ITA拡⼤交渉の成果について 平成28年3⽉ 通商機構部 現在進⾏中の主要な通商交渉 ラウンド交渉 2015年7⽉末 2014年11⽉ ポスト・バリ作業計画 貿易円滑化協定採択 策定期限 2001年11⽉第4回閣僚会議(MC4) 2011年12⽉MC8 有望な個別分野の交渉を ドーハ・ラウンド⽴ち上げ 進めることに合意 ドーハ・ラウンド 2013年12⽉MC9 (於:インドネシア・バリ) バリ・パッケージに合意 (現在162か国)2008年7⽉ ⾮公式閣僚会合 合意⼨前で決裂 2015年12⽉MC10 於:ケニア・ナイロビ アイティーエー I T A 拡⼤ 2012年5⽉ (現在53か国) 交渉開始 プルリ交渉 2013年11⽉ 交渉中断 新たなサービス テティィー ーサ サ 貿易協定 (TiSA (TiSA)) 2013年6⽉ (現在51か国) 本格交渉開始 2014年12⽉ 交渉再開 2015年7⽉ ⼤枠合意 2015年12⽉ 最終合意 環境 物品交渉 2014年7⽉ (現在46か国) 交渉開始 TPP ⽇中韓FTA EPA/FTA交渉 ⽇EU・EPA RCEP 2013年7⽉ ⽇本交渉参加 2013年3⽉ 交渉開始 2015年10⽉ ⼤筋合意 2013年4⽉ 交渉開始 2013年5⽉ 交渉開始 TTIP 2013年7⽉ (⽶・EU FTA)交渉開始 2016年3⽉現在 1 1 ドーハ・ラウンドの経緯① 2001年11⽉ 第4回WTO閣僚会議(於カタール・ドーハ) 途上国の要求にも配慮し、ドーハ開発アジェンダとして交渉を⽴ち上げ ・ドーハ・ラウンドは、下記全8分野の⼀括受諾⽅式(シングル・アンダーテイキング)を採⽤ 鉱⼯業品(NAMA) 農業 サービス ルール 貿易円滑化 関税削減、⾮関税障壁の撤廃 等 関税削減、補助⾦削減(国内・輸出) 等 コンピュータ関連・流通・⾦融等のサービス分野の⾃由化、国内規制 等 アンチダンピング(不当廉売対策)・補助⾦等の規律強化 通関⼿続等の簡素・迅速化、透明性向上 TRIPS(知的所有権) ワイン・スピリッツの地理的表⽰(GI)多国間通報登録制度 開発 貿易と環境 途上国に対する特別な取扱い(S&D) 環境関連の物品・サービスに係る貿易の⾃由化・円滑化 2 ドーハ・ラウンドの経緯② 2008年7⽉ ⾮公式閣僚会合:モダリティ(交渉の基本的ルール)に合意⼨前で決裂 ○農業の途上国向け緊急輸⼊制限、鉱⼯業品の分野別関税撤廃での対⽴により、交渉が漂流。 ⽶国 新興国の追加的な貢献を要求。 対⽴ 新興国(中国、インド、ブラジル等) 他の途上国以上の負担には応じず。 2011年12⽉ 第8回WTO閣僚会議(MC8)(於:スイス・ジュネーブ) 当⾯、有望な個別分野の交渉を進めることに合意 2013年12⽉ 第9回WTO閣僚会議(MC9)(於:インドネシア・バリ) バリ合意が成⽴ バリ合意の主要項⽬及び現状 貿易円滑化協定 (WTO設⽴後初のマルチの協定合意) • 税関⼿続の簡素・迅速化、透明性向上、途上国への⼀定の配慮 • 昨年7⽉を予定していた協定の採択をインドが阻⽌したが、昨年11⽉に採択。 農業 • 貧困層向けの⾷料の公的備蓄制度について、恒久的解決が得られるまで、各国はWTOの紛争解決⼿続に提訴し ないことを確認。恒久的解決を2015年末までに得るよう最⼤限努⼒する。 開発 • 後発開発途上国(LDC)産品の市場アクセス拡⼤ ポスト・バリ作業計画 • ドーハ・ラウンドの残りの事項の進め⽅について、2014年内に策定することに合意。 • 貿易円滑化協定の採択の遅れを受け、昨年11⽉、2015年7⽉末までの策定を⽬指すことに再度合意。 2015年12⽉ 第10回WTO閣僚会議(MC10)(於:ケニア・ナイロビ)←アフリカ初の開催 3 WTOにおける新たなアプローチ ○新たなアプローチには、交渉分野を限定し、⼀括受諾に先⾏して合意を⽬指 すことが含まれる。 ○交渉分野を限定する場合、下記の分類が考えられる。 全加盟国で交渉 (Multilateral) 交渉分野を限定 有志国による交渉 (Plurilateral) 幅広い分野を 交渉対象 国を限定 (EPA/FTA) 成果を全加盟国に均てん (最恵国待遇 (MFN)) 成果の均てんなし (排他型) 成果の均てんなし (排他型) 4 ITA(情報技術協定)拡⼤の概要 ITA Information Technology Agreement ITAは、1996年、29メンバーにより、157品⽬のIT関連製品の関税撤廃等に合意したもの。 対象品⽬: 半導体、PC、携帯電話、FAX、デジタルカメラ(静⽌画⽤) 等 現在、⽇本、⽶国、EU、中国、韓国、マレーシア、台湾等82メンバーが参加(対象品⽬の世界貿易 額の97%をカバー)。 近年の技術進歩を踏まえ、世界の産業界が品⽬拡⼤を強く要望 ITA拡⼤ ⽇⽶が主導して、2012年5⽉に拡⼤交渉を⽴ち上げ。現⾏ITA参加国のうち53メンバーが 拡⼤交渉に参加。 2013年7⽉、最も多くのセンシティブ品⽬を有する中国がほとんど譲歩せず交渉は中断。同10⽉ に交渉を再開するも、11⽉会合で各国が妥結に向けて譲歩する中、中国等が多くのセンシティブ品⽬ を維持し続けたため、交渉は再度中断。 2014年11⽉のAPEC北京⾸脳会合時に、⽶中間で対象品⽬について合意。これを受け、同 12⽉にジュネーブで交渉会合を再開し、参加国・地域間で対象品⽬の合意を得るべく交渉を⾏う も、同交渉会合では品⽬合意に⾄らず翌年に持ち越し。 2015年7⽉14⽇からジュネーブで交渉会合を開催し、7⽉24⽇、交渉参加国・地域は拡⼤ 対象品⽬201品⽬に合意。7⽉28⽇、WTO⼀般理事会に報告が⾏われ、宣⾔⽂及び拡⼤ 対象品⽬リストを公表。 拡⼤対象品⽬:新型半導体、半導体製造装置、デジタル複合機・印刷機、デジタルAV機器、医療機器 等 5 ITA拡⼤ 2015年7⽉の宣⾔⽂のポイント 参加国・地域 ⽇本、⽶国、EU(28か国)、台湾、韓国、コスタリカ、マレーシア、豪州、カナダ、タイ、ノ ルウェー、中国、スイス、リヒテンシュタイン、シンガポール、⾹港、フィリピン、ニュージーランド、イ スラエル、モンテネグロ、グアテマラ、アイスランド、アルバニア、(モーリシャス※、コロンビア※) 対象品⽬ (※ 国内調整未了のため宣⾔⽂には未掲載) デジタルAV機器、デジタル複合機・印刷機、半導体製造装置、新型半導体、通信機 器、医療機器等の合計201品⽬。 関税撤廃期間 関税撤廃期間は3年を基本とし、可能な品⽬については即時撤廃、個別の状況に応じ3 年を超える延⻑を認める。 実施スケジュール 2015年12⽉までに各国・地域がWTO上譲許する内容を確定させ、2016年 7⽉から関税引き下げを実施。 6 ITA拡⼤対象品⽬の具体例 IT機器・部品 新型半導体 ○MCO(マルチコンポーネントIC) ○MCP(マルチチップIC) 拡⼤対象品⽬ 201品⽬ IT機器製造装置 デジタル複合機・印刷機 ○デジタル複合機 ○プリンター(ネットワーク接続型) 等 デジタルAV機器 半導体製造装置 ○半導体ウエハー製造装置 ○フラットパネルディスプレイ 製造装置 ○デジタルビデオカメラ ○DVD、HDD、BDプレイヤー ○ゲーム機、携帯⽤ゲーム機 等 IT応⽤製品 医療機器 ○MRI(磁気共鳴画像診断装 置) ○CTスキャン装置 等 システム製品 等 ○ビル・家庭⽤エネルギー マネジメントシステム(BEMS, HEMS) その他 通信機器 光学製品の部分品 専⽤原材料 ○基地局 ○ETC(電⼦料⾦徴収システム) ○カーナビ、GPS受信機器 等 ○偏光材料製のシート・板 (液晶パネル⽤等) ○レンズ、フィルター 等 ○インクカートリッジ ○半導体⽤フォトレジスト 等 7 ITA拡⼤交渉の最終妥結 2015年7⽉のIT関連製品201品⽬の合意以降、我が国はITA拡⼤交渉の議⻑国と して、個別の対象品⽬の関税撤廃期間に関する議論を精⼒的に主導。 第10回WTO閣僚会議(MC10) 2015年12⽉16⽇、ケニア・ナイロビで開催された第10回W TO閣僚会議(MC10)において、林経済産業⼤⾂がITA 拡⼤交渉に参加する53メンバーを代表して、交渉の最終妥結を発 表。 複数のメンバー間で調整が難航し、MC10での最終妥結が危ぶま れていたが、林⼤⾂が議⻑として調整が必要な関係閣僚へ直接働き かけ、交渉妥結に導いた。 今後のスケジュール 3か⽉間のさらし期間後、⽇本は譲許表修正案を国会に提出・審議予定。 2016年7⽉1⽇から関税撤廃が順次開始され、3年以内にタリフラインベースで53メン バー全体の約90%の品⽬の関税が撤廃。 2024年1⽉には、201品⽬の関税が53メンバー全てについて完全に撤廃予定。 8 ITA拡⼤の意義 1) IT関連企業の国際競争⼒強化 - グローバル・サプライチェーンが発達しているIT関連製品について、無税で、⽶、EU、中国、韓国等 主要市場、⽣産拠点へ輸出できる品⽬(最終財、中間財)が拡⼤。 - 対象品⽬の全世界貿易量は年間約1.3兆ドル(全世界の総貿易量の約10%)※1。 - 対象品⽬の⽇本からの輸出額は対世界で約9兆円(⽇本の総輸出額約73兆円 の約12%)※2。 ⽇本からの輸出にかかる関税削減額は、試算では、約1700億円。 ⽇系企業の海外拠点からの輸出等を含めると、更なる関税削減効果あり。 2) 21世紀初の主要国が参加する⼤型関税交渉の合意 - 18年ぶりの、先進国・途上国双⽅の主要貿易国が参加する⼤型関税交渉の合意。 - 約3年で結果を出したことは、WTOの交渉機能が健在であることを証明。ドーハ・ラウンドが⾜ 踏みする中、 WTOの信認維持に貢献。 ※1)WTO試算より抜粋。(https://www.wto.org/english/tratop_e/inftec_e/itaintro_e.htm) ※2)経済産業省試算。 9 対象品⽬の輸出額及び関税撤廃効果の試算 【対世界への輸出額】 約9兆円 【関税撤廃額】 中国 約1700億円 (⽇本の総輸出額の約12%) ※⽇本の総輸出額は約73兆円(2014年) 台湾 ●半導体製造⽤フォトレジスト 平均税率:3.5% 輸出額:約400億円 ⇒関税撤廃額:約20億円 ●偏光材料製のシート・板 (液晶パネル⽤等) 平均税率:1.0% 輸出額:約600億円 ⇒関税撤廃額:約10億円 関税撤廃額:約70億円 韓国 ●偏光材料製のシート・板 (液晶パネル⽤等) 平均税率:8.0% 輸出額:約1300億円 ⇒関税撤廃額:約100億円 ●半導体デバイス製造装置 平均税率:1.7% 輸出額:約1200億円 ⇒関税撤廃額:約20億円 関税撤廃額:約400億円 マレーシア その他 2% 2% フィリピン 2% シンガポール 3% タイ 3% 香港 6% 台湾 8% 非参加 メンバー 8% ●偏光材料製のシート・板 (液晶パネル⽤等) 平均税率:8.0% 輸出額:約1300億円 ⇒関税撤廃額:約100億円 ●デジタルビデオカメラ 平均税率:5.7% 輸出額:約1000億円 ⇒関税撤廃額:約60億円 中国 24% 関税撤廃額:約800億円 ⽶国 ⽇本から対参加 メンバーへの輸出額 ●デジタルビデオカメラ 平均税率:1.7% 輸出額:約900億円 ⇒関税撤廃額:約20億円 約8.3兆円 米国 18% 韓国 9% EU28 15% ●半導体製造⽤フォトレジスト 平均税率:2.7% 輸出額:約600億円 ⇒関税撤廃額:約20億円 関税撤廃額:約130億円 ●デジタルビデオカメラ ●半導体⽤フォトレジスト 輸出額:約900億円 平均税率:6.0% 輸出額:約600億円 ⇒関税撤廃額:約50億円 ⇒関税撤廃額:約40億円 EU 平均税率:5.4% 関税撤廃額:約270億円 10 我が国にとって関税撤廃効果が特に⼤きいと考えられる品⽬ 【関税撤廃効果⼤】 【早期関税撤廃】 関税撤廃額が特に⼤きい主要品⽬ ⼤半のメンバーが3年以内に関税撤廃する主要品⽬ 【デジタルビデオカメラ】 【カーナビ、GPS受信装置】 最⼤関税率:35% 対世界輸出額:約4400億円 関税撤廃額:約130億円 最⼤関税率:8% 対世界輸出額:約1000億円 関税撤廃額:約30億円 【半導体製造⽤フォトレジスト】 最⼤関税率:20% 対世界輸出額:約2600億円 関税撤廃額:約120億円 【偏光材料製のシート・板(液晶パネル⽤等)】 最⼤関税率:8% 対世界輸出額:約1400億円 関税撤廃額:約60億円 【レンズ、フィルター】 最⼤関税率:15% 対世界輸出額:約950億円 関税撤廃額:約60億円 【プリンター(ネットワーク接続型)】 最⼤関税率:8% 対世界輸出額:約430億円 関税撤廃額:約10億円 【フラットパネルディスプレイ製造装置】 最⼤関税率:10% 対世界輸出額:約1800億円 関税撤廃額:約30億円 11 ITA参加メンバーの構成(2016年3⽉時点) ITA参加国(82メンバー) ⽇本、⽶国、EU(+28か国)、台湾、韓国、コスタリカ、マレーシア、豪州、 カナダ、タイ、ノルウェー、中国、スイス、リヒテンシュタイン、シンガポール、⾹港、フィリピン、 ニュージーランド、イスラエル、モンテネグロ、グアテマラ、アイスランド、アルバニア、 モーリシャス、コロンビア 拡⼤交渉参加国(53メンバー)(うち28メンバーはEU加盟国) インド、インドネシア、マカオ、オマーン、ペルー、サウジアラビア、ウクライナ、トルコ バーレーン、アラブ⾸⻑国連邦、ベトナム、ニカラグア、パナマ、エジプト、グルジア、 ホンジュラス、ヨルダン、クウェート、キルギス、モルドバ、モロッコ、タジキスタン、 カタール、ロシア、ドミニカ、エルサルバドル、セーシェル、カザフスタン、アフガニスタン 12 (参考)WTO環境物品(EGA)交渉の概要 交渉概要 環境保護及び気候変動対策に貢献する物品(太陽光パネル、⾵⼒発電等、排ガス測定器等)の関 税撤廃を⽬指して2014年7⽉に交渉開始。現在46メンバーが参加。 APEC環境物品54品⽬(2012年9⽉のAPEC⾸脳会議において、2015年末まで に実⾏関税率を5%以下に削減することに合意した品⽬)より幅広い品⽬での関税撤廃を⽬指す。 2015年4⽉までに、交渉参加メンバーから対象候補品⽬の登録が⾏われ、第6回(5⽉4〜8 ⽇)、第7回(6⽉15〜19⽇)、第8回(7⽉27〜31⽇)の交渉会合では、対象候補 品⽬毎に環境クレディビリティの議論を実施。 これまでの議論を踏まえ、8⽉10⽇に交渉参加メンバーから幅広い⽀持を得ている対象候補品⽬の リストを交渉会合議⻑が取りまとめたところ。 9⽉以降、3回の交渉会合を開催し、第11回交渉会合(11⽉30⽇〜12⽉4⽇)では、 MC10までの対象品⽬⼤枠合意を⽬指すも、⽶中で本交渉の基礎についての折り合いがつかず断 念。MC10では、EGA議⻑(豪州)より、これまでの交渉の成果と2016年の早期妥結を⽬指 す内容をまとめた議⻑ステートメントが発表された。2016年3⽉に交渉を再開。 <交渉参加メンバー>(46メンバー) ⽇本、⽶国、EU(+28か国)、中 国、韓国、台湾、⾹港、シンガポール、カ ナダ、豪州、NZ、スイス、リヒテンシュタイ ン、ノルウェー、コスタリカ、イスラエル、トル コ、アイスランド <現在議論されている品⽬の例> ・再⽣可能エネルギー関連品⽬(⾵⼒、⽔⼒、太陽光等) ・省エネルギー関連品⽬(エアコン、冷蔵庫、LED等) ・⾼効率発電⽤機器(ボイラー、タービン等) ・環境計測・分析機器 ・⼤気汚染防⽌・⽔処理関連品⽬ 13 ・リサイクル・廃棄物対策関連品⽬
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