眞坂歯科医院 生涯を見据えた歯科医療 のすすめ

謹んで震災のお見舞いを申しあげます
生涯を見据えた歯科医療
のすすめ
このたびの東日本大震災により被災されました皆さまや、被災者に関係する皆さまに、
心からのお見舞いを申し上げます。皆さまの安全と一日も早い復旧をお祈り申し上げます。
眞坂歯科医院からのお知らせ
■医院スタッフ異動のお知らせ
医療法人社団 歯生会・理事長
歯学博士
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歯科衛生士 藤原優子(旧姓・向井)
は じめに
歯科医師 難波 崇
育児休暇をいただいておりましたが、4月から現職
2003 年に眞坂歯科医院に入局して7年
に復帰いたしました。これを機に、名前も藤原で仕事
間、受診者の皆さまにはたいへんお世話
をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いい
になりました。4 月をもって退職の運び
たします。
となりました。受診者の皆さまに感謝と
いま私が最も関心を持って生涯の仕事として位置づけているのが、高齢者を対象と
眞坂歯科医院通信
お礼を申しあげます。
春
2011 年 号
理事長秘書・事務 中喜田絵美
当院では、皆さまとの円滑なコミュニケーションが、より良い治療を実現する
一番のポイントであると考えています。治療へのご意見・ご希望はもとより身
近な出来事や話題などをお寄せください。特に言いにくいこと̶ご不満やお叱
歯科衛生士 No. 14
鈴木友佳理
中喜田は本年4月、鈴木は昨年 12 月をもって退職い
りなど̶が、私どもには貴重なものとなります。匿名でも結構ですので、院長
たしました。在職中に頂きました皆さまのご厚情に感
またはニュースレター宛にお送りくだされば、おおいに励みとさせていただき
謝いたします。
すすめ
医療法人社団 歯生会
●眞坂歯科医院からのお知らせ
眞坂歯科医院
医院スタッフ異動のお知らせ
日本歯科理工学会
Dental Materials Senior Adoviser:眞坂信夫
日本口腔インプラント学会専門医:岡田常司
日本歯周病学会専門医:岡田たまみ
日本歯周病学会認定衛生士
藤原優子・松永麻子・中島久美子
日本口腔インプラント学会専門衛生士:北島綾美
染症などを発症する危険性が増します。糖尿病や心臓病などの持病があると大きな手
術が難しい場合もでてきます。そこで、
元気なうちに問題を起こしそうな歯を整理して、
ちょうどこの年代の方々は、仕事をリタイアして治療に時間を割くことが容易であ
ること、子育てなどの金銭的負担も軽くなっていること、これからの生活の質を高め
のです。
横線
東
口
東急
正面
丘〉 東急大井町線
由が
自
〈
南 口
高齢者歯科医療
至・大井町
高齢者歯科医療を3つのステージに分
けてヘルスプロモーションを目指す
ステージ1 前期高齢者歯科治療
メルサ
仕事の世代交代が進み、時間に余裕ができたところで
終末期を視野にいれた歯科治療を行う
至・横浜
このニュ−スレターは、3 ヶ月に 1
←眞坂歯科医院
遊歩道沿いです。ビルの 1 ∼ 2 階は無印良品
ステージ2 定期的通院による維持管理
度発行する予定にしております。ぜ
ひ、ご意見・ご要望をお寄せください。
自由が丘駅
(東急東横線/東急大井町線)
南口を出て徒歩 1 分。
皆さまのご要望にそった快適な歯科
来院できる間は、定期健診と PMTC で維持管理を行う
ステージ3 訪問診療による維持管理
http://www.masaka-dental.com
ッフ一同頑張ってまいります。
② 少数残存歯の歯列が崩壊していく原因の第一は噛み合
わせのバランスが失われることにあるため、これを改善する。
③ 臼歯部の咬合支持を第一に考え、インプラントで隣在歯
の保全を図る。
④ インプラントは置き換えなしの生涯使用を目標にする。
⑤ 残存歯が少ない症例はインプラントのオーバーデンチャー
を検討する。
⑥ 一般臨床医の役割と力量を自覚し病診連携を密にする。
治療の提供ができますように、スタ
■ホームページアドレス
前期高齢者歯科治療の内容
① 将来問題を起こしそうな歯を整理する。
▼
国際インプラント学士会認定医:眞坂信夫
■特別顧問
慶応義塾大学医学部歯科
口腔外科学教室専任講師 河奈裕正
■スタッフ
歯科医師 7 名・歯科衛生士 10 名
歯科助手1名・歯科技工士2名
受付2名
■設備
治療ユニット7台/院内技工室/歯科用 X
線 C T /治療用顕微鏡(マイクロスコープ)4
台/院内 LAN プレゼンテーションシステム/
レーザーう蝕診断機 etc
歯の治療はいつでもできるわけではありません。高齢になるほど免疫力が落ち、感
となどが、この年代の方々に生涯設計に基づいて徹底した歯科治療をすすめる理由な
至・渋谷
日本接着歯学会 終身認定医:眞坂信夫
その中でもっとも重要なのが、いわゆる前期高齢者と定義されている 65 歳から 70
ンス手法の発達によって、この先 20 年前後の生涯にわたる維持か可能になっているこ
■受付時間 AM9:15 ∼ PM6:00
■学会の専門医・認定医・認定衛生士
体的に提案したものです。
われます。また治療技術の面からみても、接着治療、インプラント治療、メインテナ
03-3718-9109
■診療時間 AM9:30 ∼ PM1:00・PM2:00 ∼ PM5:30
至・二子玉川
に、高齢期を3つのステージに分け、それぞれの状況に応じた歯科医療のあり方を具
るために健康への関心が高いことなどから歯科治療への取り組みが積極的であると思
所 世田谷区奥沢 5-26-9 自由が丘栄ビル3F
℡ 03-3718-8470 Fax
私たちは、患者さまが快適な食生活と健康的な美しさの維持により、心豊かな日々を
お過ごしいただけることを第一に考えた診療に全力をあげています。
分自身はもちろん家族にも歯のことで心配をかけない暮らしができるようにするため
将来の不安を解消しておくという内容です。
一般歯科・口腔外科・インプラント・特殊治療(接着治療・顕微鏡診断・CT診断)etc.
■住
した歯科医療のシステム化です。これは生涯にわたって自分の歯を健康に維持し、自
歳のうちに歯の悩みを解消しておこうというプログラムです。
Contents
●生涯を見据えた歯科医療の
ます。
眞坂 信夫
来院できなくなったら、訪問診療により歯科的健康の維持
をはかる
⑦ 前期高齢者歯科治療は生涯設計を基にする。
高 齢者医療費の問題
・歯が 20 本以上残っている人は 2.9%
注目すべきです。
歯根破折は治療後すぐに発症することはなく、治療
日本は諸外国に比べて高齢者比率の増加スピードが
・歯がほとんどなく、入れ歯を使っている人は 7.3%
予防医学の進んだスウェーデンの調査では、抜歯原因
後 10 年、20 年を経過した頃に発症しますので、過去に
速く、高齢者の介護と介護医療費の増大が大きな問題
・歯がほとんどなく、入れ歯も使わない人は 11.5%
は歯周病が5%、虫歯が7%ですが、歯根破折が 62%と
メタルポストを利用した治療を受けたほとんどの方に遅
となっています。2000 年には介護保険制度が導入され
で、リスクの度合いを計算すると、歯が 20 本以上残っ
いう結果が報告されています。歯周病や虫歯を原因とす
かれ早かれ歯根破折の危険があると言っても過言ではな
2006 年には医療費適正化の総合的な推進をはかる目的で
ている人に対して自分の歯がほとんどなく入れ歯も使っ
る歯の喪失は予防によって減少していますが、相対的に
く、特に、人口構成でもっとも多い、いわゆる「団塊の
高齢者医療制度が創設されましたが、その財源不足から、
ていない人の認知度発症のリスクは 1.9 倍となります。
歯根破折の割合が増えているというデータです。私はこ
世代」の方々が高齢化していく今後は、ますます増え続
最近では消費税率引き上げなども取りざたされてきてい
また、何でも噛める人に対してあまり噛めない人のリス
のデータの示す数値が、日本の近い将来の姿であると考
けることは間違いないのです。
ます。
クは 1.5 倍、かかりつけ歯科医のある人に対してない人
えています。
私は高齢者の医療費の節減には健康寿命を延ばし、要
のリスクは 1.4 倍という結果も報告されています。
では、なぜ今後は歯根破折が増えてくると言えるので
生 涯を見据えた治療方法の選択
介護期間を短くする対応がもっとも効果的であると考え
厚生労働省研究班では、歯がない高齢者で認知症のリ
しょうか。
歯根破折の原因と治療については、ニュースレター9
ています。(表1)は厚生労働省の「平均自立期間」の
スクが高くなるのは、歯が抜けていく歯周病が認知症の
統計ですが、この 65 歳と 75 歳の男性で約1年半、女性
一因となる脳梗塞に関係しているほか、噛む力の低下で
歯 根破折は増え続ける
で2年半の要介護期間を半分にできれば、たいへんな経
脳への刺激が失われるためではないかとしています。
歯根破折の危険があるのはメタルポストを用いた「差
になっています。しかし、歯根破折を起こしてしまった
済効果が期待できます。その裏づけとして、次にあげる
この調査でわかることは、よく噛める歯を保つことで
し歯」です。20 年ほど前までは崩壊のひどい歯は抜歯
高齢者の治療にあっては「生涯にわたって問題を起こさ
調査報告例のように、高齢者の健康寿命に歯の健康が深
認知症の発症リスクを軽減させることができる、言い換
するしか方法がなかったのですが、メタルポストを利用
ないこと」が基本的な治療姿勢ですので、私の治療理念
く関わっていることがあげられます。
えれば生涯を見据えた計画的な歯の治療とメインテナンス
する歯科技術の発展によって多くの歯が救われてきまし
の「残せる歯は残す」ことを大切にしながらも、場合に
によって健康寿命を延ばすことができるということです。
た。そして 1985 年に保健適用になったのをきっかけに
よっては抜歯という選択も視野にいれた慎重な選択をす
メタルポストを使用した治療は増え続け、2004 年の調査
べきだと考えます。受診者の皆さまの歯の状態はお一人
でもメタルポストの適用比率は、新材料のファイバーポ
ずつ違います。残っている歯と噛み合わせの具合、治療
よ く噛める歯が認知症の発症リスクを軽減する
号と 10 号(2009 年夏号・秋号)に掲載したように、私
の専門である接着治療や新材料の発達による保存が可能
65 歳以上の高齢者で、自分の歯がほとんどなく入れ
歯 を失う原因が変化している
歯も使っていない人は、歯が 20 本以上ある人にくらべ、
大人の歯は、親知らず 4 本を除くと 28 本で、そのう
ストの2倍となっています。
してある歯の状態、お体の健康状態などを総合的に判断
介護が必要な認知症になるリスクが1.9倍に高まると
ち少なくとも 20 本の歯があれば、ほとんどのものをしっ
メタルポストを利用する治療が抜歯の運命にあった多
した治療計画が必要になります。
いう調査結果が発表されました。
かり噛んで食べられます。しかしながら統計によると 65
くの歯を救い、自分の歯で噛める喜びを多くの人に与え
また、これから歯根破折を起こさないようにする予防
この調査は厚生労働省研究班が愛知県の 65 歳以上の
∼ 69 歳の残存歯数は 20 本に満たない上、その多くが処
てきたことは間違いありませんが、最近になって見逃せ
処置もケースバイケースですが、診断の結果、不安があ
高齢者 4425 人を対象に生活習慣などを尋ね、2003 年か
置歯となっています(表2)。また処置歯のうちの3分
ない問題が指摘されるようになりました。それは、噛む
るメタルポストの場合はファイバーポストに置き換える
ら4年間にわたって追跡調査を行ったものです。この間
の2は無髄歯(治療の必要からやむをえず神経(歯髄)
圧力をまともに受けている硬いメタルポストが長い年月
ことや、今後問題を起こすことが予測できる歯の状態の
に新たに認知症と診断された人が 220 人(5%)いまし
をとってしまった歯)であると考えられます。
の間に歯にダメージを与え続け、最終的にはちょっとし
場合はインプラントにすることなどで、これから先の歯
たが、年齢の違いや持病の影響などを考慮して計算した
歯を失う主な原因は歯周病と虫歯ですが、今後は歯の
た衝撃で歯の根を割ってしまうこと、すなわち歯根破折
の悩みの不安は解消されます。
結果、介護が必要な認知症を発症した割合は、
根が割れてしまう「歯根破折」を原因とする歯の喪失に
という問題です。
(表1)
平均自立期間(自立期間=要介護とならない期間)
0
10
5
15
1.55 年 平均余命 16.48 年
14.93 年(91%)
男性
20(年)
歯科医師は受診者の皆さまと共に年を重ね、皆さまと
30
25
未処置歯
生涯にわたるお付き合いとなることを、この頃ますます
処置歯
実感しています。眞坂歯科医院を頼りにしてくださって
健全歯
65 歳
18.29 年(87%)
女性
2.65 年
平均余命 20.94 年
男性
75 歳
8.23 年(84%)
女性
10.20 年(79%)
3.56 年(70%) 1.53 年
平均余命 9.81 年
2.68 年
いる受診者の皆さまにも高齢期を迎える方々が多くい
15
らっしゃいます。私自身も同じ年代を迎えましたが、こ
れからも皆さまの「かかりつけ歯科医」として、歯の健
10
平均余命 12.88 年
康維持のために積極的な提案を行い、ご希望に添う治療
5
平均余命 5.09 年
を提供させていただきます。同時に歯科医療界にも微力
84
79
74
69
64
59
54
49
44
34
39
29
(歳)
85 ∼
80 ∼
75 ∼
70 ∼
65 ∼
60 ∼
55 ∼
50 ∼
45 ∼
40 ∼
要介護期間
35 ∼
(保険医療に関する地域目標の総合開発と応用に関する研究:平成9年度厚生科学研究費補助金報告書より)
自立期間
30 ∼
平均余命 9.74 年
24
ながら提言を続け、よりよい健康維持環境の実現に向
5.43 年
25 ∼
85 歳
女性 4.31 年(64%)
1.58 年
20
20 ∼
男性
お わりに
(表2) 永久歯の健全歯・むし歯の処置歯・未処置歯の状況(H17)
(本)
かって努力する所存です。