◇ 特別寄稿 「寄付月間」創設にあたって 寄付文化の礎は チャレンジャーを応援しあう社会 特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会代表理事 寄付月間推進委員・共同事務局長 鵜尾 雅隆 氏 余りの団体(日本フィラ けしながら形にしていきました。 をテーマとした対話イベントをご 一緒できることになりました。 なんの予算も形もなく始めた寄 付月間ですが、皆さんがいろいろな 形 で 乗 っ て く だ さ っ て い ま す。 愛 知 を 中 心 に、「 カ ン パ イ チ ャ リ テ ィ キャンペーン」を実施する参加店舗 も約1000にもなっており、楽し みながら気軽に参加できる企画も あります。 ―「 欲 し い 未 来 を つ く る 」 と い う キャッチコピーは、共同事務局で長 い 時 間 議 論 し て 決 め た そ う で す ね。 鵜尾さんが欲しい未来とは? あう社会」です。寄付が進む社会と 鵜 尾 私 の で す か?( 笑 )「 応 援 し は、お金が流れる社会というより、 チャレンジャーを自然と応援する 社会です。誰かが社会のために何か にチャレンジしているときに、自然 に 応 援 し よ う と な る、 応 援 さ れ た 側もまた誰かを応援する。がんばっ ていれば、どこかで誰かが応援して く れ て い る と、 子 ど も た ち が 信 じ ら れ る 社 会 で す。「 助 け 合 い 」 と は ちょっと違うイメージです。 「 課 題 先 進 国 」 日 本 は、 も う 明 ら か に、 行 政 だ け で は 課 題 を 解 決 で き ない時代に入りました。さまざまな プレーヤーが立ち上がって活躍する ことが不可欠ですが、彼らを応援す る人たちが自然に存在している社会 になるといいなと思っています。 ―現状のNPOセクターは、まだま 6 No.371-201512 多いので、みんなで時間をかけて仕 「寄付月間~ Giving December 組みをつくろうと、各方面にお声が ~」は、全国各地で寄付に関わる活 動を行う ―手ごたえはありますか? 鵜尾 おかげさまで、まったく予想 していなかった動きも出てきてい 局 長 の、 特 定 非 営 利 活 動 法 人 日 本 ファンドレイジング協会代表理事の Giving www.givingtuesday. )にも協力されていますが、縁 org あって、2015年 月に社会貢献 」( Tuesday ボ も 実 現 し ま す。 彼 は「 た り。 ビ ル・ ゲ イ ツ さ ん と の コ ラ らない新聞取材に応じてくださっ だ さ っ た り、 め っ た に お 受 け に な が、盛り上げ役を買って参加してく 付推進担当だった小泉進次郎さん トには、当時内閣府大臣政務官で寄 ます。寄付月間のキックオフイベン うなきっかけだったのでしょうか? 鵜尾 2009年に日本ファンドレ イジング協会を発足した当初から、 「ボランティア週間」( 月)のよう %強」という統計が出 始めているなと思い、実現に至りま もご提案がありました。温度感が出 どうかと、企業や国際機関などから て、寄付のキャンペーンをやったら 付した人は でしたが、昨年「東日本大震災で寄 た。その後も議論が出たり消えたり タイミングではないと感じていまし は出ていました。でも漠然と、まだ に「寄付月間」をつくろうとの意見 1 した。寄付は取り組むプレーヤーが 12 ―「寄付月間」を始めたのはどのよ 鵜尾雅隆氏に話を聞いた。 寄付月間の旗振り役であり共同事務 会を結成して、運営を進めている。 ンソロピー協会も参加)が推進委員 30 76 特集 れをどう「応援しあう社会」に持っ だ「 応 援 し て も ら う 社 会 」 で、 そ で 協 力 者 と つ な が る。 あ く ま で イ が戦略を考えて、その枠組みのなか いう段階。創業者、経営者、理事会 ですね。 ―欲しい未来を感じる幸せな実感 哲学的にどうだというより、個々人 社会です。ある事柄が正しいとか、 まさに、一人ひとりに「あなたの欲 緒に実現する、応援しあう形です。 メ ー ジ が あ る な か で、 そ の 夢 を 一 の 思 い と 役 割、 何 ら か の ゴ ー ル イ ン プ リ メ ン タ ー)、 受 益 者 そ れ ぞ れ 変化があって、支援者、実施者(イ し違います。まずは何か起こしたい Oがありがとうを言う」構造とは少 鵜 尾 応 援 し あ う 社 会 と は、「 N P Oの応援をする/応援されたNP ワ ー ク が、 想 定 し て い な か っ た 新 で き た 人 間 関 係、 共 感 性 の ネ ッ ト い う こ と で す。 3・0 は、 そ の 場 で この仕事を 年やってきて実感 す る の は、 N P O に 3・0 が あ る と 受益者や社会の理解を広める段階。 残 り 半 分 は 枠 外 の 人 た ち が 参 加 し、 解 決 す る 1・0 の ス テ ー ジ が 半 分、 見 つ け て い く。 自 分 た ち で 課 題 を いろいろな気づきや自分の役割を 係性でも、その過程で大勢の人が、 で す。 2・0 は、 支 援 し て も ら う 関 行 政 で は で き ず、 企 業 も 単 体 で は そ う い う こ と な ん だ と 思 い ま し た。 ら、やはりおもしろくなってきて、 う こ と を や る 」( 笑 )。 変 え て み た え て し ま い ま し た。「 第 条 チ ャ プ タ ー の み ん な が や り た い! と 思 ちゃダメ、これはダメ」とたくさん のチャプター規約では「あれはやっ て、 ほ ん と う に 想 定 外 で す。 当 初 おもしろいことをやり始めてくれ プターの人たちが、どんどん新しく プター制度」があるのですが、チャ 鵜 尾 日 本 フ ァ ン ド レ イ ジ ン グ 協 会 に は 支 部 を 設 置 す る「 地 域 チ ャ る 人 が 2 割 と 2 割 い る。 1 つ 目 の も、 社 会 に 何 ら か の 影 響 力 を 与 え 割。これを応用すると、寄付月間に 法は? ―普通の人に運動を広げていく方 かけになればと思います。 というものを前向きに考えるきっ 一人でも多く実体験を伴って寄付 がほんとうに腑に落ちる実体験が ていくか、そこが難しいですね。 しい未来とは?」と、この機会に問 しいイノベーションをどんどん勝 2割は著名人やスポーツアスリー とに前向きな人が 割、どちらでも 鵜 尾 「 2 : 6 : 2」 と よ く い わ れ ます。社会のなかで変化を起こすこ 必要なのです。だから寄付月間も、 いかけたいですね。 手に起こしていく。誘発的イノベー なかなかできないのが誘発的イノ ノベーションの主体は主催NPO ―お金がないと、 自分や組織の存続・ ションの段階です。これこそが、民 ベーションです。 ヶ条に変 発展が「欲しい未来」になりがちで、 間非営利セクターの持つものすご いい人が 割、ネガティブな人が2 ト な ど 影 響 力 の あ る 人 の グ ル ー プ。 つの 割は、一見影響力がな 織や事業を確実にマネジメントし う ん で す。 1・0 は、 自 分 た ち の 組 鵜 尾 N P O = 民 間 非 営 利 組 織 に は、 1・0、2・0、3・0 が あ る と 思 どこにだれがいるかもわからない を み ん な で ど ん ど ん 見 つ け て い く。 ベ ー タ ー に な っ て、 社 会 の 最 適 解 ではなく、その人自身が新しいイノ らって理解が広まったというだけ と 思 い ま す。 日 本 は、 一 人 ひ と り 鵜 尾 今、「 社 会 の た め に 何 か し た い」と思う空気が生まれてきている れに乗っていく。 ―想定外のことが起きても、またそ とが、広げることにつながるのでは ですから。この もう て、 想 定 さ れ て い る 自 分 た ち の ソ 「 う わ あ っ」 と い う 感 じ が、 N P O 割に訴えていくこ よいことかどうかが重要なテーマ 子高齢社会になると、子どもたちに だと私は考えています。これだけ少 さそうだけれど実はある「子ども」 リューションをきちんと受益者に ないかと思っています。 連 ね て い た の で す が、 そこが難しいところですね。 2 の 実 体 験 で、 も の の 見 方 で 変 わ る く 大 き な 価 値。 単 に、 関 わ っ て も 6 2 5 2 のこれからの可能性だと思います。 1 7 提供する。しっかりやりましょうと No.371-201512 7 寄付のススメ―寄付月間スタートに寄せて No.371 4 うお・まさたか JICA、外務省、米国 NPO などを経て、2008 年 NPO 向け戦略コンサルティング企業・株 式会社ファンドレックス創業。2009 年、寄付 10 兆円時代の実現をめざし日本ファンドレイ ジング協会を創設、2012 年から現職。認定ファンドレイザー資格創設、アジア最大のファン ドレイジングの祭典「ファンドレイジング日本」開催、『寄付白書』発行など、寄付や社会的 投資の促進に取り組む。G8 社会インパクト投資タスクフォース日本諮問委員会副委員長、社 会的投資促進フォーラムメンバー、日本ボランティアコーディネーター協会副代表理事、株式 会社ファンドレックス代表取締役。 「寄付月間~ Giving December ~」とは NPO、大学、企業、行政などで寄付に関わる主な関係者が幅広く集い、寄付が人々の幸せを生 み出す社会をつくるために、12 月 1 日から 31 日の間、協働で行う全国的なキャンペーン。 主催:寄付月間推進委員会。 http://giving12.jp/ 世の中の空気もだいぶ変わると思い トが寄付や社会貢献をしてくれたら、 を 強 化 し た い で す。 憧 れ の ア ス リ ー 社会貢献するアスリートの取り組み 著 名 人 グ ル ー プ で は、 ス ポ ー ツ で 枠組みにしたいですね。関心のある 寄付月間は幅広い人を巻き込む仕 掛け、社会のいろいろな人が乗れる います。 的に英語に翻訳してくださった方も 協力いただいています。資料を自主 たいです。 と日本人を信じる一生を歩むのか。 て挑戦しないのか、「やれば変わる」 「それでも社会は変わらない」と思っ カ国の社会構 な い か な と 考 え て い ま す。 文 科 省 と トの仕組みを学んでもらったりでき クな社会貢献事例やマッチングギフ あったら踊ってもいいと思っている じっとしているけれど、チャンスが 感があります。今は人の陰に隠れて 人はまだまだたくさんいるという直 た。あることによって促進剤になる 組 み 」「 仕 掛 け 」 だ と 気 が つ き ま し に 欠 け て い る の は「 イ ン フ ラ 」「 仕 造を実際に見て回ったなかで、日本 前職で世界の約 やはり、信じてアクションしていき ます。ルーキーの新入研修で、 ユニー も、 ス ポ ー ツ 庁 発 足 に 際 し て 地 域 で のに、まだなさていないことが 個 個があれば いろいろとアイディアをいただいて プ ロ 野 球 選 手 の 古 田 敦 也 さ ん に も、 しいけれど、ポジティブに、地道に ―人の行動パターンを変えるのは難 寄付教育、遺贈寄付…、2020年 間、スポーツチャリティ、子どもの 日本は変わりはじめるのか―寄付月 個全部やってみよう思って ―どんどん人を巻き込んでいく力が ま す。 や っ て み た け れ ど、 ど れ だ 鵜 尾 寄 付 月 間 で 人 の 行 動 パ タ ー ンがどれだけ変わるのかと聞かれ ― 寄 付 文 化 醸 成、 「寄付月間~ います。 までに おありです。人を信じることが原動 け変わったかわからないという結果 年 人、企業の社会貢献担当の皆さんと 鵜尾 皆さんのおかげです。組織を 超えて、日本各地のNPOや公益法 うかだ」と。寄付が進む社会、応援 チャレンジは、日本人を信じるかど 出 す ん で す。「 と ど の つ ま り、 こ の に な る か も し れ な い。 で も、 活動に取り組ませていただいている し あ う 社 会 は、 自 分 だ け で は な く 前、起業に際して考えたことを思い 万人いるよ 億2000万人にとっていい社会 イジング協会にて】 月 日 日 本 フ ァ ン ド レ インタビュー 公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 高橋陽子 忙しいなか、 ありがとうございました。 力となっているように感じますが。 会貢献クラブをつくる話もあります。 ですね。 ほど見えました。この 人の視線を感じるんですよ(笑) 20 い ま す。 経 営 者 や リ ー ダ ー た ち の 社 で き な い か と い う 話 も し ま し た。 元 スポーツチャリティのモデル事業が 50 20 ~」の定着に向 Giving December け て、 が ん ば り ま し ょ う。 本 日 は お 20 【2015年 11 8 だという確信はありました。あとは 11 ので、自分には同僚が うに思えて心強いです。寄付月間も、 皆さんお忙しいなか、気持ちよくご 1 30 8 No.371-201512
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