訪問栄養指導の活動報告と今後の課題

は じ め に
当薬局では、在宅医療専門クリニックと提携して
訪問栄養指導を行い、在宅医療に携わってきた。
在宅医療のニーズが高まるなか、訪問栄養指導
が浸透していないのが現状である。
【目的】
訪問栄養指導の活動と必要性について考察し、
今後の訪問栄養指導の展開について考える。
【方法】
目的を達成できた6例の指導内容を検討する。
症例① 67歳女性 慢性腎不全
(月1~2回/6ヶ月)
目的:高血圧予防の減塩指導
問題点:介護者の減塩に関する知識不足
実施内容:栄養摂取量の算出、取り組み内容の
確認(減塩)、レシピ紹介、市販品の活用
結果:取り組んでいる減塩方法が有効である事が
分かり自信に繋がった <配布資料の一例>
その後も血圧安定
症例②57歳男性 多系統萎縮症
(月1回/3ヶ月)
目的:多系統委縮症による体力低下予防
問題点:ミキサー食によるエネルギー不足
実施内容:栄養摂取量の算出
取り組み内容の確認(エネルギーアップ)
調理法・食材の提案
結果:摂取エネルギー+300~400kcal
コーヒーには
体重51.7kg→53.7kg
フレッシュを追加
+
体力維持
栄養バランスを確認でき、安心感を与えた
症例③71歳男性 慢性腎不全
(月1回/1年3ヶ月 継続中)
目的:腎機能悪化予防のための減塩指導
問題点:減塩の必要性を感じていない
<介入前>
塩分1日
20g
<介入直後の食事>
朝
昼
後から醤油をかけて食べている料理。 1日あたり約大さじ2=塩分約5.g
夕
実施内容:栄養摂取量の算出
減塩醤油・塩の活用
減塩の必要性と方法を繰り返し指導
結果:塩分摂取量20g→9g
腎機能維持 eGFR26.1→27.6(1年間)
血圧安定
<介入前>
<介入後>
塩分1日
20g
塩分1日
9g
朝
症例④84歳男性 COPD 脳梗塞後
(月1~2回/1年)
目的:低栄養改善と誤嚥予防の為食形態見直し
問題点:介護者の嚥下食に関する知識不足
実施内容:栄養摂取量の算出
食形態・高エネルギー高たんぱく食の指導
市販品の活用
結果:摂取エネルギー+200~500kcal、Alb3.5→3.9
体重50kg→54kg、市販品活用で介護負担軽減
介入時誤嚥なし ミキサー食に追加
症例⑤82歳男性 COPD イレウス
(月1~2回/1年1ヶ月)
野菜中心、腹八分目
目的:COPDによる体重減少防止
問題点:病態に適した食事療法をしていない
実施内容:栄養摂取量の算出
味噌汁に追加
病態に応じた食事療法の説明
高エネルギー高たんぱく食の指導
栄養補助食品の活用
結果:摂取エネルギー+200~500kcal
体重35.6kg→39.4kg
10時、15時、
寝る前の間食
症例⑥80歳男性 糖尿病
(月1~2回/1年1ヶ月 継続中)
目的:血糖コントロール
問題点:独居、間食の把握が難しい
自販機で甘い缶コーヒー
を買って飲んでるみたい。
飴買ってきてと
よく言われます。
飴はなければ食わん。
夕食は1品だけで良い。
患者
冷凍庫の食パンの枚数が
減っているので、
夜中に食パンを焼いて
食べているようです。
ケアマネージャー、ヘルパー
実施内容:栄養摂取量の算出
生活習慣の確認
高血糖の原因調査
多職種への間食指導
結果:多職種の協力体制構築
高血糖の原因である生活習慣・間食の改善
HbA1c9.1→6.7
介入開始
飴1日5個まで
HbA1c
10.6
9.6
飴1袋食べていた
5個に調整
パンを隠す
9.6
9.4
無糖コーヒーを
冷蔵庫に用意
9
8.6
夜中にパンを
食べている
事が判明
7.6
8.3
7.4
6.7
6.6
6.7
6.6
6.5
6.7
7.2
6.8
正常範囲
5.6
4.6
2014年1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
12月
2月
考
察
<訪問栄養指導のニーズ>
栄養補給をしっかり行い栄養障害を進行させたくない
(日本栄養士会雑誌,第55 巻,2012.)
<訪問栄養指導の強み>
①食・栄養の継時的評価が出来る
②生活に合わせた提案・フォローが出来る
③隠れた問題点に気づき、周りと連携して対策を
立てることが出来る
④患者の栄養面、家族・介護スタッフのサポートが出来る
=食に関する相談役
医師、看護師へ伝え、普及に繋げる
結
語
①訪問栄養指導で目的を達成できた6例の指
導内容を報告した
②訪問栄養指導は「食に関する相談役」である
③訪問栄養指導の活動を
知ってもらう事で、
依頼増加に繋げていきたい