スケルトンカーブのモデル化および実験結果との比較

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日本建築学会大会学術講演梗概集
(北海道) 2013 年 8 月
既存 RC 部材の外付けせん断補強工法に関する研究
その6 スラブ付き RC 梁:スケルトンカーブのモデル化および実験結果との比較
耐震補強
主筋・あばら筋応力
静的載荷実験
スケルトンカーブ
補強部有効幅
○倉本真* 1
加々良昌史*2
阿部隆英*4
正会員
正会員
正会員
正会員
1.はじめに
Juan Jose CASTRO*5
Q(kN)
本報(その 6)では,RC 梁のスケルトンカーブのモデ
ル化および実験結果との比較を行う。
2.スケルトンカーブのモデル化
b
s
Qu
s
Q cr
0.001 b k e
b
RC 梁の曲げ変形およびせん断変形をそれぞれトリリニア
掛悟史*1
樋渡健*3
久保田雅春*4
倉本洋*6
Q(kN)
Qu
0.001 s k e
Q cr
図 1 に梁のスケルトンカーブのモデル化について示す。
b
ke
αy× b k e
s
δ(mm)
b
ke
sδu
( sRu =0.004rad.) sδ(mm)
曲げ特性
せん断および付着特性
図 1 梁のスケルトンカーブモデル
型のスケルトンカーブと仮定して求め,それらを足し合
わせて RC 梁のスケルトンカーブとした。RC 梁のスケル
(6)
Qcr    A    t /  ここで,G はせん断弾性係数,A は等価断面積,L は内
トンカーブの算出方法を以下に示す。
2.1
正会員
正会員
正会員
正会員
s
曲げのスケルトンカーブ
法長さ,κは形状係数,σt は引張強度を示す。
)は付着割裂強度 sQbu
第 2 折れ点での荷重 sQu(式(7)
(1))については鉄筋およびスラブを考慮して算出した。
3)
2)
(式(8)) およびせん断終局強度 sQsu(式(9))3)のいず
)
第 1 折れ点での荷重は曲げひび割れ強度 Q (式(2)
第 1 折れ点までは弾性とし,曲げ弾性剛性 bke (式
b
cr
とし,第 2 折れ点での荷重は曲げ終局強度 bQu(式(3)
)
2)
とした。また第 1 折れ点の剛性低下率αy は式(4)より
れか小さい方の値とした。付着割裂強度 sQbu について,T
形梁では既存梁スラブ下の上端 2 段筋付近に乾燥収縮に
算出し ,有効せい d についてはスラブの鉄筋を考慮した。 伴うひび割れが確認されたため,今回は上端 2 段筋の付
着割裂長さを梁幅からあばら筋間距離まで低減した。せ
第 3 勾配は初期剛性の 1/1000 倍とした。なお,補強試験
2)
体の曲げ終局強度は,補強部の軸筋が既存梁に定着され
ん断終局強度 sQsu について,T 形梁ではスラブはせん断終
ていないため補強部の曲げ終局強度は考慮せず,既存梁
局強度に寄与しないと仮定し,矩形梁として計算を行っ
の曲げ終局強度のみを用いて計算した。剛性については, た。なお,補強部のせん断終局強度は,補強部に接続ア
既報 1)で補強部の曲げ割線剛性への寄与が小さいことから, ンカー筋を介してせん断力が伝達され,補強部において
補強部を考慮せず,既存梁のみの評価とした。式中の記
アーチ機構が形成されると仮定し,式(10)におけるア
号は参考文献を参照されたい。
ーチ機構の負担せん断力である第 2 項のみを用いて計算
b
ke 
12 EI e
(1)
l3
b
Qcr  2 b M cr l b M cr  0.56  B  Z e
(2)
b
Qu  2 b M u l b M u  a・
t ・
y j
(3)
 y  (0.0836  0.159a / D  0.1690 )(d D) 2
(4)
2.2 せん断および付着のスケルトンカーブ
第 1 折れ点までは弾性とし,補強試験体のせん断弾性
した。補強部有効幅は既報 1)の有効幅の平均値の 75mm と
した。補強部試験体のせん断終局強度は既存梁および補
強部のそれぞれのせん断終局強度を単純累加させること
により算出した。また全試験体とも,せん断ひび割れ後
の剛性は第 2 折れ点の変形角が 0.004rad.となるよう設定
し,第 3 勾配は初期剛性の 1/1000 倍とした。式中の記号
は参考文献を参照されたい。
剛性 ske(式(5))については接続アンカー筋により既存
の断面と等価な断面を有する矩形梁に置換し算出した。
)
第 1 折れ点での荷重はせん断ひび割れ強度 sQcr(式(6)
また補強部のせん断ひび割れが剛性に与える影響が小さ
s
ke 
GA
L
(5)
s
Qsu  min{Vu1 ,Vu 2 }
(9)
(10)
(11)
2.3 実験結果との比較
図 2 に最大耐力と終局強度計算値の関係を示す。各試
験体の最大耐力については,学会 RC 規準による曲げ終局
Study on Outside Attached Shear Strengthening Methods for Existing RC Members.
Part6:RC Beams with Floor Slab.(Modeling of Skeleton Curve)
(7)
(8)
5 pweσ wy bD
)
tanθ
Vu1  µpweσ wy be je  (vσB 
λ
2
λvσB  pwe σ wy
Vu 2 
be je
3
とした。なお,せん断ひび割れは既存梁に発生しており,
の断面のみで評価した。
Qu  min{s Qbu , s Qsu }
2.5( bu ) bD
}
tan 
s Qbu  ( bu ) je  {v B 
be
2
梁および補強部が一体化していると仮定し,補強試験体
いため,補強試験体のせん断ひび割れ強度 sQcr は,既存梁
s
KURAMOTO Shin, KAKE Satoshi, KAGARA Masashi, HIWATASHI Takeshi
ABE Takahide, KUBOTA Masaharu, Juan Jose CASTRO and KURAMOTO Hiroshi
― 267 ―
強度,既存梁の付着割裂強度および補強部の有効幅 75mm
1.2
を考慮した靭性保証指針 A 法によるせん断強度のいずれ
1.0
±20%
か小さい値で実験値を±20%の誤差内で概ね評価が可能で
0.8
Qexp/bQu
あった。せん断余裕率による破壊形式の判定では,主筋
降伏が認められた試験体 BF-1 および BF-1S の破壊形式を
曲げ破壊型と判定されており,他の試験体はせん断破壊
0.4
および付着割裂破壊と判定され実験結果と対応している。
図 3 に各試験体のスケルトンカーブ,実験におけるせ
0.0
0.0
およびせん断ひび割れの発生点を示す。
全体変形のスケルトンカーブを見ると,曲げひび割れ
図2
500
り,実験における破壊状況と対応している。各試験体の
400
荷重(kN)
強度,せん断ひび割れ強度の順番で剛性低下が生じてお
計算値と概ね一致している。
0.4
0.6
0.8
min{sQsu , sQbu}/bQu
BF-1S
BFT-1S
BST-1A
1.0
1.2
最大耐力と終局強度計算値の比較
300
200
0
500
成分およびせん断変形成分についても同様に示す。ここ
した既存梁の軸方向変位量から算出し,せん断変形成分
は全体変形から曲げ変形成分を差し引いたものである。
AF
BF-1
BF-1S
AFT
BFT-1
BFT-1S
400
荷重(kN)
で,試験体の曲げ変形成分は長さ方向に 7 分割して測定
300
200
100
曲げ変形を見ると,いずれの試験体もひび割れ発生ま
0
500
での剛性は実験値と比べてほぼ同等の値を示している。
概ね評価できている。また最大耐力は曲げ終局強度,付
300
200
100
着割裂強度,およびせん断終局強度のいずれか小さい値
で評価していることが分かる。
AST
BST-1
BST-1A
0
0 4 8 12 16 20 24 0 4 8 12 16 20 24 0 4 8 12 16 20 24
変形量(mm)
変形量(mm)
変形量(mm)
実験値
計算値
3.まとめ
本報(その 6)では,スケルトンカーブのモデル化を行
図3
500
た。得られた知見を以下に示す。
400
荷重(kN)
い,補強 RC 梁の剛性および最大耐力の向上効果を検討し
(1) 補強試験体の終局強度は,付着割裂強度,曲げ終
局強度および補強部有効幅を用いた A 法によるせ
ことが可能である。
0
500
200
100
ることが可能である。
0
0
参考文献
1)
掛悟史,阿部隆英,加々良昌史,倉本洋:既存梁部材の外側せん断補
強工法の開発,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.2,pp.10271032,2012
2)
日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説,2010
3)
日本建築学会:鉄筋コンクリート造建築物の靭性保証型耐震設計指
針・同解説,2001
BFT-1 曲げ変形
4
8 12 16 20 24
変形量(mm)
実験値
計算値
曲げひび割れ
曲げひび割れ
200
BF-1 せん断変形
0
500
bQu
300
300
100
sQu
400
荷重(kN)
荷重(kN)
最大耐力点までの剛性および変形量を概ね評価す
最大耐力点
最大耐力点
sQu
400
BF-1 曲げ変形
400
の曲げひび割れ発生,せん断ひび割れ発生および
500
bQu
200
ん断終局強度のいずれか小さい値で概ね評価する
せん断ひび割れ
せん断ひび割れ
スケルトンカーブ(全体変形)
300
100
(2) 本スケルトンカーブモデルによって,補強試験体
曲げひび割れ
曲げひび割れ
荷重(kN)
と比べて高めに評価しているが,最大耐力点の変形量は
400
荷重(kN)
せん断変形を見ると,ひび割れ発生までの剛性は実験値
大阪大学大学院 工学研究科地球総合工学専攻
東亜建設工業 建築事業本部設計部
東亜建設工業 技術研究開発センター 博士(工学)
飛島建設 建設事業本部トグル事業部
琉球大学 工学部環境建設工学科 准教授・博士(工学)
大阪大学大学院 工学研究科地球総合工学専攻 教授・博士(工学)
0.2
BF-1
BFT-1
BST-1
100
また図 4 に試験体 BF-1 および BFT-1 における曲げ変形
*1
*2
*3
*4
*5
*6
AF
AFT
AST
0.2
ん断力-部材変形量関係の正載荷包絡線,曲げひび割れ
曲げひび割れ強度およびせん断ひび割れ強度の実験値は
0.6
300
200
100
0
0
BFT-1 せん断変形
4
8 12 16 20 24
変形量(mm)
せん断ひび割れ
せん断ひび割れ
最大耐力点
最大耐力点
(左:曲げ変形,右:せん断変形)
図 4 スケルトンカーブ(BF-1,BFT-1)
Graduate Student, Div. of Global Architectural, Graduate School of Eng., Osaka Univ.
Design Department, Architectural Headquarters, Toa Corporation
Research and Development Center, Toa Corporation, Dr.Eng.
Toggle Department, Architectural Business Div., Tobishima Corporation
Assoc. Prof., Dept. of Civil Eng. and Arch., Faculty of Eng., Univ. of Ryukyus, Dr.Eng
Prof., Div. of Global Architectural, Graduate School of Eng., Osaka Univ., Dr.Eng.
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