基本的な比較

宇田環境経営研究所 代表
宇田 吉明
はじめに
それぞれの特徴を踏まえ、適切性、有
環境経営が一般に広まる中、国際規格
であるISO 14001と比較して、中小組織に
効性、妥当性を評価して、自組織に見合
その後、先進企業のグリーン調達基準(ガ
ったEMSを構築・運用し、環境経営に取
イドライン)
に採用されたり、公共事業の評
り組んでいただければ幸甚です。
価点に組み込まれるなど急速に普及し、現
も取り組みやすく、比較的、認証取得費
用が安いといわれている様々な環境マネ
国際規格としてISO 14001が登場しました。
在に至っています。他のEMSも目指すとこ
生い立ちと今後の動き
ジメントシステム
(EMS)
が登場しています。
ろは同じといえます。そこで、図表1にそれ
ぞれのEMSの生い立ちを紹介します。
また、
地球環境問題を始めとする様々な環境
あわせて今後の動向についても公表され
及びエコステージを取り上げ、ISO 14001
問題に、産業界でも自主的・積極的に取
ている情報などをもとに整理してみました。
と比較してみます。
り組もうという動きの中から、環境管理の
今回、その中からエコアクション21(EA21)
実施主体
図表1 各システムの生い立ちと今後の動き
年
1991年
1996年
ISO 14001
EA21
「持続可能な発展のため
の産業人会議」
(BCSD)
が国際標準化機構(ISO)
に国際規格作りを勧告
国際標準化機構により、
環境マネジメントシステ
ムの国際規格として発行
され、認証登録制度がス
タート
るのかを図表2で紹介します。
いうまでもなく、ISO 14001は国際規格
環境庁(当時)により、
中小事業者に取り組みや
すい環境活動評価プログ
ラム(EA21)として、登
録制度がスタート
2001年
14001は国際規格であるがゆえ、各国の
思惑などで融通が利かない面もあり、逆
環境マネジメント研究
会をエコステージ研究
会に改組(現・東海エコ
ステージ研究会)
2003年
現在・今後
であり、他の2つは国内規格です。ISO
東海総合研究所(現・三
菱UFJリサーチ&コン
サルティング)
、デンソ
ー等を中心に環境マネ
ジメント研究会を発足
東京/関西/全国エコステ
ージ研究会に続き全国
エコステージ協会を設立
し、中小組織向けの日
本独自の環境規格認証
制度をスタート
2004年度版に改訂
ISO 14001に取り組む中
小組織のための段階的適
用に関する指針ISO 14005
が2010年発行の予定
次にそれぞれのEMS規格や制度はど
こが作って、どのような組織が運営してい
1998年
2004年
エコステージ
環境省により環境経営シ
ステムガイドライン及び
環境活動レポートガイド
ラインが発行され、認証
登録制度として再スタート
ガイドラインの改定作業
が進行中
図表2 各システムの実施主体
規格・ガイドライン発行
認証機関(組織)の認定
認証登録の申請受付・判定
認証登録証発行
審査
化学物質管理システム
やグループエコステー
ジなどの新しいスキー
ムを導入展開中
審査員(人)の登録管理
図表3 各システムの認証取得までの費用比較
に他の二つは、発行主体の判断で、運営
する組織や受審組織、審査人などへのア
【事例事業所】
業種:機械加工業
サイト:1個所
従業員数:50名(パート、アルバイト、派遣社員
を含む)
ンケートに基づきどんどん改善できるとい
う小回り性があります。
環境負荷:低負荷
適用される主な環境法規制:廃棄物処理法、騒
音・振動規制法、消防法(少量危険物取扱)
でい
ずれも順守されているものとする
認証登録件数
日本のISO 14001の認証登録件数は世
構築までのコ
ンサルティン
グ工数
界一で、若干頭打ちになったとはいえ、高
水準をキープしています。一方、エコアク
ション21は最近では月当たり100件程度で
推移しており急速に普及し始めています。
ISO 14001
EA21
エコステージ
一般には10回程度であるが、
様式類(ひな形)が充実し
ていれば、5、6回のコン
サルティングでも構築できる
ケースも
自治体イニシャティブ・
プログラムや関連企業グ
リーン化プログラム(注1)
では4回の集合研修(1回
当たり半日)で構築まで指
導している
初回研修(集合教育)
、中
間コンサルティング2回、
模擬評価1回と登録評価
までに4回程度のコンサ
ルティングが標準
コンサルタントの力量と受審組織の熱意に追うところが大きい
また、エコステージは月当たり50件程度で
構築までの外
部費用
推 移しています。 最 新 の 登 録 件 数 は、
ISO 14001は20,655件、エコアクション21
は2,649件、エコステージは561件(認証サ
イト数1,071件)
です。
財団法人産業管理協会の
JwmaiEMSサービスを利用
すれば6回の個別訪問によ
り84万円で構築まで指導し
てもらえる
同上のプログラムに参加す
れば無料で受けることがで
きる
初回研修20万円、中間コ
ンサルティング(半日)
1回14万円
自治体の中小企業支援制度を活用することにより、1回1万円前後の負担でアドバ
イザー派遣により5∼10回の構築支援を受けることができる
認証取得までの費用比較
審査費用
(登録時)
(注2)
認証取得にかかる費用について、ISO
14001は高いといわれていますが、価格
審査工数 5人日
審査費用 約100万円
+消費税+交通費実費
※審査工数はIAFガイドに
よる
審査工数 4人日
審査費用 20万円
+消費税+交通費実費
審査工数内訳
書類審査0.5
現地審査3.0
審査報告書0.5
※中央事務局のホームペー
ジにも公開されている標準
工数による
競争が著しくなっているのが実情です。
審査料金については、地方自治体が認証
機関との契約を随意契約から一般競争入
札方式に変更しつつあり、一段と競争が
登録(維持)料
登録維持料約5万円/年
激しくなっています。3つのシステムの認
証取得までの費用については、一概に比
較するのが難しいのですが、モデル事業
所の場合で比較してみました(図表3)。
▼
10万円(2年ごと)
(年平均5万円)
審査工数 2人日
審査費用 40万円
+消費税+交通費実費
無料
(注1) ◇自治体イニシャティブ・プログラム:自治体が域内の事業者に呼びかけ、地域事務局と協働で応募
し事業者に4回の集合研修を実施するもので平成17年度より実施。◇関連企業グリーン化プログラム:中核
で企業や組織が関連企業に呼びかけ、地域事務局と協働で応募した事業者に4回の集合研修を実施するも
の平成19年度より実施。◇いずれもその費用はエコアクション21中央事務局が負担するもの(ただし、費用
負担は認証取得が確実な事業者に限られる)。
(注2) ◇ISO 14001については、単価が各認証機関で決められており、筆者の標準的な相場感で示して
います。◇エコアクション21については、中央事務局のウェブサイトで標準工数と料金が公開されています。
◇エコステージについては、エコステージ協会ホームページ
(http://www.ecostage.org)
が公開されています。
ISO 14001
国際標準化機構
EA21
エコステージ
環境省
エコステージ協会
財団法人日本適合性認定協会
(JAB)
基本的には各国に一つ
財団法人地球環境戦略研究機関
持続性センター(エコアクショ
ン21中央事務局)
有限責任中間法人エコステージ
協会
各認証機関
国内約50組織
(世界各国にある)
各エコアクション21地域事務局
47組織(35都道府県)
申請受付は東京・東海・関西・
埼玉の各エコステージ研究会
判定はエコステージ協会の各第
三者評価委員会
同上
エコアクション21中央事務局
エコステージ協会の各地区第三
者評価委員会
各審査機関に所属する審査員
独立した審査人
各評価機関に所属する評価員が
評価し、この評価結果を第三者
評価委員会が判定し認証書を
発行
財団法人産業環境管理協会
エコアクション21中央事務局
登録管理はエコステージ協会
全国事務局
実務管理は評価員が所属する
評価機関
宇田環境経営研究所 代表
宇田 吉明
明治製菓(株)大阪工場で工務環境室長・環境管
理責任者・事務局としてISO 14001を構築・運用。
摂南大学非常勤講師(地球環境資源論)
を経て、
2000年よりEMSの構築支援活動を展開。2つの審
査登録機関で審査実績多数。エコアクション21地
域事務局大阪元判定委員長(現普及委員長)。著
書に『業種別ISOの構築が分かる本』
(日刊工業新
聞社)、
『新 よく分かるエコアクション21』
(第一法規
社)
など多数。環境カウンセラー、中小企業診断士、
公害防止管理者、エネルギー管理士など。