地域に生きて自宅で旅立つ ~在宅での看取りを考える~

「藤沢市における在宅医療を考える会」
市民公開講座
地域に生きて自宅で旅立つ
~在宅での看取りを考える~
申請者:奥野滋子
2015/02/24
公益財団法人
在宅医療助成
助成対象年度
勇美記念財団
2014 年度前期
開催プログラム
「藤沢市における在宅医療を考える会」市民公開講座
『地域に生きて自宅で旅立つ
公益財団法人
在宅医療助成
~在宅での看取りを考える~』
勇美記念財団の助成を受けています
平成 27 年 1 月 17 日
於 藤沢市商工会議所 ミナパーク多目的ホール
開会:14 時 00 分
総合司会
橋間百合子主任
開会の言葉
長田博昭氏
シンポジウム
座長
風間都代子氏
宮澤正幸氏
① 遺族の看取り経験 「母と歩んだ日々」
相澤氏
斉田良恵氏
② 遺族の看取り経験 「祖母を看取って」
横田知美氏
栢沼 牧氏
③ 在宅介護を始めるにあたって必要なこと
萩原ゆみ氏
松本万紀子氏
④ その人らしさを支える訪問看護
岡田美智子氏
⑤ 訪問薬剤師を知っていますか?
渡部雄紀氏
⑥ 家で過ごしたいあなたへ
奥野滋子氏
ディスカッション
閉会の言葉
村上克子氏
閉会:16 時 30 分
1
はじめに
医療法人 社団若林会 湘南中央病院と藤沢市民病院は藤沢市をはじめとする周辺地域
の在宅医療に関する情報交換及び勉強会を目的に、平成 24 年 9 月 25 日に「藤沢市におけ
る在宅医療を考える会」を発足させ、協定を締結した。
(代表者名) 湘南中央病院長 長田博昭、藤沢市民病院長 城戸泰洋
(目的)
藤沢市の在宅医療を推進する人たちの教育、啓発を行うとともに、
会員相互の医療ネットワークを構築し連携を強化することにより、当地域の
医療の質の向上と地域医療連携に貢献することを目的とする。
本会は、目的を達成するため、教育・啓発事業(勉強会を毎年1~2 回開催する)を役目の一
つと捉え、地域の医療機関と交流を深め、情報交換をおこなうために、すでに医療職・介
護職向けに5回の研修会を行ってきた。今回は一般市民に対しても在宅医療の実際を知っ
てもらう機会とし、在宅療養の啓蒙を目的に市民公開講座が企画された。
平成 26 年 9 月、藤沢市民病院から当会からの脱退の申し入れがあり、今回は湘南中央病院
主催で開催することとなったため、会場などの規模を縮小化した。
神奈川県は人口 10 万人対病床比が全国的にも低く、国が今後の超高齢化社会、2025 年
問題を乗り超えるために在宅医療の拡充はもちろん、自宅や施設での看取りを重点的な課
題として取り上げていることを受け、当会としても藤沢市とその周辺地域において、看取
りを踏まえた在宅医療推進の役割を積極的に担う必要があると考えている。
今回の市民公開講座では、在宅医、訪問看護師、訪問薬剤師、ケアマネージャー、MSW、
在宅看取り経験がある 2 家族により、在宅で過ごすために利用できるシステムや相談窓
口の紹介、終末期症状コントロール、看取りのケア、看取りの経験談(療養から葬儀・
死後のことまで自由に語っていただく)などを発表していただき、その後に会場の参加
者を含め、在宅で看取るということに関するディスカッションを行った。
2
第1講演
ご家族による看取り体験「看取りの経験:母と歩んだ日々」
相澤氏(本人の希望により名前は略)
訪問看護担当看護師 斉田良恵
※以下は発表したスライドの一部と説明文を抜粋。
昨年、40 歳代の息子Aさんが 70 歳代の
お母さんを自宅でお看取りされました。
その日々のお話を、皆様にお伝えしたいと
思います。
Aさんは現在、お仕事が忙しいことと、
まだお母様の旅立ちから半年あまりの時期
ということもあり、
今回はご自宅に訪問させていただいていま
した訪問看護師が、事前に聴いた
Aさんの語りを、ご紹介いたします。
お母さんは「胃がん」と診断されました。
それまでは入院もしたことがない、元気なお母さんでした。
そして、すぐに手術となりました。
手術後は、食事を摂ると腸
閉塞を起こし、良くなっては
また…の繰り返しになりま
した。
3
そのため、点滴で栄養を補う必要が
あり、心臓の近くにカテーテルを埋め
込み、そこからの点滴をしながら家で
過ごすことになりました。
夜9時ころ点滴をセットし、
一晩かけて機械が薬液を少し
ずつ入れ、朝8時ころに外す。
これを毎日行いました。
食事は少ししか食べられないため、
大事な点滴です。
訪問看護師が週に1-2回、ご自宅で病状観察や療養生活のお手伝い、点滴の針交換を し
ていました。
その時、Aさんは必ず、部屋の入口に
立って、お母さんと看護師のやりとりを
見守ってくれていました。
4
しっかりとしたお母さんですので、
自身の身の回りのこと、今できる家事など、家族の
ことも考えて…主婦であることは変わらない生活をしていました。
点滴の部分だけをAさんにお願いし、抗がん剤の副作用は一人で抱える姿がありました。
そんなお母さんをAさんは気遣って、よく、買い物に連れ出してくれました。
お腹が痛くなり入院をしました。
腸閉塞でした。
人工肛門をつくるか?
麻薬で痛みだけとるか?
主治医と充分相談し、
人工肛門に決めました。
人工肛門の管理は早々にAさんの助けが
必要となりました。
「点滴はある程度ルチーンだったけど、ココ
の子はね(笑)、いつなるかわからなくて。」と、
今となっては慈しむように語られています。
5
お母さんは、すっかりAさんを頼りにしていました。
症状が落ち着き、退院しました。
抗がん剤の治療が難しくなりました。
痛みも少しあり、薬の細やかな調整が必要です。
診察は自宅で行われました。症状や今の気持ちを
ゆっくり話し、それに合わせた処方がされます。
気が付くと肌が黄色くなってきました。黄疸です。
「亡くなった長男が夢に出てきたんです。迎えに
来たのかな?」などと話すようになりました。
ある日、美容師さんに来てもらい髪を切った時の
ことです。Aさんに「写真を撮って」といいました。
「遺影にするから」と…
お母さんの言葉に驚きながらも、しっかりと受け止
め、大事な今を過ごしていきました。
最期をどのように迎えようか?
そんな話をAさんと考えるために、病院へ来ていただきました。
医師、薬剤師、看護師、今まで病院で、家で、支えてきたメンバーが集まりました。
その時「最期はやっぱり病院でしょうね。」とAさんは話されていました。
決定打となるような状態が
来ないよう、緩和ケアが行
われていました。いつもと
同じに見える点滴は、変わ
りゆく病状に合わせ日々変
更されていました。
・・・そして、
最期を家で迎えました
6
お母さんは、最期の日まで、話しかければ頷いてくれました。
そして、呼吸が休み休みになり…
医師や看護師、薬剤師など、慣れ浸しんだ訪問者に囲まれ、
Aさんとお父さんの腕の中で、安らかな表情を浮かべ、
お母さんは旅立たれました。
訪問を続けた看護師が、最後の着替えとお化粧をすると、優しい笑顔になりました。
そのままご自宅で1週間、家族や親族の面会者とともに過ごされました。
あれから半年が経ちました。
今は新しい職場で忙しく働いていらっしゃる中、語りをお願いすると、
「また泣いてしまうのかどうか…」といいながら承諾いただきました。
2時間ほど思い出を一緒に辿った後、「意外に大丈夫でしたね。でも…もしかして、
まだまだ、封印している感情があるのかも、しれない」と話されました。
変わっていく病状の中でも
静かに過ごすお母さん。
Aさんは、その時その時の『今』を大切
に、お母さんの思いの1つ1つを丁寧に
拾い、受け入れていました。そのAさん
の存在にお母さんはどんなに安心したこ
とでしょう。
~貴重な日々に立ち会えたことに感謝申し上げます。
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第2講演
ご家族による看取り体験「祖母を看取って」
横田知美氏
訪問看護担当看護師 栢沼 牧
在宅で最期の時を過ごしお看取りをされたご家族からその体験をお話しいただいた。
≪紹介≫
90 代 女性
特別養護老人ホームに入所されていたが、娘さんとお孫さんの意向で退所し、お二人の
住む自宅へ帰られた。
入所中から少しずつ食事摂取量の低下があり衰弱が認められていたが、自宅で最期の時
を過ごし家族で看取りたいとの希望であった。
自宅で介護するにあたり、ケアマネージャーによるケアプラン作成・訪問診療・訪問看
護・訪問入浴・介護用ベッドのレンタルなどのサービスを利用して在宅介護を始めた。
自宅では、食事のときは椅子に座り家族とともに食卓を囲み、大好きな童謡を CD に合
わせて口ずさみ、穏やかに過ごされていた。
施設を退所し 1 ヶ月経つころから傾眠になることが増え、
食事が進まないことが増えた。
その 1 ヶ月後にはほぼベッド上での生活となった。
在宅療養を始めて約 3 か月、ご自宅で娘さんとお孫さんに見守られ永眠された。
今回、娘さんとともに介護をされたお孫さんが自宅での介護の様子を振り返り、担当し
ていた訪問看護師の質問に答える形でその思いを語って下さった。
≪自宅に連れて帰りたかった理由≫
・大切な家族と一緒の生活を送りたかった。
・
「お母さん一緒にいたい」と思う母(娘さん)の気持ちを応援・サポートしたかった。
・
「いつかは看取るであろう介護を始めた時の気持ち」を無駄にしたくなかった。
・祖母がいたから今までの私たちがいるという思い。
・祖父を家で看取ることができなかった経験
・介護サービスで家で看取ることができる体制が整っていた。
≪実際に自宅での介護を始めて感じたこと≫
・
「在宅で看取るプロジェクト」が発動したと感じた。チームでのサポート体制が整って
いると感じた。
・具合が悪くなれば救急車を呼ぶことが当たり前、病院に行けば安心と思っていたので
8
「在宅で看取るということは、病院に行かないということ」を受け入れることに戸惑い
があった。
・日々の状態を記録するノートが、訪問診療や訪問看護などへ毎日の細かな様子を伝える
ことに役立った。
・食事を大切にしたかった。
できる限り好きなもの・栄養のあるものを食べさせてあげたいと思っていた。
・介護する家族は、訪問してくれるサービス提供者(医師・看護師・ヘルパーなど)に癒
されていた。どんな小さなことでも受け止めて一緒に悩んだりわかりやすく説明してく
れた。
・在宅では使用する物品・時間に限りがあった。できるだけ直接関わる時間を作りたかっ
たので工夫が必要だった。
≪介護していく中でほかに希望するサービスはあったか≫
・介護用の食品を購入したが、業者を探したり自分たちの力だけでは難しかった。
種類も限られていたのでもっと豊富にあっても良いと思った。
・介護食を購入するときに、箱単位で購入しなければいけないことが多く、食べてみてか
ら購入できたら良かった。
介護食だけでなく、ベッドなどの福祉機器や入浴サービスなども試してから導入できる
と良いと思った。
≪振り返ってみて思うこと≫
・してあげたいことはたくさんあったがしてあげられなかった。
・本人のためと思ってしていたことも、本当はどう思っていたのか。本人しかわからない
気持ちをしることができたら。
・まさか 3 カ月経たずに看取ることになるとは思っていなかった。
・同じ屋根の下で同じ時間を過ごし触れ合えたことは、大切な、短くも濃厚な時間だった。
最期のときは 3 人がつながって抱きしめた中で息を引き取った。私たちの願いどおりに
看取らせてくれたことが祖母からのメッセージだと思えた。
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第3講演
第1席
在宅介護を始めるにあたって必要なこと
居宅介護支援事業所 主任
萩原ゆみ氏
介護保険制度が導入された背景に
は、高齢化が進み要介護高齢者の増加
や介護にかかる期間が長期化してい
ることや、家族構成や家族の意識のあ
り方の変化も影響があります。介護は
家族で行うこととされた時代から介
護を社会全体で支える仕組み作りが
必要になりました。
介護保険制度は高齢者が対象と思っている方も多いようですが、40 歳以上の方は介護保
険料を納めていますので、加齢との関係が認められる 16 の疾病に当てはまれば介護保険の
申請ができます。
介護や療養が必要となった方の多くが、自宅で今までと変わらぬ生活を送りたいと希望
される中、その気持ちや希望を支えるご家族に不安があるのも事実です。厚生労働省の調
査でも、本人の希望は「家族に依存せ
ずに生活できるような介護サービス
があれば自宅で介護を受けたい」が最
多であり、家族の希望は「家族の介護
と外部の介護サービスを組み合わせ
て介護を受けさせたい」が最多となっ
ています。ケアマネジャーはどうした
らその希望を叶え、不安を解決できる
のかを一緒に考え、専門的見地から必要であれば介護保険サービスも提案していきます。
今後は医療・介護・予防・住まい・生
活支援サービスが切れ目なく提供される
「地域包括ケアシステム」が推進され、
医療と介護はより綿密な連携が必要とさ
れます。介護保険サービス利用者も今後
増加が見込まれ、それに伴い介護費用も
増大していきます。
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介護給付費が増大しても持続可能なものとするためには、今まで導入されていない利用
者負担のあり方も検討されています。
介護が必要になっても住み慣れた地域で生活できるよう、介護保険制度を今後も社会全
体で支え、あなたの自宅でこれからも暮らしていきましょう。
第2席
医療ソーシャルワーカー
松本万紀子氏
はじめに
医療や介護は、突然の病気やケガ、あるいは年齢を重ねることで急きょ必要となること
が多いことに触れながら、介護を要するきっかけについてエピソード以下のようにあげま
した。多くの方は、こういった状態になった時、医療や介護に関する様々な情報に初めて
接することになるため、その時に備え、知っておくとよいことを 3 つの項目に分けて発表
しました。
◆介護を必要とするきっかけ
「入院をしてもうすぐ退院だが入院前のように歩けない」
「がんなどの病気で治療を続けてきたが治るための治療が難しくなり、苦痛を緩和しなが
ら自宅で最後まで過ごしたい」
「足腰が弱りかかりつけの医師のところに通えなくなった」
1.在宅相談に関する相談―窓口や相談することの大切さ―
介護が必要となった時、「家で過ごしたい」「家に帰りたい」などと思われたらまず相談
をしてみてください。その時には、色々な心配事や悩みが出てきますが、みなさんの周り
には、様々な地域の相談窓口があります。包括支援センターなど地域の相談窓口を一部紹
介。心配事とともに想いを伝えることで、状況に合った家での生活について一緒に考え、
力になってくれるでしょう。相談時のアドバイスとして、事前に医師や看護師から話を聞
いておくとよいことや、上手く伝えられないなどの心配があればメモするなどの方法を紹
介しました。また、
「介護をするときに大切なこと」を取りあげ、相談することは、療養生
活の心身の準備につながる大切な時間であることを伝えています。
◆介護をするときに大切なこと
「過ごしやすい環境の準備」
「サポートできる人の確保」
「ゆとりをもつ」
2あなたを支える在宅の医療・介護サービス
在宅にも様々な医療・介護のサポート体制があり、専門職が存在します。サービス利用
は、安心・安全な療養生活につながることや、介護者の相談やお手伝い、自宅で継続した
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治療ができるなどの利点があります。
そういったサービスは、医療保険や介護保険、身体障害者福祉法などの制度により展開さ
れるものからNPO法人・民間の会社など保険外で展開されるものなど様々です。
◆以下、主なものとして介護保険についてケアマネージャー萩原さんより発表。
3在宅療養に関するお金や医療・介護の制度について
療養生活を安心して送れるようにするために経済的負担を安くすることも大切なことで
す。在宅で介護する
ときにかかる費用として医療保険・介護保険負担分やオムツなど主なものをあげています。
その上で、参考になるよう関連する制度を一部紹介しました。こういった制度は、所得や
介護度などにより要件があり、手続きの窓口も異なるため、困っていることなどを伝えな
がらケアマネ・包括支援センター・病院のソーシャルワーカーなどに相談してみるとよい
でしょう。制度を活用することで療養生活の助けになります。
おわりに
介護を必要とするときが訪れる可能性は、誰にもあります。どのような準備が必要か、
また、自宅でも医療が受けられることや様々な専門職のサポートがあることを知ることは、
もしもの時の備えにもつながります。今回のテーマは、
「在宅看取りを考える」というもの
です。社会の多様化とともに人生の最後も多様化していますが、住み慣れた家で暮らせる
という選択肢があることを知る機会になればと思います。
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第4講演
訪問薬剤師を知っていますか?
医療法人 社団若林会湘南中央病院
薬剤師 渡部
雄紀
まず在宅医療とは、通院が困難な患者さんが過ごす自宅もしくは施設などに、医療者が
訪問して、医療継続することを在宅医療というのはみなさんご存知かと思います。その中
で
「薬剤師も患者さん宅、施設へ訪問して薬の説明(いわゆる服薬指導)を行っていたりする
のですがみなさんご存知でしょうか?」
ご存知な方がいらっしゃいましたら手を挙げていただいてもよろしいでしょうか?(あり
がとうございます)
また、
「薬剤師が自宅や施設へ実際に来たのを見たことがある」という方はいらっしゃい
ますでしょうか?(ありがとうございます)
今回は在宅医療の中で薬剤師がどのようにかかわっているのか?また患者さんが不安の
ないように過ごせるようどんなことをしているのか?を簡単ではありますが実際、湘南中
央病院で関わって患者さんの事例もまじえながら説明していきたいと思います。
薬局といえば・・・
薬局のイメージ
病院内薬局
患者さん宅・介護施設
訪問
処方箋
調剤薬局
連携・
情報共有
病院・在宅療養支援診療所など
まずみなさん薬局のイメージをどのように思われていますでしょうか?
患者さんが入院であったり病院内で薬をお渡ししている病院内の薬局、処方箋をそとの
薬局にもっていく調剤薬局というのを想像するのではないでしょうか?
患者さんが薬局に処方箋もっていき薬剤師が調剤して説明(服薬指導)してしっかりのん
でもらいその薬の効果を評価するもの薬剤師の仕事の一つではあります。
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では薬剤師が病院や薬局からでて患者さん宅、介護施設にきてくれたらどうですか?う
れしくないですか?
実際、病院や薬局の薬剤師が在宅を行っている施設もあります。
薬剤師が患者さん宅へ訪問するまでの流れを説明します。
まず病院や在宅療養支援診療所の医師や看護師などが患者さん宅へ訪問診療します。
その際処方箋を発行します。
その処方箋を訪問した薬剤師が受け取り調剤を行います。場合によっては直接医療機関
や患者の家族から処方箋を受け取る事もあります。それで再度薬をお渡しに伺います。
その際に薬の説明はもちろん血圧、脈拍などを測り患者さんの状態を把握する手段であ
るバイタルサインをチェックしてくれる病院・薬局もあります。すべての病院・薬局では
ございませんが在宅訪問診療を行っているところがあります。
病院とは違って毎日患者さんのところへこちらも伺えるわけではございません。
そこで把握した内容を医師、看護師、関わっているスタッフへこちらも情報共有を行い、
連携をとり少しでも自宅にいても病院にいるのと同じような治療をうけられ大好きな自宅
ですごせるように日々業務を行っています。
薬局同士で連携・情報共有してます
FAX用紙
薬の情報
患者さん情報
その情報の共有は何も医師、看護師だけではなく同じ薬剤師同士でも情報の共有・連携
をしています。
こちらのスライドは元々在宅医療をうけられていた方で状態が悪くなり自宅でみるのが
難しくなったため入院になった方の情報用紙が FAX で届いた物です。
もちろん FAX して情報共有することは患者さんからの同意を得た上で行っております。
入院するにあたり現在服用している薬などの情報ですとか患者さんの特徴や今の状態な
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どの患者情報が記載されています。
これがあると「なぜこの薬をのんでいるのか?」
「今、どんな状態なのか?」というのが
すぐにわかるため非常に助かっております。
こんな連携・情報共有してます
退院指導書・お薬手帳
また当院で入院していた患者さんが、入院中に使用していた薬の情報を用紙やお薬手帳
を利用して情報共有を行っています。こういった情報共有・連携によって病院の薬局と調
剤薬局だけではなく医療者全体で患者さんのサポートをしています。
患者さんとの情報共有
がん患者さんへのサポート資材
また当院でもがん患者さんで治療を初めて受けられる方に対しての冊子ですとか「どん
な治療をうけるか」
、「どんな副作用があるか」などがわかる用紙をファイルしてお渡しし
ています。後、がんに対しての様々な症状、有名なものとして例えば「痛み」などの症状
を記録する用紙もお渡ししています。
薬でこんなことありませんか?
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では実際に退院さたり、外来で薬をもらって自宅に帰られた際「帰ってみたもの、薬の
説明を受けたものの、どうしたらいんだろう?」と悩まれるケースはありませんでしょう
か?
こんなことありませんか?
あまり薬が
のみたくない
何の薬を飲んでいるか
わからない
錠剤や粉
薬が飲み
にくい
薬が多すぎ
て整理がつ
かない
例えばですが
入院したり、外来などでお薬をもらってこんなことを思われたりしませんでしょうか?
「薬をもらったのはいいけど家の中で余っているのにまた薬をもらってしまいたくさん
の薬が自宅に残って整理できていない」
「服用する薬が増えていきだんだん自分が何の薬をのんでいるかわからなくなる、どん
な効果の薬か忘れてのまなくていいやと思い服用をやめてしまう」
「薬もらったのはいいけど錠剤が大きくて呑み込めない、粉薬だとむせてしまう」
こういったことはありませんか?
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こんなことありませんか?
Q1 薬が多すぎて整理がつかない
A1 余ったり残ったりした薬を適切に整理します
そういった疑問やお悩みに実際、ご自宅へ訪問して薬剤師がアドバイスしたりします。
例えば、
「薬が多すぎて整理がつかない」方には余ったり、
「残したりした薬を訪問時に
適切に整理します。
」
こんなことありませんか?
【例】
※医師と相談の上で必要なお薬をまとめて飲みやすくした
り、余ったお薬を整理します。
※適切な治療につながり、医療費の削減にもなります。
みてお分かりかと思うのですがこれすべて薬です。
正直この状態で患者さんから「薬のんでますよ」と言われても飲んでいるかもしれません
が指示された用法用量どおりのめていないのかもと薬剤師は思います。
今現在服用している薬を把握するうえでもお薬の整理することで適切な治療につながりま
す。また余った薬を利用することで医療費の削減につながります。
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こんなことありませんか?
Q2 何の薬を飲んでいるかわからない
あまり薬が飲みたくない
A2 薬の効果や薬を飲む必要性を説明し
サポートします
また「何の薬をのんでいるかわからない」
、「あまり薬が飲みたくない」方には「薬の効
果や薬を飲む必要性を説明しサポートします」
薬の説明風景
おつらいですね
この写真は実際患者さんのご自宅に訪問した際の写真です。
この方は 94 歳女性の方で認知症をわずらっていて足が不自由なため病院へ通えなくなり当
院の在宅診療部でみている方です。薬の内容と服用状況を確認してほしいと先生から依頼
があり今も訪問にどうこうしています。薬の説明もそうですが「患者さんの話を聞く」こ
れも患者さんをサポートするうえで大変重要です。話を聞いてあげて精神的な負担を少し
でも減らして不安のない生活をおくってもらえるように様々な相談にものったりします。
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こんなことありませんか?
Q3 錠剤や粉薬が飲みにくい
A3 患者さんごとに飲みやすい方法を選択し
医師へ提案します
また「錠剤や粉薬が飲みにくい」方には「患者さんごとに飲みやすい方法を選択し医師
へ提案します」
薬の管理と飲み方の工夫
1包化
お薬BOX
お薬カレンダー
困った時は薬剤師に相談してください
~スライド⑬~
例えば、実際もらった薬を手が不自由で薬が入っているシートから取り出せない方や 1
回に飲む量が多い方などには薬を用法ごとなどで袋にパックする一包化をお勧めします。
また薬を服用するタイミングを 1 週間ごとに管理するのに便利なお薬カレンダーやお薬
BOX なども飲み忘れの多い方にお勧めしています。
また、粉が飲みにくい方にオブラートや錠剤が呑み込みにくい場合や、粉薬の味が苦手な
かたにはゼリー飲料をお勧めしています。困った時は気軽に薬剤師に相談してください
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在宅での痛みの治療
ここで少し話が変わりまして在宅医療での痛みの治療について少し話をしたいと思います。
痛みにもさまざまな痛みがあります。
がん患者さんのよくみられる症状
痛みを訴える人がたくさんいます
~スライド⑮~
初めの方のスライドでがんの患者さんへこちらで様々なサポートができるように資材を
作り提供しているとお話しましたが・・・
現在の日本では 2 人に 1 人ががんにかかり 3 人に 1 人ががんで亡くなる時代になっていま
す。
そのなかで約 70%もの方が痛みを経験されます。その際に使われるお薬として有名なもの
でモルヒネがあったりしますがそういった「医療用麻薬」というものが治療で使われます。
20
医療用麻薬にどのようなイメージ
をお持ちですか?
「医療用麻薬」≠「不正麻薬」
この医療用麻薬ですがどうでしょうか?みなさんどんなイメージをおもちでしょうか?
財団法人日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が医療用麻薬のイメージを意識調査した結
果になります。
この結果からもあまりいいイメージをお持ちではないと考えられます。
これは医療用麻薬がすこし誤解されているからです。ただそんなありません。このイメー
ジを払しょくして頂くために、がんの痛みに使う医療用麻薬について話したいと思います。
まず医療用麻薬とは有効性安全性が国で認められている薬で医師が必要な方に出されるも
ので正しく使われています。一方で不正麻薬は法律で禁止されている薬で非正規ルートで
販売され不正に使用されるお薬です。
ですから「医療用麻薬」という言葉と「不正麻薬」という言葉を混同しないようにお気を
付け下さい。
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医療用麻薬のQ&A
最後の手段なの?
寿命が縮まるの?
最後の手段ではございません
寿命を縮めません
医療用麻薬についての知識も十分蓄積され、早い段階で苦痛を
取り除きながらがん治療すると長生きできることが科学的に示唆さ
れています
先ほどのイメージと同じように感じている方もいらっしゃるかと思います。
例えば「最後の手段なの?」、「寿命が縮まるの?」と思われている方、実際最後の手段で
もありませんし寿命を縮めたりしません。医療用麻薬についての知識も十分蓄積され、早
い段階で苦痛を取り除きながらがん治療すると長生きできることが科学的に示唆されてい
ます。
医療用麻薬のQ&A
依存性があるの?
中毒性があるの?
痛みのある人が使用し続けても、
中毒・依存が問題になることはありません
科学的な研究によって十分証明されています
また「依存性があるの?」、「中毒性があるの?」と思われている方、実際痛みがある人
が使用し続けても中毒・依存は問題になることはありません。これは科学的にも十分証明
されていることです。
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医療用麻薬のQ&A
副作用が怖いわ
医療用麻薬による副作用
は防ぐことができます!!
今ではどんな副作用(便秘・吐き気・眠気など)が起きるかあらかじめ
わかっているため、その症状に対して対策を立てることができます
そのため不安なく安心して生活を送れます
また「副作用が怖いわ」と思われている方、実際に医療用麻薬による副作用は防ぐこと
ができます。今では有名な副作用として便秘・吐き気・眠気などの症状が起きることがあ
らかじめわかっているため、その症状に対して対策を立てることができます。そのため不
安なく安心して生活を送れます。
医療用麻薬の種類
内服薬
坐薬
注射剤
貼り薬
少し医療用麻薬に対して不安が少しなくなったかな?と感じて頂ければ幸いです。
今度は実際に癌患者さんの痛みをとってくれるお薬の一部を紹介したいと思います。
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身体的な痛みには 2 種類ありまして持続する痛みとそれとは別で時折痛みがでる突出する
痛みがあります。
持続する痛みには 1 日中効果が持続する飲み薬や時折起きる痛みに対しては素早く効果が
出る飲み薬があります。
また、飲み薬が服用できない方には貼り薬タイプのもの坐薬、注射剤があります。当院で
も注射剤を携帯型注入ポンプにいれそれを在宅の患者さんのところへ訪問しています。
携帯型注入ポンプとは
・薬液ポンプのバルーン内に薬液を充填し、バルーンが収縮する
ことにより、薬液の持続注入を行うことができる注入器です。
(薬液の充填、追加は薬剤師または看護師が行います)
薬液ポンプ
PCA装置
バルーン内に薬液が充填さ
れています。バルーンが縮
むことにより薬液が送り出
されます。
ボタンを押すと少量のお薬が追
加で投与されます。
流量制御部
バルーンからの薬液が流れる速度を一
定に保ちます。
こちらが携帯型注入ポンプになります。(実物を見せる!!!)
携帯型注入ポンプとは痛みをとってくれる薬液をバルーン内にいれて、バルーンが収縮す
ることにより、薬液が持続的に注入されることで痛みをとってくれる注射器です。小さく
持ち運びもできるためこちらをつけながら外出することも可能です。また時折おこる痛み
に対してもボタンを押すと追加で薬液が注入されるためそういった痛みをお持ちの方にも
使用することができます。
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実際つくっているところ
在宅でも病院と同じ治療が受けられます
こちらが先ほどの注射器に薬液を充填しているところです。充填している場所はクリーン
ベンチといいまして外からのほこりや微生物の混入を避けながら無菌的に作業を行う装置
です。このように行うことで安全に患者さんへ薬を提供できます。
できあがったものがこちらです。
まったく同じ装置ではございませんが、このように自宅へ帰っても安心して病院と同じ治
療が受けられます。
困らないように冊子も作ってます
また自宅へ帰っても使い方がわからないですとかこんなときはどうするといった時様に冊
子を作ってお渡ししています。これなら自宅へ帰っても安心できますね。
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薬剤師もみなさんを応援します
これから増えていくであろう在宅医療。国がすすめている住まい・医療・介護・予防・生
活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム。
これらを薬剤師も縁の下の力持ちとしてみなさんの生活を支えていけたらと考えています。
自宅へ帰っても安心して治療が受けられるように薬剤師もみなさんを応援しています。
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第5講演 その人らしさを支える訪問看護
わかば訪問看護ステーション所長
岡田美智子
1、訪問看護の歴史について。
平成4年に老人保健法の改定によりはじ
まりまった。この時は高齢者にしか訪問で
きなかったが、平成6年に健康保険の一部
改正後、赤ちゃんからお年寄りまで利用で
きる現在の訪問看護ステーションが誕生
した。
2、訪問看護ステーション数の推移につい
て。
介護保険制度が開始された平成 12 年から
ステーションの数は急激に増えた。 しか
し看護師が少人数である事業所がほとん
どであるため、負担が大きく休止や廃止す
る事業所も少なくない。しばらく足踏み状
態であったが、国が在宅医療・介護を推進
することを打ち出し、在宅医療に対して医
療・介護保険などがプラスの改定になった
平成 24 年からは増え始めている。
3、藤沢市内にある訪問看護ステーション
マップを用いて説明。
それぞれ、理学療法士や作業療法士がいる
ステーションや 24 時間緊急対応できるス
テーション、 小児や精神科、終末期に力
を入れているステーションなど様々。
事業所として独立しているので、どこの病
院の医師からでも指示を受けることがで
きる。
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4、全国訪問看護事業協会で発行されたパ
ンフレットを用いて、訪問看護の内容やサ
ービスを受けるまでの流れなどを説明。
5、看取りに焦点をあてて考える場
をもった。国の調査によると、国民
の 6 割が最期の期間を自宅で療養し
たい、できるなら自宅で最期を迎え
たいと考えている。
しかし、いざ本当に自分がその状況に
なるとよくわからない漠然とした不
安から無理だと思ってしまう。
訪問看護師は医療のこと、看護のこ
と、介護のこと、家族のこと、ひと
つひとつ一緒に解決していく。
6、最期を考える時間として「象の背中」というDVDを紹介した。大切な人が旅立つ、
大切な人を残して旅立つ・・そんなことを考えながらDVD鑑賞した。
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<以上>
第 6 講演
家で過ごしたいあなたへ
医療法人
社団若林会 湘南中央病院 在宅診療部 奥野滋子
1、看取りを含めた在宅医療が必要になってきている
平成17年の国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所の都道府県の将来推計人口(平成
19年5月推計より、首都圏の高齢者人口が激増していることを示した。
高齢化が進むにつれて、健康に関する問題が出てきている。
厚生労働省の「国民基礎生活調査(平成 22 年)
」では、自分の健康について「よくない」
「あ
まりよくない」と答えた人は高い年齢層ほど増加しており、特に 85 歳以上の年齢層では 3
割を超える人が健康への不安を抱えている。
厚生労働所の「患者調査」によると、65 歳以上の受療率が著しく高くなっている。
同じく「人口動態推計」によると、65 歳以上の死因に関しては、悪性腫瘍・心疾患・肺炎・
脳血管疾患・老衰の順となっており、苦痛を有する疾患に罹患し死亡する人の割合が多い
ことが読み取れる。
平成 22 年の厚生白書による人口 10 万対病院病床数をみると、首都圏、とりわけ神奈川県
は最下位であることがわかる。これは入院を希望しても、入院が必要な状況であっても、
病床が満杯でベッドがない時代が目前に迫っていることを示している。もはや他人ごとで
はないのだ。あなたが入院したくてもできないとき、どこで療養し、治療し、最期を迎え
るのか。今一度自分の考えをまとめ、ご家族と話し合っていただきたいと思う。
在宅での療養は、つらい症状があるとなかなか継続は難しい。そのためには、つらい症状
をきちんとコントロールするような治療やケアを積極的に受けたほうが良い。
現在は自宅でも痛みなどの苦痛症状コントロールはできるようになってきているので、つ
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らい症状があるならば、遠慮せずにまず医療者に相談してほしい。
2、退院を勧められたら考えてほしいこと
内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査 平成 21 年」によると
〇どこで介護を受けたいか
自宅で介護してほしいと答えた人が男(42.2%)女(30.2%)ともに多く、
次いで病院などの医療機関、介護老人福祉施設、介護老人保健施設などと答えた人がそれ
ぞれ 1~2 割程度であった。
〇どこで最期を迎えたいか
自宅での看取りを希望された人は 6 割程度にも上り、次いで病院などの医療施設と答えた
人が約 1 割であった。
〇延命治療に関してはどのように考えているのか
内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査 平成 24 年」によると
「少しでも延命できるよう、あらゆる医療をしてほしい」が 10 年前に比べて減少(9.2%
⇒4.7%)し、逆に
「延命のみを目的とした医療は行わず、自然にまかせてほしい」が 81.1%⇒91.1%に増加
した。
こうしたデータをもとに考えると、治療が終わったら在宅に移行して、そのまま自宅で看
取ってほしい、その際もできるだけ無意味な治療は避けて自然な最期を迎えたいと考えて
いる人が少なくないと考えられる。
しかし、在宅療養に移行した場合にある程度覚悟が必要なことがある。
それは、体調は急に変わることもあるということである。
外見だけでは体調を正確に把握できない、家族であっても変化に気付けないのが普通であ
る。したがって、先ずは自分の病状を理解することが大切である。きちんと病状に関する
説明を求め、今後起きうることや、準備することなどを考えておこう。
積極的治療を受けない場合には、自宅にいても、病院にいても、医療内容に大きな違いは
ないことを知っておいてほしい。
とにかく家で過ごすためには辛い症状は禁物!
つらい症状を我慢せず、症状を緩和する治療・ケアを受けよう
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3、退院後にあなたを応援する人たち
たくさんの職種の人たちがあなたの療養生活を応援しています。
ご自宅で最期を迎えたいと希望されても大丈夫です。
自宅での療養の際に心配なことがあれば、どんなことでもご相談ください。
4、訪問診療でできることとできないこと
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5、「他人を家に入れるなんてとんでもない。家族に面倒を見てもらうから、訪問看護も、
訪問介護も不要です」の間違い
平成 22 年 厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、要介護者などから見た主たる介
護者の続柄としては、同居している配偶者、子、この配偶者、父母、その他の親族が 64.1%
別居の家族が 9.8%を占めている。
そして、69.4%は女性であり、年代別では男女とも 50 代~70 代が多い。
平成 24 年の総務省の「就業構造基本調査」によると、家族の介護や看護を理由とした離
職・転職者数は平成 23(2011)年 10 月から 24(2012)年 9 月の 1 年間で 101,100 人であ
った。とりわけ女性の離職・転職数は、81,200 人で、全体の 80.3%を占めていることが示
されている。介護・看護を理由に離職・転職した人の年齢構成割合を見ると、男女共に 50
代及び 60 代の離職・転職がそれぞれ約 7 割を占めている。
これは、働き盛りの年代や、自分たちの老後に備えた貯蓄が必要な年代が離職・転職に
追い込まれていることを示しており、
、介護者側の将来に不安を残す状態を招いていると言
える。
したがって、社会資源を十分に活用し、家族に頼らない介護環境を作ることが必要なので
ある。
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神奈川県は、人口 10 万人当たりの在宅療養支援病院数も、在宅療養支援診療所数も、全国
平均を下回っている。
何でもかんでも在宅療養、往診を頼むということではなく、必要に応じて療養場所を変え
ることが大切である。
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6、家に帰ろう
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アンケート結果
テーマ:「地域に生きて、自宅で旅立つ」 ~在宅での看取りを考える~
開催日時:平成 27 年 1 月 17 日 14:00~16:30
参加者:約 60 名
アンケート回答:45 名(回収率 75%)
職種
参加者年齢
70代以上
13%
一般参加者
20%
20代
4%
医師
5%
30代
18%
看護師
31%
60代
11%
その他
11%
介護福祉士
4%
50代
18%
40代
36%
ケアマネー
ジャー
9%
一般参加者自宅看取り経験
未記入
20%
薬剤師
11%
MSW
9%
一般参加者の介護経験
在宅看取
り経験あ
り
20%
在宅看取
り経験な
し
60%
未記入
22%
35
介護経験な
し
45%
介護経験あ
り
33%
参加者は、医療従事者の割合が多く、一般参加者は2割ほどだった。その他の中には、
ボランティアや言語聴覚士、包括支援センター担当者などが含まれていた。
一般参加者については、介護や看取り「経験あり」の方もいたが、割合としては「経験ない」方が多く、
興味を持たれての参加であったもよう。
業務などへの参考度
参加動機
未記入
7%
案内書を
みて
28%
その他
10%
参考にな
らない
0%
業務上の
必要性
14%
未記入
11%
全く参考
にならな
い
0%
普通
4%
講演内容
に興味が
あった
41%
大変参考
になる
47%
参考にな
る
38%
講演開始時間
早すぎる
0%
開催曜日
未記入
7%
未記入
27%
遅い
2%
ちょうど
良い
91%
36
火
0%
月
0%
水
2%
木
0%
金
13%
[分類名]
(土日)
[パーセ
ンテー
ジ]
参加動機は、案内を見て・興味を持たれてという方の割合が多かった。
内容的には、大変参考になる・参考になるで、8割を占め、好意的な意見が多かった(感想・意見参照)。
開催時間についてはちょうど良いが大半を占めていた。開催曜日については、医療従事者も多かったた
めか、金曜、土日など週末を希望される声が多かった。
意見・感想
・今後、年を取るにつれ不安がある。また機会があれば参加したい。
・自分の身内にも起こりうること。体験を聞け参考になった。
・看取りの経験談など聴いて、死や看取りについての考え方が少し変わった。大変意義のある体験だった。
・患者・介護者の方の思いがとても参考になった。(他 2 名)。
・ご家族の経験談に感銘を受けた。発表の仕方が良かった(他2名)。
・色々なテーマがよくわかるように組み立てられていたことが良かった。
・内容がたくさんでしたので、もう少し絞ってもよいのではないか。
・各職種の方の話も聞け良かった。在宅療養・訪問看護など改めてわかりやすく学ぶことができた(他2名)。
・同病院のスタッフとして、在宅医療の詳しい話がきけ良かった。今後の仕事に活かしていきたい。
・看取りは大変なことだと思うが、今後必然的になっていく。その時に様々なサポートを使えば良いことが分かった。
・遺族の看取り体験を聞いて、家でも看取ることができると思った。
・パワーポイントの文字がみずらかった(他 1 名)。
・講演内容の資料があるとよかった(他1名)。
今後取り上げてほしいテーマ
・同じ内容で、年2~3回繰り返し行ってみるのはどうか。
・事例をあげ、検討会などしてみたい。
・栄養・嚥下、運動機能などについて。
・独居の方の看取りについて(他2名)。
・在宅医療を担っている病院の情報が欲しい(他1名)。
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アンケートまとめ
ご遺族の体験談を聞けたことが良かったという意見・感想が、一般参加者・医療従事者問わず多くみられた。
体験談を聞くことで、今後の自分自身について考えたり、医療従事者としての日々のかかわりに活かそうと
其々の立場から感じられたようである。
また、体験談や各職種の話を聞き、サポート体制を知ることで「在宅でもできるんだ」という感想を
持たれた方もおられた。
これら感想より、テーマである「在宅での看取りを考える」という機会につながったのではないかと考える。
内容については、好評の意見を多くいただくことができたが、その分もっと多くの方に聞いてもらえるとよかったという
意見もあった。
また、資料を希望する声や発表の見やすさなどへの意見もあったため、今後、会を企画する際の参考にしていきたい。
おわりに
現在日本は超高齢化社会に突入し、がん、慢性疾患などに罹患した人々の自宅での生活
を地域で支援していくことが強く求められている。神奈川県は、人口 10 万人当たりの病床
数が全国レベルをはるかに下回り、急を要さない病態での長期入院は困難で、今後ますま
す自宅や施設で療養し死亡する患者が増加することが予想される。藤沢市やその周辺地域
も同様の状況である。しかし一般市民の医療・介護への依存度は依然として高いままであ
り、核家族化や老々介護などの個々の問題も重なり、在宅医療への不安や負担感が強い。
一方、在宅医療に関する情報提供や在宅システムの構築も未だ十分とは言えない。
今後、地域住民の方々が安心して在宅医療を受け、患者の希望があれば自宅での看取りも
できることを今回の研修会を通じて市民に伝えるとともに、医療者だけではなく、市民が
積極的に地域連携・在宅医療へ参加協力することの必要性をご理解いただければと願って
いる。当会としては、今後も研修会や講演会などを定期的に開催し、地域包括ケアへの参
画・協働を継続してアピールしていく予定である。
今回、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団から助成していただき、
在宅療養~看取りの実際に関する市民公開講座を開催できたことは、在宅医療を推進して
いくうえで大きな成果をもたらしたと考えている。
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「藤沢市における在宅医療を考える会」市民公開講座
公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成を受けています
『地域に生きて自宅で旅立つ
~在宅での看取りを考える~』
開催のご案内
謹啓 皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
また、平素より大変お世話になりまして誠にありがとうございます。
さて、この度「藤沢市における在宅医療を考える会」市民公開講座を開催することに
なりました。テーマは『在宅での看取り』です。
今後ますます加速化する高齢社会においては、長期の入院が難しくなります。自宅で過
ごすことに対しての不安を抱える人たちが多いことも事実です。一方、治療が終わったら
家に帰り住み慣れた自宅で最期を迎えたいと希望する人も少しずつ増えています。こうし
た状況に、患者さんご本人やご家族、医療者がどのように対応できるかということについ
て、わずかな時間ではありますが情報交換を行いたいと思います。
今回、実際にご自宅で大切なご家族をお看取りされた経験を持つご遺族の方お二人から
ご発表いただく貴重な機会をいただきました。また、これから在宅での療養をお考えの皆
様には、実際の手続きや費用などの概要についてわかりやすく解説いたします。またご自
宅での療養から看取りまでを応援するチーム(訪問診療、訪問看護、訪問薬剤師)の取り
組みをご紹介いたします。
皆様が在宅での療養生活で疑問や不明に思われる問題について少しでも解消いただくこ
とができれば幸いです。是非この機会に参加を賜りまして、今後の療養にお役立ていただ
ければと存じます。
なお、今回は会場の都合により先着 160 名とさせていただいております。
参加費は無料です。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
謹白
平成 26 年 12 月 15 日
「藤沢市における在宅医療を考える会」
問い合わせ先
医療法人社団若林会 湘南中央病院
藤沢市羽鳥 1-3-43
☎
0466-35-2800
Fax 0466-35-5769
在宅診療部 代表 奥野滋子