需要予測の精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流

Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
~天気予報で物流を変える~
「需要予測精度向上による
食品ロス削減 及び 省エネ物流プロジェクト」
Live E! シンポジウム2015
日時:平成27年9月12日(土)
場所:東京大学 本郷キャンパス 工学部2号館
一般財団法人日本気象協会 防災ソリューション事業部 中野 俊夫
1.
2.
3.
4.
5.
はじめに
事業の背景
事業の概要
H26年度事業の結果
H27年度事業の計画
0
1.1
はじめに
Copyright©
2015
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
なぜ本事業を立ち上げたか
日本の社会構造の変化
・生産年齢人口の減少が進行しており、効率的な経済活動が必要
・近年は企業の社会的責任が注目されており、環境負荷を考慮した経済活動
が重要とされている。
・データの共有化などが進んできており、ビッグデータとITを活用した新規
事業が社会から求められている。
→ ITやビッグデータを活用した効率的な経済活動を推進する事業が必要
気象情報の有効利用の必要性
•
•
•
未来の予測は不確定要素が多いが、唯一、気象だけは物理的に予測が可能
産業活動の1/3は何らかの気象リスクを持っているが、気象は十分に活用
されているとは言えない。
近年は気象予測精度が大幅に上昇している。
→ 気象を実経済に活用し、社会に貢献できる事業が必要
気象情報を活用して、ビッグデータやITと融合し、社会の効率的な
経済活動に貢献する事業を立ち上げる。
1‐1
1.2
はじめに
Copyright©
2015
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
事業への取り組み
2011年
2012年
2013年
2014年7月11日
気象情報を経済に活用する事業を立ち上げ
経済フォーラムなどで発表・企業訪問・解析開始
具体的な利用方法などについて検討
経済産業省の補助金に採択
「平成26年度次世代物流構築事業」
2014年8月9日
第1回委員会
経済産業省事業の枠組み
2014年12月16日 第2回委員会
経済産業省
2015年2月19日 第3回委員会
2015年2月末
報告書まとめ
・
・
補助事業者
・
・
公益社団法人
・
・
日本ロジスティクスシステム協会
2015年8月26日 平成27年度事業
採択
間接補助事業者
今年度以降も本事業を継続する
一般財団法人 日本気象協会
経産省事業は3年間の予定
1‐2
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
第2章
事業の背景
2.1
事業の背景
Copyright©
2015
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
物流
物流の抜本的改革の必要性
東日本大震災以降、省エネルギーの抜本的強化が必要となっている。
我が国の最終エネルギー消費量のうち、運輸部門は約2割を占めている。
その中でも、食品分野では、売上高物流コスト費が全業種平均より高い。
出典:2013年度 物流コスト調査報告書(JILS)
業種
売上高コスト比率
製造業
食品(要冷)
食品(常温)
8.57%
6.01%
卸業(食品)
小売業
全業種平均
6.13%
7.83%
4.77%
また、食品分野ではリバース物流コスト(返品・返送物流費、回収物流費、
廃棄物流費、リサイクル物流費)が多く発生している。
リバース物流コストは、特に以下の商品で大きくなっている。
① 日々の売り上げが気象と関連が深い日配品
② 特定の気象状況(季節)に需要が集中する季節商品
これまでの商慣習を見直し、企業間で連携して次世代物流を構築し、省エネ
ルギーを実現する必要がある。
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2-1
2.2
【
事業の背景
食品ロスの実態
Copyright©
2015
2014
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
食品分野
】
日本国内における、売れ残りや期限切れの
食品、食べ残しなど、本来食べられたはずの
「食品ロス」は500~800万トンで、これは世
界の食料援助量(約390万トン)を上回る量
と言われています。
【
食品ロスの原因
】
食品ロスの発生原因は、流通段階と家庭
に分けられますが、流通段階でロスの約半
分が生じています。
流通段階でのロスは、リバース物流(返
品・返送・廃棄など)が大きな原因となっ
ており、年間の返品額は約1691億円に達
していると言われています。
【
社会的背景
※農水省資料から抜粋
項目
原因
量
流通
期限切れ
300~400万トン
家庭
食べ残し
200~400万トン
計
500~800万トン
】
企業の社会的責任が注目され、環境負荷を考慮した経済活動が求められている。
→ 流通段階における食品ロス削減を図り、効率的な経済活動に資する活動が必要
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2‐2
2.3
事業の背景
気象状況
Copyright©
2015
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
● 気象は日常活動に大きな影響を与える(気温、雨、天気、etc)
● 近年は気温が上昇し、極端な気象状況による災害が増加している
ゲリラ豪雨の一例
気象庁資料より抜粋
近年は予報精度は飛躍的に向上
・細かな雨量情報の開発
1km雨量情報
250m雨量情報
(2014年8月、降水ナウキャスト)
・短期予測の細密化・高度化
(2014年3月、LFM2㎞の配信)
・長期予測の規制の緩和
(2012年12月規制緩和、2014年3月細密化・高頻度化)
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2‐3
2.4 事業の背景 長期予報
気象モデルの予測精度の向上
Copyright©
2015
Japan
Weather
Association.
Rights
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
この15年、気象理論の進歩と計算機性
能の著しい向上により、気象モデルの誤差
は30%以上改善されている。
→ 長期予測に利用拡大されてきた
気象庁資料
より抜粋
長期予報の仕組み
長期予報の分野ではアンサンブル予測が現業運用されるようになり、精
度も大きく向上している。アンサンブル予測では確率密度分布が利用可能
で2012年の法改正により1か月以上の細かな予測情報も配信可能に。
東京の気温
:平均値
確率密度分布
ばらつき小
ばらつき大
アンサンブル予測の一例(東京の気温)
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2-4
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
第3章
事業の概要
3.1
事業の概要
Copyright©
2015Japan
JapanWeather
Weather
Association.
All Rights
Reserved.
Copyright© 2014
Association.
All Rights
Reserved.
課題と提案内容
「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」
2014~2016年の3年計画で経済産業省「次世代物流システム構築事業」に採択
【 課 題 】
食品ロスは「需要量の予測精度が十分でない」「注文量のミスマッチ」から生じている。
現在はメーカー・卸・小売り・物流業者が独自に需要予測を行っている
→ 分断されたサプライチェーンのため全体最適な物流が実現していない。
【 提案内容 】
メーカー・卸・小売りが協働で需要予測を開発して全体最適化をめざす。
POSデータや売上などのビッグデータを解析し需要予測を行う。
そこでは、高度化された気象情報(長期予測など)を利用する。
→ 需要予測を共有化しサプライチェーン全体を効率化し、企業や社会全体の利益に資する。
変更
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2-5
3.2
事業の概要
2014年度
3か年計画
Copyright©
Copyright©
2015
2015
Japan
Japan
Weather
Weather
Association.
Association.
All
Rights
Rights
Reserved.
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
2014年度実施
気象の経済への利用可能性調査
日配品(豆腐)と季節商品(冷やし中華つゆ・鍋つゆ)で解析を行う。
地域(関東地方)を絞って解析を行う
→
2015年度
各企業に応用できる共通基盤を作成
商品・エリアの拡充
今年度実施予定
商品を増やし、対象地域を日本全国に広げる。
種類
品目
日配品
冷やし麺・お惣菜(弁当・寿司・揚げ物)・練り物、etc
季節商品
アイスコーヒー・ビール・炭酸飲料・そば・そうめん、etc
需要予測の高度化
人工知能を利用し、汎用性・網羅性・信頼性を確保
製・配・販の連携
各事業者の連携
2016年度 試験運用開始
システムを構築し、社会実験を行う。
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2-6
3.3
事業の概要
■有識者
H26コンソーシアムメンバーと役割
張 輝( 委員長、ビジネス展開への助言)
勝呂
隆男(最適生産量の解析・報告書の執筆)
中三川
大谷
■メーカー
Copyright©
Copyright©
2015
2015
Japan
Japan
Weather
Weather
Association.
Association.
All
Rights
Rights
Reserved.
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
浩(アンサンブルモデルの利用方法の助言)
紀子(人工知能モデルによる解析の助言)
株式会社Mizkan、相模屋食料株式会社
【役割】発注データ・生産量データなどの提供、省エネ量算出、実証実験
国分株式会社
■卸
【役割】発注データ・在庫量データなどの提供、実証実験
■小売業
株式会社ココカラファイン、国分グローサーズチェーン株式会社、
株式会社ローソン
【役割】売上データの提供、需要予測の有用性の確認、実証実験
■関連業者
株式会社シグマクシス、株式会社アットテーブル
【役割】経営コンサルティング、消費者データの提供と解析
■団体
一般社団法人
新日本スーパーマーケット協会
【役割】広報活動、小売り動向調査
■実施主体
一般財団法人
日本気象協会
【役割】解析、情報システムの作成・配信、報告書作成
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
2-7
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
第4章
H26年事業の結果
4.1
H26事業の結果
まとめ
Copyright© 2014
2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
■ 気象モデルの利用方法
長期予測では、気象庁とECMWF(ヨーロッパ気象局)の予測値を収集して、どの
ように利用するか検討した。その結果、気象庁のみの予測値、ECMWFのみの予測値
を利用するより、モデルアンサンブルを行った方が精度は高いことが分かった。
■ 冷やし中華つゆの解析
冷やし中華つゆの市場規模の売上は、消費者意識や実効気温などを考慮した需要
推定式によって決定係数0.97で説明できることが分かった。また、本事業で対象と
した株式会社Mizkanの冷やし中華つゆの売上は市場規模の売上と連動しており、こ
の推定手法と長期予測を利用することで、5%を超えて余剰生産量(食品ロス)や二
酸化炭素ロスを削減できることが分かった。
■ 豆腐の解析
豆腐の売上は気象と連動しているが、「どのくらいの気温か」より「どのような
経過をたどってこの気温になったか」の方が重要であることが分かった。これらを
定式化することによって、需要を推定できることが分かった。また、この推定手法
を利用することで、冷やし中華つゆと同様に5%を超えて余剰生産量(食品ロス)や
二酸化炭素ロスを削減できることが分かった。
1.事業の発端
2. 事業の背景
3. 事業の概要
4. 結果の一例
4-1
4.2
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
H26事業の結果
冷やし中華つゆ(1)
・データ :インテージ社のSRI市場規模データ(スーパー・コンビニ・ドラッグ)
・対象地域:京浜地区(東京・神奈川・千葉・埼玉)
気温上昇時は関係性は良い
・対象品目:冷やし中華つゆ
気温
売り上げ
気温(℃)
売上(×1000個)
気温低下時に関係性が低下
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
気温上昇時は、冷やし中華麺つゆと気温の関係は良好
しかし、気温低下時は関係性が低くなる。
→
時期
相関係数
全体
0.77
気温上昇時
0.92
気温低下時
0.74
商品の最終生産量予測に影響(2週間に1度生産)
1.事業の発端
2. 事業の背景
3. 事業の概要
気温(℃)
4. 結果の一例
4-2
4.3
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
H26事業の結果
冷やし中華つゆ(2)
2009~2013年の売上と解析値の比較
条件:年変動は流行に左右されるため予測できない。→
①年補正と②気温で需要を推定
売上(×1000個)
売上の上昇時も下降時
ともに精度が高い
2009年
2010年
2011年
2012年
相関係数 0.984(決定係数0.97)
→ 売上の97%は気象で説明が可能
2013年
気温下降時
気温上昇時
相関係数
決定係数
気象で説明できない
従来手法(気温回帰式)
0.77
0.59
41%
本手法
0.984
0.97
3%
この需要推定式と長期予測(気象庁とECMWFのモデルアンサン
ブル)を組み合わせて、Mizkan殿の1商品の解析を行ったところ、
5%を超えて余剰生産量(食品ロス)と二酸化炭素ロスが削減さ
れることが分かった
1.事業の発端
2. 事業の背景
3. 事業の概要
4. 結果の一例
4-3
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
第5章
H27年事業の概要
Copyright© 2015 Japan Weather Association. All Rights Reserved.
5.1
H27事業の計画
概要
平成27年度は、平成26年度の結果を踏まえて試みを深化することを目的と
する。
5.2
関係企業・商品の増加
H26年度はスモールスタートとして約10社に参加していただいていた。
H27年度はH26年度の結果を踏まえ、参加企業の増加を図ります。
5.3
需要予測モデルの高度化
H26年度は既存技術を利用して解析を行っていた。
H27年度は、人工知能技術の研究者の参加を呼びかけ、人工知能を利用した解析モデルを開発する。
5.4
製・配・販の連携
H26年度は解析ベースで気象が経済に活かせることを証明した。
H27年度は、H26年度の解析結果を利用し、実際に商品を動かす。
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
5-1
5.2
H27事業の計画
Copyright©
Copyright©
2015
2015
Japan
Japan
Weather
Weather
Association.
Association.
All
Rights
Rights
Reserved.
Reserved.
Copyright©
2014
Japan
Weather
Association.
AllAll
Rights
Reserved.
関係企業・商品の増加
平成26年度
平成27年度
対象商品
季節商品:麺つゆ・鍋つゆ
日配品:豆腐
アイスコーヒー・冷やし麺などを含む
気象感応度の高い数十品目
対象地域
関東
全国
メーカー
株式会社Mizkan
相模屋食料株式会社
キッコーマン食品など数社
卸・流通
国分株式会社
数社
小売
国分グローサーズチェーン株式会社
株式会社ココカラファインヘルスケア
株式会社ローソンなど数社
参
加
企
業
・
研
究
者
株式会社シグマクシス
株式会社アットテーブルなど数社
関連企業
団体
新日本スーパーマーケット協会
研究者
立教大学
東京都市大学
気象庁
テクニカルソリューションズ
産業技術総合研究所
早稲田大学
など数研究機関
現在はまだオープンにされていないが、合計約30社が参加する予定(H26は10社)
大規模な小売業が参加することになり、製配販の連携を強化する
2. H26 事業概要
3. H26 気象モデル
4. H26 需要予測
5. H27 実施項目
5-3