INFORM

世界の本屋さん
vol.45
た。これはこの店の古書部である。内容は
二階には旧書コーナー︵約五十坪︶があっ
中国・大連
新華書店
大連は中国東北部遼寧省に位置し、瀋陽
ノセ事務所
能勢
仁
市に次ぐ大都市で、人口は六二三万人であ
古典、古典名作、歴史書が中心であった。
新華書店︵約八〇〇坪︶は大連駅から五
舞台にしたミステリーで人気があるとい
る。現地の人に聞いたところ、前者は墓を
コーナーがあった。日本にはない分類であ
文学書コーナーに盗墓小説と都市小説
学書等。
一階はビジネス、法律、経済、歴史、哲
実用書等。
二 階 は 専 門 書、 芸 術、 小 説 類、 音 楽 書、
四階はこどもの本、こどもの広場である。
る。仙台市と同緯度にあり、日本では司馬
遼太郎の﹃坂の上の雲﹄の舞台として有名
である。文学作品では清岡卓行が﹃アカシ
ヤの大連﹄で芥川賞を受賞している。大連
には十八の大学と国立、公立、私立の中高
有名校が多いので、文教都市の一面も特色
分 位 の 所 に あ り、 多 く の お 客 様 を 集 め て い
といえる。
る。店舗は四層で充実している。中でも三
愛心理描写小説で、やはり人気が高いとい
う。この書棚の前には若い女性が多く、選
う。後者は都会の OLやサラリーマンの恋
書していた。
階の学参売場の広いこと、陳列量の多いこ
学習、高中試巻、大学英語、考研図書、保
とに驚嘆した。初中試巻、中学課本、日語
育健身と分類されていた。
(表紙題字・陳舜臣)
9月
大伴家持が晩蝉の歌一首
隠りのみ
居ればいぶせみ
慰むと
出で立ち聞けば
来鳴くひぐらし
世界の本屋さん
﹁書標﹂歳時記
月
著書を語る
○ ﹁ぼくの︿那覇まち﹀放浪記﹂
1
新城
和博
2
書標・書評
﹃イタリアのしっぽ﹄ほか
学
特集
死者との邂逅
科
狂気塾入門
今月のおすすめ
会
インフォメーション
コ ン ピ ュ ー タ
書
本屋うらばなし
﹁POP作りの話﹂
※表示価格はすべて本体価格です。
22
社
芸
術
18
書
書
20
学
自 然 科 学
医
人 文 科 学
文 学 ・ 文
文 庫 ・ 新 書
芸
用
書
地 図 ・ 旅 行
実
童
語 学 ・ 辞 典
児
読者から
24
25
27
28
30
﹃新潮日本古典集成
萬葉集
二﹄
新
( 潮社︶より
4
16
10
19
21
23
25
26
−1−
9 45
6
521
著書を語る
○
︱︱
二十七年間にわたり米軍統治下だったこの島々が四十二年
琉 球 政 府 か ら 沖 縄 県 庁 に、 つ ま り 一 九 四 五 年 沖 縄 戦 の 後、
世紀である。その間に沖縄は、
アメリカ世からヤマトぬ世に、
那覇に生まれて、ずっとこの街で暮らしている。ほぼ半
の消滅﹂と名付けた。馴染みの本屋や喫茶店、電気屋さん
が、気がつくとずいぶん変わっていた。それを僕は﹁街角
れは街の風景である。僕がずっと暮らしてきた那覇の風景
て、近くて遠くにあるものに、目がいくようになった。そ
ということでもないが、時の流れを背にして、後ろをむい
旅というものをしていないヒトになっていた。そのかわり、
新城
和博
前に﹁日本復帰﹂して、喜んだり悔やんだり退屈したり異
に雑貨屋さんが、いつのまにか道路拡張やら新たな駐車場
﹃ぼくの︿那覇まち﹀放浪記﹄
議申し立てしている今日まで、この街でこっそりと生活し
やらになったりしている。日本全国各地の地方都市で見ら
てきた。今は﹁なは﹂と言うが、
百年ちょっと前までは﹁なー
ふぁ﹂と言ったそうな。五、
六百年くらい前、つまり琉球王
れる光景かもしれないが、那覇の場合、この十年でどどっ
の沖縄の生活文化をサブカルチャー的視点で切り取る企画
この慣れ親しんだ那覇のご近所を旅してみようと思いたっ
う も の だ。 い っ た い こ れ は ど う ゆ う こ と だ ろ う。 そ れ で、
るけれど、どんな店があったかは意外にすぐに忘れてしま
失われた街角、そこがかつて海岸だったことは知ってい
波が南の果てには少し遅れてやってくるみたい。
と開発の流れがやってきたようだ。ヤマト政府の政策の余
国の黎明期には﹁うきしま﹂とよばれる、珊瑚礁の切れ間
に漂う小島だったらしい。
そ ん な 街 に あ る 出 版 社 で 編 集 者 と し て、 沖 縄 の 本 を つ
を出し、コラム雑誌を編集した。そしてそれらを﹁沖縄県
たのである。
くってきた。二十代から三十代にかけては、一九九〇年代
産本﹂と名乗るようにしていた。生まれも育ちも沖縄の本
今の風景と重ね合わせて、街の風景の移り変わりにどんな
最初は、記憶の中の那覇の地図を思い浮かべて時を遡り、
で す、 と い う く ら い の 意 味 だ。 い ま 考 え る と 若 気 の 至 り、
そうこうしているうちに、気がついたら僕は、ほとんど
と思わないでもないが、まぁしかたない。
−2−
521
にそんな感じで、沖縄戦によって、かつての中心の町は消
る。﹁街﹂と言ったり、﹁町﹂と言ったりしているが、まさ
那覇という街は、戦前と戦後ではまったく違う町なのであ
し寂しい気持ちになって、そこでさらに気がついた。実は、
へと変化・消滅していく風景のグラデーションだった。少
こで感じたのは、戦後のアメリカ世から復帰後のヤマト世
歩﹂なのだが、最近は﹁まち歩き﹂と言うと話が早い。そ
意味があるのか、ないのか、確かめてみた。簡単に言うと﹁散
だった。
たまちが、まるで初めて訪れたような感覚になるのは快感
他人はそれを﹁妄想﹂と呼ぶわけだが、自分の生まれ育っ
ふ ぁ﹂ の 面 影 が、 少 し ず つ 少 し ず つ 浮 か び あ が っ て き た。
自転車を漕いでいたら、不思議なことに失われた町﹁なー
りにして、古の地図を見ながらずっとずっとシャーシャー
なゆがみ、崖の位置や、奇跡的に残った石門などを手かが
てしまったのだ。しかし、微かな地形の傾斜、道のわずか
名のほとんどは戦争で消滅してしまった。徹底的にやられ
覇まち﹀とは、こうしたいろんな歴史が重なり合って見え
たのが﹃ぼくの︿那覇まち﹀放浪記﹄なのだが、この︿那
この追憶と妄想のまち歩き・自転車散歩のことをまとめ
滅し、戦後、自然発生的に新たな場所に市街地が形成され
ろ う し、 那 覇 市 民 の ほ と ん ど は 気 に し ち ゃ い な い の だ が。
ていく、僕の心の中の︿まち﹀なのである。ちなみにこの
−3−
たのである。那覇を訪れる観光客のほとんどは知らないだ
そう気づいて僕は、戦前の那覇の民俗地図や琉球王朝末
町は一瞬にして消滅するし、時間をかけて生まれ変わる。
本ももちろん﹁沖縄県産本﹂なのです。那覇にお越しの際
にはウラガイドとして手にとって欲しい、です。
期の地図を手にして、かつて﹁うきしま﹂と呼ばれた頃か
ら歴史を重ねていた港町・交易都市﹁なーふぁ﹂の痕跡を
探す旅に出たのである。今度は折りたたみ自転車を漕いで、
戦前の那覇は、琉球王朝の面影を残しつつも、明治・大
川をわたり、海側の町へ。
正の頃のモダンなコンクリートの建物にデパートや芝居小
屋に映画館商店街が建ち並び、町の中心を路面電車が走り、
そのそばにはガジュマルに囲まれた﹁うふまち﹂と呼ばれ
る露天の大市場を抱えていた。今はない町を旅するために、
辞典をガイドブック代わりにした。それは今ある観光ガイ
﹃南島風土記﹄︵東恩納寛惇著︶という戦前執筆された地名
ドの百倍おもしろいのだが、そこで綴られている那覇の地
『ぼくの〈那覇まち〉
放浪記』
ボーダーインク・1,600 円
正直に語られる。
も の で あ り、 著 者 自 身 の 近 況 や 暮 ら し も
思しき女性から、
﹁おまわりさんのいうこ
警察官ともみ合った栗原は、デモ主催者と
﹁飼いならし﹂のために国家が利用する
とをきいてください﹂と咎められたという。
の は、 絶 対 的 な 恐 怖 で あ る。 例 え ば、 世
﹁気ままな暮らしにやっと返ったという
界 的 な 核 保 有 や 原 子 力 発 電 は、 そ れ が 危
のに、この漠とした気分はどうだろう。切
な さ と 不 安 が、 し ん し ん と 忍 び 寄 っ て く
険であればあるほど有効な支配装置とな
﹃イタリアのしっぽ﹄
る。
﹂一生懸命生きたら、
そばに残ったのは、
る。 実 際 の 攻 撃・ 事 故 に よ る リ ス ク は 全
集英社・一五〇〇円
しっぽを持つ生きものだけだった。冷静な
女 性 誌 を 読 む の が 好 き だ。 き れ い な 人、
視線と同じ土地に暮らす隣人への愛情が文
会 秩 序 に 全 面 的 に 服 従 し な が ら、 核 シ ェ
く 計 算 不 能 だ か ら、 人 び と は い ま あ る 社
内田 洋 子
と 思 う、 そ の 時 間 が 楽 し い。 イ タ リ ア 在
センスの良いインテリアを眺めて素敵 !
章にあふれ、エッセイ集というより、まる
ルターの中で﹁ただ生きている﹂ことしか、
で連作短篇小説を読んでいるよう。
出来ないのだ。こうして﹁征服者/奴隷﹂
住三十年の著者によるエッセイ集に登場
︵尚︶
トラストが余韻として長く残る。
﹁あばれる力﹂を取り戻す﹄
のである。
か に 死 ぬ か ﹂ に も 自 覚 的 な﹁ 生 き る ﹂ な
の だ ﹂ と 言 っ た。 大 杉 の﹁ 生 き る ﹂ は 単
大杉栄は、﹁生きるとは爆弾みたいなも
栗原
角川新書・八〇〇円
康著
国家は、ある部族が他の部族を征服、奴
但 し、 そ れ は、
﹁死を恐れぬ﹂ことと同
﹃現代暴力論
の図式は亢進する。
異 国 の 景 色 の 中 の、 癒 し と 孤 独 の コ ン
するのは、まさに雑誌の中にいるような、
素敵なライフスタイルを持つイタリア人
た ち で あ る。 明 る い 日 射 し の 国 で 確 固 と
したスタイルを確立した大人はとても
隷化して収奪することによって成立した。
義 で は な い。 た と え ば テ ロ リ ズ ム は、 自
か っ こ よ く 見 え る。 け れ ど も﹁ ス タ イ ル
獣医のルイザは仕事と引き換えに家族
だから、国家の源には必ず暴力があり、国
らの犠牲を何らかの目的と釣り合わせよ
な の は﹁ あ ば れ る 力 ﹂ を 爆 発 さ せ、 生 を
う と し が ち だ、 と 栗 原 は 指 摘 す る。 重 要
にそ れ は 家 族 で あ る こ と も あ る 。
度重なる増税や借金まみれの人生を押し
拡充することなのだ。
に
﹁生き伸びる﹂
ことではない。むしろ、﹁い
を 失 い、 犬 を 飼 う。 島 で 過 去 の 成 功 に と
家が存続する限り、
﹁征服者/奴隷﹂の図
を持つ﹂ということは、取捨選択をし、そ
らわれるマリーノはタコのアルベルトと
式は維持される。
のスタイルに入らなかったものがあり、時
暮 ら し、 彫 刻 家 の エ ン リ コ は 息 子 が 自 分
つけられ、それでも国家の暴力に気づかな
の代わりにと置いて行った犬を看取り、山
い、あるいは甘受してしまうのは、
﹁奴隷﹂
なのだから。
︵フ︶
﹁生は、永久に解決のない闘い﹂
︵大杉︶
の上で生まれ育つアリーチェは馬に運ば
原発再稼働に反対する官邸前デモに参加、
たちが見事に飼いならされているからだ。
れ恋 を 成 就 さ せ る 。
そ し て 著 者 と 人 び と の 出 会 い 自 体 が、
パートナーとなった飼い犬が運んできた
−4−
﹃不思議というには地味な話﹄
で考えている〟というところにも漠然と
ここでの﹁暴力﹂とは、
マルグリット・デュ
るイラストがある。少し妖しくて怖いよう
り、話と話の合間にはその話と関連してい
はじめとおわりには漫画が収録されてお
別殺人など﹁善/悪﹂の線引きなきスキャ
著名人脅迫、イスラーム国への参加、無差
ではなく、バイトテロやヘイトスピーチ、
惨な政治に対しての反対運動のようなもの
のことである。それは、原発事故以降の悲
ラスの﹁生の発露﹂としての﹁暴力階級﹂
な、懐かしいようなイラストが素敵である。
ンダラスな事件が引き起こす影響のことだ
作者らしさを感じずにはいられない。
日常生活でなんとなく不思議に思うこ
毎日ポロポロと零してしまっている重要
ナナロク社・一六〇〇円
と、 何 気 な く し て し ま っ て い る こ と 、 特
だったり重要じゃなかったりする日常のカ
と廣瀬はいう。資本のもとに社会全体が包
近藤 聡 乃 著
に人に話すようなことでもないようなこ
摂されている閉塞状況では、恥辱を感じた
ニューヨーク在住の現代アーティスト、
と、 ひ と つ ひ と つ を 小 さ い 頃 の 経 験 な ど
ケラを拾い集めて大切にしようと思える、
近藤 聡 乃 の エ ッ セ イ 集 。
を 通 し て と て も 丁 寧 に 考 え、 綴 ら れ て い
︵ね︶
個人が発狂する自由を見出し、
﹁暴力﹂が
宝物にしたくなるそんな本だ。
噴 出 す る。
﹁ 絶 望 ﹂ の あ と に く る 事 件 は、
権力に対する根底的な異議申し立てであ
い 深 い 〟 と い う 表 現 が お も し ろ い。 特 に
て い る。 こ の 問 い と 答 え、 そ し て〝 味 わ
てとても味わい深い答えであると書かれ
て い る。 そ し て、 こ の 答 え は 作 者 に と っ
小さい自分﹂が不動の一位であると答え
と し て あ り え な い サ イ ズ の﹁ 二 回 り ほ ど
て し ま う と の こ と だ。 こ の 答 え と し て 人
て い る と き、 つ い こ の 問 い に つ い て 考 え
に規定されない純粋な暴力に可能性を見
お け る 法 措 定 の 神 話 的 暴 力 の 批 判 や、 法
はない。それは本書が、
﹃暴力批判論﹄に
で も、 直 接 ベ ン ヤ ミ ン が 論 じ ら れ る こ と
/フーコー/ベンヤミン﹂と題された章
ンヤミンであるにもかかわらず、
﹁平井玄
に想起されるであろう人物がソレルやベ
使用される。ここでは、
﹁暴力﹂から直ち
今日の情勢下で、
﹁暴力﹂は様々な別名で
廣瀬
航思社・二三〇〇円
純著
﹁資本主義の終焉﹂を目の当たりにした
自体に警鐘を鳴らしている。
のではなく、決起せざるを得ない状況それ
でしかない。両者とも、蜂起を促している
だろう。
﹁暴力﹂に抗うのは純粋な﹁暴力﹂
力﹂論に急接近しているのも偶然ではない
一度は遠く離れたはずのベンヤミンの﹁暴
て の﹁ 暴 力 ﹂
、 そ う い っ た 意 味 に お い て、
装置であった。それらに抵抗する手段とし
を奪う﹁パノプティコン﹂
︵同︶的な抑圧
コー︶を作り出す暴力諸装置であり、自由
り、それは分離︱結合を繰り返す。事件は
この〝味わい深い〟がとても印象的で、ふ
出すという事から遠く離れて、
﹁暴力﹂を
情勢下の政治哲学2011︲2015﹄
﹃暴力階級とは何か
る。書籍のタイトルとなっている通り、不
思議なことは不思議なのだが不思議とい
うに は た し か に 地 味 な 話 ば か り だ 。
〝夜道ですれ違ったら一番怖いものは何
わふわとした近藤聡乃の魅力の端を捉え
論じようとする試みだからである。
か 〟 と い う 話 が あ る。 作 者 が 夜 道 を 歩 い
たような気がしてしまう。また、〝夜道で
︵涼︶
敵 は あ く ま で も﹁ 権 力 の 網 の 目 ﹂
︵フー
﹁暴力階級﹂の到来を告げている。
すれ違ったら一番怖いものは何かと夜道
−5−
今月の﹁愛書家の楽園﹂は、道家英穂
﹃ 死 者 と の 邂 逅 ︱︱ 西 欧 文 学 は︿ 死 ﹀ を
ましょう。
そこを中心に、作品に表された死生観を
者 と 思 い が け ず 再 会 す る 場 面 に 着 目 し、
り返し描かれてきた、死別の場面や、死
︽ 本 書 は、 西 欧 文 学 史 に 残 る 作 品 に 繰
デスを訪れる話がある。オデュッセウス
歌われる。その冒険のひとつに、冥府ハ
までに経験する、不思議な冒険の数々が
雄オデュッセウスが、故郷イタケに戻る
トロイア戦争を戦い終えたギリシアの英
さ れ る 叙 事 詩﹃ オ デ ュ ッ セ イ ア ﹄ で は、
ホメロス、松平千秋訳﹃オデュッセイア﹄
先行作品との違いや時代思潮との関連に
は魔法をあやつる女神キルケの指示に従
︵全二巻、岩波文庫・上 九〇〇円、下
おいて時代順に考察したものである。︾
い、 盲 目 の 予 言 者 テ イ レ シ ア ス の 霊 に
どうとらえたか﹄︵作品社・二四〇〇円︶
著者の道家氏は、東京大学大学院博士
会って自分の将来の運命を教えてもらう
を中心に、同書で取り上げられた文学作
課程在学中にダンテ﹃神曲﹄の読書会に
ために、生きたまま冥界に行く。このエ
︽古代ギリシアの詩人ホメロスの作と
参加したことをきっかけに死生観の変遷
ピソードに、我々は当時の死生観をうか
八四〇円︶
をテーマにした研究をはじめ、一九九三
がうことができる。︾
品、参照されているさまざまな人文書を
年には本書第一章、第二章の原形となる
展示するフェアを行ないます。
最初の論文を発表しています。この本は
ウェルギリウス、杉本正俊訳﹃アエネー
一九五八年生まれの道家氏の初めての単
ホメロスから強い影響を受けながら、叙
著 で す が、 そ の 二 十 余 年 の、 あ る い は
事詩﹃アエネーイス﹄を書いた。この作
︽古代ローマの詩人ウェルギリウスは、
この﹃死者との邂逅﹄が、文学史上の
品の主人公アエネーアスは、ギリシアの
イス﹄︵新評論・五五〇〇円︶
名作に現われる死生観やその背景となっ
敵、トロイアの英雄である。トロイアが
三十年になんなんとする長い年月の、ま
た時代状況をどのように分析しているの
さに集大成と言えるでしょう。
か、同書からの抜粋で見ていくことにし
−6−
ちでいくさに勝利を収める。この﹃アエ
く。そこで先住民と戦い、最後は一騎打
がて定めの地であるイタリアにたどり着
ようが、ローマ建国の使命を担って、や
一行は、辛酸をなめながら地中海をさま
陥落して、国を追われたアエネーアスの
ハ ム レ ッ ト ﹄︵ 白 水 U
シェイクスピア、小田島雄志訳﹃シェイ
が来世への旅の記録である。︾
な か っ た。 こ れ に 対 し、﹃ 神 曲 ﹄ は 全 篇
冒険のなかのひとつのエピソードに過ぎ
への旅は、主人公が経験するさまざまな
ア﹄や﹃アエネーイス﹄においての来世
とることができる。また﹃オデュッセイ
営者マーリーの亡霊が現れ、ついでマー
奴スクルージのもとに、かつての共同経
キャロル﹄︵新潮文庫・四〇〇円︶
ディケンズ、村岡花子訳﹃クリスマス・
相関物の器からあふれ出てしまうのだ。︾
えに﹃ハムレット﹄では、情緒が客観的
来単純な枠組みとは釣り合わず、それゆ
て﹃神曲﹄を書いたが、そこには叙事詩
わけても﹃アエネーイス﹄を強く意識し
生 観 で あ る。 ダ ン テ は 古 典 古 代 の 文 学、
西ヨーロッパのキリスト教的宇宙観・死
︽﹃神曲﹄の思想的基盤をなすのは中世
獄篇 一四五〇円、天国篇 一四八〇円︶
談社学術文庫・地獄篇
言えよう。︾
ス︵地獄︶が存在することがその特徴と
なかにエリュシオン︵極楽︶とタルタロ
転生の考え方が見られることや、冥界の
い独自の死生観が見られる。浄罪と輪廻
ないという心情が﹃ハムレット﹄には盛
する人への思いは死を隔てても断ち切れ
あるという認識、それにも関わらず、愛
死は終わりであり、死後の世界は未知で
て は な ら な く な っ た の で あ る。︵ ⋮⋮︶
しみを自己の内面において引き受けなく
されたために、人々はかえって死別の悲
関心を持ち続けた。むしろ儀式が簡略化
やはり人々は近親者の死後の運命に強い
の 意 識 か ら 煉 獄 の 概 念 が な く な っ て も、
単にはできなかった︵⋮⋮︶。一般の人々
トリック的﹁迷信﹂を消し去ることは簡
がそれによってすぐに国教会の考えるカ
し、﹁ と り な し ﹂ の 儀 式 を 廃 止 し た。 だ
︽イギリスの宗教改革は葬儀を簡略化
ブックス・九〇〇円︶
亡霊となって出てくることが示唆され
より、これから始まる物語にマーリーが
︵⋮⋮︶﹃ハムレット﹄の亡霊への言及に
で、﹃ ハ ム レ ッ ト ﹄ を 引 き 合 い に 出 す。
く承知していたと語り手は強調した上
スクルージもマーリーが死んだことをよ
う 言 葉 が 執 拗 に 繰 り 返 さ れ る。︵ ⋮⋮︶
頭では、﹁死んでいる﹂︵dea d︶とい
がらこの﹃クリスマス・キャロル﹄の冒
現在も広く親しまれている。/しかしな
て 心 温 ま る 雰 囲 気 を 体 現 し た 話 と し て、
呼んだこの作品は、クリスマスの楽しく
物語である。発表当時から大変な評判を
結果、この偏屈な老人が改心するという
ジを時空の旅に連れて行く。そしてその
のクリスマスの霊が、それぞれスクルー
リーが遣わした過去、現在、未来の三人
︽﹃クリスマス・キャロル﹄とは、守銭
冥界下りのエピソードがあり、そこには
クスピア全集
の伝統を受け継ごうとすると共に、キリ
り込まれている。それは復讐劇という本
ネーイス﹄にも、その中ほどの第六巻に
﹃ オ デ ュ ッ セ イ ア ﹄ の 影 響 と 共 に、 新 し
スト教の立場から古代ギリシア・ローマ
一四三〇円、煉
ダ ン テ、 原 基 晶 訳﹃ 神 曲 ﹄︵ 全 三 巻、 講
の世界観を修正しようとする意図を見て
−7−
23
夭折はこの作品の隠れた側面を垣間見せ
簡潔に語られるスクルージの妹ファンの
︽﹃ ク リ ス マ ス・ キ ャ ロ ル ﹄ に お い て、
二六〇〇円︶
ル ガ ッ ソ ー の 広 い 海 ﹄︵ 河 出 書 房 新 社・
鴻 巣 友 季 子・ 小 沢 瑞 穂 訳﹃ 灯 台 へ / サ
ヴァージニア・ウルフ、ジーン・リース、
を示している。︾
この物語とシェイクスピア悲劇との乖離
あ る。 だ が そ の ユ ー モ ラ ス な 語 り 口 が、
驚異的﹂な話なのだと主張しているので
物語も、本物の亡霊が登場する、﹁不思議・
る。語り手は﹃ハムレット﹄同様、この
示唆しているように思われる。︾
両者の間になんらかの関連があることを
ジ ー 夫 人 の 死 を 告 げ る と い う 書 き 方 は、
べ、 さ ら に 第 三 章 の 終 わ り で 突 然 ラ ム
リウスを読んでいたことを繰り返し述
が第一章と第二章の末尾で彼がウェルギ
ということも全く触れられていない。だ
氏がウェルギリウスの何を読んでいたか
的なつながりはない。またカーマイケル
でいたことと、ラムジー夫人の死と内容
カーマイケル氏がウェルギリウスを読ん
老 人 で、 預 言 者 を 思 わ せ る 人 物 で あ る。
だが人の心の内が読めるらしい謎めいた
︽ カ ー マ イ ケ ル 氏 は 詩 人 で あ り、 無 口
う。アーノル神父からまず、死と審判に
審判・地獄・天国﹂についてであると言
たって話すのは、﹁四終﹂すなわち﹁死・
ル 神 父 は、 自 分 が こ れ か ら 数 日 間 に わ
で あ る。﹃ 肖 像 ﹄ で、 静 修 を 施 す ア ー ノ
を聞いて、祈りや黙想をして過ごすもの
養で、一定の期間、俗世間を離れ、講話
以来、広く行われるようになった精神修
ナ テ ィ ウ ス・ デ・ ロ ヨ ラ に よ る﹃ 霊 操 ﹄
修を受けることになる。静修とは、イグ
ぶようになる。/そんなとき、学校で静
識にわななきながらも、繰り返し足を運
売春宿に入って女を知る。以来、罪の意
る。ある日、彼は街をさまよった挙げ句、
ついての話を聞くスティーヴンは、神父
リシーズ﹄
︵全四巻、集英社文庫・第一巻
︽﹃ ユ リ シ ー ズ ﹄ は、 ホ メ ロ ス の﹃ オ
験だった。︾
ヴンにとっては、大変切実で恐ろしい体
の説くままに自分の最期を思い描く。そ
る も の で あ っ た。︵ ⋮⋮︶ こ れ に 対 し、
一一五〇円、第二巻∼第四巻 一一四三円︶
デュッセイア﹄を小説の枠組みとして用
れは、︵⋮⋮︶売春宿に通うようになって、
で亡くなってしまう。しかも彼女の死は、
︽ ス テ ィ ー ヴ ン は、 ジ ョ イ ス 自 身 と 同
いており、第六挿話は、﹃オデュッセイア﹄
ジェイムズ・ジョイス、丸谷才一訳﹃若
前後の文脈とは切り離された次のような
じ、イエズス会系のクロンゴウズ・ウッ
の第十一巻、オデュッセウスが冥府ハデ
二十世紀の小説家ヴァージア・ウルフの
短い文章で唐突に語られるのである。[ラ
ド校とベルヴェディア校に学び、厳格な
スを訪れる話に対応している。またこの
自らを罪深い人間と感じていたスティー
ムジー氏は暗いある朝、廊下をよろめき
宗教教育を受ける。そのベルヴェディア
挿話には、ウェルギリウスの﹃アエネー
い藝術家の肖像﹄︵集英社・三八〇〇円︶
歩きながら両腕を差し伸べた。だがラム
校時代、思春期を迎えたスティーヴンは、
ジェイムズ・ジョイス、丸谷才一訳﹃ユ
ジー夫人は前の晩に突然亡くなってい
心のなかに湧き起こる欲情に悩まされ
夫人自身が小説のなかば、第二部第三章
て、両腕を差し伸べるも、腕のなかは空
﹃ 灯 台 へ ﹄ で は、 主 人 公 で あ る ラ ム ジ ー
のままだった]︾
−8−
母の霊、父の霊と抱き合おうと試みて果
い。/オデュッセウスもアエネーアスも、
訴えかける死者の彫像を見るにすぎな
葬馬車のなかから、誰に対するともなく
直接対面する場面はない。ブルームは会
や﹃アエネーイス﹄と同じだが、死者と
て い る と い う 点 で は﹃ オ デ ュ ッ セ イ ア ﹄
の葬儀に行く話で、死がモチーフになっ
第六挿話は、ブルームが友人ディグナム
に行く話であった。︵⋮⋮︶﹃ユリシーズ﹄
第六巻も、主人公のアエネーアスが冥界
が 随 所 に 見 ら れ る。﹃ ア エ ネ ー イ ス ﹄ の
イス﹄第六巻への引喩︵アリュージョン︶
なく描き出そうとした、その試みが﹃失
ものに対する願望をも含めて︶余すこと
まな相矛盾する心情を︵時間を超越した
する。時間の世界に生きる人間のさまざ
生の実相を緻密に丹念に描き出し、分析
説 を 書 い た の か。︵ ⋮⋮︶ 彼 は あ く ま で
たら、彼はなぜこれほどまでに長大な小
かっているのだろうか。もしそうだとし
意 味 は、 そ の つ か の 間 の 瞬 間 だ け に か
よって定着させようとした。だが人生の
その一瞬の横溢感を作品に描くことに
た。無意識的回想は時間を超越するとし、
無意識的回想のもたらす至福感であっ
操﹄
︵ 岩 波 文 庫・ 八 四 〇 円 ︶ / 平 井 呈 一
/イグナチオ・デ・ロヨラ、
門脇佳吉訳﹃霊
敏之訳﹃西洋中世奇譚集成
聖パトリッ
クの煉獄﹄
︵講談社学術文庫・八四〇円︶
道士マルクス、修道士ヘンリクス、千葉
成功物語﹄
︵ 白 水 社・ 四 二 〇 〇 円 ︶ / 修
河合祥一郎訳﹃シェイクスピアの驚異の
円︶/スティーヴン・グリーンブラット、
を前にした人間﹄
︵みすず書房・八四〇〇
/フィリップ・アリエス、成瀬駒男訳﹃死
ルーストの誕生﹄
︵藤原書店・四六〇〇円︶
五五〇〇円︶/鈴木道彦﹃マルセル・プ
大熊昭信訳﹃天国の歴史﹄
︵大修館書店・
ン・マクダネル、バーンハード・ラング、
︽結局プルーストは救いの問題につい
潮社・二三〇〇円︶
泰久訳﹃失われた時を求めて 全一冊﹄︵新
マルセル・プルースト、角田光代・芳川
出版局・七〇〇〇円︶/アリス・K・ター
洋訳﹃煉獄の誕生︿新装版﹀
﹄
︵法政大学
ジャック・ルゴッフ、渡辺香根夫・内田
たいへん興味深いものです。
い か に 想 像 し て き た か を 考 え る う え で、
間がその歴史の中で﹁死﹂というものを
都 本 店 地 下 二 階 に て、 九 月 十 日 ∼ 十 月 九 日
前 と 福 岡 店 三 階、 丸 善 名 古 屋 本 店 一 階 と 京
紹 介 し た 書 籍 は、 池 袋 本 店 一 階 エ レ ベ ー タ
*愛 書 家 の 楽 園・ 特 集﹁ 死 者 と の 邂 逅 ﹂ で ご
︵作品社編集部・青木誠也︶
二巻、文春文庫・各七一〇円︶
二 五 〇 〇 円 ︶ / 立 花 隆﹃ 臨 死 体 験 ﹄
︵全
編﹃ミセス・ヴィールの幽霊﹄
︵沖積舎・
われた時を求めて﹄なのである。︾
また、紙幅の都合から詳しい内容の紹
たせなかったが、再会することはできた。
だがここでは、死者は命のない彫像とな
り、生者と意思をかよわせることはない。
介はできませんが、本フェアでは以下の
て、明確な回答を提示していない。ダン
ナー、
野崎嘉信訳﹃地獄の歴史︿新装版﹀
﹄
書籍の展示も行ないます。いずれも、人
テが﹃神曲﹄で示した、来世の実在と宗
︵法政大学出版局・四三〇〇円︶/コリー
ここに現代の死が示されている。︾
教的な救いを彼は否定する。彼にとって、
までフェア展開中です。
︽
︾ 内 は す べ て﹃ 死 者 と の 邂 逅 ﹄ か ら
の引用です。
宗 教 的 な 救 い の 代 わ り と な り う る の は、
−9−
ります。不良漫画のタイトルみたいです
体当たりで気軽に狂気に触れていただこ
が、狂気とは⋮⋮とムツカシく考えるの
うというフェアでございます。気軽と言
八月某日、永遠に思われた夏休みも終
大 人 は 私 で す。 締 め 切 り を 目 の 前 に し、
いつつも、ちょっとばかりハードな道場
盤に差し掛かり、子ども達が読書感想文
この原稿の前で静止すること六時間。一
なので、道場破りのつもりでハートを鍛
文にほろ苦い思い出がある大人の方にも
文字もない原稿用紙はまさに銀世界、涼
え な が ら 楽 し ん で 頂 け れ ば と 思 い ま す。
は ま た 今 度 ! と い う こ と で、 読 書 感 想
感はおろか寒気すら感じます。最近は読
押忍。いざ、狂気塾へ⋮⋮
の 締 め 切 り に 怯 え 出 す 今 日 こ の 頃。 今、
書感想文の書き方がわからない子ども達
誰よりも子ども達の気持ちに寄り添える
のために、読書感想文のテンプレートな
ら逃げ続けた青春時代を呪うとしましょ
う⋮⋮気持ちに蓋をして、読書感想文か
ロードしてこの原稿に取り掛かろうと思
やっている煮卵が美味い店。その手前の
れるその横丁の、寡黙なオヤジが独りで
る 下 町。﹁ 呑 ん べ い 横 丁 ﹂ の 名 で 親 し ま
のみが、ふらりふらりと迷い込む、とあ
喜怒哀楽を置き忘れ、退屈を極めた者
るものが存在するそうです。私もダウン
う。今年の夏休みも読書感想文が書けな
角を曲がると古ぼけた雑居ビル、一階に
うな三角形が描かれたレコードジャケッ
か っ た 子 ど も 達、 悪 い こ と は 言 わ な い、
トは、ずっとウインドウに置かれている
はレコードショップだ。吸い込まれるよ
さぁ、話が激しく逸れましたが、読書
せいか日焼けして今にも消えてなくなり
来年こそは夏休みの全てを費やしてでも
感想文における最大の難関・導入部を全
そうだ。あのレコードのタイトルは﹁狂
読書感想文を完成させよう。
に及んだ私も、四の五の言わずに、本の
く関係のない話でやり過ごすという狂行
気 ﹂ ⋮⋮ そ ん な こ と を 思 い 出 し な が ら、
ジ ッ ク で こ う 書 き 殴 ら れ て い る。﹁ 狂 気
油 粘 土 色 の ド ア に は 張 り 紙、 黒 い マ
気付けばビルの階段を登っていた。
紹介をしたいと思います。
ただいま、ジュンク堂書店藤沢店では
﹁狂気塾入門﹂なるフェアを開催してお
− 10 −
喋りながら、本の山ひとつを貴方に差し
ち ゃ く ち ゃ ぺ ち ゃ く ち ゃ ⋮⋮ 押 忍。﹂ と
されています? あ、大丈夫ですよ。ぺ
が﹁あ、道場破りの方ですね。事前予約
うっと突っ立っていると、ピンク色の豚
ド キ ア を 彷 彿 と さ せ る 部 屋 で あ る。 ぼ
ること。積み上げられた本の山がカッパ
道は嘘みたいに軽いドアを開け、中に入
にも、振り返れば階段がない。残された
塾 貴方の狂気を鍛えます。﹂引き返そう
と呼ぶのか⋮⋮。妄想とは誰もが持ち合
逸脱した妄想力を狂気と呼ばずしてなん
てしまいそうなこの二冊。しかし、この
スッと笑いつつも、ちょっとホッコリし
きめきを覚える純粋さ、普通に読めばク
しまいそうな女の子の可愛さ、後者はと
一三五〇円︶
。前者は愛おしさすら感じて
ラブレター
﹃まだ見ぬ君へ ∼ pure love
∼﹄
︵ベストセラーズ・サバンナ八木真澄著・
ない、いつか出会う運命の女性へ書いた
然ボケ八木真澄が、まだ出会ってすらい
ンビ・サバンナのツッコミ担当なのに天
持ち歩きたいバイブルである。
が、出来ることならばポケットに入れて
るどの本よりもハイダメージな一冊だ
笑えない。アラサー女子には今回紹介す
だったと気づくと、笑い飛ばしたくても
その光景が、こんなにも狂気じみたもの
屋で繰り広げる大暴走の女子会︵と言う
三人組から正気を奪い、行きつけの居酒
録である。結婚への焦燥がアラサー女子
名 の 井 戸 端 会 議 ︶。 私 自 身 も お 馴 染 み の
出し、勝手に本のプレゼンテーションを
気がこちらの二冊。圧倒的な実力を誇る
東村アキコ著・各四二九円︶は、描写力
﹃東京タラレバ娘﹄︵一∼三巻、講談社・
同じく狂気ビギナーにおすすめしたい
なく、ただただ緩やかに滑り落ちて行く
円︶
。決して荒れることも、乱れることも
乱楽坂﹄
︵新潮文庫・吉田修一著・四〇〇
が蝕まれて行く様を美しく描いた﹃長崎
家に生まれた少年の心の成長と、その心
− 11 −
始めるのであった⋮⋮。
ピン芸人、バカリズムがOLになりすま
とツッコミが冴え渡る人気漫画家・東村
わせる、一番身近な狂気なのだ。
してリアルなOL生活を綴ったブログを
アキコによる、アラサー独身女子の黙示
りにジワジワ効く静かな狂気を。極道の
た残念な貴方に、まずはストレッチ代わ
これならいける、
と入門を決めてしまっ
『長崎乱楽坂』
書籍化した﹃架空OL日記﹄
︵小学館文庫・
『東京タラレバ娘』
バカリズム著・五三三円︶と、お笑いコ
まずは体験入門気分で気軽に読める狂
『架空 OL 日記』
たらす、抜け出せない苦しみの一冊だ。
なら狂気。貴方に悪酔いに似た感覚をも
この何とも言えない感覚は、強いて言う
も誰か、見えない狂気の存在に悪寒を感
しい描写の中に、弟か、世間か、それと
そして好奇と嫌悪の世間の目。みずみず
ノンフィクション・エッセイ。渇いた喉
た奇才漫画家まんしゅうきつこの衝撃の
をどうぞ。お酒に逃げ、溺れ、狂わされ
社・ ま ん し ゅ う き つ こ 著・ 一 一 〇 〇 円 ︶
戦争という強大な狂気に翻弄された三
ん。押忍。
までついていくしか選択肢はありませ
だとお気付きの方、一度入門したら最後
されるとは、なかなかクレイジーな道場
いします。水分補給でアルコール漬けに
に笑いと悲しみのどぎつい狂気をお見舞
じる、考えさせられる一冊だ。
人のアドルフをめぐる手塚治虫の超大作
そんな静かな狂気の中でもショッキン
グなものがこの二冊。貧困と非行と狂気
ならない。息つく暇もない緊張感と歴史
続 い て は 試 合 に 備 え て、 実 践 的 な ト
にまみれた町で、とても器用とは言えな
に 隠 さ れ た 人 間 ド ラ マ、 そ し て そ の ス
レーニングを積もう。まずは文学界にお
治虫文庫全集・各八五〇円︶も外しては
んち﹄︵小学館・西原理恵子著・五二四円︶。
ケールの大きさに発狂寸前になりながら
ける二大狂気作品と言っても過言ではな
﹃アドルフに告ぐ﹄︵全三巻、講談社手塚
狂気の中でも感じられる人の暖かさにじ
も抜け出せない。ページを開いたら最後、
い生き方でなんとか生きようとする姉弟
わりと胸を打たれるが、全体的に薄汚れ
朝までページをめくる手が止まらない全
の姿が一度読んだら忘れられない﹃ぼく
た世界観が世の中の不条理をストレート
人類に自信を持って薦める作品だ。
い、 王 道 の 二 冊。﹃ ド ン・ キ ホ ー テ︵ ま
に突き付けてくる。そして、社会問題と
倦怠感たっぷりの貴方には、そろそろ水
まだトレーニングに入っていないのに
代表のドン・キホーテの狂った冒険でお
バンテス原作・五五二円︶は、狂人世界
んがで読破︶﹄︵イースト・プレス・セル
良 著・ 五 〇 五 円 ︶。 九 歳 の 少 女 を 殺 害 し
分補給、﹃アル中ワンダーランド﹄︵扶桑
﹃うつくしい子ども﹄︵文春文庫・石田衣
た 容 疑 者 と な っ て し ま っ た 十 三 歳 の 弟、
馴染みの一冊。読書感想文アレルギーの
そ の 弟 の 真 実 を 探 し 求 め る 十 四 歳 の 兄、
− 12 −
『うつくしい子ども』
いえる残虐な少年犯罪をテーマにした
『ドン・キホーテ
(まんがで読破)』
『ぼくんち』
高傑作だ。
て狂気語るべからずと言える、芥川の最
は耐えられるだろうか。これを読まずし
オスの十字架を背負う芥川文学に、貴方
かれた重苦しい一冊。自ら創り出したカ
川を自殺へと追い詰めた様々な狂気が描
文庫・芥川龍之介著・五六○円︶は、芥
蜘蛛の糸 杜子春 外十八篇﹄収録・文春
文豪・芥川龍之介の﹃歯車﹄︵﹃羅生門
に呆れてしまう。
ンに全身全霊すべてを捧げる狂った老人
が、漫画でも十分な破壊力があり。ロマ
方のために漫画でご用意いたしました
の狂気ワールドの虜である。
と思ってしまったら、すでにサミュエル
ブカル漫画だ。読後に思わず
﹁金返せ ! ﹂
と世界観、その全てにおいて一級品のサ
るい絵・ふざけた設定・陳腐なストーリー
密結社﹁黒い綿棒﹂の対決を描いた、ゆ
によって悪人を暗殺する主人公と悪の秘
藝舎・堀道広著・九〇〇円︶は、耳かき
だ。﹃耳かき仕事人サミュエル﹄︵青林工
O間違いなしの、コッテコテのB級小説
ト レ ー ニ ン グ の 足 り な い 塾 生 は 一 発K ・
ゆる狂気のデパートは、一度入店したら
レード。変態・宗教・暴力、ありとあら
れでもかと詰め込んだ、タブーのオンパ
五七一円︶は、エログロナンセンスをこ
りにも眩しすぎて、勝てる気がしない。
画は何故こんなにも眩しいのか⋮⋮あま
と輝く狂気が眩しい。松本大洋の青春漫
エネルギー、若さって眩しい。キラキラ
う。彼らの無鉄砲感、突き動かす青春の
良はなかなかいない、いや、いないだろ
断するべからず、ここまで不良らしい不
青春の記録。男子高校生を子どもだと油
若さという狂気を武器にした不良たちの
第 一 試 合﹃ 青 い 春
松本大洋短編集﹄
︵ 小 学 館 文 庫・ 松 本 大 洋 著・ 六 一 九 円 ︶
う名の修行を積んだ猛者だ。押忍押忍。
の対戦相手も狂気塾でトレーニングと言
しろ大好物だ。試合は全部で四試合。ど
なら、対戦相手はもはや敵ではない。む
監 督・ 園 子 温 に よ る 壮 大 な 恋 愛 叙 事 詩
級 サ ブ カ ル 臭 が キ ツ い こ の 二 冊。 映 画
地獄のトレーニングをくぐり抜けた貴方
てきたところで、試合をしよう。大丈夫、
そろそろハートもいい感じに仕上がっ
『青い春
松本大洋短編集』
ジャンキー集いし﹁悪魔の館︵ヘルハウ
︵ 講 談 社 文 庫・ 中 島 ら も 著・ 五 九 〇 円 ︶。
第二試合﹃バンド・オブ・ザ・ナイト﹄
『バンド・オブ
・ザ・ナイト』
と 見 せ つ け ら れ た と こ ろ で 変 化 球、 B
常人には理解し難い狂気をまざまざ
﹃愛のむきだし﹄︵小学館文庫・園子温著・
『愛のむきだし』
− 13 −
い哀愁を漂わせる。
ような狂気の底辺暮らしが何とも言えな
が衝撃的。徐々に崩れ落ちて行く、夢の
なるトリップ描写と常識を逸脱した生活
でいるこちらまでラリってしまいそうに
れる中毒者たちの乱痴気悲喜交々。読ん
ス、 よ う す る に 中 島 家 ︶﹂ で 繰 り 広 げ ら
り 攻 撃 し て く る の で あ る。﹁ と ん で も な
リと針を刺すように一瞬の狂気がこっそ
わらかく、とてつもなくナイーブ、プス
異臭を漂わせていた一冊。どの作品もや
狂気と無縁に見えて吸い込まれるような
カオスな漫画たちに囲まれながら、一見
高野文子著・一一〇〇円︶。とある書店で、
第 四 試 合﹃ 絶 対 安 全 剃 刀 ﹄︵ 白 泉 社・
ンストップのウサギ地獄絵図である。
突っ込んで行くその姿、狂気を孕んだノ
に向かって心乱されることなく無表情で
トイックなウサギさんに背筋が凍る。死
とあらゆる自殺方法にチャレンジするス
が強すぎるウサギさんだ。淡々と、あり
てキュートなウサギさん。そう自殺願望
相手はちょっとクレイジーだが飛び抜け
い 漫 画 を 読 ん で し ま っ た。﹂ と 何 年 先 も
の姿。初めて目にする人の誰もが息を飲
れた、生々しいほどのありのままの沖縄
沖縄で生まれ育った彼の目で切り取ら
のスパルタ試合を制した貴方でも、丸腰
との練習試合をブッキングした。狂気塾
利を納めた貴方にマッドなイギリス代表
壮絶な四試合、屍寸前でズタボロの勝
マックスだ。今回の対戦相手は一筋縄で
とができた暁には、貴方も立派なマッド・
貴方次第。松竹梅全ての階級を制するこ
するか、ウイニング・ロードにするかは
道は開かれた。この道をデス・ロードに
者との試合を用意した。さあ、王者への
− 14 −
心に残る、貴方の心に小さな狂気を宿ら
む圧倒的な力強さで、彼の目には狂気が
では挑めない﹃自殺うさぎの本﹄
︵全三巻、
せる名作だ。
宿っているに違いない。木村伊兵衛賞の
はもちろんいかない、マニアックで強烈
感を感じさせるダークホースだ。
青山出版社・アンディー ライリー著・各
貴方に、狂気塾出身・狂気三階級世界王
マスターへと成長︵あるいは変貌︶した
数々の試合をくぐり抜け、屈強な狂気
『自殺うさぎの本』
九〇〇円︶だ。油断するのも無理はない、
『絶対安全剃刀』
受賞はもはや当然と言わんばかりの敗北
石川竜一の詩的かつ哲学的な写真集だ。
魔に魂を売り渡した﹂と評される写真家・
舎・石川竜一著・五○○○円︶
。
﹁写真の悪
第三試合﹃絶景のポリフォニー﹄
︵赤々
『絶景のポリフォニー』
ぎる面々だ。気合い新たに、
押忍押忍押忍。
なリアリティーを戦術にする個性が強す
に迫った一冊。香港の高層スラムという
し、無事に帰還した勇者による魔窟の謎
入を拒み続けた謎に包まれし魔窟に侵入
様々な都市伝説を持ち、外部の人間の侵
﹁一度入ったら二度と出られない﹂など
今 は な き 幻 の 巨 大 ス ラ ム 街・ 九 龍 城 砦、
い。世界、狂ってるなぁ。⋮⋮ばたん。
力だ。どうやら修行がまだ足りないらし
知らされる。そう、これが世界王者の実
界を知った顔には誰もなれないなと思い
世の中を知ったような顔はできても、世
でお届けする。摩訶不思議溢れる世界に、
置いたらなかなか邪魔な有難いサイズ感
松 級 世 界 王 者 の 前 に、 敢 え 無 く 撃 沈。
あの店先にあるトリコロールカラーの不
間に貴方も床屋にハマらぬよう、要注意。
三 八 〇 〇 円 ︶。 奇 妙 マ ニ ア・ 佐 藤 健 寿 が
二巻、エクスナレッジ・佐藤健寿著・各
り、松ですね︶世界王者﹃奇界遺産﹄︵全
ついにラスボス、松級︵うな重はやは
なく険しい。まだまだ破らねばならぬ道
ではない。読書という修行の道は、果て
退屈を極めし者よ、道場は狂気塾だけ
が上がったピンク色の豚が倒れていた。
貴方の名が刻まれた。そして傍らには息
しかし、狂気塾には狂気マスターとして
王者の風格を匂わせる。
過酷な暮らし、人間のパワーが竹級世界
特異な景観と、劣悪な無法地帯の中での
梅級︵居酒屋でお馴染みの美味しそう
な 響 き ! ︶ 世 界 王 者﹃ 東 海 道 中 床 屋 ぞ
めき﹄︵風人社・林朋彦著・一四〇〇円︶。
こやつ、床屋に魅せられ取り憑かれたの
すぐった東海道中、床屋コレクターの狂
か⋮⋮? 国宝級の古き良き床屋を選り
思議なグルグル看板に狂ったように魅
世界中から集めた選りすぐりの珍景エ
場が、書店には星の数程ある。
貴 方 の 無 敗 記 録 は 破 ら れ た の で あ っ た。
入ってしまったら間違いなく負けるぞ。
リート。奇妙な想像力か、強烈な信仰心
︵藤沢店・成島︶
か、平々凡々に生きていたらお目にかか
To be continued...
竹級︵隠れ家的小料理屋の名前?︶世
れない裏・世界遺産を集めたエキセント
界 王 者﹃ 九 龍 城 探 訪 魔 窟 で 暮 ら す 人 々
気がはみ出す執念の床屋あつめ。知らぬ
『奇界遺産』
リックな狂気のテーマパークを、部屋に
『九龍城探訪』
﹄︵イースト・プレス・
City of Darkness
グレッグ・ジラード他著・三五〇○円︶。
− 15 −
『東海道中床屋ぞめき』
権力の終焉
社 会 科 学
モイセス・ナイム著
本書はアメリカ
では高く評価されており、帯にもあるよ
うに、フェイスブックCEO主宰のブッ
ククラブで第一回の課題書に選ばれた作
品である。著者の様々な経験と研究を通
出されたのをもとに書かれた解説書。本
来は市民に分かりやすい民法にするため
に進められてきたが、大規模から中規模
な改正になったと評価を下している。そ
れでも、企業法務の現場や市民も民法の
条文を使う場面が増えるのではないかと
日本人ビジネスマン、
アフリカで蚊帳を売る
持するための様々な障壁が崩壊したこと
いる。そうなってしまったのは権力を維
べ脆弱になっていることを明らかにして
が強かったが、今後は夏の短期決戦のた
な限り多くの企業にエントリーする傾向
さざるを得なくなった。これまでは可能
り、学生は就活のやり方を根本から見直
昨今、就活開始時期の大幅な遅れによ
たメーカーだが、その技術を応用した蚊
商品である。もともと農薬関係に強かっ
なく、糸に防虫剤をしみこませた画期的
変な人気を博している。単なる蚊帳では
まアフリカをはじめとする途上国で、大
一八〇〇円
想定されており、約二〇〇項目について
取り上げている。
東洋経済新報社
適社内定
だという。典型例としてインターネット
めに効率的に動かなければならない。そ
帳が一九九〇年代に完成。しかし当初は
住友化学の社員が開発した蚊帳が、い
浅枝敏行著
の普及とその幅広い使用法が挙げられて
全然売れなかった。開発秘話から販売努
村山涼一著
いる。そのことは格差問題など日常生活
こで重要になるのが﹁適社﹂の考え方で
力に至るまで、様々なストーリーのすべ
じて、人類が欲してきた権力が過去に比
に大きな影響を与えるという。
ある。第一志望の大手がダメだからと関
てをまとめた傑作。アフリカという最後
二〇〇〇円
連会社を受けるのではなく、自分のやり
日経BP社
た い こ と が な に か を 考 え、 ど の 企 業 が
一八〇〇円
の巨大市場が舞台で、海外進出の最前線
東洋経済新報社
合っているのかを詳しく調べて見極め
スピード解説
民法︿債権法﹀改正がわかる本
一三〇〇円
が描かれている。
日本経済新聞出版社
南書である。
る。新たな就活時代を勝ち抜くための指
浜辺陽一郎著
二〇〇九年から始まっ
た制定以来一二〇年ぶりの民法改正作業
が進み、今年の通常国会に改正法案が提
− 16 −
社会科学
〝ひとり出版社〟という働き方
西山雅子著
たった一人で出版社を立ちあげて、果
変 え、 活 動 へ の 賛 同 を 大 々 的 に 示 し た。
自治体単位でも、東京都渋谷区で今年の
四月に同性パートナーシップ条例が施行
世紀のビジネスに
デザイン思考が必要な理由
とされるが、就労者の半数以上が職場で
LGBTは全人口の五∼七%にのぼる
本書はビジネスキャリアの途中でデザ
じる方も多かったのではないだろうか。
ないが、実際の仕事には活かしにくいと感
やメソッドの解説書など関連書は少なく
佐宗邦威著
近年注目されているデザ
イン思考。デザインファームIDEOの本
営業、採算性のことなど、疑問や不安を
働きにくさを感じている。本書は、企業
されたばかりである。
感じる人は多いと思われる。けれども大
と行政の現状の対応と今後の課題が示さ
クロスメディア・パブリッシング
一五八〇円
立てやすく書かれている。
仕方に不慣れな人にも理解しやすく、役
者だけあって、クリエイティブな仕事の
で右脳を使う仕事が下手だったという著
ぎゅっと詰め込まれている。元々論理派
者 の 経 験、 キ ャ リ ア へ の 活 か し 方 ま で
書。デザイン思考の意義、メソッド、著
インスクールに留学した著者による解説
きな出版社に勤務していては、様々な事
二〇〇〇円
情が絡んで本当に出したい本を出すこと
実務教育出版
れた重要な一冊である。
たしてうまくいくのか。流通システムや
21
はなかなか難しいというのが現実である。
赤 々 舎・ 姫 野 希 美、 土 曜 社・ 豊 田 剛、
ミシマ社・三島邦弘など、本書には自ら
図解
合併・再編でわかる
日本の金融業界
銀行・証券・保険といった分野に焦点
菊地浩之著
を当て、戦前から戦後、そしてバブル崩
壊後の現在に至るまで、各企業の変遷の
財閥系や外資系など、合併や再編が繰
歴史を追った内容。
り返されてきている金融業界、本書では
る。 特 に 巻 末 の 系 統 図 は 貴 重 な 資 料 だ。
その流れがわかりやすく解説されてい
知っていて損をしない情報の詰まったこ
− 17 −
出版社を立ち上げた十人の体験談が収録
されている。やりたいことを仕事にしつ
つ、利益も出して生活を成り立たせてい
わってきて、感動的。
一七〇〇円
く、 そ の こ と の 大 変 さ が ひ し ひ し と 伝
河出書房新社
職場のLGBT読本
﹁ありのままの自分﹂で働ける環境を
目指して
柳沢正和・村木真紀・後藤純一著
最近、LGBTの支援に取り組む企業
一五〇〇円
や自治体が目立ってきた。たとえば、大
平凡社
の本は、若手ビジネスマン必携の一冊だ。
ンボーウィークに原宿店の看板を六色に
手ブランドのGAPは、昨年の東京レイ
社会科学
ヘルシープログラマ
じる様々な症状。それらをどうしたら回
長時間コンピュータに向き合うことで生
健康。腰痛や頭痛、手首の痛みといった
大 切 な こ と っ て な ん だ ろ う? そ れ は、
べ る 名 著 と い え ば タ ネ ン バ ウ ム﹃ コ ン
邦訳。ネットワークについて包括的に学
ら出ていたが、本書は以来十七年ぶりの
著
Douglas E.Comer
神林
靖訳
初版の邦訳が一九九八年にピアソンか
コンピュータネットワークと
インターネット
第6版
避・減少させることができるのか、具体
それと並んで、ネットワークの初学者が
ピュータネットワーク
︵日経B
第5版﹄
P社・八〇〇〇円︶が有名だが、本書は
著
Joe Kutner
玉川竜司訳
プログラマを長く続けていくのに一番
的なエクササイズが紹介されている。日
ることだろう。
翔泳社
五四〇〇円
画、ついには天才プログラマーの称号を
ら ず、 幅 広 い ジ ャ ン ル で 必 要 と さ れ る。
技術は、セキュリティ分野だけにとどま
井出
剛・杉山
将著
異常や変化の兆候を見逃さないための
意味がない。著者のニコルは
ザーに呼びかける言葉が的外れだったら、
ニコル フ
・ ェントン、
ケイト・キーファー・リー著 遠藤康子訳
優れたコンテンツを生み出しても、
ユー
二六〇〇円
まず読むべき教科書として長く親しまれ
本語版は書き下ろし付録として、吉岡弘
ジ
・ ャパン
隆氏による﹁散歩とイングレス﹂も収録。
オライリー
授かった男の半生。読み物としても面白
本書ではそのための実用的なアルゴリズ
中、 iPhone
発売時の Web
ライティングに
も携わった人物。読者のニーズを見極め、
− 18 −
コンピュータ
プログラミングバカ一代
いが、本書のキモは﹁人類総プログラマー
ム と そ の 活 用 例 が 多 く 紹 介 さ れ て い る。
ライティング
Web
化﹂という著者の理念にある。同時期発
機械学習プロフェッショナルシリーズ第
ライティングをおこな
わかりやすい Web
うための手法が、まさにわかりやすく書
伝わる
売の﹃最速の仕事術はプログラマーが知っ
二期の一冊であり、本書の他には﹃確率
いている。つまりこの本自体が、伝わる文
異常検知と変化検知
ている﹄︵クロスメディアパブリッシング・
的最適化﹄﹃サポートベクトルマシン﹄﹃統
二〇〇〇円
在職
Apple
一四八〇円︶
﹃文系でも知っておきたいプ
計 的 学 習 理 論 ﹄︵ 各 二 八 〇 〇 円 ︶ の 三 点
ビー・エヌ・エヌ新社
ログラミングとプログラマーのこと﹄
︵ダ
二八〇〇円
イヤモンド社・一五〇〇円︶と合わせて
講談社
章を書くためのひとつのお手本でもある。
一五〇〇円
が同時に刊行された。
るだろう。
晶文社
読めば、著者の考えをより深く理解でき
清水
亮著
高校生でコンピュータ誌
に連載を持ち、ドワンゴの立ち上げに参
コンピュータ
自 然 科 学
へんな生きもの へんな生きざま
二〇〇九年、欧米メディア界で波紋を
呼んだスタンバーグ医師のこの一言がは
じまりであった。米国で彼が開院してい
数学まちがい大全集
一五〇〇円
まとめ、これからのわたしたちの生き方
を問う。
誰もがみんなしくじっている !
朝日新聞出版
分けが売りとされている。これは日本で
るクリニックでは百パーセント男女産み
は、特殊なケース以外では﹁命の選別に
﹁ 失 敗 学 ﹂ と い う も の が あ る が、 本 書
は失敗学についてではなく、古今東西あ
アルフレッド・S・ポザマンテイエ他著
らゆる数学の失敗、つまり間違いを集め
つながる﹂という倫理的な理由により禁
一方で、近年では死因のトップである
止されている。
がんをはじめ、糖尿病やアルツハイマー
た書籍である。
﹁へんないきもの﹂シリーズでおなじ
み、早川いくをさんの最新作は小話が添
病のメカニズムは遺伝学の進歩によって
早川いくを著
えられた写真集。過酷な環境を生き抜く
解明されつつあることも事実である。こ
まったのだ。表紙のハダカデバネズミは、
すぎて、こんなにも変てこに﹄なってし
れている生き物たちは﹃生きるのに必死
ている。また、遺伝性の病気の治療も可
ことができるようになるだろうといわれ
階から遺伝子操作によってなくしていく
のような病気を防ぐために、受精卵の段
やっとひとつの真実に達するような学問。
あらゆる間違いの可能性を試して計算し、
学問である。
功につながるよう原因追求しようとする
ときそのままにせず、そこから次回の成
失敗学とは、学とつくように失敗した
だが、帯にもあるようにここに紹介さ
まさにそんなヘンテコさんの一人と言え
能になるだろう。そうしたとき、生命の
数十年などの長期間にわたって間違いに
それだけに、間違いが発見されたとき
− 19 −
ために、生き物は様々な進化をしていく。
る。そんなヘンテコな姿の陸の生き物や
倫理についてどう向き合うべきなのか。
気づかれないことさえある学問である。
はこれが歴史を変えることもあり、人類
一方、数学のほうはあら探しのように
海の生き物、昆虫の生きざまが紹介され
神のみぞ知るといわれていた遺伝子情
することができるようになった。その領
二八〇〇円
報は、技術の進歩や応用次第で明らかに
ている。
域にたどり着いた人類に、類を見ない新
これまでの数学本とはまた違った目か
の進歩にさえつながることもあるのだ。
エクスナレッジ
IQ は金で買えるのか
た な 課 題 が 立 ち は だ か る の で は な い か。
二四〇〇円
米国特派員として生命科学研究の最前線
化学同人
らウロコの一冊。
世界遺伝子研究最前線
行方史郎著
が米国の遺伝子ビジネスや研究の実態を
を追ってきた朝日新聞記者、行方史郎氏
べるサービスを始めます。﹂
﹁赤ちゃんの目の色や髪の毛の色を調
自然科学
医
学
書
ム 世 代 ﹂ が 前 期 高 齢 者 の 年 齢 に 到 達 し、
いよいよ大介護時代の到来である。本書
は、そこで懸念される介護現場の事故の増
大や虐待の問題に真正面から挑んだ一冊。
三八〇〇円
筆陣がスッキリまとめている。
南江堂
七転び八起きの創造的看護管理
チカラ﹂︶﹂に連載されたものに加筆、修
今も発展し続けている体性︱自律神経反
いる患者が高血圧症になってきているな
疾患。本書は、糖尿病専門医を受診して
超高齢化に伴い増加している循環器系
経営書院
二〇〇〇円
長の日常がまとめられている。
一つ経験を積み重ねた十五年間の看護部
き、﹁ 自 分 流 の 看 護 管 理 ﹂ を 目 指 し 一 つ
ポジティブ思考で問題にぶつかってい
で自身のキャリアアップをしながら常に
も言える苦難続きだった。それでも歓ん
わる重要な任務は﹁看護管理者修行﹂と
雑誌﹁師長主任業務実践︵現﹁看護の
等を改めて見直し、介護事故・トラブル
正して書籍化。看護師からいきなり中小
小宮美恵子著
やさしい自律神経生理学
に対応できる人材の育て方を、要点を押
民間病院の看護部長になった著者。看護
ソフト面、ハード面、環境、人的能力
命を支える仕組み
さえつつ、細部にわたり解説する。幾つ
師の指導や管理、病院運営の仕事にも関
鈴木郁子編著
もの手順、ケアの標準化の根幹を成すの
一八〇〇円
射に関する記述も多くみられる。わかり
どのケースで、他診療科医が循環器疾患
村川裕二編
循環器診療を
スッキリまとめました
むかしの頭で診ていませんか?
ぱる出版
はやはり、〝人の心〟である。
本 書 は﹁ Clinical Neuroscience
﹂誌に
﹁ や さ し い 神 経 生 理 学、 自 律 神 経 系 ﹂ と
いう題名で二十年にわたって連載されて
きた内容に最新の情報を加筆し書籍化し
たものである。自立神経生理学の基本的
な知識を網羅しているのはもちろんのこ
と、この分野において築き上げられてき
やすい表現とイラストでまとめられてお
にも目を配り診療する機会が出てきた時
た歴史についても触れられている。また
り、医療従事者だけでなく心理学や発達
に読んでほしい一冊。日常臨床でよく遭
﹂など押
﹁ TAKE HOME MESSAGE
えておきたいことをスペシャリストの執
か ら 先 に 提 示 し﹁ 具 体 的 に ど う す る か ﹂
遇する主要な病態に絞り、各項目を結論
学など多岐にわたる分野で活用できる一
七六〇〇円
冊となっている。
中外医学社
介護事故を防ぐコツ
葛田一雄著
﹁ベビーブー
二〇一五年、
− 20 −
医学書
あるようにあり、
なるようになる
運命論の運命
挑む
私が問うこれからの教育観
宗祖に訊く
て新しい形の﹁運命論﹂へと至る。それ
判の間を往復しつつ思考を深める。そし
か。著者は﹁運命論﹂に対する擁護と批
全てのことは必然的に起こるのだろう
取り入れるのではなく、地道な土台づく
びをクラスで実践するには、単に方法を
し合い授業など、主体的かつ協働的な学
広めるため、全国を飛び回っている。話
て、長年にわたり培ってきた教育手法を
れて著者は、今春、小学校の先生を辞め
学級崩壊を立て直す教師として注目せ
菊池省三著
日本仏教十三宗 教えの違い総わかり
こそが﹁あるようにあり、なるようにな
りや、何にもまして、生徒の成長・人格
入不二基義著
大竹
晋著
本書は、十三ある日本仏教の宗派の開
る﹂こと、﹁運命に乗り、自由であること﹂
人 文 科 学
祖たちが現代に甦り、各々の説を披露す
形成を願う教育観が必要だと説く。
二〇〇〇円
である。著者自身によって﹁主著﹂と位
中村堂
置づけられた力作。
二五〇〇円
るシンポジウムが開かれたら⋮⋮という
講談社
国連と帝国
− 21 −
設定のユニークな仏教書である。空海や
道元が話し合う様子に思わず興味をそそ
られるが、仏典翻訳家の著者が書くだけ
国連の歴史七十年とは即ち戦後七十年
マーク・マゾワー著
星野仁彦著
である。終戦に伴う帝国主義の終焉の中
家族という病巣
踏 み 込 ん だ 仏 教 の 世 界 を 知 り た い 方 に、
﹁ 発 達 障 害 ﹂ と﹁ 機 能 不 全 家 族 ﹂ と い
からどのように新しい秩序を再編するか
あって内容はなかなか専門的。もう一歩
ぜひ。
う 二 つ の﹁ 家 族 の 病 ﹂、 そ れ ら は 社 会 全
四五〇〇円
各 国 の 立 場 と 権 益 が 複 雑 に 絡 み 合 う 中、
国書刊行会
体の問題となりつつある。発達障害が機
ように理想と現実をすり合わせ、それが
能不全家族を招き、二次障害としての不
どのように現在の国連へ続くのか考える
幾人かの立役者が登場する。彼らがどの
自らも発達障害と機能不全家族の﹁二
ことは、新たな帝国の台頭する現代を捉
二八〇〇円
重奏﹂だったと告白する著者は、自らの
慶應義塾大学出版会
経験を交えて﹁家族の病﹂との向き合い
一五〇〇円
える重要な視点となるだろう。
セブン&アイ出版
方を教えてくれる。
登校や引きこもりに繋がっている。
人文科学
文学・文芸
は言えないが、異様なリーダビリティで
池井戸潤の選評は爆笑もの。今後の方向
読ませる。審査員も真っ二つで、巻末の
性が予測不可能な、大型不良新人の登場。
始め、少しだけ狂い始め、でも微妙に何
仕事を辞めてから家で過ごすことの多
かが起こっている⋮⋮?
い孫と、その母と、ふたりと一緒に暮ら
新作が︵いろんな意味で︶楽しみです。
一六〇〇円
し て い る 祖 父︵ ほ ぼ ベ ッ ド の 上 ︶。 こ の
講談社
谷崎潤一郎全集
第1巻
没後七十年を迎え、満を持して刊行さ
祖父が、なかなかのクセモノ。この先ど
読み進めていってほしい一冊。じわじわ
れた決定版全集の第一巻。巻頭は初期の
止まりだしたら走らない
品田
遊著
漫画家の〝ダ・ヴィンチ・恐山〟さん
二〇一五年上半期の芥川賞受賞作。
とおかしくも、せつなくもある小説だ。
清吉が、町で見初めた娘の背中に施す女
乱歩賞といえば、ミステリ作家にとって
呉 勝浩著
本 年 度 の 江 戸 川 乱 歩 賞 受 賞 作 で あ る。
作品を読み終えた時で、男という男がこ
が 凝 縮 さ れ た 作 品。 恐 ろ し く な る の は、
ジに満たない短編ながら、谷崎の世界観
して立ち上がる。﹁刺青﹂は、わずか十ペー
郎蜘蛛の刺青。宿願が達成されたその時、
最も権威ある登竜門。受賞者の業界生き
の女の肥やしになっていくという、物語
一二〇〇円
うなるんだ?と、ぜひもやもやとしつつ
が、〝 品 田 遊 〟 と い う 名 義 で 書 い た 小 説
文藝春秋
作 品﹁ 刺 青 ﹂。 浮 世 絵 師 だ っ た 刺 青 師 の
家 デ ビ ュ ー 作。 東 京 の 中 央 線 を 舞 台 に
様々な人たちの個人的な問題を取り上げ
ていく連作短編集である。
生、 お 昼 に 何 を 食 べ る か 考 え る 男 性、
残り率は驚異的だ。歴代受賞者は、東野
が終わった時に始まるであろう物語に戦
清吉の魂は抜け落ち、女は一人の毒婦と
等々。共感できたり、思わず考えさせら
圭吾、桐野夏生、福井晴敏、池井戸潤な
慄を覚える。後期の船場言葉で描かれた
道徳の時間
れたり、クスリと笑ってしまうものまで
どなど、まるでミステリ高校の先生たち。
作品に拮抗するちゃきちゃきの江戸言葉
車 中 で 通 勤 時 間 を 測 る サ ラ リ ー マ ン、
様々な人々の物語が書かれている。そん
昨年受賞者の下村敦史など、もう一年で
質問投稿サイトにテキトウに答える大学
な 物 語 た ち を 引 き 立 て る、 error403
さ
んによるイラストにも注目だ。
三作も出版している、さながらミステリ
中央公論新社
五八〇〇円
短編を収録。月報は浅田次郎と桐野夏生。
る こ と が で き る。﹁ 刺 青 ﹂ を 含 め 二 十 の
は小気味よく、皮膚感覚で谷崎を感じ取
一六〇〇円
リトルモア
スクラップ・アンド・ビルド
高偏差値のミステリ高校に紛れ込んだ不
そ ん な 中、 今 年 の 受 賞 者、 呉 勝 浩 は、
高校の優等生。
描かれているのは淡々とした日常のよ
良 の よ う な 存 在︵ 笑 ︶。 完 成 度 が 高 い と
羽田圭介著
うでありながらも、何かが少しずつ動き
− 22 −
文学 ・ 文芸
文庫・新書
お家賃ですけど
お友達に﹁家のこと語るとき、のろけ
能町みね子著
に生きているような趣きがある。それは
ファッション・ライフの
楽しみ方
﹃ファッション・ライフのはじめ方﹄︵岩
高村是州著
著者が自分に起こっていることをどこか
冷静に面白がるような目線と、加寿子荘
な い、 楽 し い も の だ よ ! と 教 え て く れ
悩める若人に、ファッションなんて怖く
どう着たらいいのかわからない ! ﹂と
波 ジ ュ ニ ア 新 書・ 七 八 〇 円 ︶ で、﹁ 何 を
のゆるぎなさに支えられている。
五八〇円
雑誌・ラジオ・TVなど多方面で活躍
する著者の自伝的小説。
文春文庫
ガイド。
た著者による、一歩進んだファッション
成になっているが、大人も今までなんと
月と雷
角田光代著
根なし草のように次から
次へと男のもとを渡り歩く母のそばで
なく着ていたスーツや普段着の形や柄の
てるみたいだよね﹂と言われるほど愛
育った少年と、そんな女を家に入れた父
意味が改めてわかり、毎日のコーディネ
基本的に高校生の男子を対象にした構
のど真ん中にこんなアパートがあるの
を持つ少女。幼い頃にいっとき暮らしを
問われても彼らは、世間一般のいうそれ
を選ぶ時にも役立つ情報、知識が詰まっ
ションを見るときだけでなく、自分の服
勿論女子にもおススメ。男子のファッ
イトに役立てることができる。
を手に入れたことがないからわからな
ている。
ま っ と う な 生 活 と は 一 体 な ん な の か。
度出会うことになる。
い わ ゆ る﹁ ト マ ソ ン 物 件 ﹂ で は な い か。
い。大人になり欠けたものを埋めようと
その加寿子荘と加寿子さんに魅せられ
家族とはいったいなんなのか。正しい
ても、どうにもそれはしっくりこない。
はまるようにみえた誰かに寄り添ってみ
人のスタイルを理解する拠り所にこの本
ではなく、自分のスタイルを確立し、他
はファッションに現れる。ただ着るだけ
その人の生きてきた過程、考え、﹁らしさ﹂
− 23 −
さ れ る﹁ 加 寿 子 荘 ﹂。 平 成 の 時 代 に 東 京
か ⋮⋮ と ち ょ っ と 驚 く﹁ 加 寿 子 荘 ﹂。 築
ともにした彼らは、大人になった今、再
そして冒頭で最初に主人公が入居する
四十年。でも見た目はもっと古そう。
部屋には、開けた先には何もない外、と
しかし大家のおばあちゃん、加寿子さん
ぎこちなく足掻いてみても、それに当て
いうドアがついているのである。これは
は そ ん な こ と に は 頓 着 せ ず、 粛 々 と ア
た主人公は、一旦出ることになった加寿
答えなどきっと存在しない。けれど、そ
人間、中身も大事だけど見た目も大事、
パートを運営しているのである。
子荘にまた戻ってくる。その時、彼は彼
八六〇円
女になっていた。二十五歳から二十七歳
岩波ジュニア新書
を使ってほしい。
五四〇円
れを考えずにはいられない物語だった。
中公文庫
までの主人公はかなり激動の人生を送っ
ているはずなのに、なぜか淡々と穏やか
文庫・新書
乙女のふろく
村崎修三著
芸
術
一五○○円
心を弾ませていたのかが伝わってくる
如何に﹁シティポップ﹂的な音楽たちに
文章がとてもいい。素敵な音楽に人が心
いながらも温かいエールが感じられた。
青幻舎
いのだなと、読む者に実感させてくれる
を躍らせる気持ちは今も昔も変わらな
一冊だ。
年代シティポップクロニクル
﹁シティポップ﹂という和製英語をご
われている。ここ数年、日本の若い世代
れた日本のポップスを総称するために使
七〇年代∼八〇年代頃の都会的で洗練さ
う。蘇った死者たちが人々を襲う有り様
も人気のあるジャンルだと言えるだろ
ゾンビ映画は、恐怖映画のなかでも最
オジー・イングアンソ著
ゾンビ映画年代記
一七〇〇円
著者は明治・大正・昭和時代のふろく
に、この﹁シティポップ﹂の再評価の機
を、映画は繰り返し描き続けてきた。
Pヴァインブックス
萩原健太著
存知だろうか。この言葉は、AORやソ
の変遷を、当時少女雑誌で活躍していた
運が盛り上がっており、当時の音源が盛
ウ ル ミ ュ ー ジ ッ ク 等 の 影 響 を 消 化 し た、
中原淳一や蕗谷虹児といった著名な挿
ん に 紹 介 さ れ た り、﹁ シ テ ィ ポ ッ プ ﹂ 的
今も昔も少女の憧れを詰め込んだも
絵画家たちの作品を通して丁寧に追っ
誌のふろくだったのかと当時の少女たち
ており、今見るとこんな素敵なものが雑
歴史や文脈を丁寧に紹介してきた音楽評
いキャリアの中で、ロックやポップスの
本書の著者である萩原健太は、その長
登 場 す る ま で を 俯 瞰 す る こ と が で き る。
て、近年の新しいタイプのゾンビ映画が
ムービーのような過激な表現を経過し
ワイトゾンビ﹂からスタートし、ゴア・
的にまとめた一冊だ。初のゾンビ映画﹁ホ
いテキストで、ゾンビ映画の歴史を体系
本書は、豊富なビジュアルと読みやす
ていく。
なサウンドを演奏する若手のバンドが登
がうらやましくなる。特にスタイルブッ
論家である。彼は学生時代から輸入盤屋
映画という文化が根源的に持つ﹁見世物
場したりしているのだ。
クやヘアカタログなどからは当時の流行
やロック喫茶に通い詰め、前述した﹁シ
小屋性﹂を象徴するゾンビ映画の歴史を、
ティポップ﹂的な音楽たちに親しんでき
本書で是非知っていただきたい。
少女たちがふろくを手にした時のワク
た。彼が当時見聞きしたそんな七〇年代
パイ・インターナショナル
三二〇〇円
の﹁シティポップ﹂的なロックシーンが、
この当時、著者のようなロック少年が
極私的な形で本書において描かれている。
ワクした気持ちを今、本書を通して感じ
中原淳一がスタイルブックに寄せて書
ることができる。
を感じることができ、とても興味深い。
など細部にいたるまでイラストが施され
カレンダーや双六、絵葉書に愛唱歌集
の、それが少女雑誌のふろくである。
70
いた文章からは、少女たちに対する厳し
− 24 −
芸術
実
用
書
地図・旅行書
ダイスゲーム百科
スモール出版
二一〇〇円
ぼくたちに、
もうモノは必要ない。
佐々木典士著
片付けとダイエットは実践することが
もう少し続けていったら﹁ミニマリス
一〇〇〇円
ト﹂の心境が理解できるかもしれない。
ワニブックス
独裁国家に行ってきた
独裁国家と訊くと、皆さんはどんなイ
MASAKI著
メ ー ジ を 描 く だ ろ う か。 こ の 本 は 実 際
難しい。所有欲、食欲を抑制し、自分の
の実情をリアルに綴った本である。一口
意識を変えて長期的に取り組む行為だか
に独裁国家と言っても、イメージ通りの
ライナー・クニツィア著
正田
謙訳
ダ イ ス︵ サ イ コ ロ ︶ の 歴 史 は 古 く、
こ の 本 に 耳 慣 れ な い﹁ ミ ニ マ リ ス ト ﹂
悪い独裁国家もあれば、良い独裁国家も
に十五の独裁国家に潜入した著者が、そ
テス川流域では既に遊ばれていたそう
収納、断捨離ではなく、モノを最小限に
︵最小限主義者︶という言葉が出てくる。
らだ。
だ。本書には、この最古の遊具さえあれ
部屋の様子は自分の心の中とリンクす
し、また、逆に独裁国家にあって日本に
ということを改めて感じることができる
私は一足飛びに﹁ミニマリスト﹂には
独裁国家の既存のイメージを打ち破っ
一三〇〇円
てくれること間違いなしの一冊である。
彩流社
− 25 −
五千年以上も前のチグリス川とユーフラ
ば 楽 し め る ゲ ー ム が 一 四 〇、 さ ら に 各
ある。
る。著者は過去、増え過ぎたモノに時間
この本を読めば、日本がいかに幸せか
減らす人のことである。
ている。ボードゲームデザイナーの著者
やエネルギーを奪われるはめになり、そ
ゲームの変則ルールがぎっしりと詰まっ
らしく、単純にルールや遊び方を網羅す
で、興味がある国だけ読むこともできる。
るだけでなく、本格的な駆け引きのある
それらを最小限に減らすことによって
この本を読んで新しく興味がでてくる国
なれないが、モノを減らし始めている。
十五の国が国別に章分けされているの
自分の行動が四十パーセント変わり、心
があるかもしれない。そういった国には
無いものを発見することもできる。
ントを丁寧に解説してくれる。いくつか
は自由に、肯定的に変化したと感じてい
この本を片手に行ってみるのもおもしろ
の奴隷となっていたと語る。
著者オリジナルの刺激的なゲームも収録
る。おまけに、体重は十キロ減量したと
ゲームでは戦略・戦術などゲームのポイ
されており、遊びつくすのは難しそうだ。
のこと。
単にチャレンジしにくいイメージもある
いかもしれない。
日本でも広がりを見せつつあるボード
かもしれない。本書は、家族や友人と気
リしていく事は実感できる。
部屋がスッキリし始めると心もスッキ
スメの一冊。
軽にアナログゲームを始めるのにもオス
ゲームだが、ルールが難しそうなどと簡
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
教えて ! ゆな先生の質問英会話
入江
泉著
一緒につまずいて、考えてくれるから
者にやさしい。英語が苦手で、楽しくや
れも中学英語レベルかつ実用的で、初級
くだけで、ネイティブとの密な英会話を
クできる。このCDブックを繰り返し聴
九九〇円
楽しめるようになるだろう。
面。﹁楽しい﹂だから﹁ happy
﹂や﹁ funny
﹂
だろうか?と読者が想像すると、斉藤さ
というフレーズを英語にしようという場
いで展開される。例えば﹁楽しかった?﹂
生と英語が苦手なOL斉藤さんの掛け合
ティブなフレーズも多数収録し、タイト
話などはもちろん、愚痴や悪口などネガ
うことの多いであろう買い物時や天気の
方には是非手に取ってほしい。実際に使
今までぴったりな表現に出会えなかった
ありきたりな例文や﹁建前﹂の例文が多く、
る。フレーズ集は多く発行されているが、
けで英会話が身につくように作られてい
本書は書籍を使わずに、CDを聴くだ
ら分かり易い。表現のための地図を目指
されている。似た言葉との関連もこれな
他類語辞典と違い下位分類が細かく設定
では新明解類語辞典はどうか。これは
編集方針がはっきりと表れていて面白い。
並 べ 方 に ル ー ル の 無 い 類 語 辞 典 の 方 が、
いを紹介する本が多数出版されているが、
に並べられた辞書だ。昨今、国語辞典の違
書だが、後者は書く時に使用する意味順
に使用するあいうえお順に並べられた辞
語辞典というものもある。前者は読む時
るための辞書には国語辞典だけでなく類
中村
明編
小説や映画によって国語
辞書が注目されているが、日本語を調べ
新明解類語辞典
DHC
りなおしたい人のための、先生と仲間が
この本の中にいる。
スリーエーネットワーク 一五〇〇円
聴くだけ ! やさしい英会話
とことんリアル編
んが作中で同じように考える。するとゆ
ル通りとことんリアルなフレーズ集に
したという編集方針がよくわかる。また
平岡麻里著
な先生が、それらの単語の持つ意味を説
な っ て い る。 例 え ば、
﹁ 推 し メ ン は 誰?
絵が多く載っており、視覚的にも違いが
わ か り や す い。﹁ 質 問 文 ﹂ を も と に、 英
明し、この場面では﹁ fun
﹂のほうがぴっ
たりであるとアドバイスしてくれる。
﹂というような、
Who is your favorite?
他のフレーズ集にはないけれど雑談など
語の基礎を漫画で解説する本書。ゆな先
このように、英語が苦手な読者の思考
↓
に寄り添って解説が進んでいくため理解
しやすい。また会話形式のふたりのやり
分かるようになっている。国語辞典を持っ
ている方は多いだろうが、併せて文章を
で使いそうなフレーズが多数ある。
CDは日本語↓英語↓ポーズ↓英語で
とりは、日本語から英語を考える思考回
書かれる方にはこの辞書もおすすめだ。
路そのものであるため、読み進めるうち
録音されており、ポーズの間に自身で発
三四〇〇円
に、 自 然 と 考 え 方 が 身 に つ く の で あ る。
音して最後に流れる英語で発音をチェッ
三省堂
とりあげられている全七十フレーズはど
− 26 −
語学・辞典
児
童
ことらちゃんの冒険
石井桃子文
黒ずくめの戦士たちに襲われます。妹と
シ ア。 十 二 才 の 少 年 ヒ ュ ラ ス は あ る 日、
ラスの逃避行が始まります。途中、政略
はぐれ、愛犬を殺され、その日からヒュ
楽しい夏の一日を描いた絵とともに静か
一三〇〇円
にこちらへ問いかけてきます。
講談社
たり、陰口を言われ、外の世界から距離
スト。小さな頃から人にじろじろ見られ
スとイルカのスピリットの心の交流は心
いが交錯しながら話が進みます。ヒュラ
間で苦しみます。それぞれの環境のちが
は与えられた使命とヒュラスとの友情の
書
結婚から逃れてきた巫女の娘ピラと会い
ま す。 ピ ラ は 何 不 自 由 の な い 生 活 を お
ワンダー
R・J・パラシオ作
こねこのことらちゃんは、とらにそっ
を置きながら生活していたある日、生ま
しさを味わいます。そして、族長の息子
くっていましたが、自然と共に生きる厳
く り な こ と が 大 の じ ま ん。 い つ と ら に
れ て 初 め て 学 校 へ 通 う こ と に な り ま す。
温まります。
生まれつき顔に障害を持つ少年オーガ
中井はるの訳
なってもいいように、体操もしています。
大勢の生徒たちに囲まれ、心無い言動や
平和賞授賞式で語った演説集です。この
演説で、リンドグレーンの一貫した思い、
九〇〇円
− 27 −
深沢紅子画
ある日、ぼうやから動物園のとらの話を
裏切りに傷つきますが、一方で、彼のユー
暴力は絶対だめ !
一九〇〇円
聞いたことらちゃんは、自分も会いに行
モア溢れる話やその内面性に惹かれて友
あすなろ書房
こうとこっそり家を抜け出します。かわ
情を育む仲間も出来ていきます。
アストリッド・リングドレーン著
﹃長くつ下のピッピ﹄の著者リンドグ
石井登志子訳
一五〇〇円
レーンが、一九七八年にドイツ書店協会
様々な視点から物語が描かれており、そ
ほるぷ出版
作品の魅力となっています。
れぞれの立場から見える世界がよりこの
オーガスト、彼の家族、同級生たちの
いいことらちゃんのお話が八編入ってい
一五〇〇円
ます。
河出書房新社
せんそうしない
たにかわしゅんたろう文
えがしらみちこ絵
岩波書店
作品が語る力を理解できます。カバー絵
は、二〇〇五年リンドグレーン賞を授賞
せんそうしない。
神々と戦士たちⅠ 青銅の短剣
ミシェル・ペイヴァー著
この言葉がまっすぐに心の中に飛び込
んでくるのは、谷川俊太郎さんのもつ言
した荒井良二さん。
紀元前一五〇〇年、青銅器時代のギリ
中谷友紀子訳
言葉は徐々に重さを持って、子ども達の
葉の力の強さでしょうか。くり返される
児童書
野原で、物もなく、見るものすべてが薄汚れた風景
戦後、私の生まれ育った神戸もどこを見ても焼け
姓 を 見 つ け た と き は 胸 が 熱 く な り ま し た。 そ の 復 刻
入選発表のところに小さな字で印刷された自分の旧
たことをふと思い出し、その頁を捜すとありました。
西垣
武子
の中で、美しくキラキラ光った一冊の雑誌が現れま
本 は 今 も 私 の 本 箱 に ズ ラ リ と 並 ん で お り、 飽 き る こ
﹃ひまわり﹄
し た。 そ れ が﹃ ひ ま わ り ﹄ で す。 そ の 頃 の 少 女 た ち
となく私の心を和ませています。
*﹃復 刻 版 ひ ま わ り ﹄︵ 全 六 十 七 巻、 国 書 刊 行 会・
中原淳一著・各一八四五∼一九〇〇円︶
︵七十八歳・主婦︶
には想像もつかないようなオシャレでスマートな少
女が中原淳一の手で描かれ、一頁一頁が新鮮で私の
心をしっかり捕えてしまうものでした。毎月発売日
が待ち遠しく、﹃ひまわり﹄を手にしたその日は幸せ
な気分が充満するのでした。何年たっても忘れられ
ず、古本屋をのぞいたこともありましたが、あると
きその思いが通じたように復刻本が出て、昔のまま
の姿で毎月送られてくるようになりました。
あの頃と同じ思いで頁をめくり、クイズに応募し
− 28 −
﹁佐藤純子﹂という、特に変わった響きもない、む
佐藤
純子
まさか自分が本を出版していたなんて無意識にも
し ろ 少 々 古 風 で す ら あ る 名 前 を 隠 さ ず、 あ え て そ の
﹃月刊佐藤純子﹄
程がある、と驚いたものの、そんな事実は本当にな
名前の看板を掲げて自分を目一杯表現するという発
さらに本誌﹃書標﹄七月号で出会うことになるとは
かった。
嘆すべき本だ。驚嘆の理由は、そのタイトルである。
思いもよらなかった。こうして二度、三度と驚かされ
想の新鮮さにも驚いた。
どこの世界に自分の名前がタイトルになっている本
た佐藤純子さんに対抗する気はないけれど、今回は投
﹃月刊佐藤純子﹄は、大学の先輩からいただいた驚
に出会って驚かない強者がいるだろうか、否、いな
この投稿を彼女が見てくれるかどうかは分からな
稿しなければという強い衝動に突き動かされた。
﹁ 本 屋 で 偶 然 見 つ け て、 こ れ は 佐 藤 さ ん に 見 せ な
い け れ ど、 こ れ を 見 た 誰 か が ほ ん の 少 し で も 笑 っ て
いはずだ。
きゃと思って買ってしまいました﹂という先輩から
くれたら嬉しい。
九四〇円︶
*﹃月刊佐藤純子﹄︵メディアデザイン・佐藤純子著・
︵三十三歳、会社員・作家志望︶
んと活字で共演できたらなお嬉しい。
で も 誌 面 に 投 稿 が 掲 載 さ れ る こ と で、 佐 藤 純 子 さ
受け取った﹃月刊佐藤純子﹄は、確かに私がもし佐
藤純子でなければ、知り合いの佐藤純子さんに思わ
ずプレゼントしたくなる一品だ。
思いっきり手書きのタイトルによく似合う、ほん
わ か し た イ ラ ス ト と、 遊 び 心 に 満 ち た こ の 一 冊 は、
全国の佐藤純子さんならずとも大いに親しみを覚え、
楽しめる内容だと思う。
− 29 −
A
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− 30 −
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五九五六 六一〇〇
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〇三
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五九五六 六一二〇
〇三
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〒
1710022
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六一一一
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五九五六
FAX TEL
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〒
〇三
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│
TEL
│
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編集後記
http://www.junkudo.co.jp/
書店が約十年ぶりに復活しま
した。豊富な和書の品揃えに
加え、カフェ・洋書・文具に
も力を入れ、幅広い顧客に末
永くご利用いただける書店を
目指します。どうぞよろしく
お願いいたします。
︵緒︶
− 32 −
│
│
│
八月二十一日、京都に丸善
PC ・スマートフォンから
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
じているのは、
﹁時間と手間をかけただけ
ギャップに苦しんだ時期もありました。
無 力 さ と、 一 人 歩 き し て 行 く 評 判 と の
思ってもみませんでした。最初は自分が気
トや若干器用な手先が書店で活躍するとは
入社する前は、細々と続けていたイラス
さったお客様に何かできることはないか、
られないか、
﹃巨人﹄目当てに来店して下
り ま し た。 空 っ ぽ の 棚 を 何 と か し て 埋 め
が長期間に亘り枯渇するという事態に陥
大 ヒ ッ ト に よ り、 当 店 で は 原 作 コ ミ ッ ク
二 〇 一 三 年、 ア ニ メ﹃ 進 撃 の 巨 人 ﹄ の
良さをお客様にアピールするために作る
今 考 え る と、 P O P は あ く ま で 作 品 の
とずっと考えていました。
手に思っていて、
﹁何がいけなかったのか﹂
なるものを作らなければいけない﹂と勝
撃 の 巨 人 ﹄ の こ と が あ っ た の で﹁ 話 題 に
話 題 に な る こ と も な く 終 了。 当 時 は﹃ 進
た 大 掛 か り な フ ェ ア と そ のP O P は 特 に
しかしその後、準備に一ヶ月近くかかっ
反応が返ってくるわけではない﹂という
に入ったマンガのイラストを葉書くらいの
日 々 頭 を 悩 ま せ て い ま し た。 そ の 結 果 苦
も の で あ る と い う 点 を、 当 時 は 疎 か に し
ことです。
大きさの紙に描いてコメントをいれて、そ
肉 の 策 と し て、 作 中 の ペ ー ジ を コ ピ ー し
ていたように思います。
POP作りの話
の作品が売れるのを確認してはニヤニヤし
て キ ャ ラ ク タ ー の 台 詞 を 書 き 換 え、 私 に
現在は﹁たかがPOP・主役は作品・話
替わってキャラクターにお詫びをしても
題になれば儲け物﹂くらいの心持ちで楽
徐々にサイズの大きなものや立体物を作
らう旨のPOPを作成・掲示しました。着
しみながらコーナー製作をすることがで
ていました︵それは今も変わりませんが︶
。
るようになり、入社三年目くらいには棚一
想 を 得 て か ら 完 成 す る ま で、 十 分 も か か
き る よ う に な り ま し た︵ 手 を 抜 い て い る
∼二本を丸ごと使ったフェア展開と、それ
このPOPが予想を大きく上回る反響を
わけではありません︶
。
﹁この作品が面白
らなかったと記憶しています。
頂き、品切れ中の棚を見るためにお客様が
をお客様に伝えられていたら幸いです。
いので知ってください ! ﹂という気持ち
に伴った大掛かりなPOPを製作できるよ
来店されるという奇妙な現象が起こりまし
うになりました。有難いことに、私が製作
したPOPをお客様がWEBやSNSで話
た。売り場を預かる者として、お客様が必
︵ジュンク堂書店福岡店
コミック担当E︶
題にして下さる機会が増え、出版社の方か
要としている商品を揃えることが出来ない
らも好評でした。
九 年 目 を 迎 え た 私 がP O P に 関 し て 感
二〇一五年九月五日発行
﹁書 標
第 号
ほんのしるべ﹂
頒価五十円︵本体四十六円︶
編集・発行人
工
藤
恭
孝
発 行 所
㈱丸善ジュンク堂書店 〒 東京都新宿区三栄町二十九 ニューフィールドビルディング
印 刷 所
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旺
社
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