平成27年 月 法人税 後編 田中 将 公認会計士・税理士 1 研究開発税制の見直し ⑴ 研究開発税制(試験研究を行った場合の税額控除制度)については、この制度の税額控除限度額の上限を、その事業年度の各種特例適用前の 法人税額の30%(原則:20%)相当額まで引き上げる特例措置が、適用期限(平成27年 月31日までに開始する各事業年度)の到来をもって廃 止されました。 ⑵ 上記⑴の制度に代え、試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制の控除税額の上限を、いずれもその事業年度の調 整前法人税額の25%(改正前:20%)相当額に引き上げることとされました。 なお、これらの制度の対象となる試験研究費の額には、下記⑶の特別試験研究費の額に係る税額控除制度の対象とした特別試験研究費の額は 含まないこととされています。 ⑶ 特別試験研究費の範囲の拡充が行われるとともに、上記⑵の制度とは別枠で、その事業年度の調整前法人税額の %を控除税額の上限とし、 特別試験研究費の額の30%(又は20%)相当額まで、その事業年度の法人税額から控除するものとされました。 ⑷ この⑵及び⑶の改正により、改正前の制度と同様、控除税額(限度額)の総枠としては、その事業年度の調整前法人税額の30%(=25%+ %)が維持されています。 ⑸ これらの改正は、平成27年 月1日以後に開始する事業年度より適用されます。 改 正 前 税額控除率 一般試験研究費 改 正 後 法人税額の30%(平成26年度末まで。原則20%) 控除限度の総枠 法人税額の30% ∼10%(中小法人12%) ∼10%(中小法人12%) 法人税額の30%(平成26年度末まで。原則20%) 法人税額の25% ※ 控除限度超過額は1年間繰越。 ※ 控除限度超過額の繰越控除は廃止。 以下の試験研究に要する費用 ① 国の試験研究機関等・大学との間の共同・委託研究 ② 民間企業との共同研究 ③ 中小企業者への委託研究 等 ・③の委託先に「公益法人等、地方公共団体の機関・ 地方独立行政法人等」を追加 ・「④中小企業者から知的財産権の許諾等を受けて行う 試験研究」の知的財産権の使用料を追加 税額控除率 12% ①:30%、②∼④等:20% 控除限度額 一般試験研究費の控除限度の枠内 法人税額の 控除限度額 範 囲 特別試験研究費 %(別枠) (財務省パンフレット「平成27年度税制改正」(平成27年 月)より) 2 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(所得拡大促進税制)の拡充 改正前におけるこの制度は、青色申告書を提出する法人(青色申告法人)が、平成25年 月1日から平成30年 月31日までの間に開始する各事 業年度において、国内雇用者に対して給与等を支給する場合、その法人の雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額(雇用 者給与等増加額)の基準雇用者給与等支給額に対する増加割合が %(平成27年 月1日前に開始する事業年度については %、平成27年 月1 日から平成28年 月31日までの間に開始する事業年度については %)以上である等一定の要件を満たすとき、その事業年度の調整前法人税額か ら、その10%(中小企業者等の場合は20%)相当額を限度として、雇用者給与等増加額の10%相当額を税額控除することができるとするものでした。 この制度について、今般の税制改正では、賃上げへの配慮措置として、基準雇用者給与等支給額に対する増加割合に関して、下図のような要件 緩和のための見直しが行われました。 改 正 前 給与等 支給額 平成 24 %増 %増 25 26 改 正 後 %増 27 %増 28 %増 29 給与等 支給額 平成 24 %増 %増 25 26 %増 %増 25 26 %増 %増 %増 27 28 29 %増 %増 %増 27 28 29 中小法人 24 ○ 給与等支給額が基準年度(基本的に )と比較して 27 %以上( )/ 25 26 %以上( ・ )/ 28 29 %以上( ・ )増加している等の要件を満たす場合、 増加分の10%相当額を税額控除。(法人税額の10%(中小法人20%)が上限。) 給与等 支給額 平成 24 (財務省パンフレット「平成27年度税制改正」(平成27年 月)より) 3 その他の主要な改正 ⑴ 地方拠点強化税制が創設され、今国会に提出された地域再生法の一部改正法の成立を前提に、次のような措置が講じられました。 ① 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設 ② 雇用促進税制の拡充 ⑵ 国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却等又は法人税額の特別控除制度について、国家戦略特別区域法令の改正を前提と した見直しが行われました。 た なか 著者紹介 まさし 田中 将(公認会計士・税理士) 同志社大学経済学部卒。大阪大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。 平成 年公認会計士登録。現在、大阪学院大学大学院法学研究科教授、企業の 監査役などを兼任。 事務所】大阪市中央区北浜 ▶著書 「相続と相続税・贈与税 事例選集」(共著) 他
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