総論2 薬の作用様式(1)

薬理学総論2
平成27年10月1日
薬の作用様式
I. 生化学から薬理学へ
平成27年10月1日
II. 薬物受容体 Drug Receptors
1)受容体: Receptor
John Langley(1878) Curare “Receptive substances”
Paul Ehrlich (1909) “Receptor”
①受容体は薬物の用量(濃度)と薬理作用の間の定量的関係を
おおむね決定する。
②受容体は薬物作用の選択性を決定する。
③受容体はアゴニストとアンタゴニストの作用に関与する。
平成27年10月1日
2) 薬物受容体の性質
①調節タンパク質 Regulatory proteins
b-adrenergic receptor
プロプラノロール
nicotinic ACh receptor
ツボクラリン
②酵素
Enzymes
dihydrofolate reductase
メトトレキサート
③輸送体 Transport proteins
Na+/K+ ATPase
ジギタリス
④構造タンパク質 Structural proteins
tubulin
平成27年10月1日
コルヒチン
薬物濃度と反応の関係
Dose-response (concentration–response) curve
S字状(シグモイド)用量‐反応曲線
EC50 : effective concentration for 50% response
アゴニスト (作用物質)
(A) XとY 同じefficacy (最大効力)だが異なるpotency(用量効果)を持つ2つ
のアゴニスト(XのほうがYより効力大)
(B)XとY 異なるefficacyを持つ2つのアゴニスト(Xが完全アゴニスト、Yは部分
アゴニスト)
平成27年10月1日
薬物による受容体活性の調節
平成27年10月1日
3)薬物濃度と反応の関係
(A)薬物濃度と薬物作用との関係
(B)受容体と結合した薬物との関係
作用、受容体占拠が最大値の半分となる薬物濃度をそれぞれEC50、KDと定義
平成27年10月1日
4)アゴニストとアンタゴニスト
Schildの式
競合的アンタゴニスト(A)、不可逆的アンタゴニスト(B)によるアゴニスト濃度-作用
曲線の変化 競合的アンタゴニスト存在下では作用が現われるのに高濃度のアゴ
ニストが必要である。アゴニスト濃度(C’)はアンタゴニスト存在下で右に移動する。
高濃度のアゴニストにより競合的アンタゴニストによる阻害は打ち消される。不可逆
的アンタゴニストでは、EC50は変わらないが、アゴニストによる最大作用は減弱する。
平成27年10月1日
薬物親和性と用量-反応の関係式
平成27年10月1日
Double-reciprocal plot
k1
D+R
DR
Effect
KD = k2/k1 解離定数
k2
E=
Emax [ D ]
KD + [ D ]
KD =
E
=
Emax
平成27年10月1日
[ D ] [R ]
[ DR ]
[ RT ]
RT = R + DR
[ DR ]
=
= (KD/ [ D ] + 1 ) [ DR ]
[D]
1
[ KD ] + [ D ]
E
KD
=
1
Emax [ D ]
1
+
Emax
double-reciprocal plot
平成27年10月1日
D: Scatchard or Eadie-Hofstee
type of plot
平成27年10月1日
アンタゴニズムの機序
(A)競合的アンタゴニズム(competitive antagonism): agonist (A)、antagonist(I)
(B)不可逆的アンタゴニズム(noncompetitive antagonism): 不可逆的アンタゴニストが
アゴニストと同じ部位に結合した場合
平成27年10月1日
(C)アロステリックアンタゴニズム:リガンド(I)がアゴニストと異なる部位に結合し、
阻害作用を示す。
(D)増強作用(potentiation):リガンド(P)がアゴニストと異なる部位に結合し、
平成27年10月1日
増強作用を示す。
XとY 同じefficacy (最大効力)だが異なるpotency(用量効果)を持つ2つのア
ゴニスト(XのほうがYより効力大) あるいは競合的アンタゴニスト非存在下
(X)、存在下(Y)でのアゴニストによる反応
XとZ 同じpotencyだが異なるefficacyを持つ2つのアゴニスト(Xが完全アゴニ
スト、Zは部分アゴニスト) あるいは非競合的アンタゴニスト非存在下(X)、存
在下(Z)でのアゴニストによる反応
平成27年10月1日
7) Spare Receptors
不可逆的アンタゴニストを用いての spare receptor の実証。
A.
アンタゴニストがないときのアゴニストによる反応、
B.
少量のアンタゴニスト処理後、曲線は右にシフトする。(残存する受容体が十分
あるため最大反応は保持される。)
C.
大量のアンタゴニストを加えた時、ちょうど “spare”が消失。さらに高濃度のア
ンタゴニスト存在下で (D,E)で結合できる受容体が減少。D,Eにおける見かけ
上のEC50はアゴニストの受容体に対する結合親和性を表わすKD値に近づく。.
平成27年10月1日
受容体ー伝達器ー効果器
 GPCRは細胞膜で構造を変化させながら、G蛋白質と相互
作用してシグナルを伝達する
平成27年10月1日
spare receptor は薬物に対する感度を高める。
B
C
=
BMax C + KD
C = KD
受容体数(BMax ):4
B=2
C = 0.05KD
0.05KD
1
1.05 KD ≒ 20
受容体数:40
1
B = 40 x
20
=2
A.遊離したアゴニスト濃度がKDに相当すると、この濃度では4個の受容体の50%に結合
し、2個のアゴニスト-受容体結合をもたらし、2個の効果器に結合し、活性化して反応を
もたらす。(4個の効果器のうち2個がアゴニスト-受容体複合体によって刺激されるため
反応は最大値の50%である)
B.受容体の濃度が10倍増し、アゴニストのKDが変化しない場合、少量の遊離アゴニスト
濃度(0.05 x KD)で2個の受容体を占拠し、2個の効果器を活性化し、アゴニスト濃度が
KDより低くても最大値の50%の反応を生じる。
平成27年10月1日
f+I
平成27年10月1日
pA2
競合的アンタゴニストの強さを表わす指標として用いる。
“アゴニスト単独時の用量反応曲線を2倍だけ右方移動させるのに必要
な競合的アンタゴニストのモル濃度のnegative logarithm ”
競合的アンタゴニストによりアゴニストの用量反応曲線は平行移動す
るが、その程度は次式の関係に従う。
[A]/[A]0 = 1 + [B]/KB ・・・・(1)
[A]0は ある一定の大きさの反応をアゴニスト単独時に引き起こすAの濃度、
[A]は 競合的アンタゴニストBの濃度[B]の存在下に同じ大きさの反応を引き
起こすAの濃度、Kiは競合的アンタゴニストBと受容体との結合の解離定数
[A]/[A]0 は競合的アンタゴニストによってアゴニストの用量反応曲線
が何倍平行移動するかを示した値:用量比(Dose ratio;DR)
平成27年10月1日
pA2 = -log[B]2 ・・・ (2)
(アゴニストの用量比を2倍にする競合的
アンタゴニストの濃度を[B]2 とする)
(1)式に用量比[A]/[A]0 =2を代入
2 = 1 + [B]2 / KB すなわち [B]2 = KB
- log [B]2 = -log KB ・・・(3)
(2)、(3)式から pA2 = -log KB ・・・(4)
すなわち、pA2は競合的アンタゴニストの受容体との
結合の解離定数を反応曲線から求めたものである。
平成27年10月1日
Schild プロット
(1)式より [A]/[A]0 ‐1 = [B]/KB ・・・・(5)
両辺の対数をとって
log ([A]/[A]0 ‐1) = log [B]‐log KB
用量比 [A]/[A]0 = DRとし ‐log KB =pA2 であるから
log (DR ‐1) = log [B] + pA2 ・・・・(6)
縦軸にlog (DR ‐1)、横軸にlog [B]をとると横軸切片がpA2を与える。
log (DR – 1)
3
2
-pA2
1
0
-9
平成27年10月1日
-8
-7
log [Antagonist]
-6
量子的用量反応曲線
薬理作用
平成27年10月1日
有害(中毒)作用
致死作用
Therapeutic
Index
安全域
(LD50/ED50)
標準安全域
(LD1-ED99)/ED99 x 100
平成27年10月1日