理工学部理学科 化学コース 有機電子化学研究室 講師 Electro Organic Chemistry Lab. Lecture 松 本 浩 一 Kouichi Matsumoto キーワード 有機合成化学、有機電解合成、電子移動化学、電 気化学 Organic Synthesis, Electro-Organic Synthesis, Electron Transfer, Electrochemistry 目的 有機化合物の酸化・還元を環境に優しい電気エネ ルギーを「反応剤」として用いて行い、興味深い有 機反応の開発や有機分子の合成を目的に研究を行っ ている。最近の研究成果は以下の通りである。 [1]電解酸化を用いたアルデヒドとホモアリルア ルコールからのプリンス環化反応による含フッ素 化体の合成 テトラヒドロピラン環骨格は天然有機化合物にし ばしば含まれており、この骨格を効率よく構築する 方法の開発は重要な研究テーマの一つである。その 中でも、アルデヒドとホモアリルアルコールに酸を 作用させてテトラヒドロピラン環を合成する手法と してプリンス環化反応が知られている。本研究では、 アル デヒドとホモアリ ルアルコール を Bu4NBF4/CH2Cl2 溶液中で電解酸化すると、系中で生 じる電解酸を反応剤として、フッ素が導入されたテ トラヒドロピラン環が形成されることを見出した (Scheme 1)。本手法は簡単にフッ素を導入でき、 フッ素は化合物の物性を大きく変える可能性がある ため、有意義な反応であると考えている。 Scheme 1. Prins cyclization of aldehydes and homoallylic alcohols using electrochemical oxidation. [2]触媒量の電解酸を用いた炭素-炭素不飽和結 合を有する側鎖をもつ芳香族化合物の分子内カチ オン環化反応 連鎖反応とは反応の生成物や中間体が次の反応を 駆動する逐次的な反応のことであり、触媒量の反応 剤から多量の生成物を得ることができるため、有機 化合物の効率的な合成手法の一つとして重要である。 本研究では、電気化学的な酸化により陽極室に生じ る触媒量の電解酸を用いた炭素-炭素不飽和結合を 有する側鎖をもつ芳香族化合物の分子内カチオン環 化反応の開発を行った。Bu4NB(C6F5)4/CH2Cl2 溶液の 電解酸化により調製した触媒量の電解酸に対して、 基質 1 を作用させたところ、Scheme 2 に示す推定反 応機構(カチオン連鎖反応)により生成物 2 が得ら れた。本反応は、ポリエンの環化反応にも適用でき ることを明らかにしている。また、基質としてエポ キシドも用いることが可能である。 Scheme 2. Plausible reaction mechanism. 最近の業績 [1] Esterification of Carboxylic Acids with Alkyl Halides Using Electroreduction. Miyamoto, Y.; Yamada, Y.; Shimazkai, H.; Shimada, K.; Nokami, T.; Nishiwaki, K.; Kashimura, S.; Matsumoto, K. Electrochemistry, in press. [2] Simple and convenient synthesis of esters from carboxylic acids and alkyl halides using tetrabutyl ammonium fluoride. Matsumoto, K.; Shimazaki, H.; Miyamoto, Y.; Shimada, K.; Haga, F.; Miyazawa, H.; Nishiwaki, K.; Kashimura, S. J. Oleo Sci., 2014, 63, 539-544. [3] Recent Developments in the “Cation Pool” Method. Yoshida, J.; Ashikari, Y.; Matsumoto, K.; Nokami, T. J. Synth. Org. Chem., Jpn., 2013, 71, 1136-1144. [4] Electrogenerated Acid (EGA) Catalyzed Addition of Diaryldisulfides to Carbon-Carbon Multiple Bonds. Matsumoto, K.; Shimazaki, H.; Sanada, T.; Shimada, K.; Hagiwara, S.; Suga, S.; Kashimura, S.; Yoshida, J. Chem. Lett. 2013, 42, 843-845. [5] Addition of ArSSAr to Alkenes. Implication of a Cationic Chain Mechanism Initiated by Electrogenerated ArS(ArSSAr)+. Matsumoto, K.; Sanada, T.; Shimazaki, H.; Shimada, K.; Hagiwara, S.; Fujie, S.; Ashikari, Y.; Suga, S.; Kashimura, S.; Yoshida, J. Asian J. Org. Chem. 2013, 2, 325-329. 最近の外部研究費 ■基盤研究(C)、研究代表者、平成 26 年 4 月~平成 29 年 3 月(予定) ■私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(文部科学省)分 担、平成 26 年~平成 30 年(予定) ■財団法人天野工業技術研究所研究助成、研究代表者、平 成 24 年(1 年間) ■公益財団法人日本科学協会笹川科学研究助成、研究代表 者、平成 25 年(1 年間) ■一般財団法人戸部眞紀財団研究助成、研究代表者、平成 26 年(1 年間) ■一般財団法人日本産業科学研究所、研究代表者、平成 26 年(1 年間) 受賞歴 ■平成 21 年度 ■平成 23 年度 奨励会) 日本化学会第 89 春季年会学生講演賞 総合研究奨励賞(一般財団法人総合研究 その他 ■有機電気化学研究会幹事(2015 年度)
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