リヨン大学准教授夫妻の来日研究調査のご報告

リヨン大学准教授夫妻の来日研究調査のご報告
進 博夫
フランスのリヨン大学で KM を研究テーマの一つとする2人の研究者が、本学会の進めている実践
研究の調査のため、4月中旬に約2週間来日し、本学会の協力の下、研究調査を終了しました。
以下にその経緯と結果について報告いたします。
1.訪問研究者
訪問者は以下の2人で、リヨン第1大学で教鞭を執りつつ、異なる研究所で研究を行っています。
2人は別姓の夫婦で、関係者了解の下、6才の子息セザール君を常に帯同し行動していました。
David Vallat: (ダヴィッド・ヴァラット)
•
リヨン第1大学准教授(経済学) http://www.univ-lyon1.fr/
研究テーマ:KM(認識論、アクティブラーニング、ゲーム応用等方法論、学習する組織、アジ
ャイル組織等マネジメント論)、社会起業家論
•
リヨンの複数大学のジャンルを超えた共同研究を行う研究所 TRIANGLE 研究員
http://triangle.ens-lyon.fr/
Sandra Bertezine:(サンドラ・ベルテジーン)
• リヨン第1大学准教授 (経営学) http://www.univ-lyon1.fr/
研究テーマ:特にヘルスケア組織における組織経営、KM 適用と評価、CSR、知的資産
•
SAF (EA 2429)研究所にて保険数理・財政に関する研究
http://isfa.univ-lyon1.fr/la_recherche
因みに、リヨン大学は3大学からなり、第1大学は19世紀のフランスの医師で生理学者、クロー
ド・ベルナールの名を冠した医学・理学・工学系大学。他2大学は人文科学系の大学。
2.学会訪問の経緯と日程
昨年 4 月に学会訪問の際、ヴァラット氏は 2013 年にスタートした組織変革実践研究部会(高山部
会長)に深い関心を寄せ再来日を約束、今年に入り 4 月の来日調査への協力依頼がありました。
KM 学会としては可能な限り協力するという理事長方針も頂き、4 月 13 日から 21 日まで先方の
希望に沿ったアジェンダで研究調査に協力しました。
概略の日程としては、
① 高山理事によるエーザイにおける知識創造理論実践に関する説明と議論、
② 学会幹部との全般的対話、さらに
③ 研究部会参加5企業全メンバーへのヒアリングを行いました。最終的には
④ 国際ワークショップとその後の懇親会で包括的対話を行い、親睦を深めました。
具体的な日程については別紙を参照のこと。
3.調査日程と経過
4 月 13 日(月) 10:00-12:00 高山エーザイ執行役員訪問 エーザイ本社
来日調査の最初にエーザイ本社に高山執行役員を訪問し、エーザイにおける知識創造実践活動
に関する理論的裏付けに、エーザイの社内センサス結果を交えた説明をたっぷり受けディスカッ
ションを行いました。
高山理事、矢澤理事、進
4 月 15 日(水) 12:00-15:00 KMSJ 昼食会 国際文化会館
昼食会では、今回訪問の意図、専門領域の話や KM とインターネット社会の影響を含む様々な話
題について学会幹部と和やかに意見を交換しました。
花堂理事長、山崎専務理事、高山理事、進:国際文化会館の庭園にて
4 月 16 日(木) 13:00-16:00 長谷川ホンダカーズ栃尾社長訪問 新潟県長岡市栃尾
新潟県長岡市の長岡駅からすぐの公園で満開の桜を見物した後、栃尾の日本料理屋で長谷川
新社長にインタビュー。長谷川氏は慣れない英語のプレゼンを見事にこなして下さいました。その
後ホンダカーズ栃尾のお店を見学し、スタッフの皆さんからも話を伺い、丁度居合わせた前社長と
も言葉を交わすことが出来ました。
ホンダカーズ栃尾 長谷川社長と桜の下で
4 月 18 日(土) 9:00-12:00 3社インタビュー エーザイ本社
前川ハートビーツ取締役、鳥羽日本郵便長野中央郵便局部長、渡邊新潟関屋自動車学校部長
の 3 人も、高山氏の補足説明もあり、
左から渡邊部長(新潟関屋自動車学校)、鳥羽部長(日本郵便新潟中央郵便局)、飛んで
前川取締役(株ハートビーツ)、高山理事、進
4 月 20 日(月)10:00-12:00 長谷川日本リファイン取締役訪問 日本リファイン本社
海外担当の中谷マネージャーにも参加頂き、具体的な説明を頂きました。
長谷川取締役、中谷グローバル推進本部マネージャー
4 月 21 日(火) 17:30-19:30 WICRS/KMSJ 国際ワークショップ 早稲田大学
ワークショップには KMSJ 13 名および WICRS/WICI メンバー4 名の計 17 名が参加し、ヴァラット
准教授の 2 部に分かれたプレゼンテーションを受け、Q&A およびディスカッションを行いました。
その際に使用された資料は以下の 2 点です。
①http://fr.slideshare.net/davidvallat1/knowledge-management-comparison-japan-france
②http://prezi.com/e-if2kozoivn/?utm_campaign=share&utm_medium=copy&rc=ex0share
因みに、帰国後の改訂版プレゼンテーションは以下の link からご参照下さい。
③http://prezi.com/iuy92kehhogu/?utm_campaign=share&utm_medium=copy&rc=ex0share
プレゼンは、研究者としての自己紹介、世界の現状認識、課題へのアプローチ、日本での調査結
果(中間)、それを踏まえた今後の課題、といった内容でした。
現代社会の課題対処のアプローチとして KM の重要性認識は一致していますが、KM をどのよう
な位置づけで捉えるか、については興味深い議論がなされました(齋藤氏の寄稿文参照)。
今回は齋藤氏を含めた以下の 3 会員にワークショップ参加感想の寄稿文をお願いしました。ぜひ
ご参照下さい(アイウエオ順)。
① 荒木 聖人氏 「フランス人研究者ヴァラット夫妻を迎えての国際シンポジウムに出席して」
② 齋藤 稔氏
「国際ワークショップ所感」
③ 佐脇 英志氏 「国際ワークショップ『日仏 KM 対話と新たな展開』に参加して」
荒木 聖人氏 (NEC 通
信システム)
齋藤 稔 氏
佐脇 英志氏 (株式会社キトー)
4 月 21 日(火) 19:30-20:30 懇親会 西北の風
その後大隈記念タワー15 階の「西北の風」に場所を移して懇親会を行いました。
懇親会にはフランスのゲスト 3 人の他、WICRS/KMSJ の 12 名が参加しました。
こじんまりした人数で和やかな談話が続き、9 時近くなり最後のご挨拶をお願いした高山理事が、
私たちはこれからもずっと親しい仲間ですよ、と締めくくると、ヴァラット氏は感極まった様子で感謝
の意を表していました。
今回の調査の結果、5 社幹部の意欲的な態度と活動成果には大変感銘を受けたようです。
ただ同時に、日仏の文化の相違、例えばトップがワーカーと同レベルで話し合うことはない、ヒュ
ーマンセントリック組織の議論はない、といった状況の相違について今回は深く議論しませんでし
た。今後エーザイの英仏子会社での hhc 展開状況を含め、グローバル展開の可能性を確認して
いきたい、との意向です。自ら行っているフランスヘルスケア組織との KM プロジェクトとの比較等、
本格的な日仏の比較はさらに先になるようです。
花堂理事長の後日の言葉をお借りすれば、学術的な展開に繋げることは将来の課題の域を出ま
せんでしたが、和やかにワークショップが進められたことで、ヴァラット夫妻も非常に満足し交流継
続を約束し感謝して帰国しました。これをきっかけに日仏の KM の繋がりがさらに拡大・進化する
ことを期待します。
花堂理事長、高山理事を筆頭に、学会幹部、上記研究部会の企業メンバー各位、国際ワークショ
ップに参加頂いた WICRS/WICI の皆様、学会各位のご協力に感謝いたします。