正会員 O山本貴正 *1 同 川口淳 向 山田和夫 *3

日本建築学会大会,}術講演便概集
(近畿) 2014年 日 月
22694
コンクリート充填角形鋼管短柱の圧縮靭性について
圧縮耐力
曲げモーメント
正会員 O山 本 貴 正 *
1
同
川 口 淳 *2
向
山 田 和 夫 *3
高強度材料
繊維補強既往の実験データ
1 はじめに
表 1 検討対象とする試験体の条件
1
) 鋼管とコンクリートを同時に圧縮および曲げ載荷した供試体
1
i
) 供試体の高さに対する断面幅の比が 2以上かっ 4以下の供試体
1
ii
) 鋼管内面に突起がない供試体
1
v
) コンクリートに膨張性混和斉Ijが混入されていない供試体
v
) 充填コンクリートに空洞,鋼材が含まれていない供試体
V
i
) 溶接四百組立鋼管を使用していない供試体
v
i
i
) AI]-CFT
指針 200Sl)の幅厚比制限値以下の供試体
コンクリート充填鋼管(以下, CFT)柱の耐力・靭性
の指標となる単調軸庄縮下の CFT短柱の耐力
変位関
係は,その耐力劣化後にある程度変位が進むと,耐力
が一定に安定することが既往の研究で確認されている。
このことから, CFT短柱の耐力劣化後に安定した塑性
表 2 検討対象とする角形 CFT短柱の圧縮試験体の因子範毘
因子
範囲
吉岡種
STKR490
中
日
当
左記以外の高張力鋼
STKR400相当
変形を発揮する耐力(以下,安定圧縮耐力)を定量的
に把握することは, CFT柱の靭性の評価につながると
)。そこで, CFT柱 の 靭 性 の 評 価 を 定
考えられている 1
2)
σν(N/mm
量的に把握するこ左を主目的として,本稿では,まず
B(mm)
単調車血圧縮下の角形 CFT短柱の安定圧縮耐力について,
2)
σB(N/mm
BIt
既往の実験データを活用して検討している。また,こ
目
0
.
2
6-0
.
7
8
38
&ヰ主主
標本数
の安定圧縮耐力が,繰り返し曲げせん断を受ける角形
440-554
151-250
1
7-34
25-213
0
.
3
0-0
.
8
5
9
618-834
1
2
0 200
司
1
9-3
1
25-1
1
9
0.
48-0
.
8
4
5
[
注]σi
y
:鋼管から採取した試験片の降伏応力度
CFT柱の靭性の評価に適用できるかどうかも併せて検
σ
月。コンクリート標準供試体の圧縮強度(標準強度)
鋼管の断面耐力(=Asσ
r
y
)
N
O:
C
F
r短柱の断面耐力(ご A
s
'σ
y+AcσB
)
As,Ac 鋼管およびコンクリートの全断耐力
B:鋼管断面幅 ,t 鋼管の板厚 ,Nq
討している。さらに,角形 CFT短柱の靭性改善につい
て実験的に検討している。
2. 検討方法の概要
検討対象
294-428
1
0
0-400
1
7-49
1
9
1
8 1
B
表 1に,検討対象とする角形 CFT短柱試験
)は,鋼管の角溶接の
体の条件を示す。表中の条件 vi
溶込みの影響で,局部座屈発生後に耐力低下が大きく
同
) は,鋼管の局部座屈によ
なりやすいことがある, vii
り,最大圧縮耐力が,本稿において基準(後述 3参照)
としている CFT短柱の断面耐力(後掲表 2参照)に達
コンクリートの
応力分布
) の参考文献および
しない,ためである。また,既報 3
) の角形 CFT短柱の単調軸圧縮試験において
北風里子ら 4
図 1 安定曲げモーメント時の応力分布
3
明確な安定圧縮耐力が認められる試験体を標本とする。
原ら
5
) の終局曲げ耐力の計算モデ、ノレと同等の1.1とす
その圧縮試験体の因子範囲を表 2に示す。なお,ここ
る。安定曲げモーメント時の鋼管および、コンクリート
では簡単に鋼管の隅角部曲率半径を無視する。
の圧縮応力度 (
σs-stab,Oc-stab) は,衛単に,ヤング係数
曲げモーメン卜の算出
単調軸圧縮下の角形 CFT短柱
に比例し弾性回復すると仮定して安定圧縮耐力より算
は,耐力劣化後にある程度変位が進むと軸圧縮耐力
出する。一定軸力による各応力度についても同様とす
が一定に安定するため,その鋼管とコンクリートの応
る。鋼管およびコンクリートのヤング係数はそれぞれ
力度も一定になると仮定し,角形 CFT柱の耐力劣化後
206kN/mm2および雨宮式りとした。
における最小の曲げモーメント(以下,安定曲げモー
メント
Mstab) の応力分布を図
1とする。なお,
CFT指
3. 検討結果
安定圧縮耐力
E
考察
図 2に角形 CFT短柱の断面耐力に対す
針の終局曲げ耐力の評価法と同様に,コンクリートの
る安定圧縮耐力(以下,安定圧縮耐力比)と鋼管断面
引張応力度は無視する。また,鋼管の引張応力度は,
耐力(以下,鋼管断面耐力比)の関係に及ぼす鋼管の
二軸応力状態などを考慮し,降伏応力度の b倍とする
強度レベルの影響を示す。同図より,鋼管断面耐力比
が,この安定曲げモーメント時の係数 bについては研
が小さいほど,安定圧縮耐力比が小さくなり,またこ
究の現状では不明な点が多いため,ここでは簡単に中
の傾向は
3
鋼管の強度レベルが高いほど顕著であると
C
o
m
p
r
e
s
s
i
v
eD
u
c
t
i
l
i
t
yo
fC
o
n
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巴t
eF
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巴d
S
q
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b
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aYAMAMOTO,J
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nKAWAGUCHIa
n
d
K
a
z
u
oYAMADA
-138727
j
;
2
3
2
判門
5 hE鍵出川間取 )ch¥42定 図
表 3 調合表
WIC A
i
r S
P W
国
圃
式 (
2
)
6-uoN
一一
0002
ロロ』 F
Ji
門巴~伊
調
8 七叶ペ
トシヴ人
)羽
係
冊とか
カヒ
ハU
管力商
4 鏑耐断
任以縮管
M 庄鋼
5
ω
怖比耐
図一
安
2 / T定
σ
'
y(N/nun2)
函3 式 (
1
) の指数と
降伏応力度の関係
S
R
4
A
4
C
SR6A9C
[注 JAi
I 空気量 SP:スランプ W 水 C セメント
ミ
7
=3
23N/mm2
c
n
i
=
3ヲ2N/mm2
・1
.0
上 九 !NO=0.
50
部材角 R ( % )
;
;
:
;5!
<
;
T
r
4
.
0
*
3 細骨材 *外害)
1
板 厚 降 伏 応 力 度 降 伏 比 伸 び 率 繊 維 標 兵 頭 車 車 { 喪 主 望 星.
2
(% ) 補 強 本
平均値変動係数
2)
2
1
1
3
5
3
0
.
7
5
2 31
.0
数 (Nl
mm
(%)
なし 5 8
0
.
9
3
.
2
8
1
2
0
0
あり 5 9
5
.
1
3
.
0
4
繊維補強 C
F
T短 柱
i
R8
4
∞
O
弓
古
川
(% v
o
l)
2)
(nun) (N/nun
2
快
~
ま
(% )
2
3
.7
4
.
5士
1
.5
1
2土2
.
52
4
31
0
2
31
0
2
3 1
.7
5
二
与
さ
供試体名称1.0
S 混和剤 I
C繊維混入率
(a )鋼管からの採取片の 5
1張試験結果( b ) コンクリ」ト標準供試体の圧縮試験結果
2
0
0 4
0
0 6
0
0 8
0
0
供試体名称1.0T 安定曲げモーメント
き
C
(kg/m3)
表 4 鋼材・コンクリートの力学的性質
]
官官
。。 ロ
ロ
ー
0
.
2
t_一一一一一一一一計算値
(%) (%)(mm)
/
C
F
r短 柱
。
。
7
一千一一一
/
'
ふ =588N/mm2
==:j. a
R=88JN/mm2
ーL
C土 九 !NO=0
.
50
官 官
2
4
6
軸変位/試験体高さ(九)
部材角 R ( % )
図 5 角形 C
F
r短柱の圧縮試験結果
図 4 曲げせん断試験の M-R関係の最終ループ 7
)
(執力比二0
.
3
5程度)
とがわかる。そこで,安定圧縮耐力比と鋼管断面耐力
と,安定圧縮耐力が低くなると推測される。そこで,
比の関係を,次式で評価することを試みる。
高強度材料を使用した角形 CFT柱の圧縮靭性の改善を
λら
l
a
b
!NO=(Nsy!NO)
a
(1)
式 (
1
) の指数 αの実験値と降伏応力度の関係を図 3に
函ることを目的として,鋼繊維補強した角形 CFT短柱
示す。図中の実線は次式の直線近似でる。
α =6
.
4x
l
O
-4丹 +0
.
2
2
た。使用した鋼種は, STKR400-100x100x2.3(mm)である。
(2)
の圧縮試験を実施し,その繊維補強を実験的に検討し
また,表 3に,コンクリートの調合表を示す。繊維は,
なお,式 (
1
)(
2
) より計算した安定圧縮耐力に対するそ
3次元波形鋼繊維(長さ:40mm,直径:0.8阻)である。
の実験値の標準偏差 sは 0.102,最大値は1.27,およ
a
)および (
b
)
鋼繊維混入率は 4
.0
%
.volとした注)。表 4(
.82であった。
び最小値は O
に,鋼管およびコンクリートの力学的性質を示す。
安定曲げモーメント
)の繰り返し曲げ
図 3に藤本ら 7
せん断試験体の材端曲げモーメント M 部材角 R関係
図 5に
3
角形 CFT短柱の軸圧縮耐力と試験体高さに
対する軸変位の関係に及ぼす繊維補強の影響を示す。
の最終ノレーフ と安定曲げモーメントの計算値を併せて
図中の各曲線は,繊維補強 CFT短柱, CFT短柱および
示す。図の縦軸は,最大曲げモーメント Mmaxで無次
鋼管短柱を表している。同図より,繊維補強による圧
元化しである。なお,最終ノレーフ の曲げモーメントの
縮靭性の改善が確認できる。
最大値が,その安定した塑性変形を発揮している曲げ
5 おわりに
Q
G
モーメント(以下,安定曲げモーメント)であるか不
本稿では,主に,単調軸圧縮下の角形 CFT短柱の安
明なため,それと最終ループのひとつ前のノレーフ。の曲
定圧縮耐力について検討を行った。
参考文献 1
)林信之,他 3名・コンクリート工学年次論文報
o
l
.1
5,N~ 2
,p
p
.
9
7
7
9
8
2,1
9
9
32
)
A
I
J
:
C
F
T設計施工指
告集, V
針,第 2版
, 2
0
0
8
.1
03
)山本貴正,他 3名 AI]構造系論文集,
Vo1
.7
8,N
o
.
6
8
5,p
p
.
5
9
7
6
0
5,2
0
1
3
.
34
)北風野歩,他 3名:
コンクリート工学年次論文報告集, V
o
l
.
2
5,N
o
.
2,p
p
.
9
7
7
9
8
2,
2
0
0
35
)中原浩之 崎野健治 AI.T構造系論文集, Vo1
.
5
6
7,
p
p
.1
8
1
1
8
8,
2
0
0
3
.56)雨宮篤,野口博 AI]大会学術講演梗概集
構造 II,p
p
.
6
3
9
6
4
0,1
9
9
0
.
1
0 7)藤本利昭,他 6名 :
AI]構造
系論文集, V
o
l
.
7
8,N
o
.
6
8
5,p
p
.
5
9
7
6
0
5,2
0
1
3
.
3
j
主 北風野ら 4
)は,繊維混入率 2
.0
唱で実験を行っている。
げモーメントの最大値に差がない供試体を標本として
1
)(
2
) の安定圧縮耐力および
いる。図中の破線は,式 (
前 述 2章から算出した安定曲げモーメントの計算値を
表している。鎖線は,安定圧縮耐力の計算値に l
sを加
味して算出した安定曲げモーメントの計算値である。
3
s以内に,そ
同図より安定曲げモーメントの計算値の l
の実験値が位置していることがわかる。
4. 圧縮靭性の改善
前述 3章より,角形 CFT柱に高強度材料を使用する
*l国立豊田工業高等専門学校建築学科 准教授イ専 :
1(工学)
*
2三重大学大学院工学研究科 准教授・博士(工学)
ド3愛 知 L業大学工学部建築学科教授司工同
3
A
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