発電電力不均衡時の 太陽電池発電制御回路の試作

太陽電池の基本
I-Vカーブトレーサ・MPPTについて
太陽電池の発電方法
太陽電池は半導体のp-n接合で出来ており、太陽光
が照射すると光起電力効果によって起電力が発生し
発電ができます。
MPPTの必要性
MPPTがない場合
太陽電池
I-Vカーブトレーサ
ある光源下において太陽電池の性能を評価する装
置で、太陽電池の負荷として接続するとI-V曲線を計
測できます。計測した電圧電流の積で求められる面
積が太陽電池の発電電力となり、結果ある天候下の
最大電力点を求めることができます。
Isc
Iop
電圧
Vop
電力
電流
P
I-V特性
P-V特性
Voc:開放電圧
Isc :短絡電流
Vop:動作電圧
Iop:動作電流
P :出力
バッテリ
電流は電圧の高い方から低い方に流れる性質が
あり、バッテリの電圧が高いと接続ができません。
また例として太陽電池24V、バッテリ12Vの場合、
充電は行えるがバッテリの電圧に従属してしまう
ため太陽電池から最大の電力を供給できません。
MPPTがある場合
MPPT
太陽電池とバッテリ間にMPPTを挿入すると設定
範囲内であれば、バッテリ電圧にかかわらず太陽
電池の発電電力を効率良くバッテリに充電できま
す。
Voc
MPPTの制御方法(山登り法)
MPPT:最大電力点追従装置
Maximum Power Point Tracker
太陽電池は向きや、天候、影などで発電量が大き
く変動し、最大電力点が変化します。そのため太陽
電池が最大で発電するのに必要な装置がMPPTです。
一般的に負荷よりも太陽電池の出力電圧が高い場合
は降圧型MPPTで、逆が昇圧型MPPTとなります。
太陽電池の電圧を一定間隔移動させ電力を計測
し、移動前・後の電力を比較し大きい方に移動ま
たは、とどまるシステムです。この制御法で最大
電力点を追従します。この動きが山を登るように
見えるため山登り法と言います。
最大電力点
80
電力(W)
70
60
50
40
30
20
10
0
0
試作MPPT
10
20
30
40
電圧(V)
50
60
発電電力不均衡時の
太陽電池発電制御回路の試作
神奈川工科大学 藤澤研究室
工学研究科機械システム工学専攻
加藤大輝
近年環境問題の深刻化に伴い、CO2の排出が少ないクリーンエネルギー源が注目されています。
太陽光発電はクリーンエネルギーの中でも代表的なものであり、天候に依存するものの太陽があ
り続ける限り、発電が恒久的に望める発電方法です。また、昨今の自動車産業はハイブリッド
カーや電気自動車の開発と普及を急いでいます。これらの背景から近い将来、太陽電池を搭載し
たハイブリッドカーや電気自動車が普及すると考えられます。しかし、太陽電池を移動するもの
に搭載した場合には発電電力を低減させる様々な問題点が発生します。
本研究では移動体に太陽電池を搭載した際、発生する様々な問題点の中で影の下を通過した際
の発電電力の低下を抑制するシステムの試作と評価を行います。
P-Vカーブの変形とMPPTの誤作動
太陽電池を複数枚直列接続し、各々の太陽電池に
バイパスダイオードを組み込んだ太陽電池システム
に不均一な日射が一部の太陽電池にかかると下図の
ようにP-Vカーブが崩れます。このとき、太陽電池の
最大電力を追従するMPPTの制御が山登り法の場合、
複数ある山の頂点を最大電力点として誤って追従す
る可能性があります。しかし、多系統接続の場合は
このP-Vカーブの変形という現象自体を抑制すること
が可能となり、太陽電池の発電電力低下を抑制でき
る可能性があります。
太陽電池計測用I-Vカーブトレーサと
多系統接続用MPPTの試作
本研究は移動体に太陽電池を搭載した際の太陽電
池と多系統接続時のMPPTの性能を評価するために
I-Vカーブトレーサと多系統接続用MPPTの試作しま
した。これらを太陽電池に接続して、I-V・P-Vカー
ブを計測後にMPPTを動作させ、その際のデータを
計測する事で移動体に搭載した太陽電池の性能を評
価します。
最大電力点
電力
誤認した
追従点
I-Vカーブトレーサ
電圧
P-Vカーブの変形
単系統接続と多系統接続方法
単系統MPPT
複数枚の太陽電池アレイを接続して、それを1枚の太
陽電池とみなして1台のMPPTで制御する方法 です。 一
般的に単系統接続する太陽電池には各々にバイパスダ
イオードが組み込まれます。これは複数枚直列接続さ
れた太陽電池に影がかかるなどして発電電力が低下し
た際にその太陽電池を迂回して著しい発電電力の低下
を避けるためです。
多系統接続用MPPT
軽トラックを用いた走行実験
軽トラックに 太陽電池3枚を単系統接続および
多系統接続し、I-VカーブトレーサとMPPTを搭載し
て神奈川工科大学の敷地内を走行します。その時の
日射変動・太陽電池の向き・影によってどの様に発
電電力が変化するかデータ収集を行っています。太
陽電池の接続法など様々な条件下で最適なシステム
の構築を行っています。
多系統MPPT
1枚の太陽電池アレイに対して1台のMPPTを接続し
個々に制御する方法です。並列接続時に用いられ、
それぞれ独立させた接続法です。単系統接続とは異
なり、太陽電池間の接続はありません。
実験風景
今後の展望
・走行中のP-Vカーブの変形の頻度や形状の分析を行う。
・屋内及び屋外定常実験時に影を再現できる装置の試
作を行う。
・単系統接続と多系統接続のどちらが移動体に適して
いるか評価する