ハコノオウチ - INAX REPORT

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設計:石川淳/石川淳建築設計事務所+
石川直子/アトリエきんぎょばち
生活と創作活動の距離感を考える
─
石川 淳|Jun Ishikawa
各室の配置
まず、アトリエ→玄関・ポーチ→リビング→ダ
イニング→趣味室→寝室と必要各室をパブ
リック性の高い順番に書き並べ、
これらを断
面ボリュームの輪郭の中に落とし込むことか
石川直子|Naoko Ishikawa
ら空間構成を吟味していった。
─
玄関・ポーチからは、2 階のリビングへ長い階
敷地条件
段を上る。アトリエの高い天井高さが故の長
幹線道路から5分ほど歩いた先の小さな私
い階段だが、創作の場と住居の間にある気
設美術館の横にその敷地はある。幅 5m、
分転換の場でもある。
奥行き19m の細長い敷地で、前面道路幅
リビングは、
ダイニングとテラスに囲まれた谷
は3.5mほど。
間にある。そのため制作活動に追われてキ
施主は新聞社でグラフィックデザインの仕事
ッチンまわりが煩雑になっていても、
リビング
をする夫、
そして銅版画家の妻である。
からは見上げになるためスッキリと見せること
彼らから与えられたプログラムは、妻の銅版
ができる。
画のアトリエを併設した住宅で、
住まいからア
テラスは隣家に囲まれた敷地の中で開放性
トリエへ
“通勤する”
ように移動することが希
を獲得し、
また
“プライベートな空”
を切り取っ
望だった。
て施主にプレゼントするための装置として取
─
り入れた。
プログラムから
最もプライベート性を重視すべき寝室は、
リ
アトリエには天候に左右されづらい安定した
ビングからさらに階段を下りた先に置き、途
明るさが必要であり、機材や作品の搬出入
中の踊り場には、趣味室や浴室、
トイレなど
もスムーズにできる必要がある。結果、素直
を設けた。
に道路と同レベルに置くこととした。
サニタリーは狭い敷地幅の中で広がりある
反して、住戸は採光条件の良い上階にする
空間とするため、洗面脱衣室・
トイレ・浴室を
が、高さ制限をクリアし、工事費を抑えるべく
一体の空間とし、置きバスを採用することで、
木造 2 階建てのボリュームの中に納める必
シンプルなワンルーム形式とすることができ
要がある。
た。
“
= パブリックと
“創作の場と住居の距離感”
プライベートの距離感”
をどのようにつくるか
1
が、
今回の大きな課題であると感じた。
早川邦彦建築研究室。1993 年、
インターデザインアソシエイツ。
いしかわ・じゅん─建築家/ 1966 年生まれ。1987 年、建築模型屋。1990 年、東京理科大学工学部二部建築学科卒業。同年、
建築概要
(株)
石川淳建築設計事務所に改組。
2002 年、石川淳建築設計事務所設立。2009 年、東京理科大学工学部二部建築学科非常勤講師。2010 年、
いしかわ・なおこ─建築家/ 1990 年、
日本大学生産工学部建築工学科卒業。同年、
。1995 年、
内藤廣建築設計事務所。
HAN 環境建築設計事務所(旧・ウイング建築事務所)
シーラカンスアンドアソシエイツ。2002 年、大西直子建築設計事務所アトリエきんぎょばち設立。2011 年、
石川直子建築設計事務所アトリエきんぎょばちに改称。
1998 年、
吹抜
テラス
ダイニング
名称:ハコノオウチ|所在地:東京都中野区|家族構成:夫婦|敷地面積:
キ
ッ
チ
ン
96.11㎡|建築面積:56.52㎡|延床面積:108.99㎡|規模:地上 2 階|構
造:木造|工期:2010.4 ─ 2010.9|設計:石川淳建築設計事務所+アトリエき
んぎょばち|施工:アイエスエー企画建設
1 ─ダイニングから見る|2 ─ 南面全景|3 ─アトリエ|4 ─ 住居への階段|5 ─ 洗面・浴室
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テラス階平面図
INAX 使用商品|洗面・浴室|床タイル:サーモタイル ピュアフロアⅡ IFT-
200 / PU-31N,PU-21N、壁タイル:インテリアモザイク シリシア IM-50P1 /
CK1、浴槽:アーバンシリーズ YB-1510 / BW1、洗面器:L-555FC / BW1、
洗面器用水栓金具:LF-E340S
洗面・浴室
収
納
趣味室
床下収納
リビング
2 階平面図
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ッ
チ
ン
N
DESIGN + TECHNIQUE BEST EQUIPMENT HOUSE & HOME
ハコノオウチ
収納
寝室
A
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1 階平面図 1/250
休
憩
室
アトリエ
ポーチ
リビング
床下収納
玄関
水場
テラス
ダイニング
A'
ポ
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チ
趣味室
アトリエ
収
納
洗面・浴室
休憩室
寝室
A-A' 断面図 1/250
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