Fellowship

18 2015.7.30 渚の風 5号
■ NPO法人
「MAMIE」
代表
安藤美紀さん(46)
MIKI & LEON
聴覚障害者と聴導犬に理解を
「障害児の学ぶ場を」
「聴導犬を広めよう」をスローガンに活動している NPO 法人
「MAMIE(マミー)
」
(大阪市淀川区)の代表を務める安藤美紀さん(46)は、自身の
聴覚障害を克服して漫画家・イラストレーターとしても活躍。その経験を生かし、障
害児らを対象に様々な教室を開設する一方、パートナーの聴導犬レオンと共に各種団
体や自治体、学校で講演を続け、まだあまり知られていない聴覚障害者の生活や聴導
犬の周知活動にも全力で取り組んでいる。
(文 京原廣行 / 写真 陶器浩平)
Text by Hiroyuki KYOHARA / Photo by KoheiTOKI
母親手作りの
絵カードが“言動力”
「どうしても言語と向き合いたい」と
の思いから、1991(平成3)年に新聞
社へ入社し、記者が書いた原稿の校正や
生まれた時から全く耳の聞こえなかっ
記事入力を担当した。しかし、長男の出
た安藤さんに幼少期から言葉を教えよう
産後に退社。その後、再び漫画を描き始
と母親が始めたのが、手作りの絵カード
め企業・団体等の機関紙や情報誌に4コ
だったという。例えば犬の絵を色鉛筆や
マ漫画などを連載する一方、大手不動産
フェルトペンで紙に描いたうえ、
横に
「い
会社で熟練した IT 技術を駆使してホー
ぬ」と平仮名表記する手法で次々と言葉
ムページ(HP)制作などに従事した。
を覚えさせ、絵日記まで作成させた。
おかげで、2歳半からろう学校幼稚部
愛おしい・大切な人のために
に通い始めた安藤さんは、早期に言語力
「パソコンをうちの子どもにも教えて
(口話・読話)を習得したことから、5
欲しい」
。安藤さんにある日突然、寝たき
歳からは一般幼稚園に通園するようにな
りの重度身体障害児を持つ母親からメー
り、そのまま一般の小・中学校から高校
ルが届いた。これをきっかけに 2004(平
へと進学した。
成 16)年8月、任意団体「MAMIE」を
幼い頃から絵を描くのが大好きだった
設立して自宅でパソコンを使った在宅
安藤さんは、高校時代に大手出版社の新
ワークを始めた。名称を「MAMIE」と
人漫画賞を受賞したことから、プロの漫
したのは、幼少期から「ま・み・む・め・
画家を目指して郷里の鹿児島市を離れ東
も」が最も発音しやすかったうえに、古
京都内の短大美術部へ入学した。数多く
いフランス語で「愛おしい人」
「大切な人」
の作品を次々と出版社へ持ち込んだが、
を意味するからだったという。
「聴覚障害者は漫画家になれない」と言
その後、各地で障害児向けパソコン教
室を開催したほか、聴導犬の漫画本も出
われ、断念したという。
版。多様な活動がテレビで紹介されたこ
ともあって、2008(平成 20)年4月に
大阪府から NPO 法人に認定されたのを
機に、障害児向け学習塾や漫画教室、絵
画・造形教室などを運営するなど幅広い
事業を展開するようになった。障害児ら
の自立・就労を支援するとともに、企業・
レオンがメールの着信音を安藤さ
んに伝える様子を描いた漫画
コラム
団体等からのイラストや漫画、HP 制作
などの委託業務も受けている。
トレンド 介護服
「見た目も大事だよね」
。2人で思わ
ず、つぶやいていた。7月8日昼、JR
大阪駅近くのグランフロント北館4階
暮らしをイメージしたデザインもあります」
なるほど、展示されている介護服は、
おしゃれでかっこいい。
の ナ レ ッ ジ シ ア タ ー。 カ ー シ ー カ シ
「会話がはずむ制服にしたい。グリー
マ の「2015 - 16 コ レ ク シ ョ ン 展 示
ンは草原、ピンクは桜…。『きょうは草
&SHOW」が行われた会場でのことだ。
原よ』などと、職員さんと利用者さん
いっしょにつぶやいたのは、社会福
が楽しめるカラーにしています」「安ら
祉法人「八尾隣保館」の理事長、荒井
惠一さん。数日前に食事をした時に、
この日の約束をしていた。
ガイドしてくれたのは、東京支店企
画部課長の増田有美子さん。
「介護もサービス。『おもてなし服』とい
うことを言っています」「襟のついている
シャツとチノパンが基本。ホテルのような
ぎを与えるのがトレンドでしょうか…」
荒井さんが質問した。
安藤美紀さんと聴導犬レオン。耳がピンと立っている
=7月 17 日、大阪市淀川区の「M A M I E 」
聴導犬はまだ 61 頭
安藤さんが聴導犬に初めて出会ったの
は、
2004(平成 16)年3月に訪れたオー
ストラリアの聴導犬訓練所だった。多く
の聴覚障害者が牧場で聴導犬と共に元
気に働いている事実を知り、
「自分の求
めているライフスタイルを見た思いがし
た」という。
「聴導犬の普及」もスロー
ガンにしたが、当時の日本での実態を調
べたところ、
わずか 11 頭しかいなかった。
レオンは、生後3カ月だった7年前に
埼玉県内で捨てられ動物保護センターに
保護された後、日本聴導犬推進協会で
様々な訓練を受けて聴導犬認定試験に合
格した。安藤さんとは 2009(平成 21)
年 11 月から生活を共にしているが、
「聴
覚障害は周囲の人には外見から分かりに
くいうえ、レオンも盲導犬とよく間違え
られる。飲食店などでは聴導犬の認定書
を提示しても入店を断られる」。
盲導犬が全国で 1000 頭近くいるのに
対して、聴導犬はまだ 61 頭(うち大阪
で 12 頭)
。この現状に安藤さんは「欧
米に比べて普及率が極めて低い。それは
聴導犬の存在があまりに知られていない
うえ、育成する訓練士も少ないからだ」
と指摘する。昨年末から自身の体験を基
に聴覚障害者の生活や聴導犬の仕事ぶり
を描いたパラパラ漫画2作品「きこえな
いことって?」
「聴導犬って?」(計約
1000 枚)を動画化してインターネット
動画サイトで公開。各方面から反響を呼
んでいるといい、安藤さんは「今後も更
なる聴導犬普及のための周知・啓発活動
を推進したい」と話している。
タイミングは、5年です。おもてなし
の傾向や時代背景を考えてデザインし
ているので…。ただ、素材がある限り、
5年を過ぎても2年ぐらいは生産でき
る体制をとっています」
そこでまた、荒井さんがつぶやいた。
「そうか、モデルチェンジか。われわ
れの頭の中を変えなければ…」
介護現場にも、若い人や優秀な人材
がほしい。
「制服は、職業イメージを創ります。
おしゃれなユニホーム
HEARTGREEN(ハートグリーン)
(カーシーカシマのガイドブックから)
「デザインをないがしろにしていた
「ユニフォームを決める時、いつも悩
(人材確保の)ツールになります」と増
なぁ。おしゃれなユニフォームは目立
むのが、どれぐらい使えるのか、とい
田さん。体操着の延長、ジャージじゃ
つ、リクルート効果もある。機能性、
う耐久性と、メーカーさんの供給体制
なくて、ニットジャケットやカーディ
耐久性、値段については気にかけてき
の問題です」
ガン、スカーフも…白いスニーカーで
たんだが…」。介護の仕事にあこがれる
増田さんがこたえた。
「耐久性は約5年。モデルチェンジの
統一されては、とも話した。
2人で最後に、またつぶやいた。
ようなユニフォーム。審美眼を極めな
いと…。
あつくに
(平田篤州)