GNSS (global navigation
satellite system) 測量の適用性について考察する.第6章で
は,第5章までに得られた知見を基に,長期海面変動を検
・対象地点:国土交通省港湾局指定の海面水位上昇モニタリング地点
討する際の検潮記録整理に関するいくつかの留意点につ
・●印:日本海側海域の港湾,●印:太平洋側海域の港湾
いてまとめる.第7章は,本研究の結論をとりまとめ,今
後検討を要する課題を明らかにする.
図-1.1 検潮所の位置図
-2-
国総研資料 No.855
2. 平均海面水位の解析方法
のため,本資料では,海水温の影響を補正対象としてい
ない.
潮位観測で得られた検潮記録から平均海面水位年間上
昇量(トレンド)を算出するために,潮汐・気圧・地盤
2.1
変動等の影響(ノイズ成分)をいかに除去するかが問題
潮位観測
対象とした検潮所は,国土交通省港湾局が設置した,
となる.そこで本章では,既往の解析手法をもとに,長
図-1.1 に示す検潮所 10 地点(留萌港,久慈港,酒田港,
期検潮記録から潮汐・気圧・地盤変動に由来するノイズ
金沢港,久里浜湾,三河港,須崎港,唐津港,志布志港,
成分を除去し,平均海面水位を解析する方法を設定した.
中城湾港)である.対象港湾の選定にあたり,長期間の
図-2.1は,解析手順の一連の流れを示す.
検潮記録が存在し,日本海側,太平洋側の港湾がバラン
トレンドに対するノイズ成分として,潮汐・気圧・地
スよく配置され,河川流の影響を受けにくい港湾を選定
盤変動のほかにも,潮流や海水温の影響等が考えられる.
した.
このうち,潮流の影響については,黒潮大蛇行の発生時
各検潮記録より,60 秒以下の周期成分を除去した 30
期に着目し,平均海面水位の変動の傾向と比較して,定
秒間隔の実測値を作成し,さらに実測値より周期 209 分
性的に考察を加えた.海水温の影響については,その中
以下の周期成分を除去した 60 秒間隔の平滑値を作成し,
に気候変動の影響そのものを含むため,その影響を除去
その結果を潮位月表にまとめた.
すると気候変動の影響を過小評価する可能性がある.こ
潮位観測値の毎年の測得率は,30 年以上観測を継続し
潮位毎時データ
【潮汐月表 10港分】
気圧毎時データ
潮位毎時値-気圧
気圧補正した潮位
潮汐調和分解
潮汐推算【天文潮】
潮位偏差算出
水準点変動図
電子基準点変動量
取付水準点の地盤変動
取付水準点から観測
基準面高低差変遷
観測基準面の地盤変動
潮汐・気圧補正した
平均海面水位
潮汐・気圧・地盤補正後
の平均海面水位算出
補正後の平均海面水位
の系列相関を検定
トレンド推定
標準誤差算出
・解析手順フロー中の破線部囲みは,入力データを示す.
図-2.1
平均海面水位年間上昇量(トレンド)の解析手順
-3-
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
ている久里浜湾,唐津港,志布志港で,それぞれ 88〜
2.3
100 %,91〜100 %,98〜100 %の範囲であり,概ね 90%
地盤変動量の把握には,近年国土地理院電子基準点デ
以上を確保している.観測期間の短い 7 港湾では,ばら
ータを利用できるため,各検潮所における水準点変動図
つきがあるものの概ね 85~100%の測得率が確保されて
に加えて,電子基準点変動量を活用し地盤変動量を推定
いる.欠測期間が 3 ヶ月間以上の年の観測値は長期海面
して補正を行った.
変動の解析に使用せず,データの信頼性を確保した.
地盤変動補正
図-2.2に示すとおり,検潮所と検潮所とその取付水準
点(一等水準点),電子基準点は,それぞれ離れた場所
2.2
気圧・潮汐補正
に設置されているため,厳密には検潮所観測基準面の地
気圧変動によるノイズ成分の除去については,海上の
盤変動と一致しないという問題があるが,ここでは観測
気圧実測値(気象庁,2013b)に対する標準大気圧(1013
基準面,取付水準点,電子基準点(楕円体高)が,三浦
hPa)からの偏差に対して気圧補正(1 hPa=1 cm)を行って
ら(2013)の手法に準じて同じ地盤変動をしていると仮
水位偏差の寄与分を推定した.潮汐変動によるノイズ成
定した.なお,取付水準点から観測基準面までの高低差
分の除去については,年毎に,気圧補正後の毎時潮位値
の算出には,過年度より技術調査事務所や港湾事務所等
から天文潮を除去した.なお,天文潮は,最小二乗法に
で実施されている直接水準測量や機器保守点検記録での
より求めた 60 分潮の調和定数より算出した.
測定履歴を参照しており,図-2.2中の表に示した手順で
算出した.また,登録検潮所である留萌港,酒田港,金
電子基準点
観測室
A ②基本水準標(B.M)
④錘測基点
C
B
①取付水準点
(国土地理院一等水準点)
検潮器
③球分体
地
盤
変
動
錘
測
定
数
井戸
D
海面
フロート
観測潮位
楕円体高
導水管
⑤観測基準面(O.D.L)
単位:m
測定日 取付水準点
一等水準点
No.○
①
○年○月
○年○月
○年○月
基本水準標
高低差
A
①-②
球分体
高低差
②
B
②-③
錘測基点
高低差
③
C
③-④
観測基準面
④
D
④-⑤
4.226
1.239
①
A
B,C,D
D
○年度平均成果
○級水準測量
保守・点検
保守・点検
⑤
2.892
1.334
測量・点検
高低差
17.467
-14.575
測定項目
5.465
-7.743
-7.743
-2.278
-2.278
・取付水準点から観測基準面までの高低差は,各検潮所での測量成果,保守点検時の測定記録を元に計算した.表中の数値は,測定記録例であり実測値ではない.
図-2.2
取付水準点から観測基準面までの高低差と計算例
-4-
国総研資料 No.855
沢港,久慈港,久里浜湾,志布志港は海岸昇降検知セン
院,2013a)から算出し線形補間をして用いている.月平
ターに登録した取付水準成果表も参考にしている.
均での平均海面水位値は,これらの地盤変動量を用いて
電子基準点の成果は,1996年からあるものの,本資料
図-2.2に示した手順で算出した.
では各検潮所に近隣する3から4地点での変動量が同様な
各検潮所で用いた電子基準点の選定は,近傍の複数地
変動方向であるかを確認するため,複数地点の測定記録
点(3から4地点)での変動量の時系列(図-2.3)から,
が参照できる2004年以降の測定値を原則利用することと
検潮所との間に断層をはさむ(隆起・沈降の傾向が異な
し,電子基準点変動量(国土地理院,2013d)を利用し,
る可能性が高い)電子基準点を除外し,直接水準測量等
地盤変動量とした.なお,三浦らの手法に倣い,電子基
による水準点変動図の上下変動傾向と矛盾しないことを
準点データの年周変動の補正をしている.2004年以前の
条件に選定した.電子基準点の成果は,月平均値を地盤
地盤変動量は,各検潮所取付水準点(一等水準点)標高
補正計算に利用した.例えば,久里浜湾では,「三浦2」
(国土地理院,2013b)の変遷を水準点変動図(国土地理
の電子基準点の位置は久里浜湾検潮所との間に断層を挟
久里浜湾近傍の電子基準点地盤変動量 三河港近傍の電子基準点地盤変動量 10
J
鋸南
C
横須賀
H
三浦2
10
横須賀
2005
図-2.3
2010
-5
-10
1995
2015
2000
2005
2010
2015
電子基準点から計算した地盤変動量(左図:久里浜湾,右図:三河港)
唐津港
-10
水準点変動図
-5
1983年から2003年
0
電子基準点
5
電子基準点;玄海
電子基準点:玄海
2004年から2013年
2010
2005
2000
1995
1990
1985
10
1980
西暦
検潮所近傍の電子基準点変動量
10
仮屋
験潮所
玄海
唐津港
検潮所
唐津港近傍の電子基準点地盤変動量 5
地盤変動量(㎝)
2000
C
H
H
H
C
H
C
C
C
C
C
H
E
J
H
H
C
E
E
C
C
J
E
C
H
H
H
C
H
H
H
C
E
J
C
C
E
E
E
E
J
J
J
E
H
H
E
E
E
J
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2000
2005
2010
2015
*国土地理院地図を基に作成.
図-2.4
E
豊橋2
J
愛知一宮町
H
幡豆
C
田原
5
2015
-5
富津
地盤変動量(㎝)
0
地盤変動量(㎝)
地盤変動量(㎝)
5
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水準点変動図と電子基準点変動量による地盤変動と電子基準点選定手法
-5-
田原
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
むため,近隣の「横須賀」を採用している(図-2.3およ
び付録Aの図-A.6).
ただし,酒田港では,水準点変動図による変動量と近
隣の電子基準点変動量と上下動の方向が異なるため,例
外として水準点変動図のみを利用している.三河港の場
合は,参照すべき一等水準点が近隣になかった.また,
三河港は1997年に観測を開始していることから,全期間
を通じ電子基準点の成果を用いて地盤変動量を算出した.
なお,三河港検潮所近隣(田原,幡豆,一宮町,豊橋2)
での電子基準点変動量は,いずれの地点も同じ傾向(図
-2.3および付録Aの図-A.7)であったことから,近隣でか
つ1996年から測定記録がある「田原」の変動量を地盤補
正計算に用いた.図-2.4は,唐津港検潮所を事例とした
地盤変動量の補正について示している.1983年から2004
年までは,水準点変動図から地盤変動量を算出し,電子
基準点は,近隣(約10㎞)3か所での結果を比較し,上下
変動の傾向が2004年以降を見ると,図-2.4および付録A
の図-A.4の図中に示すとおり「二丈,玄海,北波多」と
もに2004年以降3か所ともに同様な結果であった.玄海の
電子基準点付近に仮屋験潮所(国土地理院)があり,唐
津港検潮所とのトレンド推定結果の比較がしやすいこと
も考慮し,最も近隣にある「玄海」での電子基準点成果
を採用して地盤補正を行った.
2.4
平均海面水位の年間上昇量(トレンド)の推定
潮汐・気圧と地盤変動のノイズ成分を除去して算出し
た平均海面水位の時系列データを作成し,一次回帰分析
を用いて平均海面水位の年間上昇量(トレンド)を推定
した.ここで,トレンドは,回帰分析によって推定され
る変数(時間)の係数の値とした.回帰分析の適用にあ
たっては,回帰式からの偏差に系列相関が無く,個々の
データが独立している必要がある.そこで,ダービンワ
トソン検定を用いて平均海面水位データの偏差に対して
5%の有意水準で系列相関の有無を確かめた.その結果,
系列相関が確認された場合,元の時系列データから等間
隔で再サンプリングを行い,系列相関がないことを確認
できるまで,繰り返し検定を行った.検定には,統計計
算ソフト R(Ver3.1.2)を使用した.
回帰分析によって推定されたトレンドについて,それ
ぞれ 95%予測区間を推定し,95%上限値と下限値を示し
た.なお,本資料では,95%下限値が正のとき上昇,95%
上限値が負のとき,下降としている.
-6-
国総研資料 No.855
3. 長期的な海面変動への潮汐・気圧・地盤変動等
の影響の検討
幅量が日本海側海域よりも大きいが,これは太平洋側の
長期的な海面変動には,潮汐・気圧・地盤変動等の要
潮汐・気圧補正を行うことで水位振幅の変動幅が少なく
因による影響が含まれており,その影響は一般的に平均
なった.特に志布志港と中城湾港では,潮汐・気圧補正
海面水位の変動幅と比べて大きい.このため,平均海面
前とくらべて水位振幅の変動幅が小さくなった.潮汐・
水位の評価にあたっては,これらの要因をノイズ成分と
気圧補正を行うことにより,水位振幅の変動幅が小さく
して除去した上で行う必要がある.このため,ノイズ成
なり,データを評価しやすくなった.
潮位振幅が大きいことによるものである.6 港湾ともに,
分の影響があり,それらの現象が海面変動に対して,ど
3.2 地盤変動の影響
の程度影響するかを把握することが重要である.
本章では,長期的な海面変動に対する様々な要因の影
それぞれの観測地点の地盤変動量の時系列を図-3.2に
響の抽出を行い,その大きさの比較や抽出後の水位変動
示す.図中(酒田港,三河港および中城湾港を除く),
傾向を検討することにより,第2章で示した補正手法の妥
2004年までは水準点変動図から得られた地盤高を線形補
当性を確認した.潮汐・気圧補正による影響については
間した結果を示し,それ以降は電子基準点での月平均の
補正前後の水位振幅の変動幅の比較を行った(図-3.1).
変動量を示している(図-3.2).第2章で述べたとおり,
地盤変動量の影響は,解析対象期間での隆起もしくは沈
酒田港は全観測期間に対して直接水準測量による水準点
降量を示し,その大きさや変動の間隔について比較検討
変動図を用いており,三河港は全観測期間に電子基準点
した(図-3.2).海流の影響については,第2章に補正手法
の変動量を用いている.中城湾港は1997年以降電子基準
を示していないが,黒潮大蛇行の発生時期(気象庁
点の変動量を用いている.
2013a)と平均海面水位の変動量を重ね,定性的に影響を
電子基準点の変動量をみると,毎年の変動量が変化し
把握した.補正手法の妥当性の検討は,補正後の平均海
ており,しかもその変化は線形ではないため,地盤変動
面水位と各現象の時系列を比較し,補正後の時系列にお
の傾向を捉えるためには,数日から数ヶ月間隔のデータ
ける長期的な海面変動の傾向について検討するとともに,
が必要であると考えられる.また,下記に示すように地
両者の変動幅のオーダーを比較することにより行った.
盤変動量は年間数mmから数cmのオーダーであり,平均
海面水位の変動と同じもしくは大きいレベルであった.
3.1 潮汐・気圧の影響
このため,平均海面水位の変動を正確に把握するために
図-3.1 は,2.2 節で示した方法を用いて各港湾の月平
は,数日から数ヶ月周期の地盤変動の影響を除去する必
要があると考えられる.
均潮位から潮汐と気圧の影響を除去した値を青線で示し,
各地点の地盤変動量の傾向を見ると,日本海側海域の4
比較のために検潮記録(月平均潮位)を赤線で重ねて示
港湾のうち,留萌港では,2011年までは沈下傾向であっ
したものである.
日本海側海域の 4 港湾(留萌港,酒田港,金沢港,唐
たが,2011年以降は隆起に転じていた.酒田港と金沢港
津港)では,潮汐と気圧の影響を除去することにより,1
はそれぞれ沈下傾向であった.金沢港では,17年間に約9
年程度より小さい周期の水位の変化量が少なくなった.
cm沈下していた.酒田港の場合は,水準点変動図による
留萌港と酒田港では,検潮記録の水位振幅の変動幅(1
結果を示しているため,各観測値の間は直線となってい
年間の水位変動の最大値と最小値の差の 1/2)が約 15 cm
る.2001年から2003年までの期間に隆起傾向がみられる
から 20 cm の範囲と他の 8 港湾とくらべて最も小さい.
が,観測期間全体をみると沈下傾向であった.隆起の始
この場合でも,図-3.1 に示すとおり潮汐・気圧補正後の
まりと終わりの時期やその時の地盤高については,水準
観測期間全体(1997 年~2013)の海面水位上昇量は約 90
点変動図からは明確に捉えることができなかった.唐津
mm,約 135 mm であり,水位振幅の変動幅とくらべて 6
港は全期間を通じて殆ど変動傾向がみられず,水準点変
割から 7 割程度である.このため,潮汐・気圧補正の効
動図と電子基準点の時系列で傾向に明確な差異はみられ
果により,平均海面水位の上昇傾向が明確になっている.
なかった.
太平洋側海域のうち,久慈港では,2005年から2011年
唐津港は水位振幅の変動幅が最も大きな港湾の 1 つであ
までは約11 cm隆起しており,2011年東日本大震災時に約
るため,潮汐・気圧補正の効果が顕著に表れている.
9 cm隆起した後,翌年に約4 cm沈降し,その後は緩やか
太平洋側海域の 6 港湾(久慈港,久里浜港,三河港,
な隆起傾向がみられた.
須崎港,志布志港,中城湾港)では,検潮記録の水位振
-7-
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定と長期変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
留萌港
250
酒田港
200
230
潮汐・気圧補正後
検潮記録
月平均潮位(㎝)
210
190
170
150
180
検潮記録
160
140
120
月平均潮位(㎝)
80
60
40
260
2015
検潮記録
240
220
200
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1960
2015
2010
2005
2000
140
1995
20
1990
160
1980
180
40
1985
2015
200
1975
60
1980
検潮記録
1965
月平均潮位(cm)
80
西暦
西暦
三河港
須崎港
160
潮汐・気圧補正後
260
2010
潮汐・気圧補正後
220
検潮記録
潮汐・気圧補正後
月平均潮位(㎝)
検潮記録
240
220
200
140
検潮記録
120
100
180
80
2015
2010
2005
2000
1995
1990
西暦
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
60
西暦
志布志港
中城湾港
350
250
潮汐・気圧補正後
330
潮汐・気圧補正後
月平均潮位(㎝)
検潮記録
310
290
270
230
検潮記録
210
190
170
西暦
西暦
・月平均潮位:図中の赤線は元の検潮記録,青線が潮汐・気圧補正後の結果を示す.
図-3.1
潮汐・気圧現象の補正
-8-
2015
2010
2005
2000
1995
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1990
150
250
1985
280
2005
久里浜湾 240
潮汐・気圧補正
100
2000
西暦
久慈港
120
1995
西暦
1990
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
180
1985
月平均潮位(㎝)
2010
潮汐・気圧補正
検潮記録
100
月平均潮位(㎝)
2005
280
120
月平均潮位(㎝)
2000
唐津港
潮汐・気圧補正後
月平均潮位(㎝)
1995
西暦
金沢港
140
1990
西暦
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
100
1970
月平均潮位(㎝)
潮汐・気圧補正後
図-3.2
志布志港
西暦
10
0
-5
-10
西暦
西暦
地盤変動量
-92015
-10
2015
-5
中城湾港
西暦
5
0
-5
-10
2010
0
2010
10
2005
西暦
2005
三河港
2000
2015
2010
2005
2000
1995
1990
-15
2015
2010
2005
2000
1995
西暦
2000
-10
1985
-5
1995
西暦
1995
久慈港 1990
-5
1980
0
1975
5
1990
金沢港
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
-5
1985
1980
地盤変動量(㎝)
0
1970
1980
10
地盤変動量(㎝)
2015
2010
2005
2000
1995
1990
5
1965
1960
0
地盤変動量(㎝)
2015
2010
2005
2000
1995
1990
10
1985
1980
5
地盤変動量(㎝)
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
地盤変動量(㎝)
15
1990
5
地盤変動量(㎝)
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
地盤変動量(㎝)
留萌港
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
10
1990
10
1985
5
1985
1980
地盤変動量(㎝)
15
1985
1980
地盤変動量(㎝)
15
1980
地盤変動量(㎝)
国総研資料 No.855
酒田港
10
5
0
-5
-10
唐津港
西暦
-5
0
5
10
10
久里浜湾 西暦
5
0
-5
-10
須崎港
西暦
5
0
-5
-10
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定と長期変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
久里浜湾では,観測期間53年間の地盤変動量の最大値と
す.久里浜湾の平均海面水位は,全体的に上昇傾向にあ
最小値の差は10 cmを超えていた.1961年から久里浜湾は
るが,詳細に見ると 1965 年から 1975 年頃までは上昇傾
常に沈下傾向であったが,2011年の東日本大震災後に隆
向で,1985 年までの期間はいったん下降し,その後 2005
起傾向に転じていた.三河港では,1997年から2001年ま
年までは上昇している(図-3.3).2005 年から 2006 年
での期間では,約2 cm沈下していたが,2001年以降は12
にかけて一時的に下降したあと,再び上昇傾向に転じて
年間で約10 cm程度隆起しており,その間常に隆起傾向で
いる.三河港では,2004 年から 2005 年の期間で平均海
あった.須崎港では,1997年から1999年までの期間では
面水位が上昇した後,一旦下降に転じ,2006 年以降は,
約1 cm隆起しており,2004年までは変動がなかった.2004
上昇傾向であった.須崎港では,全期間を通じて不連続
年以降の9年間で約6 cm隆起していた.志布志港では,
な変動であり,三河港と同様に,2004 年から 2005 年の
1983年から1999年までの期間は,変動が少ないが,1999
期間で下降量が大きかった.志布志港では全体的に上昇
年から2004年迄に約2 cm下降していた.2004年以降は,
傾向であるが,1994 年から 1996 年までは下降していた.
約2 cmの範囲で変動傾向があるが,年毎の変動はほとん
黒潮大蛇行期間と平均海面水位変動の関係では,4港湾
ど見られなかった.中城湾港では,1990年から2002年ま
ともに黒潮蛇行している期間に潮位が一時的に下降する
での期間は約1 cmから2 cmの範囲でほぼ一定の変動傾向
傾向がみられた.本研究の解析期間と重なっている黒潮
であった.2004年以降の9年間で,約3 cm隆起していた.
大蛇行の期間は5回あり,それぞれ1975年8月から1980年3
月,1981年11月から1984年5月,1986年12月から1988年7
月,1989年12月から1990年12月に発生しており,近年で
3.3 海流の影響
潮汐・気圧・地盤補正後の平均海面水位の時系列変動
は,2004年7月から2005年8月に蛇行が確認されている.
に対して,黒潮大蛇行期間(東海沖における黒潮の南下
期間中再南下移動は,30.0°Nから31.6°Nの範囲であった
が確認された期間)を着色して示した図面を図-3.3 に示
(気象庁,2013a).久里浜湾では,1977年頃,1989年頃と
久里浜湾 1961年-2013年
30
20
平均海面水位(㎝)
10
0
-10
-20
三河港 1997年-2013年
20
10
0
-10
2005
2010
2015
2005
2010
2015
西暦
志布志港 1983年-2013年
須崎港 1997年-2013年
35
平均海面水位(㎝)
30
20
10
0
-10
25
15
5
-5
西暦
1995
1990
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1975
1970
1965
-15
1960
平均海面水位(㎝)
40
2000
西暦
2000
1995
1990
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1975
1970
1965
1960
-20
1985
平均海面水位(㎝)
30
西暦
・平均海面水位:図中の青線は,潮汐,気圧,地盤補正後の平均海面水位を示す.
・黒潮大蛇行:図中の着色部分は,黒潮大蛇行期間を示す.気象庁(2013a)資料を参考にして作成.
図-3.3
黒潮大蛇行による平均海面水位変動への影響
- 10 -
国総研資料 No.855
2004年頃の蛇行時期で平均海面水位が下降していた.三
3.4 ノイズ成分除去の妥当性確認
河港と須崎港では,2004年頃の大蛇行時期(1年2か月)
図-3.4 は,代表例として久里浜湾と志布志港の 2 港湾
気象庁(2013a)と同時期に平均海面水位の下降が見られ
について,潮汐・気圧・地盤補正後の平均海面水位と比
た.志布志港の場合,黒潮蛇行時期以外にも短期間に平
較して,ノイズ主成分として仮定した地盤変動量,気圧
均海面水位が変動しており,1989年と2004年の黒潮蛇行
の月平均の時系列を示すとともに,海流影響の代表とし
時期に下降しているが,全観測期間を通じて平均海面水
て補正後の平均海面水位に黒潮大蛇行時期(着色部)を
位が上昇する傾向がみられた.
重ねて示している.これらの値を相互に比較して,平均
黒潮の大蛇行で発生した南下流が,日本沿岸に向かっ
海面水位の経年変動量に対するノイズ主成分の影響を評
て北上すると中部地方から西の太平洋側の地点で平均海
価し,除去方法の妥当性を確認した.
面水位が上昇することが知られている.これは,黒潮の
地盤変動による影響については,久里浜湾では 50 年間
蛇行に伴って形成される冷水塊の岸側で岸に沿って南西
に約 10 cm 程度の変動幅があり,平均海面水位の同期間
または西向きの流れが発生し,コリオリの力により沿岸
の経年的な変動量約 12 cm とほぼ同程度であった.志布
部の水位が上昇すると説明されている(永田,1981).三
志港では,地盤変動は 30 年間に約 2 cm 程度の変動幅で
河港では図-3.3 に示したように,2004 年から 2005 年の
10 地点中最も安定していた.これに対して,平均海面水
間に黒潮蛇行の影響が顕著に出ており,短期間の海面変
位の同期間の経年的な変動量は約 13 cm であり,地盤変
動の上昇に影響を及ぼしている可能性があることが見い
動量はこの値より小さいものの同程度のオーダーであっ
だされた.海流は,外洋で発生する現象であるが,外洋
た.このことから,地盤変動による誤差が平均海面水位
に面した港湾だけでなく,内湾域にある三河港でも影響
変動の推定に及ぼす影響は大きく,適切に補正を行うこ
がみられた.
とが重要であると考えられる.
志布志港
久里浜湾
平均海面水位(㎝)
40
30
20
10
0
-10
30
20
10
0
-10
-20
1040
1030
1020
1010
1000
990
地盤変動量(㎝)
・平均海面水位:図中の青線は,潮汐,気圧,地盤補正後の平均海面水位を示す.
・黒潮大蛇行:図中の着色部分は,黒潮大蛇行期間を示す.気象庁(2013a)資料を参考にして作成.
・地盤変動:2004 年までは,水準点変動図の結果,2004 年以降は電子基準点による変動量の結果を示す.
図-3.4
海面変動に影響する現象の時系列
- 11 -
2015
2010
2005
2000
1995
1985
1990
1980
1975
1960
気圧(油津)
1970
気圧(hPa)
2015
2010
2005
2000
1995
1985
1990
1980
1975
1970
1965
気圧(横浜)
地盤変動
1965
地震による変動
地盤変動
1960
気圧(hPa)
地盤変動量(㎝) 平均海面水位(㎝)
30
20
10
0
-10
-20
30
20
10
0
-10
-20
1040
1030
1020
1010
1000
990
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定と長期変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
気圧による影響については,両港湾ともに 15 hPa (15
cm)程度の年周期的な変動をしており,両港湾とも変動
量のオーダーは平均海面水位の 30 年~50 年間の経年的
な変動量とほぼ同じであった.
また,3.1 節より天文潮の影響は数十 cm~数 m である.
これらのノイズ成分を除去した後の水位振幅の変動幅は
年間に数 cm 程度まで小さくなっており,潮汐・気圧・
地盤変動の影響を考慮することにより,主要なノイズ成
分が除去できていると考えられる.
なお,海流の影響については,黒潮大蛇行の時期との
関係に着目した場合,蛇行時期に変動が大きくなる傾向
があり,適切にその影響を除去することが重要であると
考えられる.補正方法確立のためには,黒潮大蛇行から
海面変動量を定量的に把握する手法の確立が必要である.
- 12 -
国総研資料 No.855
4.平均海面水位の長期的な変動特性
推定した世界平均海面上昇は,1 年あたり 2.0 ±3 mm の上
昇率であったが,近年(1993~2010 年)では,海面上昇
長期間の検潮記録から,潮汐・気圧・地盤変動等の把
率が 3.2 ±3 mm とより上昇率が高くなっており,21 世紀
握し,その検潮記録からノイズ成分を除去することによ
末には,温室効果ガスの排出量次第で,100 年間で 260 mm
り,平均海面水位の変動を把握することが容易になる.
から 820 mm 上昇すると予測されている.また,気象庁
本章では,他機関(国土地理院・気象庁)の検潮所でト
(2013a)によると日本沿岸の海面水位は,明瞭な上昇傾
レンド推定された結果とのその比較を行ない,本資料で
向はみられないが,1990 年以降は上昇傾向であることが
行った潮汐・気圧と地盤変動の影響を除去した平均海面
報告されている.ただし,この傾向はまだ観測年数が短
水位の推定結果を用いて,線形回帰分析により求めた平
いため,評価が定まっておらず,今後の観測データの蓄
均海面水位の年間上昇量(トレンド)と定義して,各海
積により検証する必要がある.日本沿岸での平均海面水
域別(日本海,太平洋・沖縄)に港湾での観測地点でト
位の長期的な変動は,地点ごとに異なっているが,その
レンドの推定を行い,平均海面水位の長期的な変動特性
理由は明らかになっておらず,個別の地点で詳細にトレ
を考察した.
ンドを推定した結果を蓄積することが重要である.
4.1 平均海面水位の推定に関する研究動向
IPCC(2014)によると,1971 年から 2010 年の期間で
表-4.1 港湾での平均海面水位トレンド推定結果と標準誤差,95%予測区間
海 域
港湾名
解析期間
推定トレンド
mm / year
標準誤差
年
95%下限
95%上限
mm / year
日本海
留萌港
酒田港
金沢港
唐津港
1997-2013
1997-2013
1997-2013
1983-2013
17
17
17
31
3.67
-1.17
2.78
4.35
0.35
0.70
0.70
0.68
2.99
-2.55
1.36
2.99
-
4.36
0.22
4.21
5.72
太平洋
沖縄
久慈港
久里浜湾
三河港
須崎港
志布志港
中城湾港
1999-2013
1961-2013
1997-2013
1997-2013
1983-2013
1990-2013
15
53
17
17
31
24
3.53
2.95
3.94
2.39
2.86
1.54
1.29
0.34
1.78
4.86
0.89
1.05
0.89
2.27
0.31
-7.81
1.03
-0.56
-
6.17
3.63
7.56
12.60
4.68
3.64
表-4.2
日本沿岸における平均海面水位トレンド推定結果の比較
地点名
推定トレンド
mm/year
標準誤差
mm/year
地点名
国土地理院*1
推定トレンド
mm/year
留萌港
酒田港
金沢港
唐津港
3.67
-1.17
2.78
4.35
0.35
0.70
0.70
0.68
忍路
鼠ヶ関
輪島
仮屋
2.72
0.08
2.60
1.69
0.20
0.62
0.26
0.18
久慈港
久里浜湾
三河港
須崎港
志布志港
3.53
2.95
3.94
2.39
2.86
1.29
0.34
1.78
4.86
0.89
油壷
鬼崎
久礼
細島
1.16
0.90
1.18
2.74
0.24
0.35
0.32
0.22
中城湾港
1.54
1.05
沖縄
2.63
0.24
標準偏差
mm/year
地点名
気象庁*2
推定トレンド
mm/year
鼠ヶ関
輪島
仮屋
1.43
2.61
7.81
宮古
油壷
鬼崎
室戸岬
細島
油津
0.63
2.67
-2.37
7.95
9.42
11.39
*1 : 電子基準点変動量を用いた推定結果,解析期間 1996 年から 2010 年(三浦ら,2013).*2 : 水準測量結果を用いた推定結果,解析期間 1985 年から 2003 年(櫻井ら,2005).
- 13 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
4.2 日本海側海域の経年変動特性
20 年周期の変動がみられることを報告している.日本海
図-4.1(1)は,日本海側海域での平均海面水位経年変
側 4 港湾での標準誤差は,0.35〜0.70 mm の範囲であり,
動量を青線で示し,回帰分析から求めたトレンド推定結
太平洋側海域の 6 港湾の 0.34〜4.86 mm より小さかった.
果を赤色の直線で示している.
留萌港の平均海面水位の変動をみると,振幅の幅が少
表-4.1 には,平均海面水位のトレンド推定,標準誤差,
ないものの,1999 年,2003 年,2005 年,2007 年,2011
95%予測区間を示している.本資料では,便宜的に,ト
年,2013 年にピークをもつ数年ごとの周期的な変動を繰
レンドの推定値の 95%予測区間の間に 0(回帰定数が正
り返しつつ全体としては上昇している.酒田港は,2007
負の区間の範囲でない)を含んでいなければ,上昇また
年から 2008 年の期間で振幅が大きいが,留萌港と同様に
は下降しているとした.
周期的な変動をしていた.金沢港は,2000 年頃(2000 年
トレンド推定結果と 95%予測区間は,それぞれ留萌港
から 2002 年)と 2007 年(2007 年から 2009 年)頃に平
3.67 mm/year(2.99〜4.36mm/year),金沢港 2.78 mm/year
均海面水位が下降する傾向がみられた.唐津港は,1987
(1.36〜4.21 mm/year),唐津港 4.35 mm/year(2.99〜5.72
年,1990 年,1999 年,2003 年,2008 年,2012 年にピー
mm/year)であり,3 港湾で上昇傾向が明瞭にみられた.
クを持ち,他の港湾と比較すると不規則な周期で平均海
酒田港の場合は,トレンド推定結果が -1.17 mm/year であ
面水位が変動していた.
るが,95%予測区間が-2.55〜0.22 mm/year とその区間に 0
表-4.2 は,他機関でのトレンド推定結果との比較を示
を含み,推定結果が+と-の範囲をまたいでおり,トレ
している.日本沿岸では,国土地理院(三浦ら,2013)
ンドの上昇または,下降の傾向は明確ではなかった.そ
が 1996 年から 2010 年の期間を対象とし,電子基準点の
の原因について不明であり,今後の検討課題である.
変動から推定している.気象庁(櫻井ら,2005)は水準
日本海側海域では,傾向として年間の潮位差が太平洋
測量結果からの推定結果が報告されている.これらの結
側よりも小さいため,ノイズ成分として最も大きな値を
果をみると,各地点でトレンドの値にばらつきが見られ
示す潮汐に由来する平均海面水位の誤差が小さい可能性
た.
日本海側海域での平均的なトレンドを比較するため,
がある.また,気象庁は日本沿岸の海面水位の変動に約
留萌港
60
平均海面水位(㎝)
20
10
0
40
30
20
2005
2010
2015
2005
2010
2015
西暦
金沢港
40
平均海面水位(㎝)
55
45
35
25
15
唐津港
30
20
10
0
西暦
1995
1990
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
-10
1980
平均海面水位(㎝)
65
2000
西暦
2000
1995
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
10
1980
-10
50
1990
平均海面水位(㎝)
30
酒田港
1985
40
西暦
・図中の赤直線は,回帰分析で推定したトレンドを示す.青線は,平均海面水位(月平均)の時系列を示す.
図-4.1(1)
日本海側海域での平均海面水位経年変動量とトレンド
- 14 -
国総研資料 No.855
本資料で示した各港湾での推定値と,近隣の国土地理院
井ら,2005)と金沢港の推定結果と同様の結果であった.
や気象庁でのトレンド推定値との比較を行なった.本研
唐津港では,4.35 mm/year の推定結果に対して,国土地
究と解析期間と詳細な手法が異なるため同じレベルで比
理院の仮屋で 1.69 mm/year(三浦ら,2013),気象庁の
較はできないが,各港湾での推定結果と近隣検潮所との
仮屋で 7.81 mm/year(櫻井ら,2005)と唐津港での推定
結果を比較すると,留萌港では,3.67 mm/year の推定結
結果は,両機関での推定量のほぼ中間程度であった.
果に対し,国土地理院の忍路での推定結果 2.72 mm/year
と留萌港の推定結果は同程度の結果であった.酒田港で
4.3 太平洋・沖縄側海域の経年変動特性
は,-1.17 mm/year の推定結果に対して,鼠ヶ関では,国
図-4.1(2)は,太平洋・沖縄側海域での平均海面水位
土地理院での推定結果 0.08 mm/year(三浦ら,2013),
経年変動量を青線で示し,回帰分析から求めたトレンド
気象庁での推定結果 1.43 mm/year と,機関毎にトレンド
推定結果を赤色の直線で示している.
の傾向が異なっていた.金沢港では,2.78 mm/year の推
太平洋側海域の 6 港湾では,長期的な傾向をみると平
定結果に対して,国土地理院の輪島では,2.60 mm/year
均海面水位は上昇しているが,変動傾向は港湾毎に変動
(三浦ら,2013),気象庁の輪島では 2.61 mm/year(櫻
傾向が異なっていた.潮位振幅の差異や黒潮大蛇行等,
久慈港 久里浜湾
30
20
平均海面水位(㎝)
10
0
-10
20
10
0
-10
10
0
-10
2015
2010
2005
25
15
5
-5
2000
2005
2010
2015
2000
2005
2010
2015
1995
1990
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1985
-15
-20
西暦
西暦
志布志港 30
平均海面水位(㎝)
30
20
10
0
-10
中城湾港
20
10
0
-10
西暦
1995
1990
1985
1980
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
-20
1980
平均海面水位(㎝)
2000
須崎港
35
平均海面水位(㎝)
平均海面水位(㎝)
三河港 20
40
1995
西暦
西暦
30
1990
1985
1980
1975
1960
2015
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1970
-20
-20
1965
平均海面水位(㎝)
30
西暦
・図中の赤直線は,回帰分析で推定したトレンドを示す.青線は,平均海面水位(月平均)の時系列を示す.
図-4.1(2)
太平洋・沖縄海域での平均海面水位経年変動量とトレンド
- 15 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
それぞれの地点毎に異なる外洋の気象現象を要因として
久里浜湾と志布志港の平均海面水位(図-4.1(2) 青
の影響を受けている可能性がある.
線)の長期変動の傾向を見ると,概ね数年おきの周期的
東北から中部地方の太平洋側海域の港湾について,ト
な上下変動を示していることがわかる.この現象は,ト
レ ン ド と 95% 予 測 区 間 は そ れ ぞ れ 久 慈 港 で は 3.53
レンドと同程度の振幅を持っており,平均海面水位の変
mm/year ( 0.89 〜 6.17 mm/year ) , 久 里 浜 湾 では 2.95
動をさらに精度よく推定するためには,第 3 章で示した
mm/year(2.27〜3.63 mm/year),三河港では 3.94 mm/year
黒潮大蛇行の影響や前述での 20 年周期変動の影響等と
(0.31〜7.56 mm/year)と推定された,何れの地点も明瞭
あわせて,その要因と補正方法についてさらに検討を進
な上昇傾向であった.久慈港と三河港では,解析対象と
めることが今後の課題であるといえる.
した期間が久里浜湾より少ないことから,2 港湾とも久
里浜湾の標準誤差 0.34 mm よりも,1.29〜3.94 mm と大
きかった.
四国から九州地方と沖縄海域の港湾について,志布志
港でのトレンドと 95%予測区間は 2.86 mm/year(1.03〜
4.68 mm/year)と明瞭な上昇傾向であった.トレンドは
久里浜湾同程度の上昇量であった.須崎港と中城湾港の
場合は,表-4.1 に示したとおり,日本海側海域の酒田港
と同様に 95%予測区間に 0 を含み,トレンドの上昇また
は下降傾向は明確でなかった.その原因について不明で
あり,今後の検討課題である.
太平洋側海域での平均的なトレンドを比較するため,
本資料で示した各港湾での推定値と,近隣の国土地理院
や気象庁でのトレンド推定値との比較を行なった.久慈
港では,3.53 mm/year の推定結果に対し,気象庁の宮古
では 0.63 mm/year(櫻井ら,2005)と報告されており,
久慈港の推定結果と差異があった.久里浜湾では 2.95
mm/year の推定結果に対して,国土地理院の油壷では,
1.16 mm/year(三浦ら,2013),気象庁の油壷では 2.67
mm/year(櫻井ら,2005)と報告されており,これらの
推定値に対して久里浜湾でのトレンド推定結果は,気象
庁の油壷での推定結果と同程度の値を示していた.三河
港では,3.94 mm/year の推定結果に対して,国土地理院
の鬼崎では,0.90 mm/year(三浦ら,2013),気象庁の
鬼崎では-2.37 mm/year(櫻井ら,2005)と各機関でトレ
ンドの上昇,下降の傾向が異なっていた.須崎港では,
2.39 mm/year の推定結果に対して,国土地理院の久礼で
は,1.18 mm/year(三浦ら,2013),気象庁の室戸岬で
は,7.95 mm/year(櫻井ら,2005)と須崎港での推定結
果と,国土地理院の久礼での推定結果と傾向が似ていた.
志布志港では,2.86 mm/year の推定結果に対して,国土
地理院の細島では 2.74 mm/year(三浦ら,2013),気象
庁の細島では 9.42 mm/year (櫻井ら,2005) と,志布志港
での推定結果と国土地理院の細島での推定結果と同様の
値を示した.中城湾港では,1.54 mm/year の推定結果に
対して,国土地理院の沖縄では,2.63 mm/year(三浦ら,
2013)と,同程度の推定結果であった.
- 16 -
国総研資料 No.855
5. GNSS測量を用いた検潮所高さ管理の現地調査
ると,「GNSS(Global Navigation Satellite System)」と
は、人工衛星からの信号を用いて位置を決定する衛星測
過去の検潮記録から平均海面水位の年間上昇量を推定
位システムの総称で,GPS,GLONASS,Galileo及び準天
するには,検潮所での地盤変動量を精度よく観測して補
頂衛星システム等の衛星測位システムがあるとされてい
正することが重要であることが第3章より示された.しか
る.GNSS測量においては,このうち,GPS,GLONASS
し,電子基準点の地盤変動の傾向は,隣接する基準点同
及び準天頂衛星システムを適用するとされている.
士でも同じでない場合があり,潮位観測地点の地盤変動
準則には,GNSS測量に関する規定が,第2編「基準点
の傾向を必ずしも反映していない可能性がある.また,
測量」に記載されている.基準点測量の観測では,GNSS
港湾域では埋立後の圧密等よる地盤沈下など,独自の変
測量機を用いて,GNSS衛星からの電波を受信して位相デ
動傾向を示すことがある.このため,検潮所周辺の地盤
ータを記録する.1級から4級の基準点測量では,1級GNSS
変動記録を継続的に測得し,地盤変動の補正に活用する
測量機を観測に用いることとなっている.また,観測方
ことが有効であると考えられる.
法はGNSS測量スタティック法の場合,観測時間は120分
しかし,単独のGNSS測量による標高の観測精度は測量
以上,データ取得間隔は30秒以下であり,使用する衛星
に使用できる水準ではないため,電子基準点を与点(そ
数はスタティック法では4衛星以上と規定されている.
れぞれの潮位観測地点が地盤変動の検討をするにあたり
近年は,標高の測量方法について「GNSS測量による標
参照とする水準点)とし,潮位観測地点においてGNSS
高の測量マニュアル(平成26年4月)」
(国土地理院,2014)
測量による地盤変動の監視を同時に行うことで,正確な
が作成されている.本マニュアルの適用範囲は3級水準測
地盤変動量を捉える必要がある.この時,検潮所内の球
量としており,適用地域は「日本のジオイド2011」(兒
分体の高さを直接測量することが望ましいが,衛星の捕
玉ら,2014)を整備した区域とされている.GNSS測量で
捉や測量スペースの確保などの問題から球分体高さを
は準拠楕円体からの高さを求め,ジオイドモデルにより
GNSSで直接測量することは困難なことが多い.このよう
標高を算出すると規定している.GNSS水準測量では,既
な場合には,GNSSで検潮所の比較的短距離にある基本水
知点の種類は電子基準点,既知点の数は3点以上とし,観
準標等(検潮所とほぼ同じ地盤変動の傾向を示すと仮
測時間は6時間以上,データ取得間隔は,30秒以下と定め
定)の楕円体高の変動を測定するとともに,基本水準標
られている.本資料では,これらの規程を参考にして調
等から球分体間で直接水準測量を行い,標高差を測定す
査を行った.
ることで,球分体の楕円体高の変動を求めるといった手
法で補正できると考えられる.
(2) 現地調査方法
本章では,GNSS測量による検潮所の地盤変動の把握に
図-5.1に検潮所におけるGNSS測量と測定対象とした
ついて,現地調査を行い,計測手法の適用性とその課題
楕円体高さと検潮所の配置等の概念図を示し,表-5.1
について検討を加えた.調査の対象は,愛知県豊橋市の
に測量方法,図-5.2に検潮所と与点とした電子基準点の
「三河港検潮所」とした.選定理由は,第一に,与点と
位置を示す.GNSS測量は,検潮所近傍のGNSS観測点
する電子基準点が検潮所を中心にほぼ三角形配置され,
(以下B.M.)での楕円体高さの測量を行った.なお,本
GNSS測量による測量精度を確保しやすいことがあげら
章では国土地理院の定義にそって地殻変動量を表現し
れる.第二に,当該検潮所では,2011年から2013年まで
ている.
の間に年1回のGNSS測量の実績があるとともに,これら
測量方法は,GNSSスタティック測量,測量機器は1
と過去の直接水準測量成果との比較ができるため,測量
級GNSS測量機(トプコン製
成果の妥当性の検討が容易であるためである.
5.1
GB-1000GGD)を使用し
た.観測時間は6時間とした.なお,比較に使用したGNSS
測量実績では,前述の「準則」の基準点測量の規程を参
検潮所高さ管理の現地調査
照し観測時間を120分間としている.観測の設定は,デ
(1) GNSS測量に関する規定の動向
ータ取得間隔30秒,最低高度角15°,最小衛星数4個とし
公共測量を行う際には,「作業規程の準則」(平成20
た.与点とした電子基準点は,検潮所より60 km以内か
年3月国土交通省告示第413号;以下準則という)により
つ,検潮所を中心にほぼ正三角形の配置である「田原」
測量を行うこととなっている.準則では公共測量におけ
(楕円体高さ:64.656 m,標高:25.608 m),「豊橋2」
る標準的な作業方法を定め,その規格を統一するととも
45.840 m,6.339 m)「豊橋A」(73.122 m,112.428 m)
に,必要な精度を確保するものとされている.準則によ
の3か所とした.
- 17 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
果2011)の基準日である1997年1月1日の位置情報であり,
衛星
一般に測量はこの座標値に基づき管理されている.今期
直接水準測量
検潮所
座標は,現在の位置での座標であり,地殻変動等が考慮
球分体
GNSS
されているものである.なお,検潮所内にある球分体の
B.M.
地面
楕円体高さは,B.M.から直接水準測量を行って高さを計
ジオイド
楕円体高
算した.
楕円体高
楕円体(GRS80)
5.2
GNSS測量の適用性
(1) GNSS測量の精度
図-5.1 GNSS測量による検潮所高さ管理の概念図
球分体楕円体高のGNSS測量結果を表-5.2に示す.球
分体の楕円体高さ(今期座標)は,43.603 mから43.610
表-5.1
GNSS測量の方法と条件(三河港)
測量方法
GNSSスタティック測量
測量機器
1級GNSS測量機
観測時間
2011年-2013年; 2時間
2014年; 6時間
観測設定
データ取得間隔 30秒
最低高度角 15°
最小衛星個数 4個
与点
計算条件
mの範囲であり,3回の測量での較差は最大で7 mmであ
った.仮に5 kmの距離を水準測量した条件で許容されて
い る 較 差 は , そ れ ぞ れ 1 級 水 準 測 量 で は , 5.5 mm
(2.5mm×√5), 2級水準測量では,11.1mm(5mm×√5)
である.今回の測量結果の較差は 7 mmであり,GNSS
測量が3級水準測量で行っていることを考慮すると,
2015年に行った本測量の結果は十分な精度を有してい
た.また,GNSSを利用した間接水準測量では0.01メー
電子基準点 (田原, 豊橋2, 豊橋A)
トルの単位まで測定することが可能であることが,水路
PCV補正あり
セミ・ダイナミック補正パラメータ
(2011-2014)
測量業務準則施行細則(海上保安庁,2014)で定められ
ており,このことを考慮すると,GNSS測量は,検潮所
高さの管理に十分活用できると考えられる.
(2) 検潮所球分体楕円体高さ
GNSS測量による検潮所の球分体楕円体高さの測量結
豊橋2
果と地殻変動量の推定結果を表-5.3に示す. ここで,地
検潮所
殻変動量とは,国土地理院が作成した補正パラメータ(電
三河湾
子基準点の測量成果等より補間して求めた5 km間隔の格
豊橋A
子点上の元期座標に対する地殻変動量)を用いて任意の
田原
地点(ここでは検潮所)の地殻変動量を推定したもので
ある.
*国土地理院電子地図を基に作成.●印は電子基準点を示す.
図-5.2
GNSS測量による球分体楕円体高さを比較すると,
三河港検潮所と電子基準点位置図
2011年度は43.591 mに対して,2014年度は43.607 mであ
測量結果に対して,PCV補正,ジオイド補正,セミ・
り,3年間で16 mm隆起をしていた.各年の変動量の傾
ダイナミック補正(国土地理院,2013c,2015b)をして
向は,2011年度から2012年度は19 mmの下降,2012年度
おり,楕円体高さの計算は,当該電子基準点の標高に,
から2013年度までの期間は,37 mmの上昇,2013年度か
「日本のジオイド2011」(gsigeo2011,ver1.0)から求め
ら2014年度の期間では,2 mm下降した結果であり,年
たジオイド高さを加えた値を用いた.
変動量は不連続であった.年度ごとに変動量のばらつき
また,過去の測量成果との比較を容易にするために,
はあるものの全体としては隆起傾向であると考えられ
すべての測量成果に対してセミ・ダイナミック補正パラ
る.
メータ(SemiDyna2014.Ver.1.0.0)により元期座標(地
地盤変動量は周辺の平均的な地盤変動量と考えられる
殻変動を考慮して基準日の座標に補正した値)から今期
が,2011年度が68 mmに対して2014年度が88 mmであっ
座標(観測を行った時点の座標)を計算しこれを地殻変
た.3年間で20 mm隆起しており,GNSS測量による推定
動量とした.ここで,元期座標とは,測量成果(測地成
値とほぼ同じ傾向であり,当該地域の地盤は隆起傾向に
- 18 -
国総研資料 No.855
あると考えられる.年変動量は,各年度の間で5 mmから
るため,上記の留意点に沿って事前にデータを整理して
9 mmと年度ごと幅があるものの,毎年隆起していた.
おくことが望ましい.
GNSS測量よる推定結果と比較すると,検潮所の周辺では
GNSS測量の導入のためには,直接水準測量による測
地盤変動の傾向が異なっている可能性がある.このため,
量が数年間で1回実施していると仮定すると,その期間
検潮所でGNSS測量を行い,地盤変動の傾向を把握し,周
の間に「検潮所高さを補間」することが精度よくできて
辺と比較することが重要であると考えられる.
いるか確認することが重要である.よって,現段階では,
GNSS測量による高さと直接水準測量による高さの関係
(3) 直接水準測量とGNSS測量の標高
を測量履歴や潮位関係図等で明確に整理を行い,双方の
表-5.4は,直接水準測量とGNSS測量の標高を示して
結果を蓄積し,相互に比較しながら,適切な検潮所高さ
いる.ここでは,直接水準測量の標高と比較をするため,
を管理する方法を検討することが重要であると考えら
GNSS測量で求めた球分体楕円体高(今期座標)から標
れる.参考として,第3章で用いた電子基準点「田原」
高(元期座標)を算出して比較を行なった.比較に用い
変動量は,時期により変化があるもの測定結果の例とし
た値は,直接水準測量が最新の2011年度の成果,GNSS
て,2012年1月から3月の3か月間では,7 mmから20 mm
測量結果は,直接水準測量と同時期の2011年度と最新の
と約10 mmのオーダーで変化していた.測量結果の較差
2014年度(2015年1月20日)値を使用した.これをみる
には,測量精度以外にも,このような短期間における地
と,2011年度の場合は,直接水準測量による標高が4.214
盤変動量の影響も含まれていると考えられる.
mに対して,GNSS測量による標高は4.229 mと15 mm高
かった.2014年度のGNSS測量による標高は4.212 mと逆
表-5.2 球分体楕円体高のGNSS測量結果
に2 mm低い値となっているがいずれも近い値となって
単位:m
いた.検潮所でのGNSS測量結果と直接水準測量の結果
球分体楕円体高
(今期座標)
測量年月日
を比較したところ大きな差異はみられなかった.
43.607
43.603
43.610
2015年1月20日
2015年2月13日
2015年2月14日
(4) GNSS測量導入に向けた課題
GNSS測量は,測量時間が約6時間程度と比較的短時間
で実施できるため,継続的に地盤変動を監視するという
・検潮所近傍のB.M.から球分体の比高差は,+2.015 m.
使用目的であれば,直接水準測量よりは,比較的多頻度
表-5.3 球分体楕円体高と地殻変動量の推定結果
に対応することが可能であると考えられる.また,検潮
所にGPSを設置するシステムと比較して,簡易かつ安価
単位:m
でGNSS測量は適用できることが利点であると考えられ
年度
る.しかし,本資料では,一地点だけの調査結果の考察
球分体楕円体高
(今期座標)
であり,実際に,他の港湾で導入するためには,以下に
2011
43.591
例えば,実際にGNSS測量を行うにあたりさまざまな
2013
2014
43.572
43.609
43.607
-0.019
0.037
-0.002
0.074
0.083
0.088
0.006
0.009
0.005
年変動量
示すような様々な留意点に注意する必要がある.
地殻変動量*
2012
0.068
年変動量
準備が必要となる.6時間連続で良好なデータを取得す
・地殻変動量 は,セミ・ダイナミック補正パラメータから推定.
るには,事前に飛来情報を入手し,衛星の配置状況が良
・国土地理院の表記と揃えるため地殻変動量とした.
*
い時間帯に行う必要がある.GNSSデータの取得のため
表-5.4 直接水準測量とGNSS測量の標高
には,観測地点の上空の視角も確保する必要がある.ま
た,GNSSデータの取得にあたっては,気象の影響も受
単位:m
けるため,寒冷前線が接近している時や,集中豪雨が予
GNSS測量(元期座標)
測されるときは観測を避けて,観測期間を設定すること
年度
が望ましい.さらに,与点とする電子基準点の配置状況
を確認して基準点高さを測定する点を決定し,事前に直
接水準測量を行い,GNSS測量で測定する基準点高さと
球分体楕円体高との関係をあらかじめ調査・測量してお
く必要がある.これらの条件は,各検潮所によって異な
- 19 -
楕円体高 ジオイド高
直接水準測量
標高
標高
2011
43.524
39.295
4.229
4.214
2014
43.519
39.312
4.212
-
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
6.長期海面変動を検討する際の検潮記録等の整理
に関するいくつかの留意点
その対応や留意点を示した.次に,長期海面変動特性の
本資料では,長期海面変動の検討において,検潮記録
るが,具体的なデータ整理・管理の方法とその留意点を
からさまざまな他の要因の影響を除去した平均海面水位
示した.最後に,本資料ではデータの補正や解析結果の
を計算し,トレンドを推定した.平均海面水位変動の解
比較のため,他機関のさまざまな気象・海象の現象や地
析では,気圧・潮汐等の影響を除去するとともに,検潮
盤変動のデータを引用した.その入手にあたっての参照
所取付水準点の地盤変動,取付水準点と球分体の高度差
先や公表内容や解析上の用途を整理して示した.図-6.1
や球分体と観測基準面の高低差を求めて地盤変動の影響
には,第2章で示した平均海面水位年間上昇量(トレン
を除去した.
ド)の解析手順と本章で検討した長期海面変動を検討す
解析には,長期間のデータを精度よく管理する必要があ
る際の検潮記録等の整理に関するいくつかの留意点の関
本章では,本資料で取り組んだ内容をもとに,長期海
連について図示している.
面変動を検討する際の検潮記録等の整理に関するいくつ
か留意点をまとめた.最初に,解析の各段階での課題と
解析手順 【第2章】
潮位毎時データ
【潮汐月表 10港分】
解析の各段階の留意点 【6.1】
検潮記録整理 6.1(1)
データ等の整理と管理方法 【6.2】
検潮記録における同質データ
確保 6.2(2)
観測機器の維持管理6.2(3)
潮位毎時値-気圧
気圧補正 6.1(2)
気圧補正した潮位
潮汐調和分解
潮汐推算【天文潮】
潮位偏差算出
潮汐補正 6.1(3)
潮汐・気圧補正した
平均海面水位
潮汐・気圧・地盤補正後
の平均海面水位算出
地盤補正
地盤補正
地盤変動量の推定 6.1(4)
観測基準面関係図・測量記
録整理 6.2(1)
取付水準点から観測基準面
までの高さ履歴 6.1(5)
錘測定数の測定記録6.2(4)
GNSS測量による検潮所管理
6.1(7)
補正後の平均海面水位
の系列相関を検定
トレンド推定
標準誤差算出
トレンドの推定 6.1(6)
その他
その他
その他定量化が困難な現象
海水温,波浪,風向・風速
6.1(8)
検潮所の被災時対応のため
のデータ管理 6.2(5)
海流の影響 6.1(9)
図-6.1
平均海面水位年間上昇量(トレンド)の解析手順と長期海面変動を検討する際の検潮記録等の整理に
関するいくつかの留意点
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国総研資料 No.855
6.1 平均海面水位変動の解析の各段階における留意点
を計算して補正する方法があり,本資料ではその手法で
平均海面水位の解析の各段階において,それぞれの留
潮汐補正を行っている.
意点と対応方法に関する内容を以下のとおり整理した.
潮汐補正の結果から,日本海側,太平洋側などのそれ
ぞれの海域ごとに平均海面水位の変動幅を比較検討する
(1) 検潮記録の整理について
とともに,それぞれの検潮所で平均海面水位の時系列に
長期海面変動を解析する上で,検潮記録は基礎的なデ
おける潮位偏差の変動幅を確認することが重要である.
ータである.検潮記録に観測記録の欠測が生じたり,高
潮等の異常潮位が生じたりした場合,調和解析結果の妥
(4) 地盤変動量の推定(水準点と電子基準点)について
当性が問題になるため,解析への適用の可否について検
地盤変動は,平均海面水位変動の推定に及ぼす影響が
討する必要がある.検討にあたっては,当時の気象デー
大きいので,当該検潮所での地盤変動量を正確に把握す
タや周辺の検潮所の毎月の検潮記録を確認して,異常潮
ることが重要である.地盤変動を把握する方法として,3
位や欠測の原因を考え,その時の潮位変動の状況を把握
つの方法があげられる. 第一は,取付水準点の水準点測
することが重要となるが,過去のデータを遡って原因を
量結果の変動図から変動量(以下,水準点変動量と呼ぶ)
分析することは難しい.このため,検潮記録の整理・保
を算出する手法であり,従来から用いられている方法で
管する際には,異常潮位や欠測時に生じていた気象・海
ある.第二は,検潮所にGPS-P点の設置を行い,ダイレ
象の現象やそれらの原因も併せて記録しておくことが望
クトに検潮所の高さを管理する手法であり,国土地理院
ましい.これにより,平均海面水位変動を解析するとき
の験潮所で運用されている.第三は,先に示した取付水
に,検潮記録として採用できる可能性が高くなることが
準点の水準点変動量と検潮所近傍の電子基準点の変動量
期待できる.
の結果を結合させる手法である.過去からの変動量と近
年の変動量が詳細に推定できるものであり,本資料では
(2) 気圧補正について
この手法を用いている.それぞれの対応方法の留意点は,
気圧は,潮位偏差へ影響を及ぼす主要な要因の一つで
以下に述べる.
あり,その除去手法の検討が課題である.本資料では,
水準点変動量は,測量の記録期間が長いものの,それ
潮位観測の地点ごとに海上の気圧実測値に対する標準大
ぞれの取付水準点でのデータの測定頻度が少ないことが
気圧からの偏差を求めて,気圧補正を行っている.これ
問題になっている.一方,電子基準点の変動量は,日々
に対して,気圧の時間変動や風の影響などを考慮するこ
の連続観測を行っているものの1996年以前の測定データ
とによりさらに解析の精度が上がることが期待される.
がないことが問題になっている.
気圧による影響は,地点ごとに季節の変化にともなう
このため,本資料では水準点変動量と電子基準点の変
年周期的な変動がみられる.このため,この年周期的な
動量の結果を結合させる手法を用いることとした.近隣
変動の傾向を把握し,各検潮所の平均海面水位の時系列
の電子基準点の変動量は,地点ごとに,あるいは水準点
と比較して,変動に及ぼす影響を検討することは,各地
変動量と比較して,鉛直方向の変動の方向が違うケース
点でのさらに長期的な海面変動の傾向を理解する上で重
もあることから,適用する電子基準点の選定は注意が必
要である.
要である.
適用する電子基準点の選定は,当該観測地点周辺の3
(3) 潮汐補正について
から4か所程度の電子基準点変動量の時系列傾向を把握
潮汐は,波浪とともに海面の水位変動の最も大きな要
(詳細は第2章参照)し,当該地域での変動量とその方向
因になっており,平均海面水位の変動幅(年間数mm程
の傾向を把握し,観測地点の水準点変動量と比較するこ
度)と比較して非常に大きい.このうち,潮汐は,満潮・
とが重要である.1か所の電子基準点の変動を採用するこ
干潮等の規則的な周期変化があり,その周期が数時間か
とが難しい場合は,数か所の電子基準点を用いて補間す
ら数年程度と比較的長く,海面変動量を解析するために
ることも考えられるが.その際には補間を行う電子基準
は,潮汐の影響を除去することが重要である.潮汐の影
点の設定にあたり,検潮所周辺の地盤変動の考え方を整
響を除去する一般的な方法として,気象庁が潮汐の予報
理しておくことが重要であると考えられる.
で用いる60分潮の値を使用して天文潮を除去する手法
また,当該検潮所周辺の地盤変動の傾向を把握するに
(三浦,2013)がある.より詳細に潮汐の影響を考慮す
あたり,一等水準点以外に,各自治体等で管理されてい
る方法として,気圧補正後の毎時値から,年毎に天文潮
る地盤変動量の記録,活断層の有無等の情報を入手し,
- 21 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
整理を行うと,当該検潮所周辺の地盤変動の概略の傾向
期的に管理することは重要な課題である.その対応とし
を把握するにあたり有用である.
て,検潮所にGNSSを常設して測量したり,1年程度以下
GPS-P点を検潮所に直接設置する方法は,機器の設置
の頻度で定期的に検潮所の基準面の高さをGNSS測量し
費用や運用・管理上の課題があり,それらを解決してか
たりする方法がある.ただし,GNSS測量の導入に向けて,
ら順次導入していくのが望ましい.当面は,既存の資料
数年に一度の直接水準測量と比較を実施し,測量精度を
を有効活用する方法が考えられる.そこで,本資料では
確認することが重要である.測量結果をとりまとめてお
国土地理院で公表されている電子基準点の変動量等の測
くことにより,平均海面水位の解析のうち,地盤変動量
量成果や各検潮所での水準点変動量等の測量・点検記録
の推定において,取付水準点から観測基準面まで高さ履
を活用して地盤変動現象を把握する方法を提案して,そ
歴情報の参考としての活用が期待できる.
の手法の妥当性を確認している.今後は,水準点変動量
と電子基準点の変動量から地盤変動量を推定する方法で
(8) その他定量化が困難な現象について
地盤変動の監視を行いつつ,数か所の検潮所でGPS-P点
平均海面水位の解析に対して影響を与える現象のうち,
の設置を行い,双方のデータ間の関係を把握し,GNSS
直接補正することが難しい現象として海水温や風,波浪
測量の導入について検討することが重要である.
などが上げられる.これらの現象は,間接的あるいは複
合的に平均海面水位の上昇に影響するため,直接補正す
(5) 取付水準点から観測基準面まで高さ履歴について
ることは難しいことから,当面は,検潮記録とともに各
検潮所の地盤変動量を推定する際には,取付水準点・
データの時系列記録を蓄積・整理することが望ましい.
a) 海水温
電子基準点から,観測基準面に至る高低差を把握するこ
とが重要であるが,一般的に,取付水準点や電子基準点
海水温が上昇すると,海水が膨張し潮位を押し上げる
は,検潮所から離れた場所にあることが多い.このため,
効果がある.その効果は,対象となる暖水の層が厚いほ
取付水準点から観測基準面までの高低差を整理・計算し,
ど大きくなるので,海面水温だけでなく表層水温で水深
その履歴を長期間にわたって保存・管理する必要がある.
数100mまでの海水温を公表データから調べる必要があ
取付水準点から観測基準面(O.D.L)までの高度差は,国
る.海水温の上昇は,温暖化によるもののほか,地球の
土地理院海岸昇降検知センターの登録検潮所であれば,
自転等の影響により生じる数年から数十年周期の変動も
「験潮場取付水準測量成果集」,JODCの潮汐データ属性
ある.このうち,温暖化の影響による変動については,
資料に登録するよう,測量・点検記録を整備しておくこ
平均海面水位の検討対象となるので,海水温の影響を補
とで以後の保存・管理が可能である.ただし,登録検潮
正する場合には除去しないように注意する必要がある.
所でない検潮所では,各検潮所で継続的に整理・管理す
b) 風向・風速
ることが必要となる.取付水準点から観測基準面まで高
風向・風速の影響は,潮位観測地点の値だけでなく,
さ履歴情報を整理しておくことにより,検潮所の地盤変
周辺の値も影響を及ぼす.また,風向・風速は地形,地
動量の推定精度が向上することが期待できる.
表の状態の影響を強く受けるため,周辺の値を網羅する
ことが望ましいが,これは難しいため,周辺海域を代表
(6) トレンドの推定について
するような風が観測される地点を選択して観測値を得る
平均海面水位の年間上昇量を推定するには,回帰分析
ことが重要である.複数の風向・風速観測地点から代表
により推定する方法が一般的であるが,現状では観測期
地点を抽出する場合は,強風時における風向・風速を比
間が十分に長くない等の理由により,推定値の信頼性に
較して風向が周辺と一致し風速が大きい地点を選択する
留意して検討を行う必要がある.このため,今後も継続
ことが望ましい.
一般的に,風は,吹き寄せ効果として潮位偏差を正の
的に観測を行い,データの蓄積を行うことが重要である.
また,将来の海面変動を予測するにあたっては,将来
方向に拡大することが知られている.また.外洋におい
の地球温暖化の状況に大きく依存するので,このことに
てはコリオリ力が働くため.風が吹き去る方向の右手方
注意する必要がある.
向で潮位が高くなることが知られている(エクマン輸送).
房総半島から三陸海岸では北風,東海から四国にかけて
(7) GNSS測量による検潮所管理について
は東風が長期間吹き続けるとこの効果が大きくなるとさ
平均海面水位の解析には,高精度の連続的な地盤変動
れている.これらのことから,検潮記録の補正の際には,
データが必要であるが,そのデータを安価で入手し,長
その時点の風向・風速だけでなく経時的に現象・記録を
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国総研資料 No.855
(2) 検潮記録における同質データの確保について
検討する必要がある.
c) 波浪
平均海面水位の長期的な変動を解析するためには,検
波浪の影響は,wave set up (down)などの長周期成分の
潮記録を同一の方法で処理して,長期間にわたり保管す
水位変動による影響が検潮記録に現れる.長期間にわた
ることが重要である.こうしたデータの統一的な処理・
り有義波高の数%から10%程度の潮位上昇を引き起こす
管理を行うことで,観測期間全体にわたって検潮記録の
ことがあるので,平均海面水位の解析にあたり注意が必
同質性を確保し,長期海面変動の検討に活用することが
要である.冬期の日本海側の検潮所では,波浪の増大時
重要である.
にその影響が顕著になることが知られている.このため,
検潮記録とともに,こうした気象・海象現象に関する情
(3) 観測機器の維持管理について
報も併せて整理しておくことが望ましい.
観測機器の維持管理は,良質な検潮記録を取得する上
で重要な課題である.観測機器には様々な障害が生じる
(9) 海流の影響について
可能性がある.障害の例として,第一に,検潮記録に時
海流の影響は,3.3節で黒潮大蛇行の時期との関係に着
刻のずれがあった場合は,フロートのワイヤーを一度大
目し,蛇行時期に変動が大きくなる傾向がみられた.こ
きく沈めてデータに記録し,その時刻と実際の記録デー
れ以外にも影響を与えている可能性があり,補正方法の
タ上の時刻のずれをチェックして,時刻の修正を行う.
確立のためには,黒潮蛇行等の海流の変動から海面変動
修正時刻の見直しを行う場合があるので,その時の対処
を定量的に把握する手法の確立が今後の課題である.
方法を検潮記録と同様に記録保管しておくことが重要で
海流影響の把握にあたっては,気象庁や海上保安庁に
ある.第二に,検潮井戸内に真水が混入している恐れが
より蛇行時期等の資料が公表されている.本資料は,こ
ある場合は,密度差によるフロートの浮沈への影響が懸
の資料を基に,平均海面水位にどの程度影響があるかを
念されるため,塩分計により井戸内外の塩分に差がない
定性的に把握した.また,定量的な把握ができない現段
ことを確認する.この場合も,調査結果の記録保管が重
階では,黒潮等の蛇行時期の期間の潮位データを異常値
要である.第三に,調和解析の過程で調和定数の値が過
として除いて,トレンドを推定する手法も考えられる.
年度までと大きく異なる等の異常値が見つかった場合は,
今後は,海流データの時系列記録の蓄積・整理を行い,
導水管のつまり等,井戸の応答特性の変化が原因の場合
平均海面水位への影響について定量的な解析手法を確立
が考えられるので,早急に検潮井戸の点検を行う等の措
していくことが重要である.
置が必要となる.第四に,検潮器の入れ替え時等の場合,
計器の感度等の変化により検潮記録の連続性が保てなく
6.2 潮位観測データ等の整理と管理方法
なることがあるため,変更の際には新旧の計器を並行で
観測する期間を設けて,記録の連続性が確保できるかど
(1) 観測基準面関係図・測量記録整理について
うか確認してから旧計器による観測を廃止することが望
観測基準面関係図・測量記録整理を行う上で,O.D.L.
ましい.長期海面変動の検討ではミリ単位の変動の把握
とM.S.L.や T.P.の関係について確認を行い,近隣の検潮
が求められ,計器変更による誤差が影響する可能性があ
所のデータと比較し整合性を確認することが重要である.
るため,旧計器による観測を廃止する前に事前に十分な
このためには,観測基準面関係図に,当該年度で測定し
調査が必要となる.これらのことに留意しながら,観測
た港湾管理用基準面,錘測基点,球分体,基本水準標を
機器の維持管理を行っていくことが重要であると考えら
整理して図示するとともに,近隣の国土地理院の取付水
れる.
準点の高低差を図示して,当該検潮所のデータの整合性
を確認できるように,長期間にわたり記録を保存・管理
(4) 錘測定数の測定記録
することが重要である.
錘測定数の定期的な管理は,検潮所の維持管理におい
また測量記録については,一等水準点等,近隣の国土
て重要である.平均海面水位の解析にあたり,地盤変動
地理院が管理する水準点と検潮所の基本水準標を結ぶ測
量の推定に影響を及ぼすため,錘測定数の測定方法・結
量データを整理しておき,長期海面変動の検討に資する
果を記録に残すことが重要である.
台風通過後や,高潮,津波,低気圧通過の後などの際,
データとして長期間にわたりデータ管理・保管を行うこ
施設点検を兼ねて錘測定数の測定を行うことが望ましい.
とが重要である.
特に,地震等が発生した場合は,計器の破損や移動によ
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港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
り,錘測定数に変化が発生する可能性があるため,地震
を精度よく行うことができ,復旧工事の効率化に寄与で
発生後できる限り速やかに錘測定数の測定を行い,異常
きる可能性がある.
がないか確認を行うことが重要である.
<被災前>
<被災後>
(5) 検潮所の被災時対応のためのデータ管理について
検潮所
GNSS測量は,衛星からのデータをもとに楕円体高さ
球分体
を直接計測することにより,標高を計算できる.そのた
B
地面
A
め,常時に計測した楕円体高さから基準面との関係を整
被災地周辺の検潮所が損傷した場合,検潮所の復旧に向
A:球分体高(準拠楕円体上) GNSSで測量
B:球分体高(DL上)
C:DL面高(準拠楕円体上) A-B
けた基準面の高さの確認に活用できると考えられる.
図-6.2
被災時における検潮所復旧概念図を図-6.1に示す.被
災時に検潮所の機能を速やかに復旧するためにはDL面
高さ(図中のC)を確定することが必要である.このた
め,平時に楕円体上Cの値を被災前に確定し,被災後に
GNSS測量によりCの値を測定する.
被災前は,検潮所の球分体高(準拠楕円体からの高
さ)(図-6.1左のA)をGNSS測量で測定しAの値を求め
る.その後,DL面上からの球分体高さの測定を行い,
球分体高(DL上)から球分体高さ(準拠楕円体上から
の高さ)であるBの値を求め,DL面高さ(準拠楕円体か
らの高さ)である Cの値を求めておき記録・保管を行う.
被災後(右図)は,新B.M.(図中A’)の設置を行うた
め,新B.M.高さ(準拠楕円体上)をGNSS測量で求めた
あとに,被災前に確定していた楕円体上のDL面高Cの値
から新B.M.高さの値 A’の差分を計算し,新B.M高さ(DL
面上)B’を求める.この対応を行うことにより,元の検
潮所があった付近に新B.M.の設置を行うことができ,被
災前に決定していた楕円体上のDL面高さを基準とし,
簡易であるものの迅速に潮位観測を行うことができる.
2011年3月に発生した東日本大震災では,東北地方太
平洋側海域の多くの港湾で検潮所が被災を受けた.この
時は,周辺の水準点も隆起・沈降したこともあり,しば
らくの間,被災後の地盤高に対応した潮位が測定できな
くなった.このような場合に対して, GNSS測量により
球分体の楕円体高さを常時に管理しておくことにより,
被災時の基準点の損傷等による影響を最小限にできる
可能性が考えられる.沿岸部での被災時には,被災直後
の緊急物資を受け入れや,応急復旧のための海上工事を
実施するため,航路の水深確保が速やかに必要となる.
その際には,航路啓開前後の確認のための深浅測量,港
湾施設や海岸保全施設の復旧に向けた設計の基礎情報
としてDL面の確定等,潮位観測は重要な役割を担って
いる.このため,GNSS測量を活用して検潮所を被災後
速やかに復旧することができれば,標高測量や潮位測定
- 24 -
地面
B’
A’
DL
C
楕円体(GRS80)
理し,その記録を保存・管理することにより,災害時に
検潮所
新BM
DL
C
楕円体(GRS80)
A’:新BM高(準拠楕円体上) GNSSで測量
B’:新BM高(DL上) C-A’
C:DL面高(準拠楕円体上) 被災前に確定
被災時における検潮所応急復旧の概念図
国総研資料 No.855
6.3 平均海面水位の解析等に用いる既往資料
表-6.1には,気象・海象(潮位・気圧・海流)に関す
平均海面水位の解析およびその結果の検討にあたり,
る既往資料,表-6.2には,地盤変動(水準点・電子基準
各機関で公表されている資料を活用した.活用した資料
点等)に関する既往資料の一覧を示した.検潮記録を所
とその活用方法の詳細は,「6.1 平均海面水位変動の解析
有している各機関で平均海面水位の解析に必要なデータ
について」と,「6.2 潮位観測データ等の整理と管理方法
を全て網羅的に取得することは困難かつ非効率的である.
について」で例示したとおりである.ここでは,今後解
これらの情報を相互に参照するとともに,解析結果を共
析を行う上で参考のため,これらの資料の提供元,名称,
有することにより,長期海面変動の検討を効率的に行う
データ内容,解析上の用途などを一覧表としてまとめた.
ことが期待できる.
表-6.1
気象・海象(潮位・気圧・海流)関する既往資料
解析の用途例
データの内容
データ名称
提供元
備考
近隣検潮所の潮位との比較
潮位データ,属性データ
J-DOSS 潮汐データ
日本海洋データセンター
6.1(1)
近隣検潮所の潮位との比較
観測潮位(月平均)
潮位年報
国土地理院
海岸昇降検知センター
6.1(1)
気圧補正用のデータ
気圧(毎時値)
過去の気象データ
気圧データ
気象庁
6.1(2)
日本沿岸の海面水位の比較と参照
日本近海の海面水温の参照
黒潮,親潮,対馬海流の蛇行時期参照
海面水位
日本近海の海面水温
黒潮・親潮・対馬暖流
海洋の健康診断表 総合診断表
気象庁
第2版
検潮所ODLのTP高算定時に参照
球分体-取付水準点間の比高変化 取付水準成果表
6.1(3),(8),(9)
国土地理院
海岸昇降検知センター
6.1(5)
気象庁
6.1(8),(9)
海水温の参照
表面水温(季別)
海洋の観測解析データ
海水温データ
海流と表面水温の平面分布参照
海流図
水温水平分布図
海洋速報
海上保安庁
6.1(8),(9)
異常潮位時の潮位偏差と比較
定点水温(毎日値)
J-DOSS 定地水温データ
日本海洋データセンター
6.1(8),(9)
異常潮位時の潮位偏差と比較
有義波高(20分毎の値)
ナウファスの波浪データ
港湾空港技術研究所
6.1(8)
異常潮位時の潮位偏差と比較
灯台で計測した風向・風速
J-DOSS 風データ
日本海洋データセンター
6.1(8)
表-6.2
地盤変動(水準点・電子基準点等)に関する既往資料の一覧
解析の用途例
データの内容
データ名称
提供元
備考
地盤変動算定の妥当性の確認
平均水面とT.P.の関係
潮位表掲載地点一欄表
気象庁
6.1(4)
地震による地盤変動影響把握
発生時期,マグニチュード等
日本付近で発生した主な
被害地震
気象庁
6.1(4)
地盤変動量算定
電子基準点の地盤変動量
電子基準点日々の座標値
国土地理院
6.1(4)
地盤変動量算定
水準点標高の変動
水準点変動図
国土地理院
6.1(4)
標高の基準
取付水準点の標高,測量日等
水準点成果
国土地理院
6.1(4)
地盤変動量算定
検潮所近傍の断層
活断層データベース
産業技術総合研究所の活断
層・地震研究センター
6.1(4)
平均水面とT.P.の関係
平均水面,最高水面及び最低水
海上保安庁
面一覧表
地盤変動算定の妥当性の確認
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6.1(5)
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
7. 結論
mm/year(2.99〜5.72 mm/year)であった.酒田港は,ト
レンド推定結果が,-1.17mm/year(-2.55〜0.22 mm/year)
本研究では,長期検潮記録から潮汐,気圧とあわせて
地盤変動を除去した,平均海面水位を推定する方法を提
であり,トレンドの上昇または下降の傾向は明確でなか
案するとともに,代表的な港湾で平均海面水位を推定し,
った.
その変動特性を明らかにすることを目的とした.あわせ
留萌港と金沢港では他機関でのトレンドの推定値と同
て,得られた結果をもとに,長期海面変動を考慮したデ
程度であり,酒田港では,各機関でトレンドの上昇・下
ータ整理や管理に関するいくつかの留意点をまとめた.
降の結果と傾向が異なっていた.唐津港では,国土地理
その主な結論は以下のとおりである.
院と気象庁でのトレンド推定値の中間範囲であった.標
準誤差については,日本海側海域では0.35 mmから0.70
(1) 平均海面水位の解析方法
mmの範囲であった.これは,日本海側の傾向として,年
長期検潮記録から,長期的な海面変動に影響を及ぼす
間の潮位差が太平洋側よりも小さいため,ノイズ成分と
さまざまな要因(ノイズ成分)の影響を除去し,平均海
して最も大きな値を示す潮汐に由来する平均海面水位の
面水位を推定する手法の考え方と手順を示した.除去対
誤差が小さいためである可能性が考えられる.
象としたノイズ成分は,一般的に対象とされている気圧,
潮汐に加えて,港湾域でとくに変動が大きいと想定され
(4) 太平洋側海域の港湾での平均海面水位の変動特性
る地盤変動の 3 つの成分とした.地盤変動の補正にあた
太平洋側海域の6港湾で平均海面水位の変動特性を比
っては,直接水準測量による水準点変動量と電子基準点
較検討したところ,このうち4港湾でのトレンドと95%予
の変動量を組み合わせて補正する方法を設定した.
測区間はそれぞれ久慈港では3.53 mm/year (0.89〜6.17
mm/year ) , 久 里 浜 湾 で は 2.95 mm/year ( 2.27 〜 3.63
(2) 長期的な海面変動への潮汐・気圧・地盤変動等の影
mm/year),三河港では3.94 mm/year(0.31〜7.56 mm/year),
志布志港は2.86 mm/year(1.03〜4.68 mm/year)と推定さ
響の検討
平均海面水位の経年変動量に対するノイズ成分の影響
れた,何れの地点も明瞭な上昇傾向であった.須崎港と
を確認したところ,地盤変動は観測期間内(10 年から数
中城湾港では,トレンドの上昇,下降の傾向は,明確で
十年)に約 10 cm,気圧変動の変動幅は 15 hPa 程度であ
なかった.
り,平均海面水位の経年的な変動量とほぼ同じであった.
久慈港では,近隣の気象庁での推定結果と差異がみら
気圧変動は経年的な周期性を示すのに対して,地盤変動
れた.久里浜湾は,近隣の気象庁での推定結果と同程度
はその傾向が数日から数ヶ月単位で不規則に変動してお
であった.三河港では,各機関でトレンド推定結果と上
り,補正にあたってはこの変動を把握できる間隔で計測
昇・下降の傾向が異なっていた.須崎港,志布志港,中
されたデータを使用することが望ましい.また,天文潮
城湾港は,近隣の国土地理院でのトレンド推定結果と同
の影響は,振幅で数十 cm から数 m であった.これらの
程度であった.
ノイズ成分の除去した後の水位振幅の変動幅は,年間に
太平洋側海域の6港湾では,長期的な傾向をみると平均
数 cm 程度まで小さくなっており,潮汐・気圧・地盤変
海面水位は上昇しているが,その変動傾向は,港湾毎に
動の影響を考慮することにより,主要なノイズ成分は除
異なっていた.潮位振幅の差異や黒潮大蛇行等,それぞ
去できていると考えらえる.
れの地点毎に異なる外洋の気象現象が要因として影響を
このほかに長期的な海面変動に影響を与える要因とし
受けている可能性がある.
て,たとえば黒潮蛇行等の海流があげられるが,直接補
(5) GNSS 測量による検潮所高さ管理の現地調査
正することが困難であるため,定性的に評価する方法を
地盤変動量の補正のためには,観測間隔の短い電子基
示した.海流の影響の定量的評価は,今後の課題である.
準点等,GNSS 測量により得られた変動量を活用するこ
(3) 日本海側海域の港湾での平均海面水位の変動特性
とが望ましい.このため,既存の検潮所において GNSS
日本海側海域の4港湾で平均海面水位の変動特性を比
測量を行い,直接水準測量による結果と比較して,その
較検討したところ,このうち3港湾で上昇傾向が明瞭にみ
測量精度を確認した.
られた.この3港湾のトレンド推定結果と95%予測区間は,
GNSS 測量の導入のためには,今後,他の検潮所にお
それぞれ留萌港 3.67 mm/year (2.99〜4.36mm/year),金
いても,直接水準測量による測量結果に対して,その期
沢港 2.78 mm/year(1.36〜4.21 mm/year),唐津港 4.35
間の間に「検潮所高さを補間」することが精度よくでき
- 26 -
国総研資料 No.855
ているか確認し,その精度を検証することが重要である.
ることが重要である.このためには,検潮所の取付水準
そして,GNSS 測量による高さと直接水準測量による高
点等各基準面での高さの確認が重要であり,GNSS測量結
さの関係を測量履歴や潮位関係図等で明確に整理を行い,
果の整理・蓄積により被災後の確認が容易にできる可能
双方の結果を蓄積し,相互に比較しながら,適切な検潮
性がある.また,被災時に港湾は,物資の輸送拠点とな
所高さを管理する方法を検討することが必要である.
ることから,港湾施設の早期復旧が求められる.その際
にも,検潮所の潮位観測機能を確保し,基準面を適切に
(6) 長期海面変動を検討する際の検潮記録等整理に関
与える手法の技術的な検討が重要である.
するいくつかの留意点
(2015年6月1日受付)
本資料で取り組んだ内容をもとに,長期海面変動を検
討する際の検潮記録等の整理に関するいくつかの留意点
謝辞
を,下記のようにまとめた.はじめに,解析の各段階で
本研究の実施にあたり,九州大学大学院工学研究院 橋
の課題とその対応や留意点を示した.次に,長期海面変
本典明先生,一般社団法人水底質浄化協会 村上和男先生
動の検討にあたって,長期間のデータを精度よく管理す
には,有用なご助言や貴重なご意見を賜りました.国土
る必要があるが,具体的なデータ整理・管理の方法とそ
交通省 各地方整備局,北海道開発局,内閣府 沖縄総合
の留意点を示した.最後に,データの補正や解析結果の
事務局の関係各位には各検潮所関連の調査データ等の各
比較のために,他機関のさまざまな気象・海象の現象や
種の資料提供を賜りました.気象庁 地球環境・海洋部 海
地盤変動のデータを使用したが,その入手にあたっての
洋気象情報室 白石昇司主任技術専門官には,海面水位の
参照先や公表内容等の留意点を整理して示した.
データ提供を賜りました.国土交通省 九州地方整備局 唐
津港湾事務所と中部地方整備局 三河港湾事務所の関係
8. あとがき
各位には,現地調査の実施において多大なご協力を賜り
気候変動にともなう平均海面変位上昇の影響が問題と
ました.国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部
されており,日本沿岸での平均海面水位の変動を明らか
鈴木武部長,熊谷兼太郎主任研究官,秋山吉寛研究官,
にし,適応策の検討に資することは有用であると考えら
片岡智哉研究官からは貴重なご意見・ご助言をいただき
れる.ただし,現状では観測期間が短いなどの理由によ
ました.ここに記して深甚なる謝意を表します.
り,把握された平均海面水位の変動には不確実性がとも
なうので,今後も引き続きデータの蓄積を図りながら,
変動の傾向に対する知見を深めていく必要がある.そこ
参考文献
でここでは,港湾での平均海面水位の長期的なトレンド
岩崎伸一,松浦知徳,渡部勲 (2002): 地殻変動を除去し
を推定するにあたっての,今後の課題について述べる.
た長期海水位変動と海面水温の関係-本州沿岸域―,
第一に,長期間にわたり同質の検潮記録を整理・保管す
海の研究,Vol.11,第 5 号,pp529-542.
ることや,日々の保守・点検や取付水準点から観測基準
海上保安庁 (2014):水路測量業務準則施行細則., http://ww
面の高さ管理等の調査を継続的に行うことが,重要であ
w1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/SHIDOW/site
る.また,検潮記録と同時期での地盤変動量の継続的な
0013/_userdata/saisoku.pdf
監視が,平均海面水位のトレンドを推定する上で重要で
気象庁 (2013a):海洋の健康診断表 総合診断表第 2 版,,h
ある.地盤変動量の監視手法の確立は,今後の技術的な
ttp://www.data.jma.go.jp/kaiyou/shindan/sougou/index.
課題である.当面は,GNSS測量による手法を導入しつつ,
html,気象庁 HP.
気象庁 (2013b):過去の気象データダウンロード,http://
測量データの蓄積を図り,技術の進展に伴い改良してい
くことが望まれる.第二に,海流や波浪・風等の現象を
www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/,気象庁 HP.
定量的に除去する手法の確立が重要である.海流や波浪
気象庁 (2015):震災後の地盤変動に伴う天文潮位の見直
は,平均海面水位の変動に直接的・間接的に影響を及ぼ
しについて ,http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/d
す現象であることから,蓄積された観測データや各機関
b/tide/suisan/astrev2015.html,気象庁 HP.
で公表しているデータを参照し,長期海面変動の傾向と
国土地理院 (2013a) :一等水準点検測成果集録 水準点変
の関係を明らかにしていくことが重要である.第三に,
動図閲覧ページ, http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/level/KE
地震・津波などによる被災後に,速やかに検潮所が復旧
NSOKUSYUROKU/,国土地理院 HP.
国土地理院 (2013b) :海岸昇降検知センター登録検潮所
できる体制を構築し,連続的なデータの取得を可能とす
- 27 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
一覧,取付水準成果表,http://cais.gsi.go.jp/cmdc/cen
ter/itiran.html,国土地理院 HP.
国土地理院 (2013c):公共測量におけるセミ・ダイナミッ
ク補正マニュアル,国土地理院技術資料 A1-No.342.
国土地理院 (2013d):電子基準点データ提供サービス
http://terras.gsi.go.jp/,国土地理院 HP.
国土地理院 (2014):GNSS 測量による標高の測量マニュ
アル,国土地理院技術資料 A1-No.368.
http://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/ssp/download.ht
ml
国 土 地 理 院 (2015a) : 基 準 点 成 果 等 閲 覧 サ ー ビ ス ,
http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/lt/index.aspx
国土地理院 (2015b):セミ・ダイナミック補正,
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/semidyna/ , 国土地理院 HP.
兒玉篤郎,宮原伐折羅,河和宏,根本悟 (2014),ジオイ
ド・モデル「日本のジオイド 2011」(Ver.1)の構築,
No126,pp67-85,国土地理院時報.
櫻井敬三,小西達男 (2005):日本沿岸の海面水位の長期
変動特性,測候時報,Vol.72,pp7-16.
檀原毅 (1970):日本における平均海面の永年変化とそれ
にともなう問題点について,測地学会誌,Vol.16,
No.1,pp.1-8.
独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・地震研究セン
ター (2014):「活断層データベース」, https://gbank.gs
j.jp/activefault/index_gmap.html .
永井紀彦,菅原一晃,渡邊弘,川口浩二 (1996):久里浜
湾における長期検潮記録解析,港湾空港技術研究所
報告,Vol.35,No.4,pp.3-35.
永田豊 (1981):海流の物理,海の中の風と嵐,ブルーバ
ックス,講談社,120p
村上和男,山田邦明 (1992):我国沿岸の潮位と平均海面
の変動の解析,港湾空港技術研究所報告,Vol.31, No3,
pp.37-70
三浦優司,川元智司 (2013),験潮所の GPS 連続測定を用
いた潮位データの解析手法の検討,No23,pp21-33,
国土地理院時報.
IPCC (2014):気候変動に関する政府間パネル第 5 次評価
報告書 第 1 作業部会報告書政策決定者向け要約,気
象庁訳.
- 28 -
国総研資料 No.855
付録-A
検潮所の概要
所の位置は国土交通省港湾局資料より入手し,電子基準
点の位置は国土地理院の「基準点成果等閲覧サービス」
付録-A は,今回対象とした 10 港湾の検潮所の位置と
(国土地理院,2015a)より入手した.検潮所周辺地域の
2.3 節および 3.2 節で検討に使用した電子基準点および断
活断層データは,独立行政法人産業技術総合研究所の活
層の位置を示すものである.表-A.1 に各検潮所の位置座
断層・地震研究センターが取りまとめた「活断層データ
標を示し,図-A.1 から図-A.10 に検潮所,電子基準点お
ベース」(独立行政法人産業技術総合研究所,2014)か
よび断層の位置を示す.
ら入手した.
ベースの地図は,国土地理院の電子地図を使用し,検
潮所,電子基準点,断層の位置を重ね合わせて作成した.
図中の記号は下の凡例に示すとおりである.なお,検潮
表-A.1
各港湾での検潮所位置
対象港湾 (検潮所位置)
留萌港
酒田港
金沢港
唐津港
久慈港
久里浜湾
三河港
須崎港
志布志港
中城湾港
(43゚57'02''N、141゚38'06''E)
(38゚55'03''N、139゚49'25''E)
(36゚37'04''N、136゚36'10''E)
(33゚28'01''N、129゚57'42''E)
(40゚11'22''N、141゚48'01''E)
(35゚13'39''N、139゚43'16''E)
(34゚44'00''N、137゚19'13''E)
(33゚23'14''N、133゚17'33''E)
(31゚28'30''N、131゚06'32''E)
(26゚19'38''N、127゚50'22''E)
・国土交通省港湾局資料を参考にして作成
- 29 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
図-A.1 留萌港と周辺の電子基準点・断層位置図
図-A.2 酒田港と周辺の電子基準点・断層位置図
- 30 -
国総研資料 No.855
図-A.3 金沢港と周辺の電子基準点・断層位置図
図-A.4 唐津港と周辺の電子基準点・断層位置図
- 31 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
図-A.5 久慈港と周辺の電子基準点・断層位置図
図-A.6 久里浜湾と周辺の電子基準点・断層位置図
- 32 -
国総研資料 No.855
図-A.7 三河港と周辺の電子基準点・断層位置図
図-A.8 須崎港と周辺の電子基準点・断層位置図
- 33 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
図-A.9 志布志港と周辺の電子基準点・断層位置図
図-A.10 中城湾港と周辺の電子基準点・断層位置図
- 34 -
国総研資料 No.855
付録-B
電子基準点による地盤変動量
子基準点での座標値から計算した地盤変動量を示す.地
盤変動量は,図-B.1に示しており,凡例中の地名はそれ
付録-Bは,第2章2.3節および第3章3.2節で使用した電子
ぞれの電子基準点の名称を示す.
基準点の選定にあたり,比較に用いた各検潮所近傍の電
金沢港近傍の電子基準点地盤変動量 留萌港近傍の電子基準点地盤変動量 10
5
地盤変動量(cm)
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-5
-10
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JJ J C
C
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増毛
小平
2005
2010
-10
1995
2015
唐津港近傍の電子基準点地盤変動量 地盤変動量(㎝)
5
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2005
2010
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0
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2005
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葛巻
久慈
2015
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地盤変動量(㎝)
5
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-5
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2000
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5
-10
1995
2015
10
地盤変動量(㎝)
地盤変動量(㎝)
-5
2010
三河港近傍の電子基準点地盤変動量 10
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-5
1995
2015
久里浜湾近傍の電子基準点地盤変動量 5
2000
15
CC
C
C
C
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C
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CC
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C
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C
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C
C
C
C
C
C
C
C
C
-10
内灘
久慈港近傍の電子基準点地盤変動量 E
地盤変動量(㎝)
10
2000
0
-5
-15
1995
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J
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2000
2005
2010
2015
中城湾港近傍の電子基準点地盤変動量 10
E
月平均潮位(cm)
5
0
-5
-10
1995
H
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北谷
J
沖縄石川
C
知念
H
宜野座
知念
2000
2005
2010
*図中凡例下の地名は,地盤変動量の計算
に用いた電子基準点の名称を示す.
2015
図-B.1
検潮所近傍の電子基準点による地盤変動量
- 35 -
港湾の長期検潮記録から地盤変動を除去した平均海面水位の推定とその変動特性
/内藤了二・淺井正・川口浩二・猪股勉・辰巳大介・成田圭介
付録-C GNSS測量を用いた検潮所高さ管理に関する
現地調査の概要
C.1
現地調査の概要
付録-Cは,第5章で実施した現地調査の概要を示す.図
-C.1には,1.に図-5.1のGNSS測量概念図に示す各箇所の
写真を示し,2.に錐測定数の測定記録を示す.なお,2.
の表中の計測項目は,図-2.2に示すとおりである.
1.GNSS測量
三河港検潮所
GNSS測量機器設置
測量記録状況
測量結果の記録
検潮器
2.錘測定数の測定記録
三河港 検潮所
既定値(m)
測定年月日 : 平成 27 年 2 月 14 日
7.743
回
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
時 間
13時42分
13時47分
13時52分
13時57分
14時02分
錘測尺の読み
5.090
5.110
5.120
5.140
5.150
験潮器の読み
2.501
2.506
2.505
2.507
2.507
浸水紙の読み
0.154
0.126
0.118
0.096
0.085
計
7.745
7.742
7.743
7.743
7.742
平 均
(=測定値)
7.743
既定値-平均値
0.000
記 事
験潮器の読みは、「A/Dコンバータ値」である
錘測定数測定
図-C.1 検潮所 B.M.の GNSS 測量と錘測定数の測定状況
- 36 -
国土技術政策総合研究所資料
TECHNICAL NOTE of N I L I M
No. 855
編集・発行
June 2015
C国土技術政策総合研究所
本資料の転載・複写のお問い合わせは
〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬 3-1-1
管理調整部企画調整課
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