フィリップレポート: HABITA CRAFT株式会社(1427)

2015 年 9 月 16 日
HABITA CRAFT (1427)
フィリップ証券株式会社
連結会計初年度の 2015/6 期は黒字確保
2016/6 期会社計画は大幅増収増益を見込む
TOKYO PRO Market | 住宅建設 | 業績レビュー
BLOOMBERG 1427 JP | REUTERS 1427.T

連結会計初年度の 2015/6 期は、売上高が 17.01 億円(会社計画 14.00
億円)、営業利益は 46 百万円(同 31 百万円)、経常利益が 28 百万
円(同 30 百万円)、当期純利益が 38 百万円(29 百万円)となっ
た。

株式会社エムケーを買収し収益規模が拡大。2015/6 期は単独会計で
あった 2014/6 期の赤字から黒字に転換した。2015/3 には東京支店を
開設し、都内の案件も既に受注している。

2016/6 期の会社計画は、売上高が前期比 41.1%増の 24.00 億円、営業
利益は同 2.9 倍の 1.35 億円、経常利益が同 3.6 倍の 1.00 億円、当期
純利益は同 5.3%増の 40 百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。
What is the news?
連結会計初年度となった 2015/6 期は、売上高が 17.01 億円(会社計画
14.00 億円)、営業利益は 46 百万円(同 31 百万円)、経常利益が 28 百
万円(同 30 百万円)、当期純利益が 38 百万円(29 百万円)と売上高、
営業利益が会社計画を上回った。2014/10 に買収し、子会社化した株式会
社エムケーの収益寄与や太陽光工事の大型案件受注などが奏功した。単
独会計であった 2014/6 期の赤字から 2015/6 期は黒字に転換。2015/3 に
は東京支店を千代田区麹町に開設。都内の中規模マンションの案件を既
に受注している。なお、将来の全国展開及び海外進出を見据え、
2016/1/1 付で商号(会社名)の変更を予定している。
How do we view this?
2016/6 期の会社計画は、売上高が前期比 41.1%増の 24.00 億円、営業
利益は同 2.9 倍の 1.35 億円、経常利益が同 3.6 倍の 1.00 億円、当期純利
益は同 5.3%増の 40 百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。
住宅業界は、資材価格の高騰、建築従事者の減少に伴う労務費の上昇
に加えて競合他社との価格競争など厳しい環境が続いている。しかしな
がら、今期も宅地造成など宮城県での大型案件受注などもあって会社側
は大幅な収益拡大を見込んでいる。現在、同社提携先で住宅ブランド
「HABITA」を展開する工務店は全国に 230 社程度あり、主力の北関東の
ほか全国進出に向けて事業展開エリアの拡張を進めている。また、将来
はアジアなど海外進出も検討している。
配当予想(円) 0.00
株価(円)
510
(会社予想)
2015/9/16(基準値)
会社概要
注文住宅事業が同社の主力事業。事業エリアは、群馬
県を中心とした北関東地区、東日本震災後に復興住宅
の需要が見込める東北地区(主として宮城県)。
団塊ジュニア世代など、一次取得者をター ゲッ トに、地
域密着型の営業を展開。折込チラシ 等による広告宣伝
活動によりモデルハウスへの誘導を行う一方で 、当社顧
客の新築完成見学会を活用することで新規見込み顧客
の開拓をしている。
社名の一部となっ ている「HABITA」とは、同社取締役
会長兼社長で ありMISAWA ・international 株式会社を運
営する三澤千代治氏(ミサワホー ム創業者)が提唱する
住宅コ ンセプ ト 。「HABITA 」は5年連続とな る2012年度
グッドデザイン賞を受賞している。
2014/10に株式会社エムケーの株式を取得し、子会社
化。2015/3には東京都千代田区麹町に東京支店を開設
した。
企業デ ー タ
(※)東証マザーズ指数は相対株価
円
800
株
120
100
700
80
600
60
40
500
20
400
2013/7
2013/10
出来高(右軸)
2014/1
HABITA CRAFT( 左軸)
2014/4
0
2014/7
東証マザーズ指数(左軸)
(出所:Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
主要株主(2014/12/31)
1.高橋 哲雄
2.三澤 千代治
3.和佐田 勝正
(%)
37.88
35.40
5.31
(出所:会社公表資料をもとにフィリップ証券作成)
業績推移
事業年度
2013/6
2014/6
2015/6
2016/6F
売上高(百万円)
経常利益(百万円)
当期純利益(百万円)
EPS(円)
PER(倍)
BPS(円)
PBR(倍)
配当(円)
配当利回り(%)
513
-7
-5
-13.53
168.09
3.03
0.00
0.00
814
-120
-128
-116.37
51.72
9.86
0.00
0.00
1,701
28
38
34.88
14.62
97.98
5.21
0.00
0.00
2,400
100
40
27.33
18.66
0.00
0.00
ア ナリスト
庵原 浩樹
hi roki .iha ra @phi l l i p.co.jp
+81 3 3666 6980
(※)2015/6期より連結会計開始、2014/6期以前は単独会計のため連続性はない
(出所:会社公表資料をもとにフィリップ証券作成、F=予想は会社計画)
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HABITA CRAFT
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2010 年に高崎市で建築請負業
として創業
■会社沿革~平成 22 年創業の地域密着型住宅建設会社
図表 1 【事業沿革】
年 月
沿 革
平成22年10月 群馬県高崎市に建築請負業を目的として株式会社昭和クラフト
を設立
平成23年2月
平成23年5月
平成24年2月
建設業免許を取得して注文住宅事業を開始
本店を群馬県伊勢崎市に移転
MISAWA・international株式会社とHABITAブランド使用に関す
る契約を締結
平成24年9月 商号をHABITA CRAFT株式会社に変更
平成24年10月 東北地区への事業拡大に向けた東北本店(準備室)を宮城県
仙台市太白区に開設
平成25年3月
平成25年7月
平成25年8月
平成26年10月
平成27年3月
宅地建物取引業の免許を取得し建売事業を開始
東京証券取引所「TOKYO PRO Market」に株式上場
宮城県仙台市宮城野区へ店舗開設
株式会社エムケーの株式を取得し子会社化
東京都千代田区麹町に東京支店開設
(出所:会社公表資料をもとにフィリップ証券作成)
「HABITA」のブランド力による資
産価値の高い住宅提供に注力
■資産価値に重きを置いた「HABITA」ブランドを中心に展開
2012/2 に MISAWA・international 株式会社との「HABITA」ブランド使用に関する契約
締結により「HABITA」のコンセプトを受継いだ、販売坪単価 50 万円台の「HABITA Junio
r」ブランドの販売を開始し、幅広い顧客層のニーズに対応した住宅を提供している。注文
住宅事業は、団塊ジュニア世代などの一次取得者をターゲットとして、モデルハウスを中
心とした地域密着型の営業を展開している。従来のローコストによる低価格帯住宅を中心
とした戦略を転換し、同社では現在「HABITA」のブランド力による資産価値の高い住宅の
提供に注力している。
2013/3 には宅地建物取引業の免許を取得しており、建売住宅事業の強化も推進して
いる。土地の仕入から、造成、企画、設計、施工、販売、アフタサービスまでのシステムを
構築することで、事業の効率化を図り、建築コストを低減していく意向。2016/6 期は宮城
県で宅地造成の立地開発を行う大型案件を受注している。良質で付加価値の高い物件を
供給し、地域ごとの供給量を適切に保持しながら事業を拡大している。東日本大震災後に
復興住宅の需要が見込める東北地区(主として宮城県)への営業を 2012 年秋頃から準備
を始め、同地域での認知度も向上し受注残高が増加している。
図表 2 【注文住宅の事業系統図】
売買契約
顧客
注文住宅
発注
HABITA
CRAFT
工事
品質管理
外注
業者
(出所:会社資料をもとにフィリップ証券作成)
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HABITA CRAFT
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提携の全国約 230 社の工務店
で「HABITA」ブランドを展開
■「HABITA」について
「HABITA」とは、同社の取締役会長兼社長であり MISAWA・international 株式会社を
運営する三澤千代治(ミサワホーム創業者)氏が、地球環境の側面から提唱する「200 年
住める住宅」のコンセプトである。三澤会長は日本の住宅寿命が約 30 年と短く、新規に住
宅を建築しては一代で取り壊し廃棄している住宅業界の現状に疑問を持ち、将来の世代
にわたり住み続けたくなるような住宅づくりに取り組んでいる。
日本で代々受け継がれている古民家をモデルに、重量感のある 5 寸角柱の国産材を
使用して耐久性を高めるとともに、日本の歴史・伝統に根ざした流行に左右されないシン
プルモダンなデザイン性を有しつつ、太陽光発電システム等の再生可能エネルギーを活
用した新しい住宅モデルである。現在、同社の提携先である工務店は全国に約 230 社を
数え、「HABITA」ブランドを展開している。
図表 3 【HABITAの概念・ビジネスモデルと内装】
(出所:会社資料)
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HABITA CRAFT
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図表 4 【HABITA Junior の概観】
(出所:会社資料)
展開エリアを広げ、M&A も視野
に事業拡大を推進
■成長戦略
主戦場の群馬県では人口減少
に歯止め、他地域への全国展
開、海外への進出も視野に
■市場動向について
同社はこれまで、注文住宅を主力に低価格を強みとして業績を拡大してきた。今後、成
長戦略として①「建売住宅事業の拡大」、②「HABITA Junior ブランドの強化」、③「営業
地域の拡大」を掲げ、事業拡大を図る。また、北関東地区、東北地区を中心としてテレビ、
ラジオ、インターネット媒体等を通して、同社知名度の一層の向上に取り組んでいる。ま
た、2015/6 期より東京都内で中規模マンションの案件を受注。2016/6 期には宅地の造成
など立地開発の取り組みを行っており手掛ける事業は多様化している。
2014/10 には株式会社エムケーを買収し、北関東における販売力を強化し事業規模が
拡大している。同社は今後も M&A を視野に入れた収益拡大を目指している。
①
「建売住宅事業の拡大」
注文住宅事業で蓄積した設計ノウハウ、業務の効率化、施工原価の低減、工期の短縮
による建築コストの低減等を建売事業にも活用している。販売数量の増加に伴いコスト低
減を図り、建売住宅事業を拡大していく。
②
「HABITA Junior ブランドの強化」
国産材、構造体を見せる「現し(むき出し)」が基本で、4 寸角柱を使用するなど独自の
コンセプトにより他社との差別化を図っている。これまで未開拓であった低価格住宅と大手
ハウスメーカーの間に位置する中間顧客層を積極的に開拓することで、利益確保を目指
す。
③
「営業地域の拡大」
営業地域を拡大するため、2013/4 に群馬県高崎市にモデルハウスを建築(図表 4)。
主力の北関東や東北エリアのほか、東京支店を足掛かりに営業地域の拡大を進めてお
り、市場シェア拡大を目指している。営業拡大に伴う人材確保を図り、価格競争力を持っ
た高品質の住宅の提供を推進していく。将来はアジアなど戸建て事業の海外進出も視野
に入れている。
同社の主力市場である群馬県の人口は 2004 年の 203.4 万人をピーク(図表 5)に減少
傾向を辿り 2012 年で 200 万人を割り込んだ。しかし、その後増加基調を辿っており、2015
年現在で 200 万人台を回復している。
世帯数は 2012 年で 77 万世帯、2015 年には 81.5 万世帯と過去最高水準となってい
る。ただ、一世帯当たり人員は 3 人を割り込み減少傾向が続いている。核家族化や単身
世帯の増加がみてとれる。図表 6 にある通り、新設住宅着工数は足元、月間 1,000 戸を
超えて推移している。図表 7 の 2014 年のデータは、消費税増税の影響を受け戸建住宅
の着工数が落ち込んでいるが、足元は回復しているものと思われる。
新規参入の同社は主力市場の群馬県や宮城県を中心に、ローコストや「HABITA」ブラ
ンドを強みに、同業からのシェアを獲得し事業が拡大していると考えられる。また、宮城県
や東京都など群馬県以外の地域での市場開拓の余地があるものと考えられる。同社は全
国での事業展開を進めており、将来はアジアなど海外への進出も視野に入れている。
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HABITA CRAFT
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図表 5 【人口は減少に歯止めがかかり、世帯数は増加】
万人
206
万世帯
2015年
85
81.5万世帯
80
群馬県の世帯数と人口の推移
2004年
203.4 万人
204
202
75
200
70
2012年
199.2万人
198
196
65
194
世帯数(右軸)
60
192
人口(左軸)
55
50
1990年
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
190
(出所:総務省統計局、群馬県統計課のデータをもとにフィリップ証券作成)
図表 6 【足元月間 1,000 戸超と回復基調で推移する新設住宅着工】
群馬県の新設住宅着工戸数推移(月次ベース)
戸
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
24年度
25年度
26年度
27年度
0
4
月
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
(出所:群馬県企画部統計課のデータをもとにフィリップ証券作成)
戸
12,000
10,000
図表 7 「群馬県の戸建住宅の推移(年次ベース)」
群馬県の持家+分譲一戸建ての新設住宅着工数
10,126
10,468
8,644
8,000
6,000
4,000
2,000
0
(※)「持家」:建築主が自分で居住する目的で建築するもの。
「分譲・一戸建て等」:建て売り又は分譲の目的で建築する もので、1つの建物が1住宅であるもの。
(出所:群馬県統計課のデータをもとにフィリップ証券作成)
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厳しい業界環境だが、差別化を
図り収益拡大を目指す
■リスク及び課題などについて
住宅業界は、認可取得など新規参入における事業障壁は高いものの、大手ハウスメー
カーから中堅企業、個人事業者に至るまで既存の競合他社は多く、競争環境は激しい状
況にある。
同社は、主力市場として群馬県、宮城県に拠点を置き、販売価格帯が坪単価 50 万円
台を中心とする戸建て住宅事業を展開しており、競合相手は地元の中堅・中小業者の
他、大手ビルダーとなっている。競争環境は厳しいが、同社は資産価値に重きを置いた戦
略で他社との差別化を図っている。また、宮城県においては引き続き復興需要により住宅
の供給不足が生じており、事業拡大の機会はある模様。
また、受注案件が増えている首都圏案件に対応し、更なる拡大を目指して東京都千代
田区に支店を開設。2015/6 期には都内の中規模マンションの案件を受注している。首都
圏での事業は活況で、競争は厳しいものの中規模案件の受け手が少ないため同社は競
争優位な状況にあるようだ。ただ、震災復興需要や景気回復などに伴い、大工や左官等
の専門技能を持つ職人の不足が深刻化することで労務費の上昇、建築工期の遅延、完
成工事粗利益の低下が生じている。このような状況は、業績に影響を与える可能性があ
る。
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【レポートにおける免責・注意事項】
本レポートの発行元:フィリップ証券株式会社 〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町4番2号
TEL:03-3666-2101
URL: http://www.phillip.co.jp/
本レポートの作成者:公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 庵原浩樹
当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。 記載されている内容は投
資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関
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1.本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
2.当社は、東京証券取引所の定める「特定上場有価証券に関する上場規程の特例」(以下「特例」)第102条の規定に
基づき、発行会社の担当 J-Adviser に就任する旨の契約を締結いたしております。また、当社は、「特例」第135条に定
める流動性プロバイダーであり、発行会社株式の円滑な流通の確保に努めるほか、流動性プロバイダーとしての義務を
負っております。
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