Course2 - 国立天文台 光赤外研究部

すばる中秋の名月の学校 2015 Course 2「徐かなること林の如し 近傍銀河」 コースガイド
2015/9/28-­‐10/1 国立天文台 小宮山 裕
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近傍銀河研究の背景
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恒星進化理論の進展 –  恒星の進化の理解が進み、観測量(測光・分光)と星(星団)の性質(年齢や金属量など)を結びつ
けることができるようになった。特に銀河系の球状星団や散開星団の理解が進んだ。 –  カギとなるのが HR図 (または色等級図)。 球状星団 (M3)
散開星団 (Pleiades)
恒星の 進化経路
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観測技術の発達
–  望遠鏡の大口径化や CCD 等検出器の高感度化でより暗い天体まで観測が可能になった。 –  ハッブル宇宙望遠鏡を筆頭に高解像観測が可能になった。 –  銀河系を超え、Local Group の銀河なども解像できるようになり、近傍銀河研究に新しい道が開けた。
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等時曲線 (isochrone)
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恒星の進化を追うことで、生まれてからある時間が経った状態で様々な質量を持
つ恒星がHR図上のどこに来るかを計算することができる。 Bertelli et al. 2008
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近傍銀河研究例
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銀河を星団の集合体としてとらえ、実際のデータと理論から求まる等時曲線
(isochrone)との比較することにより、銀河がどのような星種族で構成されているか
を解き明かしていく銀河の星生成史 Cetus (Monelli et al. 2010)
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近傍銀河研究例
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Local Group の矮小銀河多様な星生成史を持つことが分ってきた Grebel 1998
Monelli et al. 2010
Tolstoy et al. 2009
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Suprime-­‐Camによる近傍銀河研究
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Maunakea の良好な seeing とすばる望遠鏡の良好な結像性能のおかげで、近傍
銀河の星を解像することが可能。 HST に比べ100倍の視野を持つため、銀河の中心部から外縁部までを一度に観
測することが可能 → 銀河内での場所ごとの比較などが得意。 特に我々の銀河系・M31から構成される Local Group の銀河は見かけの大きさが
大きいため、Suprime-­‐Cam の格好のターゲット。 6
Suprime-­‐Camによる近傍銀河研究例
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NGC6822: 銀河本体の周りに大きく広がる HI gas を持つ矮小不規則銀河。古い星
は対称な分布をとっているのに対し、若い星は HI gas をトレースするように分布。 HIガス
可視光画像
古い星
Komiyama et al. 2003
若い星
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観測領域:ろくぶんぎ座
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1980年代の写真乾板を使った観測から、ろくぶんぎ座には周辺に比べて星密度
の超過が認められる領域が発見される。 のちに銀河系の周りを周回する衛星銀河であることが分かってきたのだが、パッ
と見ではその素性が全く分からない銀河である(下写真)。 この領域を Suprime-­‐Cam で観測したデータがある。本コースではこのデータを解
析して、この銀河の性質を詳細に調べてみよう。 ろくぶんぎ座領域の画像
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近傍銀河コースの概要
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Suprime-­‐Cam で撮られたろくぶんぎ座領域の画像の処理を行う。 –  Suprime-­‐Cam 用画像解析ソフト SDFRED を使用し、標準的なCCD撮像画像処理を行う。 –  ろくぶんぎ座領域1, 2 のV-­‐band, Ic-­‐band の画像を解析する。 • 
処理済み画像に写っている星を検出・測光し、測光カタログを作成する。 – 
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測光ソフト SExtractor を使用し、天体の検出・測光を行う。 imwcs を使用し、検出された天体の天球座標を求める。 画像に写っている天体の明るさを比較し、画像の等級原点を求める。 V-­‐band, Ic-­‐band の測光カタログをマージして研究に使える測光カタログを作成する。 この測光カタログに基づいて、星の色等級図を描き、その特徴を調べる。 –  描画ソフト gnuplot を使って測光カタログで検出されている天体の色等級図を描く。 –  色等級図上の特徴を選び出し、それらが何に対応しているのかを考察する。 • 
色等級図を星の進化理論と比較することにより、ろくぶんぎ座領域に隠されてい
る銀河の素性を探る。 –  等時曲線 (isochrone) を取得し、色等級図と重ねることにより銀河を構成する星の種族を推測する。 –  Isochrone との比較から、銀河までの距離を推測する。 –  色等級図に基づいて銀河を構成する星を選択する。いくつかの視野を比較することにより銀河の広
がりについて考察し、銀河を構成する星の総数や銀河の総光度を推測する。 • 
解析の結果をまとめて発表する。 9
近傍銀河コースの概要
R01, V-­‐band
R01, Ic-­‐band
R02, V-­‐band
R02, Ic-­‐band
画像処理
SDFRED 画像処理
SDFRED 画像処理
SDFRED 画像処理
SDFRED 検出測光
SExtractor 検出測光
SExtractor 検出測光
SExtractor 検出測光
SExtractor 位置較正
imwcs 位置較正
imwcs 位置較正
imwcs 位置較正
imwcs 測光較正 測光較正 測光較正 測光較正 測光カタログ
測光カタログ
色等級図
色等級図
R01の解析 Isochroneと比較
距離の推定・・・
R02の解析 Isochroneと比較
距離の推定・・・
銀河全体の考察 R01, R02 の比較 まとめ
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解析ソフトについて
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近傍銀河コースでは、実際に研究に使う画像を使って解析実習も行います。
TutorialではSDFRED2を使っていますが、研究に使う画像はSDFRED1でないと解析
できないのでSDFRED1を使います。基本的にコマンドは同じ名前なので、SDFRED2
のマニュアルを読んで解析を進めてください。 SDFRED1のマニュアルやソフトウエアは下記の場所にあります。hWp://
www.naoj.org/Observing/Instruments/SCam/sdfred/sdfred1.html.ja SDFREDのPATHを下記のように設定してください。 –  SDFRED2マニュアル(ver.2.0.5) P.4: PATH=/mfst03c/komiyama/sdfred20100528/bin:$PATH –  SDFRED2マニュアル(ver.2.0.5) P.5: set path=( /mfst03c/komiyama/sdfred20100528/bin $path ) 11
解析する画像について
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ろくぶんぎ座領域は、いくつかの領域について、 V-­‐band と Ic-­‐band の2バンドで撮
像されています。この中で、領域1,2のV, Ic バンド画像を解析しようと思います。
本コースでは、一人ひとり別のバンド、領域の画像を担当して解析してもらいます。
したがって、コピーすべきファイルは担当するバンド・領域により異なります。 解析する画像、フラット用の画像は下記においてあります。 フラット作成用画像 –  V-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/FlatV/ –  Ic-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/FlatIC/ • 
領域1 –  V-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R01V/ –  Ic-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R01IC/ • 
領域2 –  V-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R02V/ –  Ic-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R02IC/ • 
(余力があれば)領域3 –  V-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R03V/ –  Ic-­‐band: /mfst04d/komiyama/Sextans/R03IC/ 12
画像解析
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画像解析はマニュアル通り進めます。まず、フラットの作成、次にろくぶんぎ座領
域の画像の処理を行います。フラット作成とろくぶんぎ座領域は別のディレクト
リーで行います。 フラット作成 –  (1)画像ファイル名の変換および画像の確認: namechange.csh –  (2)bias引きおよびoverscanの切り取り: overscansub.csh –  (3)flat 作り: mask_mkflat_HA.csh • 
フラット作成 – 
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(1)画像ファイル名の変換および画像の確認: namechange.csh (2)bias引きおよびoverscanの切り取り: overscansub.csh (3)flat 作り: mask_mkflat_HA.csh (4)感度補正 (flat fielding) : ffield.csh ← 上で作ったフラットを使う
(5)歪補正(distordon correcdon)および微分大気差補正: distcorr.csh (6)PSF 測定: psfmatch_batch.csh (7)PSF 合わせ: psfmatch_batch.csh (8)sky の差し引き: skysb.csh (9)AG probeの影を自動でマスク: mask_AGX.csh (10)画像を目で見て、悪い部分をマスク: blank.cshなど
(11)組み合わせ規則作り(matching): makemos.csh (12)組み合わせ(mosaicing): imcio2a 13
処理済み画像の測光: SExtractor
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処理済み画像から天体の検出・測光を行います。天体の検出・測光には広く使わ
れている測光ソフト SExtractor を使用します。 詳細マニュアルはhWp://terapix.iap.fr/rubrique.php?id_rubrique=91/ にあります
が、下記に簡易的な使い方をまとめます。太陽系コース寺居さんのマニュアル
(§3.2, §4.1)も大変参考になります。 1.  まず SExtractor で使用する設定ファイル一式を実行ディレクトリーにコピーします。 –  % cp -­‐p /usr/local/share/SExtractor/2.19.5/config/[dg]* . 2.  コピーした設定ファイルの書き換えをします。 – 
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default.param 測定したい測光パラメーターを書きます(最初の#を外し、後ろのコメント前に#を付ける) 少なくとも下記のパラメーターは測定しておくとよいと思います。
NUMBER
<=番号
X_IMAGE
<=X座標
Y_IMAGE
<=Y座標
MAG_AUTO <=等級
FWHM_IMAGE
<=FWHM CLASS_STAR <=星銀河分類
FLAGS
<=フラッグ 14
処理済み画像の測光: SExtractor
2.  設定ファイルの書き換え(続き) default.sex 測定の条件などを書きます。下記の項目は画像に合わせて適宜書き改めましょう。
CATALOG_NAME R01V.cat
<=出力のカタログ名
DETECT_THRESH 3.0
<=検出閾値(σ) ANALYSIS_THRESH 3.0
<=解析閾値(σ) SATUR_LEVEL 50000.0 <=サチュレーション
MAG_ZEROPOINT 33.0 <=等級原点。本来は標準星解析から決めますが33.0を採
用
–  GAIN 3.0
<=ゲイン。3.0×重ね合わせた枚数にする。
–  SEEING_FWHM 1.0
<=画像PSFのFWHM。画像から測定。
–  PIXEL_SCALE 0.2
<=画像PixelScale。Suprime-­‐Camは0.2。 – 
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3.  SExtractor の実行
–  % sex -­‐c default.sex R01V.fits –  R01V.cat が出来るはずです。
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処理済み画像の位置較正: imwcs
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処理済み画像には天球座標系の情報(WCS)が書かれていますが、非常にラフで
あるため、位置標準星と比較することによって改めて位置較正を行います。 このため、WCS関連ツール(wcstools)の中の imwcs を使用します。詳細は
hWp://tdc-­‐www.harvard.edu/wcstools/ にありますが、下記に簡易的な使い方を
まとめます。太陽系コース寺居さんのマニュアル(§3.2)も大変参考になります。 1.  ds9 で画像を開きます。 –  例えば、ds9 –zscale R01V.fits & 2.  Analysis のプルダウンメニューから、Catalog-­‐>Opdcal-­‐>NOMAD と開いて行き、
NOMAD をカタログ検索ウィンドーを立ち上げます。画像上に位置標準星が○で
プロットされます(この段階では位置が正確に決まっていないため、○と実際の天
体の位置はずれているはずです)。 3.  カタログをFile-­‐>Exportでセーブします。形式は tab-­‐separated。名前は
NOMAD.tsv とします。
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処理済み画像の位置較正: imwcs
4.  imwcs 用のカタログ NOMAD_imwcs.cat を作ります。NOMAD_imwcs.cat の最初には下記
の2行を書き、その後ろに ID RA(deg) Dec(deg) Rmag のフォーマットで、NOMAD.tsv に書
かれたカタログを付け加えます。ファイルの中身はこんな感じ。 -­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐ nomad/d/o/j NOMADtsv 1224-­‐0265548 191.4643361 +32.4898361 19.310 1224-­‐0265549 191.4783778 +32.4614583 20.030 ... -­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐ 一括で変換するには下記のようにしてもよい。 ( echo nomad/d/o/j echo NOMADtsv tail -­‐n +2 NOMAD.tsv | cut -­‐f 3,5,6,16 | awk '{if($4>0)print}' ) > NOMAD_imwcs.cat (cut の 3,5,6,16 間には空白をいれない)。星以外の天体や暗い天体も入っているので、以
下でうまくいかないときなどは等級で区切る、星だけを抜き出すなど適宜対応する。
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処理済み画像の位置較正: imwcs
5.  画像の測光カタログの整形
前処理段階 SExtractor で作成された測光カタログから星だけを選んで、x,y,mag のカタログを作る。これを sup_star.cat にします。例えば、 awk ‘{if($6>0.5) print $2, $3, $4}’ R01V.cat > sup_star.cat
6.  測光カタログとのマッチ及び画像へのWCS書き込み imwcs を実行します。 imwcs -­‐v -­‐d sup_star.cat -­‐n 8 -­‐w -­‐h 200 -­‐c NOMAD_imwcs.cat -­‐q irst R01V.fits これで、wcsがアップデートされた R01Vw.fits ができあがる。 7.  確認 1-­‐2と同様にds9上に R01Vw.fits を表示させ、NOMADカタログを重ね描きしてみて、
座標が合っていることを確認する。
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再び位置較正済み画像の測光: SExtractor
位置較正済みの画像にもう一度 Sextracter を使って天体の検出・測光を行いま
す。default.param には、前に加えて X_WORLD, Y_WORLD も付け加えます。これ
によって、FITS画像に付いているWCS情報を元に RA, DEC もカタログに出力してく
れます。 1.  設定ファイルの書き換え • 
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default.param 測定したい測光パラメーターを書きます(最初の#を外し、後ろのコメント前に#を付ける) 少なくとも下記のパラメーターは測定しておくとよいと思います。
NUMBER
<=番号
X_WORLD
<=RA座標
Y_WORLD
<=DEC座標
X_IMAGE
<=X座標
Y_IMAGE
<=Y座標
MAG_AUTO <=等級
FWHM_IMAGE
<=FWHM CLASS_STAR <=星銀河分類
FLAGS
<=フラッグ –  default.sex の CATALOG_NAME も適宜書き換えておく(例えば、R01Vw.cat)。 2.  SExtractor の実行
–  % sex -­‐c default.sex R01Vw.fits 19
処理済み画像の測光較正
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処理済み画像の1カウント(ADU)が何等級に相当するか(等級原点)を決めないと
天体の明るさの情報を得ることができません。 今回は画像上に写っている明るさの分っている天体(測光標準星)が何カウント
(ADU)であるかを測定し、等級原点を求めます。 R01領域には Kirby et al. 2013 によって12星のV,Ic等級が記載されています。これ
を使って、等級原点を求めます。例えば、星545はV=19.248mag, Ic=18.290mag と
いう明るさです。この星を前段階で作成した位置較正済みカタログ(R01Vw.cat)の
中からRA,Decに基づいて探し出します。例えば、V=20.00mag となっていたとしま
しょう。そうすると、20.00-­‐19.248=0.752magの差があります。位置較正済みカタロ
グでは等級原点を仮に33.00magとおいていましたので、等級原点を32.248magと
すれば、この天体の等級は19.248magになるわけです。このようにして、等級原
点を求めることができます。12個の星を使うことによって、精度を高めると共に、
等級原点の決定精度も確認することができます。 R02領域には残念ながらこのような速効標準星がないので、R01で求めた値を
使って解析を進めます(あとで等級原点を変える必要がでてくるかもしれません)。 20
処理済み画像の測光較正
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Kirby et al. 2013 のデータの取得方法 論文はADS (hWp://ads.nao.ac.jp/) で検索できます。Kirby et al. 2013, ApJ, 779, 102 がそれです。 カタログは vizier (hWp://vizier.nao.ac.jp/viz-­‐bin/VizieR) を使うとよいと思います。
検索画面の Search by Posidon … の部分に座標を入れて、20arcmin 程度の範囲
を選ぶことにして、Find Catalog を押します。色々なカタログが出てきますが、この
中で Kirby et al. 2013 のカタログを選びます(J/ApJ/779/102 というカタログ名に
なっているはず)。 再びPosidon を聞かれますのでこれを入力します。左側の Preference のところに
どのような形式で表示するか(deault は HTML Table)を選択できますので、これを
適宜変えます。そして Submit するとテーブルが表示されます。 21
三度、位置測光較正済み画像の測光: SExtractor
位置較正済みの画像にもう一度 Sextracter を使って天体の検出・測光を行いま
す。前段階で等級原点が求まっていますので、default.sex の MAG_ZEROPOINT は適宜書き換えます。 1.  設定ファイルの書き換え • 
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default.param 測定したい測光パラメーターを書きます(最初の#を外し、後ろのコメント前に#を付ける) 少なくとも下記のパラメーターは測定しておくとよいと思います。
NUMBER
<=番号
X_WORLD
<=RA座標
Y_WORLD
<=DEC座標
X_IMAGE
<=X座標
Y_IMAGE
<=Y座標
MAG_AUTO <=等級
FWHM_IMAGE
<=FWHM CLASS_STAR <=星銀河分類
FLAGS
<=フラッグ –  default.sex の MAG_ZEROPOINT, CATALOG_NAME も適宜書き換えておく(例えば、R01Vf.cat)。 2.  SExtractor の実行
–  % sex -­‐c default.sex R01Vw.fits 22
各バンド測光カタログのマージ
ここまで来ると、RA, Dec を介して各領域の V-­‐band、Ic-­‐band カタログをマージする
ことができるようになります。 •  各バンドのカタログを catcomp_xy_lm を使ってマッチします。RA, Dec を使ってマッ
チさせます。マッチングの許容値はどの領域を撮ったかに依りますが、今回は
0.5arcsec=0.000139deg にして始めるのがよいと思います。
•  深くまで写っているバンドのカタログを元に、浅い方のバンドのカタログをマッチさ
せていくとよいと思います。Ic-­‐band が一番深そうなので、 /mfst03c/komiyama/catcomp_xy_lm -­‐u -­‐i Input first (object) File Name : R01ICf.cat Input second (refarence) File Name : R01Vf.cat Input output (merged) File Name : R01ICVf.cat Field format of first (object) file : 8 v0.000139 9 v0.000139 Field format of second (catalog) file : 8 v0.000139 9 v0.000139 という感じに(8, 9 はRA, Dec のカラム番号)。これでマージされたカタログ
R01ICVf.cat が完成です。同様にしてR02ICVf.cat なども作成します。
• 
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各領域の色等級図
測光カタログができると、色等級図を描くことができるようになります。縦軸 Ic 、横
軸 V-­‐Ic として下図のような色等級図を描いてみましょう。 Ic (mag)
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?
V-­‐Ic (mag)
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この色等級図にどのような特徴があるでしょう? 具体的に赤色分枝や水平分枝などが分るでしょうか? R01とR02ではどのような違いがあるでしょうか? (特徴的な部分の等級がかなりず
れている場合は、R02の等級原点がだいぶずれている可能性があります) 24
isochrone との比較
• 
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色等級図が描けると、星がどのような種族であるか知りたくなります。理論計算に
よる等時曲線(isochrone)と比較することにより星の種族を推定することができま
す。 isochrone はいくつかのグループが計算していますが、ここでは一番利用しやす
い Padova の isochrone を使います。hWp://stev.oapd.inaf.it/cgi-­‐bin/cmd にアクセ
スすると、色々パラメーターを聞かれますが、 –  Photometric System –  Ages/metallicides
–  (他はdefaultでよい) -­‐> Subaru/Suprime-­‐Cam (Abmags) を選択 -­‐> 望みのAge/Metallicityを入れる を指定してSubmit すると計算された isochrone をダウンロードできます。 • 
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どのような isochrone がろくぶんぎ座領域の星の色等級図に合うでしょうか?これ
からろくぶんぎ座領域にいる銀河の星種族はどのような種族で構成されていると
言えるでしょうか? isochrone は絶対等級で計算されています。ということは、ろくぶんぎ座領域の星
の分布に合わせることで、ろくぶんぎ座領域にいる銀河の距離を見積もることが
できます。どれくらいの距離になるか推測してみましょう。 25
R01, R02, (R03) との比較
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R01, R02, (R03) の色等級図を比較することでどのようなことが分かって来るでしょ
うか? 赤色巨星(RGB)から転向点(TO)、水平分枝(HB)の星のみを抜き出して空間分布を
プロットしてみると、銀河の形が見えてくると思います。どのような分布をしている
でしょうか? また半径方向のプロファイルはどのようなになっているでしょうか(楕円銀河に似
ている?渦巻き銀河に似ている)? プロファイルが分ると銀河全体の星の数を見積もることができると思います。銀河
全体でどれくらいの星数になるでしょうか? 最後にまとめると、ろくぶんぎ座領域にいる銀河はどのような銀河だと言えるで
しょうか(銀河の形態分類など)? 26
(付録) 有用なUNIXコマンド
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データ解析を進めていくうえで下記のコマンドは有用です。詳しい使い方について
は検索して調べてみましょう。
ファイルを作成日時順に並べる: ls –  ls -­‐lart
–  ls -­‐lart all*
• 
(現directoryにあるファイルすべてを作成日時順に並べる) (allで始まるファイルすべてを作成日時順に並べる) ファイルの中から特定の文字列を含む行を取り出す: grep –  grep object050 all.mos
(all.mosからobject050が含まれる行を取り出す) –  grep object06[2-­‐4] all.mos (all.mosからobject062,63,64が含まれる行を取り出す) • 
ファイルの中身を計算して出力: awk –  awk '{if($4>0) print} test.cat
(test.catからカラム4が0以上のものをプリントする) –  awk '{if($2==1) print $1, $3} test.cat
(カラム2が1のものについてカラム1,3をプリントする) –  awk '{if(0<=$2&&$2<5) print $1, $3} test.cat
(カラム2が0以上5未満のものについてカラム
1,3をプリントする) • 
ファイルをsordngする: sort –  sort -­‐n test.cat –  sort -­‐nr -­‐k 6 test.cat
• 
(test.catを昇順にソートする) (test.catをカラム6を使って降順にソートする) ファイルの行数を表示する: wc –  wc test.cat
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(付録) 有用なUNIXコマンド
• 
ファイルの最後(最初)の数行を表示する: tail,head –  head -­‐12 test.cat
(test.catの最初の12行を表示する) –  tail -­‐30 test.cat (test.catの最後の30行を表示する) –  tail -­‐n +22 test.cat
(test.catの22行目以降を表示する) • 
2つのファイルを順番に結合する: cat –  cat test1.cat test2.cat
• 
2つのファイルを横に並べる: paste –  paste test1.cat test2.cat
• 
(test1.catとtest2.catを順番に表示する) (test1.catとtest2.catを横に並べる) 出力結果をファイルに書き込む: > –  ls -­‐1 *object050* > file.lis (名前にobject050が付くファイルをfile.lisに書き
込む) –  awk '{if($4>0) print} test.cat > result.cat (test.catからカラム4が0以上のものをresult.catに書き込む) • 
出力結果を次のコマンドに送る: | –  awk '{if($4>0) print} test.cat | sort -­‐n
(test.catからカラム4が0以上のものを選び、sortする) 28