2016年度推進テーマ候補 活動企画書(scope of work)

産業競争力懇談会(COCN)2016年度推進テーマ候補
活動企画書(scope of work)
【候補テーマのタイトル】
循環型社会を実現する革新的接合・分離技術
【提案企業・大学・法人】
(株)東芝
【提案内容】
1.提案の背景・理由
高耐熱材料、熱可塑性 CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics;炭素繊維強化プラスチック)
やアルミニウム、チタン等の軽合金などを実製品に適用するには、接合技術が重要となる。製品軽
量化や低コスト化などの理由から構造部材や導電部材には鉄-アルミ、銅-アルミ等の複数の異種材
料を用いる傾向にあり、CFRP と金属の接合も検討されているなど、その材料間の接合技術も重要と
なっている。一方で、環境調和、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の観点からは、接合部
を容易に分離・分解できる技術開発も重要となる。
これらの接合・分離/分解に関する最新技術を包括的・俯瞰的に調査し、革新的な接合・分離/分
解技術の開発・提言を行い、材料基盤技術の強化および循環型社会の構築・発展を図る。また、シ
ミュレーション技術の適用、センシング、データ解析を含むプロセスの最適化を実現する革新的設
計・生産システムの推進、革新的工法技術の創出を行い、高い信頼性、品質を確保した製品や生産
システムを提供し、モノづくり日本の持続的成長を目指す。
2.産業競争力強化上の目標・効果
素材は日本が競争力を維持している分野である。それらを単独で使用するのではなく、高い付加
価値を得るために、その複合化を進める。たとえば発電所では構成部材に高耐熱材料と安価な材料
を複合して用いることでコストと省エネルギー性を両立させる。また自動車ではアルミニウムや
CFRP を鉄系材料に複合することで軽量化による燃費低減を実現する。二次電池ではアルミニウム
と銅の接合により、銅の導電部品をアルミニウムに置き換えることで低コスト化が図れる。このよ
うな複合化にあたっては、接合が必須である。一方で、耐用年数が過ぎた後の再利用や回収を低コ
ストで実施するためには、溶接・溶着・ろう付け等信頼性の高い手法で接合された部分を、容易に
分離/分解できる技術が必要である。接合および分離/分解を含めた循環型システム開発を行うこと
により、川下メーカの競争力を確保する。
3.検討内容と想定される課題(政策、技術・システム開発、規制改革、人材育成など)
① ビジネスモデルの構築:材料⇒加工⇒接合⇒分離/分解までにおいて利益を獲得できるビジネスモ
デルとそこで必要となるインフラ、そしてそれらの実現のためのシナリオ作りを行う。
② 革新的加工・接合実現のための技術的課題検討:新規材料を実製品に適用するための接合技術、
接合の高信頼性と易分離/分解性という二律背反課題を解決し環境調和、3Rに寄与する技術など
の検討を行う。
③ 利用分野の拡大施策検討:革新的加工・接合技術が広い産業分野で利用されるために,材料⇒加
工⇒接合⇒分離/分解まで一気通貫で実現する設計・生産システムに発展させるための課題検討を
行う。
4.想定される解決策と官民の分担
高耐熱材料は、NIMS(物質・材料研究機構)および産業界の産官連携での開発が望まれる。CFRP
は産業界が世界をリードしており、さらに差を広げるための産産連携が望まれる。
材料加工・接合分野と分離/分解・回収分野は、プレーヤーが違うと考えるが、それぞれ、産産学
連携が望まれる。例えば、材料加工・接合分野では、高耐熱材料や CFRP、軽合金を加工・接合す
る社会インフラ系メーカ、自動車メーカ、それらを原理原則的な基礎分野でサポートするとともに、
大局的視野に立った指導を担う学界の、産産学連携である。
材料⇒加工⇒接合(組立て)⇒分離/分解⇒回収(再利用)のまで一気通貫の開発において、特に、
接合の高信頼性と易分離/分解性という二律背反課題の解決するためには、産産学官連携での密な
開発関係構築が望まれる。循環型社会の構築・発展と材料基盤技術の強化のため密に産官学連携す
ることが望ましい。
5.テーマ活動の想定活動期間
2016 年度より 2 年間、活動内容と計画は以下の通り。
2016 年度:COCN における検討体制の組成(6 月まで)、発展可能性のある循環型社会実現のコン
セプト案の提案とそのビジネスモデルの立案、および政策上および技術上の課題の洗い出し(12
月まで)、中間報告会(3 月)
2017 年度:コンセプト案の選定とそれを実現するシナリオの策定、および政策上および技術上の
課題に対する対策の検討(12 月まで)、最終報告会(1 月)、検討結果による提言案の作成(2 月)
6.出口目標と提言実現の推進主体案
2 年間の活動を予定し、各年度における成果目標は以下の通り。
2016 年度目標:循環型社会実現のコンセプト案の提案とそのビジネスモデルの立案、上記コンセ
プトとビジネスモデルを実現するためのシナリオ策定、政策上および技術面での課題抽出とその対
策の検討
2017 年度目標:政策上および技術面での課題に対する解決策提案、産官学連携による推進体制の
構築、産官学連携体制による関係省庁等への提言・提案(国プロや制度化等)
7.推進体制案
・リーダーおよび事務局:(株)東芝
・想定されるメンバー:
① 素材開発:素材メーカ、NIMS、産業技術総合研究所など
② 加工・組立・分離/分解技術開発:電機メーカ、自動車メーカ、航空・船舶等のメーカ、建築関
連会社、分離/分解処理装置メーカなど
③ 大学:東京大学、東京工業大学、大阪大学など