フローサイトメトリーの 精度管理方法

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フローサイトメトリーの
精度管理方法
はじめに
精度管理とは、検体の測定結果が正しく報告されていること(正確性)、および検体に変化がない限り、繰り返し測定され
る結果に大きな変化がないこと(精密性)を確認、保証する一連の行為です。すなわち精度管理の目的は、検体の測定結
果が“正確゛であることを保証すること、および測定方法とその管理方法の妥当性を測定結果の記録から証明することに
あります。それらを実現するには、測定システムの機能やしくみを理解すること、測定システムの機能を維持管理すること、
測定システムが異常検体も正しく測定しているか判断することなどが重要です。またこれらの結果を記録し保存すること
も重要です。
検体測定値の精度管理は、検体の採取から測定までの各ステップごとに、プロセスが正しく管理されていることが前提と
なります。管理方法としては、Levey-Jennings チャート(X 管理図または X-R 管理図)に管理用検体の測定結果をプ
ロットすることで、測定値の日差変動の管理やシステムの異常検知が容易になります。また、測定系全体の精度を管理
するための管理用検体としては、実際の検体と同様の処理を行うことが可能な、プロセスコントロールが適しています。
ベックマン・コールター社では、臨床検査用途におけるフローサイトメトリーの施設間精度管理プログラム IQAP
(Interlaboratory Quality Assurance Program /U.S. Patent Number 4858154)を提供しています(2003 年 4 月より)。
測定値と真値
測定値の信頼性は、多くの場合、精密性と正確性によって評価されます。精密性と正確性は、各々偶然誤差あるいは系
統誤差の影響を受けます。測定値は、真値にこれら 2 つの誤差が加わったものとして理解することができます。
測定値
=
真値
+
偶然誤差
+
系統誤差
精密度(精度):個々の測定値のバラツキの大きさを示します。バラツキの範囲が小さいほど、精密度が高いといえます。
正確度(偏り):測定値が真の値からどれくらいずれているか、を示します。正しい測定値を得るためには、精密度だけでな
く、正確度も高めることが重要です。
真値
精密度(精度)
正確度(偏り)
誤差
良
高
小
不良
高(?)
大
良
低
大
不良
低(?)
大
誤差要因の確認方法
検体測定には様々な誤差要因が介在します。それらの要因のうち、検体に関わらず条件が同じである部分の系統誤差
を管理するには、蛍光標準粒子やプロセスコントロール検体を測定します。
機器設定時における光学系/流体系の管理には Flow-Check を使用します。
アプリケーションの機器設定時の感度の管理には Flow-Set を使用します。
試薬、反応条件、サンプル調製操作および機器設定を含めた測定系全体の管理には、プロセスコントロール検体として
IMMUNO-TROL やその他の管理用検体を使用します。
測定プロセス中、検体に依存する部分の影響を最小限にするためには、コントロール抗体試薬の利用などが有効です。
検体測定時のゲーティングコントロールとしては、造血器悪性腫瘍細胞解析における CD45 などが代表的です。陽性領
域を決めるリージョンの設定には、原則としてアイソタイプ・コントロール試薬を使用します。
内部精度管理と外部精度管理
精度管理は内部精度管理と外部精度管理の 2 つに大別されますが、内部精度管理では正確度と精密度を、外部精度
管理では主に正確度を管理することになります。この際、基本となるのはあくまでも内部精度管理であり、外部精度管理
はその結果を検証する手段として考えることができます。
*
* : IMMUNO-TROL および IMMUNO-TROL Low は、安定化処理したヒト末梢血です。分析対象が培養細胞等の場合には、適当な
管理用検体をプロセスコントロールとして使用することが必要です。
精度管理用試薬の測定結果と測定値以上の主な要因
考えられる
主な異常要因
精度管理用試薬の測定結果
Flow-Check
CV
不良
良
良
良
良
Application Note 12
Flow-Set
HV/蛍光強度
不良
良
良
良
IMMUNO-TROL
蛍光強度
不良
不良
良
IMMUNO-TROL
陽性率
不良
良
不良
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光学系/流体系
光学系/PMT
試薬、検体調製、測定
抗体試薬
溶血、洗浄、測定
フローサイトメーターの精度管理に用いられる製品には、以下のようなものがあります。
製品名
Flow-Check
10mL×3 バイアル
製品番号 6605359
Flow-Set
10mL×3 バイアル
製品番号 6607007
PC7(770/488)セットアップキット 製品番号 6607121
Flow-Check 770 Fluorospheres
10mL×1 バイアル
Flow-Set 770 Fluorospheres
10mL×1 バイアル
使用目的
カラー
試薬調製
フローサイトメーターの調整
および分解能チェック
1~4
不要
フローサイトメーターの標準
化および感度のチェック
1~4
不要
PC7
不要
APC
不要
1~4
要
モノクローナル抗体の活性、機
器のシステム等のチェック
1~4
要
2~4 カラー分析でのコンペン
セーション調整
2、3、4
要
2、3、4
不要
CD34 抗体の活性・手順、機器
のシステム等のチェック
2
要
フローサイトメーターのリニ
アリティ確認
1~4
不要
細胞絶対数測定用、内部標準
粒子
1~4
不要
PC7 使用時の機器調整および
確認用(488nm 励起:770nm
蛍光)の標準粒子セット
Flow-Check:機器の光学系、
流体系の確認
Flow-Set:PMT 感度の最適化
APC(675/633)セットアップキット 製品番号 6607120
Flow-Check 675 Fluorospheres
10mL×1 バイアル
Flow-Set 675 Fluorospheres
10mL×1 バイアル
APC 使用時の機器調整および
確認用(633nm 励起:675nm
蛍光)の標準粒子セット
Flow-Check:機器の光学系、
流体系の確認
Flow-Set:PMT 感度の最適化
Immuno-TROL
30テスト×2 バイアル
製品番号 6607077
CYTO-TROL
10テスト×5 バイアル
製品番号 6604248
CYTO-COMP Cell
10テスト×5 バイアル
製品番号 6607023
モノクローナル抗体の活性、全
血サンプル調製手順等の
チェック、日間差モニタ
CYTO-COMP 試薬キット 製品番号 6607021
COMP1(FITC/PE)×1 バイアル
COMP2(PE/ECD)×1 バイアル
COMP3(PE/PC5)×1 バイアル
COMP4(ECD/PC5)×1 バイアル
Stem-Trol
10テスト×1 バイアル
製品番号 IM2378
Immuno-Brite
10mL×5 バイアル
製品番号 6603473
Flow-Count
20mL×1 バイアル
製品番号 7547053
2~4 カラー分析でのコンペン
セーション調整
これらの精度管理関連製品は、他社のフローサイトメーターでもご使用いただけます。
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Application Note 12
内部精度管理
内部精度管理は施設内精度管理とも呼ばれ、測定(検査)に関係するすべてのスタッフの教育や様々な手技の標準化に始
まります。例えば、血液をサンプルとした臨床検査の場合、採血者には検体採取時の注意事項や採血後の保管方法などに
関する知識が要求され、検査室全体ではその標準化が求められることになります。
また、こうしたスタッフの教育や標準化の結果を数値データとして評価する 1 つの方法として、日々の測定結果の統計学的
なモニタリングがあり、モニタリングの手法としては X-R 管理図や X 管理図法がよく用いられます。統計学的なモニタリング
は異常値の検出に対して効力をもつものであり、ひとたび測定結果に疑義が生じた場合には、直ちにその測定に関わる各ス
テップに問題がなかったかどうかを確認することのできる体制を整えておくことが重要です。
以下に、フローサイトメトリーにおける内部精度管理の 1 つの方法を紹介します。
Ⅰ. ログシートによる機器/試薬の管理
機器のメンテナンス状況や試薬ロット、有効期限などをログシートに記録することで、測定結果に異常が発生した際に、原因
をいち早くつきとめることできます。測定担当者名など、施設状況に応じた測定システムの全般について ログシートを作成し、
管理することをお勧めします。
Ⅱ. 光学系/流体系のチェック(Flow-Check 使用)
1.
機器を通常のフィルタセッティングにします(機器マニュアルをご参照
ください)。起動時の状態をログシートに記入します。
2.
精度管理用プロトコールを呼び出します。
3.
Flow-Check ビーズが均一に懸濁するよう、よく攪拌します。
4.
試験管に 15~20 滴(約 0.5mL)滴下します。
コンタミネーションおよび品質低下を防ぐため、ボトルから
ピペットなどを用いて直接、分取しないようにしてください。
5.
試験管をよく撹拌し、測定します。
6.
FS と FL1~FL4 のハーフピーク C.V 値(HPCV)とピークポジション値(EXPO32 を使用の場合は”MODE”)をログシー
トに記入します。
機器によっては、ピークポジション値がないことがあります。
その場合は、平均強度(mean intensity)を用いてください。
7.
各パラメータについてプロット(X 管理図)を作成し、毎測定時の値をプロットします。
8.
各パラメータの値が、平均値±2SD(95%)の基準範囲に入っていることを確認してください。もし、入っていない場合は、ト
ラブルシューティングをご参照ください。
*
基準範囲を測定するには、機器をウォーミングアップした後、いろいろな時間間隔で、少なくとも 5 日以上に分けて 20
データを取得してください(基準範囲:平均値±2SD)。
トラブルシューティング
①
Flow-Check ビーズが希釈されていないか、コンタミネーションしていないか確認してください。Flow-Check ビーズが
希釈されている場合、HPCV 値が大きくなります。
②
Flow-Check ビーズが沈殿しないように十分攪拌したか確認してください。
③
シースタンクのふたがしっかり閉まっているか、リークがないか確認してください。
④
シースフィルターに気泡が過剰に入っていないか確認してください。サンプルラインの詰まりや気泡が考えられる場
合は、サンプルラインのフラッシュまたはプライムを行ってください。
⑤
トラブルシューティングの詳細は、機器のマニュアルをご参照ください。
Application Note 12
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Ⅲ. 感度のチェック(Flow-Set 使用)
Flow-Check による光学系/流体系のチェックに続いて実施します。
1.
機器を通常のフィルタセッティングにします(機器マニュアル参照)
2.
Flow-Set 測定用プロトコルを呼び出します。
3.
ビーズが均一に懸濁するよう、よく攪拌します。
4.
試験管に 15~20 滴(約 0.5mL)滴下します。
5.
試験管をよく撹拌し、測定します。
コンタミネーションおよび品質低下を防ぐため、バイアルから
ピペットなどを用いて直接、分取しないようにしてください。
6.
FS と FL1~ FL4 の ピーク ポ ジ ションをターゲット値に合せて、
(EXPO32 を使用の場合は”MODE”)と HV をログシートに記入しま
す。
7.
各パラメータの HV について X 管理図を作成します。それぞれのグラ
フに毎日の値をプロットします。
8.
各パラメータの HV 値が基準範囲*に入っているかを確認してくださ
い。もし入っていない場合は、再度 Flow-Set を計測し、FS と FL1~
FL4 のピークポジションがターゲット値に入るように感度を調整しま
す。
*
基準範囲を測定するには、機器をウォーミングアップした後、いろいろな時間間隔で、少なくとも 5 日以上に分けて 20
データを取得してください。
各パラメータピークポジションのターゲット値を以下のように決定します。
パラメータ
範囲*
(ピークポジション)
FS
平均値**±2
SS
平均値±5
FL Log(1-9.9)
平均値±0.1
FL Log(10-99)
平均値±1
**:ピークポジションの平均値
トラブルシューティング
①
Flow-Set ビーズが希釈されていないか、コンタミネーションしていないか確認してください。Flow-Set ビーズが希釈
されている場合、HPCV 値が大きくなります。
②
Flow- Set ビーズが沈殿しないように十分攪拌したか確認してください。
③
シースタンクのふたがしっかり閉まっているか、リークがないか確認してください。
④
シースフィルターに気泡が過剰に入っていないか確認してください。サンプルラインの詰まりや気泡が考えられる場
合は、サンプルラインのフラッシュまたはプライムを行ってください。
⑤
トラブルシューティングの詳細は、機器のマニュアルをご参照ください。
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Application Note 12
Ⅳ. プロセスコントロール検体(IMMUNO-TROL)によるアッセイ系全体の管理
試薬/反応条件/操作/機器設定のチェック
光学系/流体系のチェック(Flow-Check)および感度のチェック(Flow-Set)に続いて実施します。
1.
IMMUNO-TROL を室温に戻します。
2.
試験管にコントロール抗体名と使用する抗体名をラベルします(IMMUNO-TROL で測定できる項目は、製品添付のアッ
セイシートを参照してください)。
3.
通常の全血検体を取り扱う時と同様に、IMMUNO-TROL を検体として染色および溶血を行います。
4.
フローサイトメーターでサンプルを測定し、測定値が期待値の範囲から外れていないことを確認します。
OptiLyse B および C は、イムノトロールの溶血には使用できません。
Flow-Count を用いて細胞絶対数の測定を行う場合は、Flow-Count をよく撹拌し、溶血終了後、各試験管に 100
μL ずつ分注してください。Flow-Count 添加後、2 時間以内に測定してください。
5.
測定値を X-R(または X)管理図にプロットし、日差変動を確認します。
参考. 患者検体を用いたアッセイ系の管理(加重移動平均法:XB管理)
日常測定している患者検体の測定データで行える精度管理手法として知られる XB 管理は、通常 検体間の変動が少ない項
目で行います(例えば、血球計数機の場合は MCV*が用いられています)。フローサイトメトリーの場合は、蛍光強度に個人
差の少ないマーカーを用いて、同様の精度管理を行うことができます。
*MCV:平均赤血球容積(Mean Coppuscular Volume)
下図は、同じ日に測定した CD3 と CD4 の測定データをランダムに抽出したものですが、蛍光強度(赤色バー)は、陽性率に
比べて個人差が非常に小さいことがわかります。このようなマーカーの蛍光強度について、測定日毎に加重移動平均をモニ
タしていくことにより、試薬の劣化や測定機器の蛍光感度の異常を検知できます。
100%
100
80%
60%
陽性率
蛍光強度
(Mean Ch)
CD3
10
40%
MC-CD3
%CD3
1
20%
0%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
検体#
100%
100
80%
60%
10
40%
MC-CD4
%CD4
1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
検体#
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20%
0%
陽性率
蛍光強度
(Mean Ch)
CD4
外部(施設間)精度管理
(Interlaboratory Quality Assurance Program; IQAP)
外部精度管理は、おもに自施設の測定値が真値にどの程度近接したものであるかを評価することを目的に行われます。多く
の場合、公的機関が主催するコントロールサーベイ等を通じて実施されますが、適当なプロがラムが提供されていない場合
などは施設間相互でクロスチェックを行うことも有効です。
ベックマン・コールター社では、フローサイトメトリーによる臨床検査を対象とした国内初の施設間精度管理プログラム
(IQAP)を提供しています。IQAP では、正確性と精密性(再現性)を施設間で相対評価します(U.S. Patent Number
4858154)。評価結果は SDI および CVI の 2 つのパラメータであらわされ,それぞれ正確性と精密性を示します。また、この
結果はパフォーマンスマトリックスとしても表示され、精度管理状況の視覚的な把握を援助します。
自施設平均-全施設平均
全施設SD
(正確性の評価パラメータ)
自施設CV
全施設CV
(精密性の評価パラメータ)
SDI(標準偏差指数)=
CVI(変動指数)=
パフォーマンスマトリックス
(488nm 励起:770nm 蛍光)
3CVI
2CVI
1CVI
-3SDI
③
①
③
②
②
-2SDI
-1SDI
0
1SDI
2SDI
3SDI
緑色の範囲内( -2<SDI<2 , CVI<2):精密性、正確性ともに良い
① (-2<SDI<2, CVI≧2):精密性が良くない
② (SDI≦-2 or 2≦SDI, CVI<2):精密性は良いが正確性が良くない
③ (SDI≦-2 or 2≦SDI, CVI≧2):精密性と正確性の両方が良くない
IQAP for Flowcytometryの概要
‹ 日本初のフローサイトメトリー施設間精度管理プログラム
‹ 世界規模の母集団による統計解析(相対評価)レポートを提供
‹ コントロール細胞にはイムノトロールおよびイムノトロール Low を使用
‹ n=10~30 のデータを評価することで、正確性のみならず精密性の評価をも実現
‹ 専用ソフトウェアによる測定結果の報告とレポート提供
‹ 評価レポートの活用によるプロセス改善
IQAP の詳細については弊社担当までお問い合わせください。
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Application Note 12
参考(IQAP レポートの活用)
IQAP の評価レポートを活用することで、施設内における精度管理状況の把握やプロセス改善を促進することが可能です。
下図は、IQAP 評価レポートの結果から正確性を示すパラメータ(SDI)を抜き出して、1年間の結果をプロットした例です。
ケース①では年間を通して良好な結果が得られており、測定にかかるプロセス全体の標準化が成功していると考えられます。
ケース②は全体に低値傾向であることから、ゲートの位置や大きさ、洗浄方法などの系統誤差要因に注目してプロセスを見
直す必要があるかもしれません。一方で、回を重ねるごとに SDI が 0 に近づいてきており、測定にかかるプロセスが改善さ
れたことが示唆されます。
ケース③の場合は評価結果が定期的に変化していることから、もし測定担当者が定期的にローテーションしているのであれ
ば、測定担当者のローテーションとの関係を確認すべきかもしれません。すなわち、施設内でのプロセス標準化に改善の余
地が残されていると考えられます。
4
ケース①
プロセスの標準化が成功してい
る施設の SDI 例
SDI
2
0
-2
-4
Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nev Dec
4
ケース②
プロセス全体にかかる、系統誤
差が改善されたと考えられる施
設の SDI 例
SDI
2
0
-2
-4
Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nev Dec
4
ケース③
プロセス全体の標準化に改善の
余地があると考えられる施設の
SDI 例
SDI
2
0
-2
-4
Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nev Dec
実施月
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付録 (おもな精度管理用語)
コントロール血球 → コントロール細胞を参照
コントロール細胞
コントロール細胞は、日常の測定データの精度をモニターするために用いられる管理された試料です。 IQAP では、イムノト
ロールおよびイムノトロール Low をコントロール細胞として使用します。 イムノトロールを通常の検体と同じように測定するこ
とで、溶血方法等の手技的なものから試薬性能にかかわる要因までを幅広くチェックすることが可能です(プロセスコントロー
ル)。
再現性 → 精密度を参照
シフト
ある時点を境にデータが高値あるいは低値側に偏り、平均値+2 SDの範囲を連続して外れるような状態をシフトといいます。
正確度
測定値が真の値(真値)、あるいは真値とみなされる値にどれだけ近いかを意味します。 IQAP では、全施設データの平均
値を真値とみなします。
精密度(再現性)
同一サンプルを繰り返し測定した時、それらの測定値がどれだけ近接しているかを意味します。通常この程度は、標準偏差
(SD)や変動係数(CV)などの数値として表現されます。
トレンド
ある時点を境に、データが一定の方向(高値 または 低値)に向かって持続的に緩やかな変化を起こすことをトレンドといいま
す。 毎日の測定値が貴施設の測定平均値から徐々に離れて高くなったり、低くなったりする場合はトレンドが生じていると判
断します。
標準偏差(SD)
SD は繰り返し測定した測定値のばらつきの程度を測定単位で表したもので、この数値が小さいほど精密性が高いと言うこと
ができます。
また、通常平均値+2SD の範囲には全測定値の 95%が含まれます。
SD=
Σ(X - X)2
データ数 - 1
なお、変動係数(CV)は SD の平均値に対する比を百分率で示したものです(変動係数 参照)
プロセスコントロール → コントロール細胞を参照
平均値
ある一定量のデータから得られた算術平均。
平均値=
X1+X2+ ・・・・・ Xn
データ数
変動係数 (CV)
測定値のばらつき程度をパーセントで表したもので、次式で求められます。
CV(%)=
SD
×100
平均値
平均値に対する百分率の形で与えられるため、平均値の大小に係わりなく複数のデータ系列間でばらつきの程度を比較する
ことが可能です。
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Application Note 12
参考文献
1.
F. C. Anderson, BSMT(ASCP) MBA: Interlaboratory quality assurance program. Clin.lab.Haemat. 12: 111-116,
1990.
2.
National Committee for Clinical Laboratory Standards: Clinical Applications of Flow Cytometry: Quality Assurance
and Immunophenotyping of Peripheral Blood Lymphocytes; Tentative Guideline. NCCLS Document H42-T 12(6):
14-21,26-27, 1992.
3.
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Diseases, Division of AIDS. Cytometry14: 702-715, 1993.
4.
1994 Revised Guidelines for the Performance of CD4+ T-Cell (HIV) Infection. Mortality and Morbidity Weekly
Report (MMWR) 43: 7-8, 1994.
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日本臨床検査標準協議会血液検査標準化検討委員会:フローサイトメトリーによる末梢血リンパ球表面抗原検査に関す
るガイドライン(JCCLS H1-P・V-1.0). 日本臨床検査標準協議会会誌 13(4): 3-16, 1998.
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Application Note 12
CE1012 0610