東海大学七十五年史編纂だより(PDF)第2号

東 海大学
五
七十
史
年
編
纂
だ
よ
り
第 2 号 2015年7月15日発行
Contents
2 編纂体制と編纂状況
3 刊行スケジュール
4567 編纂・編集・執筆委員会活動記録
8 聞かせて! 言わせて! 七十五年史
札幌キャンパス長・竹中践教授
『東海大学七十五年史』編纂の意義
学校法人東海大学 常務理事
東海大学七十五年史編集委員会 委員長
学園史資料センター センター長
橋本
敏明
学校法人東海大学は 2017 年に建学 75 周年を迎え
足元を確認し、基礎を築かなければ、その上に実績を
ます。その記念事業の一環として現在、
『東海大学
積み重ねていくことはできません。
七十五年史』
(以下『七十五年史』)の編纂に取り組ん
1942 年、戦前の混乱期に創立した学園は、戦中、
でいます。
『七十五年史』は、これまでの学園の歴史
戦後と苦難の歴史をたどってきました。困難に次ぐ困
を検証しながら、建学 100 周年に向けて、学園が進む
難を乗り越えることができたのは、創立者・松前重義
べき方向性を示すものとしなければなりません。
と同志たちが抱いた「教育による人づくり、国づくり」
『東海大学五十年史』を 1993 年 11 月に刊行してから、
という高き理想があったからこそです。
時代に色濃く残っていた昭和のトーンは確実に平成へ
戦争で荒廃した祖国を復興するため、有為な人材を
と変遷し、千年紀もまたぎました。その間、世の中は
輩出する。資源に乏しい日本にあって、科学技術教育
複雑で不透明、かつ流動的だったと言えるでしょう。
の理想を掲げ、賛同者の拠金によって学園は創立され
一方、学園も 2008 年度の「三大学統合」の例を挙げ
ました。平和な社会を作る、その希望の光が、われわ
るまでもなく、一大変革期にあったと言えます。
れの足元を常に照らしてきたのです。この先、道に迷っ
これからも社会の動向を予測することは極めて困難
たときも、希望の星あかりが、進むべき方向を照らし
であると言わざるを得ません。混迷を極める世の中で
てくれるでしょう。創立者は変わらず、「汝の希望を
しかし、われわれは一つひとつの事象に対処し、分析
星につなげ」と励ましてくれるはずです。
し、選択と決断をし、存続していかねばなりません。
『七十五年史』編纂作業は、学園を支える皆さん一
その拠り所とするために、原点を見つめ直し、自己を
人ひとりが、自分自身と所属部署、所属機関、そして
確立する必要があるのです。
学園全体を見つめ直す非常に重要な機会になると確信
かわ
武道でも、相手の攻撃を臨機応変に受けとめ、躱し、
しています。それぞれの機関や部署で、話し合いなが
自分が技を繰り出すためには、自身の中に揺るぎない
ら、歴史を振り返り、原点を見つめ直してください。
核を持つ必要があります。私学の原点、核となるのは
変えてはならない理念があり、変えねばならない方
建学の精神であり、最高学府である大学の技とは、智
策があります。100 周年を目指し、この先の四半世紀
の力、すなわち深い学問、教育・研究を厳然と実践し
でどのような学園をつくっていくのか。広く社会に問
ていくことに他なりません。
い掛けながら、未来を明るく照らす『七十五年史』を、
歴史を軽んじる者に未来はありません。しっかりと
学園の皆さんと一緒につくっていきたいと思います。
2
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015年7月15日
編纂体制と編纂状況
学校法人東海大学の建学 75 周年を記念するさまざ
七十五年史執筆委員会」と呼称)を開き、特に通史編
まな事業は「学校法人東海大学建学 75 周年記念事業
の執筆実務に関わる事柄に関して、さらに踏み込んだ
委員会」が統括しています。同委員会の下には「学校
話し合いを行っています。なお執筆委員は原則として
法人東海大学建学 75 周年記念事業募金委員会」と「学
週に1時限(90 分間)以上を編集作業に充てること
校法人東海大学建学 75 周年記念誌編纂委員会」が組
となっており、主に湘南キャンパス同窓会館内にある
織されています。
編纂室で執筆を進めています。
さらに記念誌編纂委員会の下に「東海大学七十五年
一方、2015 年度に入り、「部局編」の編集作業が大
史編集委員会」があり、
『東海大学七十五年史』の実
きく進行しました。部局編は大学の学部や短期大学
質的な編集作業を行っています。編集委員会は橋本敏
(部)、研究所・センターや付属諸学校などについて、
明委員長、沓澤宣賢副委員長をはじめとする、学園の
それぞれの歴史を記すものです。現時点ではおよそ
教育機関に所属する教員 14 名で構成。そのうち6名
100 の部局を取り上げる予定となっています。
は『七十五年史』の「通史編」を執筆する執筆委員を
編集委員会から各部局に対して、編纂作業において
兼任しています。2015 年4月1日付で編集委員およ
窓口となる「幹事」を選出してもらうよう依頼。その
び顧問の顔ぶれに若干の変更がありました。ここに構
幹事を対象とした説明会を 2015 年7月 29 日に開催す
成員の氏名を再掲します。
る予定です(テレビ会議システムを利用して各キャン
編集委員会は2カ月に1回会合を開き、各種の懸案
パスを接続)。
事項の討議や研究会を行うとともに、編集作業の進捗
また通史編・部局編に先立って刊行予定の「図録」
(仮
状況を確認しています。また編集委員会の会合のな
称)についても、構成案がほぼまとまりました。資料
い月には執筆委員を中心に会合(便宜上「東海大学
収集と編集作業を急ピッチで進めています。
学校法人東海大学建学75周年記念事業委員会
委員長=松前義昭副総長
学校法人東海大学
建学75周年記念事業募金委員会
委員長=松前義昭副総長
学校法人東海大学
建学75周年記念誌編纂委員会
委員長=松前義昭副総長
東海大学七十五年史編集委員会
編集委員
★学園の教員から人
選して構成
★記念誌編纂の具体
的な方針の策定から
執筆、編集、校閲な
どを担当
執筆委員
★編集委員の中から
人選された6名
★記念誌の
「通史編」
を執筆する
事務局
★編纂委員会、編集委員会と
もに事務局は学園史資料セ
ンターのスタッフ=学園史
編纂員が担当
★記念誌編纂に関わる事務作
業全般を支援
高橋祐子(学園史編纂員)
椿田卓士(学園史編纂員)
中西祐悟(学園史編纂員)
目七哲史(学園史編纂員)
徳原彩恵(学園史編纂員)
委 員 長:橋本敏明(常務理事、体育学部武道学科教授、 望星学塾副塾長、学園史資料センターセンター長)
副委員長:沓澤宣賢(総合教育センター教授、付属図書館館長、
文明研究所所長、学園史資料センター副センター長)
委 員:金原保夫(文学部歴史学科西洋史専攻教授)
志水義夫(文学部日本文学科教授)
利根川昭(大学運営本部副本部長、
理学部物理学科教授)
山本和重(文学部歴史学科日本史専攻教授、
課程資格教育センター所長)
山本康治(短期大学部児童教育学科教授)
渡邉通弘(総合教育センター准教授)
大島宏(課程資格教育センター准教授)
神谷大介(文学部歴史学科日本史専攻非常勤講師)
杉本浄(文学部アジア文明学科専任講師)
立石謙次(文学部歴史学科東洋史専攻専任講師)
馬場弘臣(教育研究所教授)
吉田晃章(文学部アメリカ文明学科専任講師)
《委員は氏名の五十音順》
顧問
★学園の教職員から人選
★編集業務の遂行を支援する
安達建夫(監事)
杉一郎(常務理事、初等中等教育部部長)
黒田和一郎(常務理事、経営企画室室長)
平野葉一(常務理事、副学長、
文学部ヨーロッパ文明学科教授)
内田晴久(大学運営本部本部長、
教養学部人間環境学科教授)
小早川眞(大学運営本部副本部長)
石丸明弘(事務部部長)
3
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015年7月15日
刊行スケジュール
『東海大学七十五年史』は通史編と部局編、さらに図録(仮称)とで構成されます。それぞれの刊
行までのスケジュールを下に示します。図録は 2017 年 11 月1日の建学 75 周年記念日にあわせて刊行。
その一年後の 2018 年 11 月1日に通史編と部局編が刊行予定です。
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度
通 史 編
資料収集・調査
6月
★
執筆
執筆担当割
11 月
の決定
★
第一次入稿
校正
(事務局へ)
11 月
★
第二次入稿
校正
(出版部へ)
11 月1日
★
刊行
草稿執筆
(事務局)
部 局 編
4~6月
★
委員長が各学部訪問
5月
★
幹事選出依頼
7月
★
執筆要項説明会
原稿執筆(各部局)
11月
★
第一次入稿 校正
(事務局へ)
11月
★
第二次入稿 校正
(出版部へ)
図録(仮称)
資料収集・調査
11月1日
★
刊行
5月
★
構成案策定
編集
11 月
★
入稿
(出版部へ)
校正
11 月1日
★
刊行
4
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015年7月15日
編纂・編集・執筆委員会活動記録
『東海大学七十五年史』編纂作業全体を統括する「学校法人東海大学建学 75 周年記念誌編纂委員会」
と、その下で実際の編集作業を担う「編集委員会」、また編集委員のうち6人が兼任している執筆委
員を中心とした会合「執筆委員会」について、2014 年7月から 2015 年6月までの活動を振り返ります。
2014年度
7月1日 編集委員会+研究会
の部局(文学部、工学部、医学部、外国語教育センター、
付属図書館)の草稿の前文を提示しました。前文は『東
海大学五十年史』
(1993 年 11 月刊行。以下『五十年史』)
の記述内容をコンパクトにまとめ直したものです。こ
の前文について委員からは、『五十年史』の文体に影
響を受けることなく、『七十五年史』に適した書式を
確立するため、記述を統一する必要がある、といった
意見が出されました。
9月 20 日 編集委員会+研究会
「東海大学七十五年史編集委員会」が 2013 年4月に
発足してから通算8回目となる会合は、神奈川県平塚
市 ・ 東海大学湘南キャンパス同窓会館1階にある学園
史資料センター作業室で開催されました。6月4日に
開催された執筆委員を中心とした会合(執筆委員会)
で検討した
『東海大学七十五年史』
(以下『七十五年史』)
「通史編」の構成案と担当分けについて説明し、編集
委員会から承認を受けました。
同日の第6回研究会は「学園史資料センターにおけ
る資料収集状況について」と題して実施。編集事務局
を務める学園史資料センターの活動について、編集委
員へ改めて周知を図りました。
学園史資料センターの基本的な役割である学園史資
料の収集・整理・保管について、またそれら資料を閲
覧・複写・貸し出しに供する公開・活用について、現
状を解説。2012 年度からインターネットを通じて公
開している資料目録についても説明を行いました。
7月 24 日 執筆委員会
松前重義の胸像(右端)の脇に立ち、橋本委員長が創立
者の生い立ちや望星学塾の歴史を解説。正面奥の建物は
1936 年に「浅野博士奨学記念館」として建てられ、改
修を経た現在は「望星学塾記念館」と呼ばれている
第9回編集委員会・第7回研究会は特別に、東京都
武蔵野市の「望星学塾」で開催されました。望星学塾
は学園の創立者・松前重義が 1936 年に自宅の敷地内
に建てた私塾です。デンマークの国民高等学校を範と
した青年教育の場で、今日の学園の「母胎」であると
も表現されています。
望星学塾副塾長を務める七十五年史編集委員会の橋
通算 4 回目となる執筆委員会は湘南キャンパス同窓
会館で開催されました。春学期の作業が終了するに当
本敏明委員長は、今回の特別研究会を望星学塾で開催
することとなった理由として、『五十年史』の編集委
たって、各執筆委員がそれぞれの作業状況と課題につ
いて報告しました。
各委員から「通史編」の執筆に関して、それぞれの
担当時期に関わる資料を読み込みながら、原稿の大ま
員で「序章 創立者 松前重義」の執筆を担当した藤
家禮之輔名誉教授の次の言葉を紹介しました。
「著作物や記録を通してだけでは、入魂の文章は書
けない。そこでインタビューを希望したり、熊本の生
かな構想を練る作業に当たっていることなどが説明さ
れました。また、効率的な作業方法などについてお互
いにアドバイスを送り合いました。
家や、出身校などの遺址を訪れたりした。雰囲気を身
体で味わってみたかったからである。」(2007 年発行
また、
「部局編」に関して、事務局で作成した5つ
『東海大学名誉教授会年報』第2号 特集「松前重義
先生追想」内、藤家禮之輔著「帝紀『松前重義』伝の
第 2 号 2015年7月15日
東海大学七十五年史編纂だより
5
執筆」より)
当日は橋本委員長が「望星学塾の歴史と社会活動」
と題して講話を行ったほか、橋本委員長の案内で望星
学塾の本館と記念館、さらに松前重義記念館(創立者
の生前の住居)を見学しました。
橋本委員長は講話で、
「望星学塾がつくられた 1930
年代は、日本においても、世界的にも、戦争が影を落
とす大変な時代だった。そうした時代に学園の種を
蒔くには、深い思想や強い信念、理想、勇気、決断と
いったものが必要だったに違いない。社会に対する危
機感、祖国を救いたいという強烈な思いがあった。そ
こに同志がいた。この地に集まった人々の思想や理想
の中に、われわれ学園の源流があったのではないか。
大規模になった学園において、本当の意味でのコミュ
ニケーション、同志的結合といったものがどのように
継承されているのか。あるいはもうなくなってしまっ
たのか。建学 75 周年を機に検証しなければならない」
と熱弁を振るいました。
さらに、東海大学が開設した FM ラジオ放送局「FM
東海」(現・株式会社エフエム東京)について、自身
が勤務した当時のエピソードを紹介。
「1964 年の東京オリンピックの当時から、マスコミ
はこぞってどの国がいくつメダルを獲得した、という
ことばかり取り上げていた。しかし、FM 東海では一
切メダル獲得数について触れなかった。その代わり、
オリンピックに参加しているさまざまな国の音楽を流
した。人の真似をしないというのも一つの個性と言え
るだろう」と、東海大学の理念にもつながる、父親ゆ
ずりの自身の行動理念について語りました。
10 月 16 日 執筆委員会
「松前重義記念館」は創立者が住居としていた建物。居
間や茶室など、ほぼすべての部屋が生前当時のまま保存
されている
10 月 11 日 編集委員会+研究会
第5回執筆委員会は、湘南キャンパス同窓会館で開
催されました。主な議題は「部局編」の執筆・編纂に
関することで、事務局側で書き進めてきた草稿につい
て意見を交わしました。
部局編では、各部局の原点を明らかにするため、開
設に際して作成された許認可申請書などの資料を提示
する。その原点がどのように現在の活動につながって
いるか、それぞれの特色ある教育・研究活動について、
流れがわかるように記述する。通史編と同様、部局編
も「読んでもらえる年史」を目指す。といった基本方
第 10 回編集委員会は、湘南キャンパス同窓会館で
開催されました。第8回研究会として学校法人東海大
学顧問で東海大学名誉教授の松前紀男先生の講話を拝
聴しました。松前紀男先生は学園創立者・松前重義の
針が再確認されました。
次男で、北海道東海大学学長や東海大学学長、法人副
理事長など学園の要職を歴任されました。
第 11 回編集委員会・第9回研究会は、湘南キャン
パス同窓会館で開催されました。前回の研究会に引き
「東海大学 その教育の源流」と題して行われた講
話で松前紀男先生は、「歴史を書く場合、単なる年表
で終わってはいけない。主旋律、副旋律といった重要
な要素をとらえて、つなげていかなければ」と、編集
続き、松前紀男先生のお話を聴く機会を持ちました。
講話の内容は、学長を務めた北海道東海大学につい
て、園長を務めた付属本田記念幼稚園と本田伝喜先生
委員に心構えを説きました。
また、自身の幼少時代を振り返りながら、
「教育と
は学生・生徒たちの心に、いかにインパクトを残せる
かが大事だと思う。チャイムが鳴ったから授業を始め
る、終える、ということに終始してはいけない」とご
自分の教育観を披露されました。
11 月 15 日 編集委員会+研究会
について、かつて勤務したラジオ局・ニッポン放送や
FM 東海に関することなど、さまざまなエピソードが
語られました。
また編集委員からの質問として、授業内容・計画の
概要である「シラバス」の作成を教員に義務づけたこ
とや、学生による授業評価アンケートの導入など、東
海大学学長時代に取り入れた教育改革についてのお話
6
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015年7月15日
(1993 年から 2017 年まで)のバランスについて、さ
らにこの 25 年間の中で記述すべき内容などが話し合
いました。
2015 年1月 14 日 執筆委員会
第7回執筆委員会は、湘南キャンパス同窓会館で開
催されました。主な議題である「通史編」の執筆要項
(案)について、各委員が意見を出し合いました。
また当日は学園がかつて発行に協力していた雑誌
『松前文庫』に関して、同誌の編集に携わった事務局(学
講話する松前紀男先生
を伺いました。さらに自身がパリ留学時に日本で起き
た学生運動(東海大学では「学園紛争」と呼ばれる)、
やはり学長時代の 1997 年に発表した「東海大学環境
憲章」などについてのエピソードが披露されました。
松前重義の公職追放時代について問われた松前紀男
先生は、その答えとして、
「苦しい時期も、人とのつ
ながりが失われることはなかった。それが東海大学の
基盤になったのではないかと思う。
(教育機関の運営
は、陸上競技の)400 mリレーのようなもの。次々に
新しい人にバトンを渡していかないと、どんな組織も
息切れしてしまう」
と、全力で駆け抜けた大学での日々
に思いをめぐらせていらっしゃいました。
12 月 17 日 執筆委員会
園史資料センター)の高橋祐子学園史編纂員が報告を
行いました。
『松前文庫』は学園の創立者・松前重義の思想や教
育観などを研究するとともに、東海大学の建学の礎
を解明し、広く学内外に普及することなどを目的に、
1975 年から 2001 年にかけて、通算 100 号まで発行さ
れた季刊雑誌です。
『松前文庫』の初代編集長を務めた澤村光博氏は
「FM 東海」でディレクターを務めた他、詩集『火の
分析』で 1965 年・第 15 回「H氏賞」(新人の優れた
現代詩人の詩集に贈られる文学賞で、「詩壇の芥川賞」
とも呼ばれる)を受賞するなど多彩な人物だったこと、
また澤村氏は『松前文庫』だけでなく、『東海大学建
学史』(学園 40 年史、1982 年 11 月刊行)の編集・執
筆に尽力するなど、学園史の編纂に多大な功績を残し
た人物だった、といった説明がありました。
その後、執筆委員からの質問に答える形で、澤村氏
が 1987 年1月に病気のため退職した後の編集上の苦
労や、『松前文庫』が収集した資料の移管について言
及がありました。『松前文庫』は全ページ PDF 形式
でデジタル化されている他、見出しのデータベースも
整っており、『七十五年史』編纂でも利用・活用して
ほしい、との提案がありました。
第6回執筆委員会は、湘南キャンパス同窓会館で開
催されました。
主な議題は「部局編」の執筆上の課題に関するもの
で、事務局が作成した東海大学文学部の草稿を読みな
がら、各委員が意見を述べ合いました。
部局編は現時点で総ページ数を 800 ページと設定し
ており、100 の部局を扱うとすると、1部局に充てら
れるページ数は平均8ページとなります。しかし、実
際には各部局の開設から現在に至るまでの歴史の長
さ、学部であれば学科数などを勘案して、それぞれの
ページ数を検討することになりました。
また、文学部の草稿に関して、『五十年史』
(1993
年 11 月刊行)で記述した内容と、「その後の 25 年間」
『松前文庫』は 1975 年4月に創刊し、2001 年3月発行の第 100 号をもっ
て終刊。1992 年8月には前年に逝去した創立者・松前重義の追悼写真
集として「想」と題した特別号を刊行。創立者と学園の思想を追い続け
た延べ 101 冊の記録は現在も貴重な資料群として活用され続けている
第 2 号 2015年7月15日
東海大学七十五年史編纂だより
編の執筆を担当する6人の執筆委員が、それぞれの作
業の進捗状況や課題を報告しました。
右の表のように、現時点での大まかな構成案は全5
章
仮タイトル・年代
ページ数
1 創立・発展期
(1) 松前重義(生誕~逓信省入省)
50 (2) 学園創立~学園紛争(1942 ~ 1970 年代)
50 (3) 学園紛争後~建学50周年(1970年代~1992年)
50 2 激動・変革期(1993 ~ 2002 年)
100 3 再編期 (2003 ~ 2012 年)
100 4 新たな時代へ(2013 ~ 2017 年)
100 5 学園の現在と未来
50 章となっています。
第2章の担当委員からは、
「大学設置基準大綱化後
の大学変革」
「50 周年記念事業の成果」
「セメスター
を設定する案が示されました。
第4章では「To-Collabo プログラム」「湘南キャン
制度導入」
「環境問題」といった「節」を設ける案が
示されました。
続く第3章については、
「少子化問題と大学全入時
代」
「大学評価と GPA 制度」
「三大学統合」などの節
パス 18 号館の竣工と目指す教育」といった節の候補
が挙げられました。現実の学園の動きと執筆が同時進
行となるため、日本や世界の動向を慎重に分析しなが
ら作業を進めたい、との報告がありました。
3月2日 編集委員会+研究会
第 12 回編集委員会・第 10 回研究会は、湘南キャン
パス同窓会館で開催されました。
『七十五年史』通史
2015年度
4月8日 執筆委員会
第8回執筆委員会は、湘南キャンパス同窓会館で開
催されました。2015 年度初めての会合であることか
ら、今後の作業の方向性が確認されました。
「通史編」については、前回の執筆委員会の作業経
過報告を受けて、次回の執筆委員会で各章の構成案を
示すこととなりました。
「部局編」については、事務局で作成した草稿(工
学部、海洋学部、医学部)について、意見交換を行い
ました。また、各種の研究所やセンター、事務部署な
どの中で、1部局として取り上げる組織の選定作業に
関する報告と検討が行われました。
7
そのため「学園史ハンドブック」的な役割を持たせた
い、とコンセプトの説明がありました。また建学 50
周年に際して作られた『図録 東海大学 50 年』(1993
年 11 月刊行、A4 判、本文約 200 ページ)と比べて軽量・
コンパクト化を図るため、判型を A5 判とする案が示
されました。
6月3日 執筆委員会
第9回執筆委員会は、湘南キャンパス同窓会館の学
園史資料センターで開催されました。主な議題は、
「通
史編」各章の構成案の検討で、6人の執筆委員がそれ
ぞれ担当する章の構成案を提示しました。
第 1 章第 1 節、創立者・松前重義について記述する
節では、『五十年史』よりも詳しく、柔道に関して掘
り下げる案が示されました。
同第2節でも、『五十年史』よりも具体的に学生や
生徒たちの動向について触れたいという方向性が示さ
れました。
また同第3節では、「学園紛争の余波」「湘南キャン
パスの完成」
「三大学」
「医学部の設置」
「付属校の増設」
「一貫教育への模索」などに関する記述を充実させる
案が提示されました。
この他、 「創立」「発展」「改革」などの各章のサブ
タイトルについて統一を図ることが提案されました。
5月 13 日 編集委員会
第 13 回編集委員会は、湘南キャンパス同窓会館で
6月9日 編纂委員会
開催されました。
「部局編」に関して、各部局へ協力を依頼するにあ
たって手順の確認を行いました。
また「図録」
(仮称)に関して、事務局が作成した
通算3回目となる「学校法人東海大学建学 75 周年
記念誌編纂委員会」は、代々木キャンパスを中心にし
構成案を基に、
編集委員で意見を述べ合いました。「図
録」は 2017 年 11 月の開催が予定される建学 75 周年
委員会合同で開催されました。
『七十五年史』編纂に関するこれまでの作業経過の
報告があり、承認されました。
記念式典で、
参列者に記念品とともに配布すると想定。
て、各キャンパスをテレビ会議形式でつなぎ、親委員
会である「記念事業委員会」と、「募金委員会」の3
8
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015年7月15日
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第 2 回 東海大学札幌キャンパス長 せん
竹中 践 教授 ―北海道地区にある学園の教育機関は、近年目まぐ
るしく変化しています。
竹中践教授
(以下、
竹中)
私の所属学部だけをみても、
竹中先生の専門はカナヘビの生態。手にしているのは奄
2008 年度の三大学統合に伴って、北海道東海大学の
美 ・ 沖縄地方に分布するアオカナヘビで、長い尾が特徴
工学部から東海大学の生物理工学部へと改組し、2012
先生にとって本学における原点と言えるのでは。
年度には現在の生物学部となりました。
竹中 そうかもしれません。学生は1年生しかおらず、
加えて、2012 年度から旭川キャンパスの芸術工学
教職員とも和気あいあいとした雰囲気でした。学部学
部が学生募集を停止し、札幌キャンパスの国際文化学
科に関係なく、みんなでハイキングに行ったり。少人
部にデザイン文化学科が開設されました。
数の利点を生かし、1 年次からゼミ形式を取り入れる
―竹中先生はこの 2015 年度から、現代文明論でそ
など、かなり自由な教育活動ができました。
うした札幌キャンパスの歴史を講義されていると伺い
―そうした学内の雰囲気は、三大学統合を経た今で
ました。
も変わらず根付いているのではないでしょうか。
竹中 個人的な思い出話を交えながら、ですね。私が
竹中 これまでも大小さまざまな転機がありました
札幌キャンパスに着任したのが 1988 年の 4 月。北海
が、北海道の大地を基盤として、教職員が思いを共有
道東海大学に工学部と国際文化学部が開設されたのと
しながら乗り切ってきました。統合に際しても、同じ
同時です。当時はまだ本館(メッセ棟)が建設途中で、
教育の源流を持つ大学同士、足並みをそろえて、新し
教員の個人研究室がありませんでした。仮設の建物内
いスタートが切れたと思っています。
にあった、
「職員室然」とした部屋に「押し込められて」。
―付属第四高等学校が 2016 年度から付属札幌高等
7月末に本館が竣工し、夏休みの間にようやく個人の
学校に校名変更し、札幌キャンパス内の新校舎に移転
研究室に移ることができました。
してくるのも大きな転機ですね。
―窮屈な思いをされたでしょうが、その4カ月間が
竹中 高校の先生方との連携を今まで以上に密にし、
双方で一つの教育目標に向かえるよう検討を重ねてい
ます。体育館や図書館、コンピュータ室など、施設の
共同・相互利用という面ではメリットが想像できます
が、高校と大学とで日程が異なっている定期試験や建
学祭などの行事をどうするか、一筋縄ではいきません。
しかし、この新しい挑戦に、私はワクワクしながら
取り組んでいます。自分たち自身に期待しているので
す。高校の土曜授業での連携も考えていますが、高校
生たちが将来の目的を見つけるのに、大学側が役立つ
ような展開ができればと思います。この挑戦をうまく
軌道に乗せて、札幌キャンパスの歴史の新たな 1 ペー
札幌キャンパスで建設が進む付属第四高校の新校舎(2016
年2月末竣工予定、同年4月から付属札幌高校に校名変更)
東海大学七十五年史編纂だより
第 2 号 2015 年7月 15 日発行
発行人 松前義昭
(学校法人東海大学
建学 75周年記念事業委員会委員長)
編集人 橋本敏明
(東海大学七十五年史編集委員会委員長)
ジとして記したい。『七十五年史』も、そのような希
望や未来を感じてもらえる内容にしたいですね。
連絡先(建学 75 周年記念誌編纂委員会事務局)
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