スリランカ難民申請者の集団送還をとおして見えてくるもの

スリランカ難民申請者の集団送還をとおして見えてくるもの
2015 年 2 月 15 日
文責:山村淳平
1. 強制送還の過程
表 1 聞き取り対象者の属性と背景
このスペースには、対象者のリストが表記されていましたが、
個人を特定されるおそれがあるので RAFIQ により削除しました。
ご了承下さい。
なお、聞き取りした対象者全員が「難民申請」をし、
一部の方に日本人配偶者がいるということです。
1.1 入管の部屋において-送還前日(2014 年 12 月 17 日午前~午後)
1.2 護送車内-16:00 時ごろ
1.3 羽田空港において-12 月 17 日 19:00 ごろ~18 日 5:00 ごろ
1.4 日本航空機搭乗-12 月 18 日午前 5:00 ごろ
1.5 日本航空機内-午前 6:00 ごろ~15:00 ごろ(現地時間)
1.6 バンダーラナーヤカ国際空港での取り調べ- 12 月 18 日 16:00~深夜 24:00
1.7 空港での解放後
1.8 送還後の状態
1
強制送還の問題点
2.1 スリランカへの集団送還の特徴
表 2 スリランカとフィリピンの相違
スリランカ(2014 年 12 月)
難民申請者
8 人以上(確認された範囲で)
被送還者人数
送還までの経過
フィリピン(2013 年 7 月)
無
26 人
75 人(子どもを含む)
仮放免不許可および難民不認定(異議
数年前、数ヶ月前、数日前から収容
申し立て)の告知後、つぎの日に送還
収容中に帰国を説得
説得はなし。裁判権のはく奪
東京・名古屋・大阪などの入管局
牛久・東京・名古屋などの
送り出し施設
仮放免出頭時
収容施設からの送還
有
有
一時パスポート発行のみ
受けいれ態勢の整備
無
有
空港で警察による取り調べ、
社会福祉開発省が担当し、
その後、放免か刑務所行き
宿泊施設と交通費を支給
日本航空
日本航空
大使館の関与
本国受けいれ態勢
チャーター便
2.2.1
難民申請者の送還
• 難民申請者の送還は危険
• 難民条約、拷問禁止等条約のノン・ルフールマン(非送還)の原則に違反
2.2.2
外部との連絡遮断
• 突然の送還告知
• 弁護士・妻・保証人への連絡不可
2.2.3
裁判をうける権利を剥奪
1.2.4
被送還者の不透明な選定基準
• 事実婚夫婦の離散
• 不十分な合法化措置のもとでの実施
2
2.2.5
暴力的な送還
• 手錠の過剰使用
• 制圧行為による打撲
2.2.6
患者の治療中断
• 英文の紹介状なし
2.2.7
送還後の生活苦と健康障害
• 日本で暮らしていたすべて(日本人配偶者、友人、生活用品、貯金)を喪失
• 本国での生活困難
2.2.8
多額の送還費用
• 日本航空のチャーター機代だけで 1400~4000 万円
• 強制送還における職員の大量投入
• 送還前の準備段階で、JAL ・羽田空港運営会社・スリランカ政府側との打ち合わせ
• 予定よりもすくない被送還者数
2. 追放よりも在留資格(ビザ)を
図1 世界の難民認定率 先進国別
%
80
71
アメリカ
66
64
60
60
53
52
53
52
47
43
50
40
37
37
35
29
21
21
23
21
17
28
23
23
21
19
22
20
5
4
1
イギリス
30
33
スイス
21
18
ドイツ
19
9
15
7
0
カナダ
41
26
25
20
42
39
38
31
34
20
47
オーストラリア
44
42
3
11
0.8
フランス
0.7
日本
6
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
年
UNHCR統計より作成
3
3.1 在留特別許可の要求
図2 在留特別許可件数の推移
件数
14000
13239
12000
非正規滞在者の在留特別許可件数 10327
10000
10834
9360
8522
8000
6930
6000
7388
6995
6879
6359
5336
5306
4643
4318
4000
2497
2000
1406
0
618
574
435
0
0
0
0
0
0
432
0
0
0
0
0
482
612
7
3
2
9
3
3
3
2840
難民申請者の
在留特別許可件数
501363
112
248
97 53 88 360
151
42 44 36 67 40 16 9
80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
年
出所:入管局統計
3.2 国籍取得の緩和
表3
生地主義
重国籍には アメリカ
非常に寛容 カナダ
ニュージーランド
国籍の寛容度
生地主義の
優勢な混合
形態
混合形態 血統主義
の優勢な
混合形態
オーストラリア
フランス
ベルギー
イギリス
アイルランド
ポルトガル
トルコ
血統主義
イタリア
ギリシア
スウェーデン
フィンランド
ルクセンブルク
オランダ
スペイン
重国籍には
かなり寛容
ドイツ
重国籍にか
なり制限的
重国籍に非
常に制限的
ノルウェー
オーストリア
デンマーク
日本
出所:近藤敦教授(名城大学)「移住者の権利保障」
3.3 正規化の実施(合法化、恩赦)の要求
おおくの国で正規化はおこなわれている。日本では一度も実施されていない。
4
3. 入管の暴力をふせぐ監視機構
4.1 オウンゴールを連発する入管への監視と勧告
出所:山村淳平「チャーター機による大量強制送還の実態 -法務省入国管理局のオウンゴール」
(2014 年
移民政策研究第 6 号)
4.2 三権から独立した国内人権機関設置の要求
アジアにおける国内人権機関(2012 年現在):
アフガニスタン、香港、インド、インドネシア、イラン、ヨルダン、マレーシア、タイ
モルディブ、モンゴル、ネパール、パレスナ、フィリピン、カタール、韓国、スリランカ
5