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いちごグループホールディングス
(2337・JASDAQ スタンダード)2015 年 10 月 29 日
ホテル特化型 REIT が 11 月 30 日に上場へ
16/2 期会社業績予想を上方修正
アップデートレポート
16/2 期 2Q 累計(3-8 月)決算は、売上高 146 億円(前年同期比 47.9%
増)
、営業利益 49.1 億円(同 57.3%増)
。物件売却が下期偏重の計画の
㈱ティー・アイ・ダヴリュ
堀部 吉胤
ため売却益は 12.1 億円(同 24.7%減)と低水準だったが、いちごオフ
ィスリート投資法人(8975)の物件取得に係るスポンサーサポートフ
ィーや私募ファンドのクローズに伴うインセンティブフィー、アセッ
主要指標 2015/10/28 現在
ト拡大による賃料収入の増加が業績を牽引した。
株
価
年初来高値
年初来安値
317 円
2Q 累計決算発表に先立つ 10 月 9 日に通期会社業績予想の上方修正を
363 円
(15/04/27)
221 円
(15/08/25)
発表。上方修正幅は営業利益で 23 億円。上方修正の主因は、11 月 30
発行済株式数
501,113,600 株
売 買 単 位
100 株
日上場予定となったいちごホテルリート投資法人(3463)への 9 物件、
約 204 億円の物件拠出による売却益等が約 60 億円と想定以上に膨らむ
ことになったこと。バリューアップが予想以上に奏功した。
通期の物件取得目標を上期で達成
物件取得競争が過熱している中、2Q 累計の物件取得は 33 物件、608
時 価 総 額
158,853 百万円
予 想 配 当
2.0 円
(
会
予 想
社
)
E P S
23.22 円
( ア ナ リ ス ト )
実 績
P B R
2.68 倍
億円と外資系ファンドからの中規模オフィス 24 棟、約 500 億円のバル
ク買いにより一気に進捗。いちごオフィスリートの外部からの取得と
合わせると 1,014 億円と通期目標 1,000 億円を既に達成した。
16/2 期の営業利益は中期経営計画の目標 114 億円を大幅に上回る高
水準となる見込みになったが、17/2 期の利益も高水準を維持できると
みる。保有不動産の鑑定評価額ベースの含み益はいちごホテルリート
直前のレポート発行日
への物件売却による実現を差引いても 200 億円程度と潤沢であり、物
ベーシック
2015/06/29
アップデート
-
業
績
動
件売却環境も引続き良好なため物件売却益をコントロールし決算をつ
くることが可能な状況であることなどによる。
売上高
百万円
向
14,607
当期純利益
百万円
前期比
%
EPS
円
60.2
4,221
69.5
8.46
9,879 -52.0
3,124
39.3
2,715
25.8
2,491
-9.6
5.01
21.7
8,189
2.1 倍
7,255 2.0 倍
6,761
49.4
13.58
47,000
10.1
14,000
71.0 12,400
70.9
11,000
62.7
22.01
(2015 年 4 月発表)
45,000
5.4
11,700
42.9 10,250
41.3
9,150
35.3
18.30
新・アナリスト予想
47,130
10.4
14,080
71.9 12,500
72.3
11,600
71.6
23.22
旧・アナリスト予想
(2015 年 6 月発表)
45,200
5.8
11,900
45.3 10,500
44.7
9,560
41.4
19.15
新・アナリスト予想
73,600
56.2
14,110
0.2 12,410
-0.7
10,970
-5.4
21.96
旧・アナリスト予想
54,200
19.9
14,100
18.5 12,300
17.1
10,870
13.7
21.78
実
績
期 実
績
42,705
新 ・会 社予 想
(2015 年 10 月発表)
旧 ・会 社予 想
期
前期比
%
4,351
2015/2 2Q(3-8 月)
2017/2 通
経常利益
百万円
57.3
績
期
前期比
%
4,913
実
2016/2 通
営業利益
百万円
47.9
2016/2 2Q(3-8 月)
2015/2 通
前期比
%
(2015 年 6 月発表)
アナリストレポート・プラットフォーム
1
業
績
 経営環境解説
国内の現物不動産
 会社概要
投資市場は活況が
続いている
8 月中旬から中国の景気減速懸念の高まりや米国の利上げに対する不透
明感から世界的に株式市場、コモディティ市場が急落。国際金融市場は波乱
に見舞われた。
J-REIT 市場では旺盛な物件取得を受け PO(公募増資)ラッシュが続いた
ことも加わり、東証 REIT 指数は 2014 年 10 月末の日銀の追加緩和直前の水
準約 1,600 ポイントを割り込み、9 月 8 日には 1,509 ポイントまで低下した。
その後、①国際金融市場が落ち着きをみせたこと、②投資口価格の下落によ
り予想分配金利回りの魅力が高まったこと、などから反転し、足元は 1,700
ポイントを回復している。
物件取得競争の過熱を受け、既にポートフォリオの規模の大きい REIT で
は、外部成長よりも内部成長に軸足を移してきている。これにより PO ラッ
シュが一服するとみられること、多くのアセットタイプで緩やかながら賃料
増額の動きが広がっていることから、今後の東証 REIT 指数は底堅く推移す
るとみる。東証 REIT 指数が下落するとインプライド・キャップレートの上
昇を通じて現物の不動産価格に下落圧力がかかる可能性があるが、当面、こ
うした懸念は乏しいだろう。
実際、国際金融市場の混乱、中国の景気減速はこれまでのところ国内の現
物不動産投資市場に特段の影響を与えていない。金融機関の不動産融資姿勢
は引続き非常に積極的であり、特に貸出先に乏しい地銀にその傾向が強い。
アジアなどの海外投資家も、東京をはじめとする日本の不動産投資に対し、
引続き積極姿勢。シンガポールや上海などの不動産と比較し、キャップレー
トや単純な坪単価からみて割安感が強いことなどによるとみられる。また、
2015 年 1 月からの相続増税を受け、個人富裕層が中小型のレジデンスやオ
フィスなどを機関投資家とは異なった目線で高く買う動きも続いている。
当社の主要投資対象のオフィスをはじめとして、キャップレートの低下は
緩やかにはなってきたが、当分、反転しそうな気配はみられない。オフィス
やホテルなど景気に敏感なアセットタイプでは、賃料が緩やかに上昇してい
る。日銀の追加緩和の可能性もあり、不動産投資市場は当面ホットな環境が
続こう。
アナリストレポート・プラットフォーム
2
業
績
 16/2 期 2Q 累計(3-8 月)業績解説
16/2 期は物件売
 会社概要
却が下期偏重の計
画
10 月 14 日に発表された 16/2 期 2Q 累計決算は、売上高 146 億円(前年同
期比 47.9%増)
、営業利益 49.1 億円(同 57.3%増)、経常利益 43.5 億円(同
60.2%増)
、純利益 42.2 億円(同 69.5%増)
。
物件売却のタイミングで短期の業績はぶれるため、期初時点では 2Q 累計
の会社業績予想を公表していない。
前年同期比では大幅増収増益だが、不動産再生事業における物件売却が
15/2 期同様、下期偏重の計画のため、通期会社業績予想に対する進捗率は
35.1%と低い(業績予想を上方修正しており期初予想に対しては 42.0%)。
セグメントの中で特に業績を牽引したのは、アセットマネジメント事業。
2Q 累計業績はア
セットマネジメント
事業などが牽引
セグメントの売上総利益は 20.6 億円(前年同期比 2.2 倍)と急拡大した。
これは、①いちごオフィスリートに対するスポンサーサポートフィー3.6 億
円、②私募ファンドのクローズに伴うインセンティブフィー約 5 億円、の寄
与が大きかった。①はいちごオフィスリートの物件取得に係る新たな体系の
フィー収入。5 月にいちごオフィスリートは PO を実施し、12 物件、約 440
億円を取得したが、このうち外資系ファンドからバルク買いした 9 物件に関
し(売買契約は 4 月 9 日)
、PO が不調に終わった場合、当社が代わりに取得
するという信用補完のバックアップ・サポートを売主の要望を受けて行った。
スポンサーサポートフィーとは、これに対する報酬。②は良好な物件売却環
境を現すものといえよう。
このほか、クリーンエネルギー事業の営業利益が 2.9 億円(前年同期は▲
0.4 億円)と黒字化したことも全体の業績に寄与した。黒字化は、メガソー
ラーの売電が順次開始され、初期コスト、販管費を上回ってきたことによる。
主力の不動産再生事業では、アセットの拡大に伴い、不動産賃貸損益が売
個人富裕層向けに
新たな取組みも
上総利益で 34.4 億円(前年同期比 40.9%増)と大幅に増加した。
一方、物件売却は売上高 52.4 億円(前年同期比 48.1%増)、売上総利益
12.1 億円(同 24.7%減)にとどまった。このうち、いちごオフィスリート
の 5 月の PO に伴う物件拠出が 2 物件、約 34 億円、売上総利益で 5 億円強を
占めた。
2Q(6-8 月)の物件売却は南麻布の商業ビル 1 棟のみだった。同物件は築
30 年の築古物件だが、約 4 年保有し遵法性治癒、耐震性向上、テナント入
替などのバリューアップを行い、NOI を約 1.9 倍にしたうえで、個人富裕層
に売却した。ファイナンスのサポートが評価され、物件管理業務を受託。系
列 REIT 以外の外部売却の場合でも売却後の関与を続ける新たなビジネスモ
デルとして、今後も同様の取組みを模索する方針。
アナリストレポート・プラットフォーム
3
業
 会社概要
績
半期損益計算書
15/2
売上高
アセットマネジメント
アセットマネジメントフィー
PM/BM収入
その他(仲介、インセンティブフィーなど)
不動産再生
不動産賃貸収入
不動産売却高
クリーンエネルギー
その他
金融関連フィー
株式譲渡益
その他
売上原価
売上総利益
アセットマネジメント
アセットマネジメントフィー
アニュアルフィー
REIT
私募
アップフロント/ディスポジションフィーなど
PM/BM収入
その他(仲介、インセンティブフィーなど)
不動産再生
不動産賃貸損益
不動産譲渡損益
その他
クリーンエネルギー
その他
金融関連フィー
株式譲渡益
その他
販管費
営業利益
アセットマネジメント
不動産再生
クリーンエネルギー
その他
調整額
営業外収益
営業外費用
支払利息
経常利益
特別利益
特別損失
税金等調整前当期純利益
法人税等
少数株主利益
純利益
(出所)決算短信、会社資料
(注)CEは会社予想
アナリストレポート・プラットフォーム
上期
9,879
2,042
712
1,264
65
7,517
3,973
3,544
294
24
25
▲1
0
4,769
5,110
930
652
448
381
66
196
216
61
4,054
2,444
1,609
0
109
16
25
▲1
▲7
1,986
3,124
208
3,258
▲ 43
▲ 23
▲ 277
69
478
423
2,715
0
0
2,715
155
68
2,491
下期
32,826
1,925
600
1,239
86
30,590
5,235
25,355
311
0
1
0
0
25,770
7,056
856
572
425
378
48
143
214
71
6,125
3,320
2,805
0
85
▲ 10
1
0
▲ 11
1,991
5,065
571
4,613
▲ 50
▲ 43
▲ 24
144
668
520
4,540
57
93
4,505
188
47
4,270
(単位)百万円
16/2
上期
下期CE
14,607
32,393
2,964
1,986
806
830
1,080
1,063
1,077
93
10,758
29,735
5,509
6,491
5,249
23,244
870
637
13
35
13
35
0
0
0
0
7,443
20,717
7,163
11,677
2,067
1,013
800
825
478
na
443
na
35
na
319
na
237
101
1,030
86
4,656
10,520
3,443
4,185
1,212
6,337
0
0
434
155
4
▲ 10
13
35
0
0
0
▲ 55
2,250
2,590
4,913
9,087
1,854
682
3,142
8,478
290
▲ 72
▲ 31
▲ 61
▲ 343
60
85
na
647
na
577
na
4,351
8,049
223
na
9
na
4,565
na
289
na
53
na
4,221
6,779
4
業
績
16/2 期の物件取得の目標は、いちごオフィスリートの外部からの直接取
物件取得競争が過
 会社概要
熱する中、バルク
案件の取得により
通期の仕入れ目標
を既に達成
得を含め 1,000 億円としていた。2Q 累計の物件取得は、当社で 33 物件、608
億円、いちごオフィスリートで 10 物件、406 億円(当社からの物件拠出 2
物件、34 億円を含まず)の計 43 物件、1,014 億円。既に通期目標をクリア
した。良好な資金調達環境を受け、物件取得競争が過熱している中でも、下
記の通り外資系ファンドからのバルク買いで一気に進捗した。
いちごオフィスリートの外部からの取得 10 物件のうち 9 物件(全て中規
模オフィス)が外資系ファンドからのバルク買い。先述の通り、これに対し
当社が信用補完のバックアップ・サポートを行った。
当社で取得した 33 物件のうち 24 物件(全て中規模オフィス)
、約 500 億
円は同じ外資系ファンドから 7 月にバルク買いしたもの。このうち、高稼働
で物件の状態が良く手をかける必要性の乏しい 13 物件、約 292 億円につい
ては、いちごオフィスリートも一部共同出資する匿名組合で取得しており、
いちごオフィスリートに 2016 年 7 月末まで取得に係る優先交渉権が付与さ
れている。なお、約 292 億円は優先交渉の価格条件の合計額で、取得金額は
これより若干低い。バルク買い以外では、ホテル 4 棟、商業施設 2 棟(1 棟
は再開発前提)
、複合施設 1 棟、オフィス 2 棟を取得した。
上期は物件売却が少なかった一方、取得が大幅に進展したため B/S が膨ら
み、2Q 末の自己資本比率は 25.4%(前期末比 6.8pt 減)まで低下した。既
に通期の物件取得目標はクリアしているが、下期はいちごホテルリートの上
場に伴う物件拠出など売却が進む予定のため、下期も物件取得を継続してい
く。バルク案件を含めパイプラインは豊富なようであり、下期にはホテル、
オフィス、商業施設で 200~300 億円は取得するとみる。
 16/2 期業績予想
いちごホテルリート
上場に伴う物件拠
出を主因に業績予
想を上方修正
2Q 累計決算発表に先立つ 10 月 9 日に通期会社業績予想の上方修正を発表。
上方修正幅は売上高 20.0 億円、営業利益 23.0 億円、経常利益 21.5 億円、
純利益 18.5 億円。各利益は期初予想から概ね 20%の上方修正。期末配当予
想は据置かれた。
営業利益の修正後の予想は 140 億円(前期比 71.0%増)
。16/2 期は中期経
営計画の最終期に当る。修正予想通りで着地すると中計目標を 26 億円超過
達成することになる。
上方修正の主因は、①11 月 30 日上場予定となったいちごホテルリート投
資法人への 9 物件、約 204 億円の拠出に伴う売却益等が売上総利益で約 60
億円と想定以上に多額になったこと、②先述の私募ファンドのクローズに伴
うインセンティブフィーの発生、③物件取得が前倒しで進捗したことによる
賃料収入の若干の上振れ、など。
アナリストレポート・プラットフォーム
5
業
績
いちごホテルリートはその名称通り、ホテル特化型 REIT で、インバウン
 会社概要
ド需要が見込める立地の宿泊主体・特化型のバジェットホテルを中心に投資
する方針。IPO 時の資産規模は当社から拠出した 9 物件、約 204 億円でのス
タートとなるが、ポートフォリオの規模が大きくなり安定運用が可能となっ
た段階でリゾートホテルやフルサービスホテルの投資も行っていくとして
いる。決算期は 1 月、7 月。
IPO 時に拠出する 9 物件の中には築年数が 20 年を超えるものが多いが、
ハード面のリニューアルにとどまらず、オペレーター変更などにより ADR
(平均客室販売単価)
、OCC(客室稼働率)のきめ細かいコントロールを行い
RevPAR(ADR×OCC)の極大化、NOI の向上に成功。京都のホテルでは、イン
バウンド需要の増加も手伝い、NOI は取得時の約 3 倍と当初の想定を大幅に
上回る向上をみせたという。こうしたバリューアップ効果を主因に想定以上
の売却益が実現することになった。
クリーンエネルギー事業の下期の営業利益は▲0.7 億円と再び赤字予想
(4 頁の表参照)
。
これは売電を開始しているメガソーラーがまだ 21 発電所、
約 36MW と限られる中、下期は上期よりも日照時間が短く発電量が少なくな
り、販管費を吸収し切れないことによる。通期の営業利益は 2.1 億円(前期
は▲0.9 億円)と黒字化見込み。
外資系ファンドからバルク買いしたうち、いちごオフィスリートに優先交
いちごオフィスリート
の PO があれば売
上高は膨らもう
渉権を付与している 13 物件、292 億円(優先交渉の価格条件の合計)の売
却は 16/2 期修正会社業績予想に織り込まれていない。通常、REIT の PO は
物件取得とセットであり、PO は 1 口当り分配金の希薄化を抑えるため期初
に実施されることが多い。
取得価格 292 億円は 1 回の PO で取得可能な規模。
いちごオフィスリートの決算期は 10 月、4 月。優先交渉権の期限内の PO の
タイミングは、16/4 期(11-4 月)の期初又は 16/10 期(5-10 月)の期初と
いうことになる。前者のタイミングで PO を実施した場合、16/2 期の売上高
は大幅に膨らむことになる。ただし、売却益は数億円にとどまるとみられ、
利益寄与は限定的。表記の TIW 業績予想では、後者のタイミングでの PO を
前提とし、修正会社予想と同様に 16/2 期業績予想には織り込まなかった。
16/2 期 TIW 業績予想は修正会社業績予想にほぼ沿ったものとしたが、税
負担の会社の想定が保守的とみられるため、純利益は 6 億円程度上振れると
予想した。
年内にも東証 1 部
に市場変更へ
アナリストレポート・プラットフォーム
中期経営計画では 16/2 期末までの東証 1 部上場を目標に掲げており、予
定通り 8 月 10 日に東京証券取引所に市場変更申請を行った。年内、遅くて
も 16/2 期末までに JASDAQ から東証 1 部に市場変更となろう。
6
業
績
 17/2 期業績予想
17/2 期も高水準
 会社概要
の利益を維持しよ
う
2015 年 8 月末時点の保有不動産の含み益は鑑定評価額ベースで約 251 億
円(ファンド出資持分の含み益 5.6 億円を含む)
。15/2 期末からはバリュー
アップの進捗やキャップレートの低下により約 55 億円増加した。いちごホ
テルリートへの物件拠出による含み益の実現により一旦、含み益は 200 億円
程度に減少するとみられるが、既存の物件のバリューアップの進展や新たに
取得する物件のバリューアップで再拡大に向かおう。物件売却環境は引続き
非常に良好であり、潤沢な含み益を背景にした売却益のコントロールにより、
業績はある程度つくれる面がある。
年明けにも新中期経営計画が発表されるとみられるが、ひとまず 17/2 期
TIW 業績予想では 16/2 期並みの利益を予想した。16/2 期はいちごホテルリ
ートへの物件拠出に伴う売却益等が約 60 億円と膨らんだことや、一過性と
いえるフィー収入が多かった反動を考慮したことによる。大幅増収を見込ん
でいるのは、いちごオフィスリートが優先交渉権を行使し、13 物件、292
億円を取得することを前提としているため。ただし、先述の通り、一時的な
ブリッジ案件で売却益は数億円にとどまるとみられ、利益寄与は限定的。
税制改正により 17/2 期から繰越欠損金の控除限度が 80%から 65%に下が
税負担率は多少上
昇しよう
るため、法人税率引下げでも実質的な税負担率は多少上昇しよう。小幅最終
減益を予想したのはこのためである。
足元の税務上の繰越欠損金は約 240 億円(過去に有税処理した棚卸資産評
価損や減損損失によって生じた将来減算一時差異約 110 億円を含む)として
いる。19/2 期には税負担がほぼ正常化するとみられる。
クリーンエネルギー事業の利益寄与は 17/2 期ではまだ限定的だが、メガ
メガソーラーの東証
ソーラーの最大案件である群馬県昭和村の売電が開始になる予定の 18/2 期
インフラファンド市
場への上場は、税
制改正の行方を見
定めてから検討へ
から次頁図のように本格的に利益寄与してくる見通し。
16/2 期上期に新たに広島県で 2 発電所、約 5MW の開発が確定し、これら
を合わせ足元までに 31 発電所、約 106MW のメガソーラーの開発が確定。次
頁図はこの開発確定分の固定価格買取り期間 20 年の収益予想で、現状の発
電効率をもとに算出したもの。20 年間の累計営業利益は約 304 億円となる
見込み。固定価格買取り期間終了後は、この収益予想には含まれていない。
20 年経過後も買取価格は低下しても売電は継続される筈であり、減価償却
が終了しているため利益寄与は続くだろう(土地は 20 年の定借が多いが、
延長オプションが付与されているもよう)
。なお、P50(金融機関が融資の判
断に用いる技術コンサルタントが作成した超過確率 50%の予測発電量)ベ
ースの 20 年間の累計営業利益は約 259 億円。
アナリストレポート・プラットフォーム
7
業
績
開発が確定している約 106MW の買取価格(税抜)は、40 円が 20 発電所、
34MW、36 円が 8 発電所、67MW、32 円が 3 発電所、5MW。現在、買取価格は
 会社概要
27 円まで低下しているが、パネル価格等の低下や発電効率の向上を受け 27
円案件にもチャレンジしていくとしている。2014 年 5 月施行の農山漁村再
生可能エネルギー法を活用し、農地転用(農地を農地以外の目的に転用する
こと)が原則認められない第一種農地のうち耕作放棄地、荒廃農地をメガソ
ーラー用地とする取組みを始めた。農地は一般的に日照量が多いうえ、平地
で造成費を抑えられるため、メガソーラー適地が多い。第 1 号案件として取
手市と協議を進めている。こうした新たな取組みのほか、他社が認定を受け
た後、開発が頓挫している案件の事業譲渡を合わせて、現在、30MW を交渉
中としている。
2015 年 4 月に東証インフラファンド市場が創設されたが、導管性要件に
関し 2016 年度税制改正大綱の年末の発表待ちの状況。当社最大案件の群馬
県昭和村の発電所の売電開始が 18/2 期からの予定であることもあり、17/2
期に東証インフラファンド市場へ上場することはないだろう。上場要件と税
制の整合性が取れれば、将来、東証インフラファンド市場に上場させ売却益
を一気に実現させることもあろう。
(億円)
クリーンエネルギー事業の営業利益の予想
20
15
10
5
0
-5
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37
(出所)会社資料
(注)14年度までは実績、15年度以降は現状の発電効率をもとにした会社予想
アナリストレポート・プラットフォーム
(年度)
8
業
績
損益計算書
 会社概要
13/2
14/2
売上高
16,397 35,101
アセットマネジメント
3,743
4,118
アセットマネジメントフィー
1,279
1,444
PM/BM収入
2,118
2,262
その他(仲介、インセンティブフィーなど)
345
411
不動産再生
11,608 30,159
不動産賃貸収入
5,933
5,897
不動産売却高
5,673 24,261
クリーンエネルギー
4
126
その他
1,041
697
金融関連フィー
64
33
株式譲渡益
975
662
その他
0
0
売上原価
11,422 27,666
売上総利益
4,974
7,435
アセットマネジメント
1,886
2,183
アセットマネジメントフィー
1,120
1,334
アニュアルフィー
948
989
REIT
663
733
私募
285
257
アップフロント/ディスポジションフィーなど
172
345
PM/BM収入
430
460
その他(仲介、インセンティブフィーなど)
336
388
不動産再生
2,775
5,074
不動産賃貸損益
2,583
3,115
不動産譲渡損益
255
2,072
その他
▲ 63 ▲ 114
クリーンエネルギー
1
3
その他
310
174
金融関連フィー
64
33
株式譲渡益
298
158
その他
▲ 51
▲ 17
販管費
3,130
3,522
営業利益
1,844
3,912
アセットマネジメント
358
1,170
不動産再生
1,323
3,150
クリーンエネルギー
▲ 50 ▲ 253
その他
219
143
調整額
▲ 7 ▲ 298
営業外収益
155
238
営業外費用
265
553
支払利息
238
370
経常利益
1,734
3,597
特別利益
83
680
特別損失
124
344
税金等調整前当期純利益
1,693
3,933
法人税等
▲ 51 ▲ 573
少数株主利益
1 0 8▲
1
純利益
1,637
4,526
(出所)決算短信、会社資料
(注)CEは会社予想、EはTIW予想
13/2期の不動産再生は不動産賃貸と不動産再生を単純合算して算出
アナリストレポート・プラットフォーム
15/2
42,705
3,967
1,312
2,503
151
38,107
9,208
28,899
605
24
26
▲1
0
30,539
12,166
1,786
1,224
873
759
114
339
430
132
10,179
5,764
4,414
0
194
6
26
▲1
▲ 18
3,977
8,189
779
7,871
▲ 93
▲ 66
▲ 301
213
1,146
943
7,255
57
93
7,220
343
9 1 1
6,761
1 6 / 2 C E
期初
修正
45,000 47,000
4,713
4,950
1,983
1,636
2,397
2,143
332
1,170
38,705 40,493
11,725 12,000
26,980 28,493
1,581
1,507
0
48
na
48
na
0
na
0
28,500 28,160
16,500 18,840
2,857
3,080
1,966
1,625
na
na
na
na
na
na
na
na
559
338
322
1,116
13,052 15,176
7,503
7,628
5,549
7,549
0
0
589
589
0
▲6
na
48
na
0
na
▲ 55
4,800
4,840
11,700 14,000
2,140
2,536
9,579 11,620
198
218
▲ 85
▲ 92
▲ 133 ▲ 283
na
na
na
na
na
na
10,250 12,400
na
na
na
na
na
na
na
na
5
n a
n a
9,150 11,000
(単位)百万円
16/2E
17/2E
47,130
73,600
5,050
4,900
1,650
2,100
2,200
2,300
1,200
500
40,500
66,500
12,000
14,500
28,500
52,000
1,530
2,150
50
50
50
50
0
0
0
0
28,220
54,290
18,910
19,310
3,130
2,740
1,630
1,940
980
1,240
920
1,200
60
40
650
700
350
400
1,150
400
15,190
15,750
7,630
9,250
7,560
6,500
0
0
600
800
▲ 10
20
50
40
0
0
▲ 60
▲ 20
4,830
5,200
14,080
14,110
2,550
2,200
11,700
12,000
230
450
▲ 100
▲ 40
▲ 300 ▲ 500
250
200
1,830
1,900
1,500
1,700
12,500
12,410
300
50
50
50
12,750
12,410
1,020
1,340
1 3 0
1 0 0
11,600
10,970
9
(出所)㈱QUICK
上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。
上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び東京証券取引所は一切責任を負いません。
上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。
2013/2
株 価 推 移
2014/2
2016/2 予
(アナリスト)
2015/2
株価(年間高値)
円
144
699
376
-
株価(年間安値)
円
42
135
212
-
月間平均出来高
百株
211,190
1,607,700
750,245
-
高
百万円
16,397
35,101
42,705
47,130
売
上
営
業
利
益
百万円
1,844
3,912
8,189
14,080
経
常
利
益
百万円
1,734
3,597
7,255
12,500
百万円
1,637
4,526
6,761
11,600
業 績 推 移
当 期 純 利 益
E
P
S
円
3.66
9.83
13.58
23.22
R
O
E
%
6.0
11.8
13.0
17.5
流動資産合計
百万円
63,581
85,761
137,342
-
固定資産合計
百万円
16,846
29,183
35,402
-
資
百万円
80,428
114,944
172,744
-
産
合
計
貸借対照表
流動負債合計
百万円
7,304
7,588
9,872
-
主 要 項 目
固定負債合計
百万円
42,056
56,513
104,494
-
負
百万円
49,361
64,102
114,367
-
株主資本合計
百万円
28,279
48,050
54,496
-
純 資 産 合 計
百万円
31,066
50,842
58,377
-
キャッシュフ
営業活動による CF
百万円
4,609
1,254
-34,292
-
ロー計算書
投資活動による CF
百万円
-27
-8,610
-12,485
-
主 要 項 目
財務活動による CF
百万円
-3,935
24,682
41,658
-
現金及び現金同等
物の期末残高
百万円
9,512
24,581
18,972
-
債
合
計
(注)2013 年 9 月に 1:200 の株式分割実施。株価、出来高は遡及修正
アナリストレポート・プラットフォーム
10
リ
ス
ク
分
事
業

関 会社概要
す る リ
析
に
ス ク
 事業に関するリスク
 米国の利上げ、国内景気回復などを契機とする長期金利上昇。長期金利上
昇に伴いキャップレートが上昇した場合、自己勘定の不動産投資において
キャピタルロス、評価損が発生する恐れ。
 不動産取得競争の一段の激化。
 いちごオフィスリートやいちごホテルリートの投資口価格が下落し、PO
ができないと AUM 拡大、物件拠出、物件仲介などに伴う収益獲得の阻害要
因となる。
 2017 年 4 月予定の消費再増税により国内景気が悪化し、中小型オフィス
や商業施設の稼働率や賃料が低下する恐れ。
 大地震などの自然災害や火災等により、自己勘定や系列 REIT で保有する
物件が損壊する恐れ。
 メガソーラー事業は 20 年間の固定価格買取のため、キャッシュフローの
安定性が高い半面、急激なインフレには弱い。
 日中関係の悪化や中国の景気悪化などにより訪日中国人観光客が減少し
た場合、保有するホテルの収益が悪化する恐れ。
業
関
す
界
る リ
に
ス ク
 業界に関するリスク
 金融機関の不動産融資姿勢が引締めに転じた場合、不動産の流動性の低下、
不動産価格の下落を招く可能性が高い。
 少子高齢化、労働力人口の減少による長期的なオフィス需要の減退。
アナリストレポート・プラットフォーム
11
デ ィ ス ク レ ー マ ー
1.本レポートは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。
)が実施する「アナリストレポー
ト・プラットフォーム」を利用して作成されたものであり、東証が作成したものではありません。
 会社概要
2.本レポートは、本レポートの対象となる企業が、その作成費用を支払うことを約束することにより作
成されたものであり、その作成費用は、当該企業が東証に支払った金額すべてが、東証から株式会社テ
ィー・アイ・ダヴリュ(以下「レポート作成会社」といいます。
)に支払われています。
3.本レポートは、東証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、東証が文面上から明らかに
誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま
せん)
。
4.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ
れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。
5.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の
取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変
動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資
の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適
合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお
願いいたします。
6.本レポート作成にあたり、レポート作成会社は本レポートの対象となる企業との面会等を通じて、当
該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は当該企業によるものでは
なく、レポート作成会社の分析及び評価によるものです。また、本レポートの内容はすべて作成時点の
ものであり、今後予告なく変更されることがあります。
7.本レポートは、レポート作成会社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、東証及
びレポート作成会社は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であり、そのうちに重要な事項の記載が
欠けていないことやこの資料に記載された企業の発行する有価証券の価値を保証又は承認するものでは
ありません。本レポート及び本レポートに含まれる情報は、いかなる目的で使用される場合におきまし
ても、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、本レポート及び本レポートに含まれる
情報の使用による結果について、東証及びレポート作成会社は何ら責任を負うものではありません。
8.本レポートの著作権は、レポート作成会社に帰属しますが、レポート作成会社は、本レポートの著作
権を東証に独占的に利用許諾しております。そのため本レポートの情報について、東証の承諾を得ずに
複製、販売、使用、公表及び配布を行うことは法律で禁じられています。
<指標の説明について>
本レポートに記載の指標に関する説明は、東京証券取引所ウェブサイトに掲載されております。
参照 URL ⇒ http://www.jpx.co.jp/listing/reports/analyst-report/03.html
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