2015 年 10 月 9 日 コンクリート(1) 「コンクリート」とは? コンクリートは何からできているのか? コンクリート モルタル セメント コンクリートの長所と短所 よいコンクリートのためには? 鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete; RC)とは? 鉄筋(鋼材)とコンクリートを組み合わせる理由 コンクリートの特徴 鉄筋の特徴 強度の面から 耐火性の面から 耐久性の面から プレストレストコンクリートが長大スパンを実現できる理由 現場施工とプレキャストコンクリートの違い フレッシュコンクリートの打込みと養生 建築材料基礎論(西脇) Tohoku University Tohoku University コンクリート 教科書 p.69 60 細骨材 細骨材 充填材 コンクリート 橘高義典他「新編建築材料」市ヶ谷出版、p.7より 建築材料基礎論 #1 未水和セメント 40 20 9. October, 2015|#2 Concrete 結合水 水和セメント モルタル 絶 対 容 積 (%) セメント 空 気 自由水 粗骨材 0 フレッシュコンクリート 粗骨材 硬化コンクリート 建築材料基礎論 #2 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University セメント・モルタル・コンクリート 細骨材 40 20 粗骨材 9. October, 2015|#2 Concrete 石灰石 CaO 粘土 SiO2 ケイ石 Al2O3 酸化鉄 Fe2O3 3CaO・SiO2 ・・・C3S : エーライト ケイ酸三カルシウム 粗骨材 通常は鉄筋と組み合わせて使用される 0 フレッシュコンクリート クリンカー 焼成 充填材 絶 対 容 積 (%) 細骨材 → 古代に使用されたものは 天然セメント (石灰・火山灰など) セメント原料 未水和セメント コンクリート コンクリート (セメント+細骨材+粗骨材) 60 教科書 p.98 ポルトランドセメントの発明(Aspdin J. 1824年) 結合材 コンクリートよりも収縮・クリープ等が大きい ため構造躯体に使用されることは通常ない セメント 結合水 水和セメント モルタル モルタル (セメント+細骨材) 水 80 空 気 自由水 空隙 水と反応して硬化する(水和反応≠乾燥) 反応の際に発熱・収縮する 骨材を固める接着剤の役割 空 気 Tohoku University セメント セメントペースト 100 セメント ・・・C2S : ビーライト 2CaO・SiO2 ケイ酸二カルシウム ・・・C3A : 3CaO・Al2O3 アルミン酸三カルシウム 微粉砕 間隙相 4CaO・Al2O3・Fe2O3 ・・・C4AF: 鉄アルミン酸四カルシウム せっこう CaSO4・2H2O 硬化コンクリート 建築材料基礎論 #3 結合材 水 80 空隙 コンクリート [1] 空 気 セメントペースト 100 9. October, 2015|#2 Concrete 少量を添加 セメント 建築材料基礎論 #4 Tohoku University Tohoku University 環境負荷としてのセメント 環境負荷としてのセメント IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change の報告 IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change の報告 「化石燃料の燃焼」 と 「セメントの生産」 「化石燃料の燃焼」 と 「セメントの生産」 http://www-cger.nies.go.jp/carbon/spm-j.pdf 石灰石が熱分解する際に大量のCO2を排出 石灰石が熱分解する際に大量のCO2を排出 国内のセメント製造起源のCO2排出量は約4% 国内のセメント製造起源のCO2排出量は約4% CaCO3→CaO+CO http://www-cger.nies.go.jp/carbon/spm-j.pdf 2↑ CaCO3→CaO+CO2↑ 建築材料基礎論 #5 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #6 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University セメント・コンクリートの歴史 Tohoku University 国内のセメント生産の発展 慶応初期(1865頃)・・・我国最初のセメントの輸入 :徳川幕府が横須賀製鉄所の建設に使用 明治8年(1875)・・・東京深川に官営のセメント工場設営 Cf. セメント製造開始;フランス(1848),ドイツ(1850),アメリカ(1871) 日清戦争による好況・・・国内でのセメントの 自給体制が確立 戦後の経済復興・・・生産量が急激に増加 土木学会「古代ローマコンクリート~ソンマ・ヴェスヴィアーナ 遺跡から発掘されたコンクリートの調査と分析」 コンクリートライブラリー131、p.4、2009 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #7 昭和29年(1,000万t),昭和38年(3,000万t),平成9年(9,000万t(輸出1,500万t)) 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #8 Tohoku University コンクリートの特性 教科書 p.64 【長所】 1:構造材料として十分な圧縮強度と剛性を有している 2:構造物の材料として優れた耐久性を有している 3:鉄筋を保護する耐火性と防錆性に優れている 4:型枠に流し込むことで自由な形状寸法に一体成形できる 5:材料が豊富で経済的である 鉄筋コンクリート構造 1:鉄筋の組み立て 2:型枠の組み立て 3:コンクリートの打設 【短所】 1:引張強度が低く、脆性的な破壊挙動を示す 2:単位容積質量が大きく、構造物の重量が大きくなる 3:乾燥収縮や水和熱の発生によって、ひび割れが生じ易い 4:打ち込みから強度の発現までに長時間を必要とする 5:構造物の解体・再利用・廃棄が容易ではない 4:型枠の脱型 (5:コンクリートの養生) 日本建築学会「構造用教材」より 建築材料基礎論 #9 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University 建築材料基礎論 #10 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University 鉄筋コンクリートの梁 教科書 p.65など Tohoku University 応力図 F 10cm R 10cm F 10cm 10cm R Q図 10cm 10cm 10cm 30cm M図 40cm 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #11 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #12 Tohoku University 鉄筋とコンクリートの役割 教科書 p.65 Tohoku University プレストレストコンクリート 教科書 p.65 予め(pre-) P 圧縮応力(stressed) をかけておく σp σc + σp σp+σc = σt σp-σt プレストレスによりσpの圧縮応力が 作用しているため、 建築材料基礎論 #13 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #14 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University 鉄筋コンクリート構造の特徴 鉄筋(鋼材) の特徴 Tohoku University 施工・打設 教科書 p.67 1:他の建築材料と比較して強度、剛性とも高い 現場施工 プレキャストコンクリート 2:最終的な破断までに大きな変形が発生する 1:形状の自由度が高く、接合部のない一体構造ができる 3:熱に弱く、高温下で強度、剛性ともに低下 2:建設現場は気象条件の影響を受け、作業性が悪い 3:一品生産のため機械化・自動化が困難で、工期が長く生産効率が低い 4:大気中で錆びる(酸化する・腐食する) 4:現場での品質管理が難しく、寸法精度も悪い 1:打設時は液状で、自由な形を形成できる 2:熱伝導率が小さい(熱を伝えにくい) コンクリート の特徴 3:強いアルカリ性を示す 4:比較的安価である 5:重量に対する強度と剛性は鋼材に劣る 6:引張に対する強度が小さい 7:クリープ変形が見られる 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #15 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #16 Tohoku University コンクリートの物性 教科書 p.68 Tohoku University コンクリート 教科書 p.69 圧縮強度 引張強度 曲げ強度 [kN/mm2] [N/mm2] [N/mm2] [N/mm2] コンク リート 2.3 20~56 25~42 50~75 3~6 30~75 5.4~10.8 4~9 粗骨材 16~18 70~80 220~250 120~140 細骨材 40 16~18 20 鋼鉄 7.85 206 粗骨材 セメントペースト 220~360 220~360 220~360 127~208 0 フレッシュコンクリート 建築材料基礎論 #17 9. October, 2015|#2 Concrete 細骨材 充填材 細骨材 60 水和セメント 未水和セメント コンクリート カ シ 0.7~1.0 (広葉樹) 7~8 1.8~3.6 セメント 空 気 自由水 結合水 モルタル ス ギ 0.3~0.4 (針葉樹) 18~36 水 80 絶 対 容 積 (%) 弾性係数 [t/m3] 空 気 粗骨材 硬化コンクリート 建築材料基礎論 #18 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University コンクリートの品質 教科書 p.70 Tohoku University 硬化コンクリートの性質 打込み・養生 締固め 水セメント比・空気量 単位水量・単位セメント量 b. セメント強度 未水和セメント 細骨材 c. 空隙・空気量 施工性 ワーカビリティー コンシステンシー プラスチシティー フィニッシャビリティー ポンパビリティー 充填材 適切な取り扱い a. 水セメント比 d. 骨材 e. 材齢と養生条件 結合材 正確な調合 耐久性 良質な材料 中性化 容積変化・ひび割れ 耐凍害性 耐熱性・耐火性 すりへり抵抗性 耐薬品性 空 気 自由水 結合水 水和セメント 強 度 骨材・セメント 混和材料 教科書 p.72-77 空隙 圧縮強度とその影響要因 力学的性質 圧縮強度・引張強度 付着強度・弾性・靭性 結合材 密 度 セメントが水和反応によって硬化し 骨材どうしを結合させて一体化する 空隙 材 種 せん断強 度[N/mm2] セメントペースト 100 粗骨材 硬化コンクリート 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #19 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #20 Tohoku University 水和反応 教科書 p.98 水 クリンカー化合物 3CaO・SiO2 H2O 2CaO・SiO2 水和反応の過程 教科書 p.99 水和生成物 nCaO・SiO2・mH2O (エーライト) Tohoku University (ケイ酸カルシウム水和物) (n≒1.2~2.0) エトリンガイト (針状) セメント + 水 が 硬化する(水硬性材料) ≠ 水が乾いて固まる (六角状) Ca(OH)2 (ビーライト) (水酸化カルシウム) 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O 3(CaSO4・2H2O) 3CaO・Al2O3 (エトリンガイト) (せっこう) (アルミネート相) H2O 3CaO・Al2O3・CaSO4・12H2O (モノサルフェート水和物) 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O 3CaO・Al2O3・6H2O (エトリンガイト) 4CaO・Al2O3・Fe2O3 (フェライト相) SEM写真 (Scanning Electron Microscope) (アルミン酸カルシウム水和物) 3CaO・Al2O3 と同様の反応をし、水和生成物はFe2O3を一部固溶して、 Al2O3 を(Al2O3)x (Fe2O3)1-xで置き換えたかたちで表現できる 建築材料基礎論 #21 9. October, 2015|#2 Concrete 練混ぜ直後 後 9. October, 2015|#2 Concrete 後 建築材料基礎論 #22 Tohoku University a: 水セメント比:W/C 80 水和セメント 60 細骨材 充填材 コンクリート 粗骨材 粗骨材 0 フレッシュコンクリート 9. October, 2015|#2 Concrete d: 骨材 教科書 p.74 粗骨材 (砂利・砕石など:5mm以上) 細骨材 (川砂・砕砂など:5mm以下) セメント硬化体よりも強度が大きければ コンクリートの強度への影響は小さい 細骨材 40 20 強度のためには 小さい方が良い 未水和セメント モルタル ワーカビリティ 流動性 + 材料分離 絶 対 容 積 (%) セメント 結合材 水 空 気 自由水 結合水 空隙 流動性のためには 大きい方が良い 空 気 セメントペースト 100 教科書 p.73 Tohoku University 硬化コンクリート 建築材料基礎論 #23 川砂利(丸い)よりも砕石(凹凸)を 使用した方が強度は高い傾向がある 骨材の表面積が大きい (モルタルの方が強度は大きい) 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #24 Tohoku University e: 養生 と 材齢 教科書 p.74-75 Tohoku University e: 養生 と 材齢 教科書 p.74-75 養生:水和反応を継続させて十分な強度を発現さ せるための保護 十分な水分がないと反応が阻害される 温度が高いほど強度の発現が早いが、長期 的な強度は劣る 積算温度(養生温度と養生期間の積)と圧縮 強度に相関がある 図 3.2.9 図 3.2.8 強度管理の際の 一般的な基準材齢 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #25 建築材料基礎論 #26 9. October, 2015|#2 Concrete Tohoku University e: 養生 と 材齢 教科書 p.76 Tohoku University 強さと剛さ(強度と弾性係数) 教科書 p.77 圧縮応力度 圧縮強度(σc) ヤング係数 (弾性係数) 圧縮ひずみ度(εc) 引張ひずみ度 (εt) 図 3.2.10 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #27 引張応力度 9. October, 2015|#2 Concrete 引張強度(σt) 図 3.2.11 建築材料基礎論 #28 Tohoku University コンクリートの破壊プロセス accumulation of damage 引張破壊 Tohoku University 圧縮強度とヤング係数 教科書 p.78-79 crack RC構造計算基準 stress aggregate stress 旧(1988年版)RC構造計算基準 stress accumulation of damage 圧縮破壊 crack aggregate stress stress 図 3.2.13 stress 建築材料基礎論 #29 9. October, 2015|#2 Concrete 9. October, 2015|#2 Concrete 図 3.2.14 建築材料基礎論 #30 Tohoku University クリープ 教科書 p.79-80 一定荷重が持続するときに、 時間の経過とともにひずみ が増加する現象 Tohoku University コンクリートの体積変化 教科書 p.80 体積変化の要因:いずれもひび割れの原因に a. 乾燥収縮 圧縮応力度 b. 自己収縮 圧縮強度(σc) c. 温度変化 圧縮ひずみ度(εc) 引張ひずみ度 (εt) 引張強度(σt) 引張応力度 9. October, 2015|#2 Concrete 図 3.2.15 建築材料基礎論 #31 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #32 Tohoku University 乾燥収縮・自己収縮 Tohoku University 乾燥収縮とひび割れ(対策) 乾燥収縮:水分の散逸に伴って生じる収縮 橘高義典他「新編建築材料」市ヶ谷出版、p.27より 誘発目地 開口補強筋 (ひび割れ) 自己収縮 : セメントの硬化反応に 伴って生じる収縮 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #33 9. October, 2015|#2 Concrete 建築材料基礎論 #34
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