有機スペクトル化学

問題訂正
有機スペクトル化学
Q1: tripletとquartetは90 MHzで計算してください。
Q4: 90 MHzで計算してください。
お詫びして訂正します。
お詫びして訂正します
第7回
目的・目標
本日のスケジュール
下記のスペクトルの基礎的な解析法を理解し、身につける。
複数のスペクトルを元に、簡単な化合物の分子構造を予測できる。
理解した内容や、予測に至る過程を論理的に説明できる。
学習教育目標C-4の達成に寄与する。
赤外吸収分光法、核磁気共鳴吸収分光法
紫外可視吸収分光法、質量分析法
本日のあなたの達成目標
・ IR, 1H-NMRの組み合わせから、分子構造を推定できる。
・ 化学的等価性を調べることができる。
・ カップリング・ツリーを描くことができる。
J = (A-B)×C
A (ppm)
例えば、
300 MHzの装置で測定
2重線の位置
1 225 ppm
1.225
ppm, 1
1.245
245 ppm
B (ppm)
装置の分解能 C (MHz)
3) ワークシート記入 15:45頃~
4) 次回の予告
演習内容
○ 考え方の同じところ、違うところをノート
○ それを元に、スペクトル解析のポイントを論述
○ それを元に、課題と対策を洗い出し
○ 答えが合っているかどうかではなく、
考え方が合っているかどうか
Q1 結合定数(J値)の計算法 90 MHzです
Q1 結合定数(J値)の計算法
J
1) 本日の到達目標・本日のスケジュール
2) 演習/解説/スコアカード記入
Q2:
(余裕ある人は残りの問題に挑戦)
Q3:
J = (A – B)×C
= (1.245 – 1.225)×300
= 6 Hz
2重線全体の化学シフトは
重心の位置で表わされる
J
J
J
1.756 1.675 1.592
このシグナルの化学シフト
は1.68 ppm、J = 7.2 Hz
3 552
3.552
3.472
J
J
3 312
3.389 3.312
3.4305
このシグナルの化学シフトは
3.43 ppm 、J = 7.4 Hz
化学シフトは小数点以下2桁、J値は小数点以下0~1桁で表わすことが多い。
化学シフトはシグナルの重心。単位のppmやHzを忘れずに。
上のような単純なシグナルなら、各線の間隔(J値)は同じになるはずなので、微
妙な違いは誤差と見て、平均をとってよい。しかし、もちろん、2つの異なるJ値が
組み合わさっているはずのダブルダブレットでは、全部を平均してはいけない。
1
Q2 (1)
Q2 (2)
ニトロ基があること
に気付こう。
もちろんC-H結合も
あるね。
CH3CH2CH2NO2
3位
3位
2位
液膜法
IRスペクトルは、測
定法によって少し
スペクトルが異なっ
て見える事が多い。
どこが共通で、どこ
が違った感じなの
か、一度比べてほ
しい。ラマンスペク
トルも参考まで。
CCl4溶液
4000
3000
2000
1500
1000
500
1位
Hz ppm 強度
397.63 4.440 361
390.75 4.363 742
383.88 4.287 415
このシグナルは 4.36 ppm, 2H, t, J = 6.9 Hz
強力な電子求引基であるニトロ基の隣だから、最も低磁
場にある。隣が水素2個だから、t になっている。
(積分比は、「こうなっているはず」の分子構造から)
(おまけ)ラマンスペクトル
4000
3000
2000
1500
1000
500
Q2 (2)
3位
Hz ppm 強度
99.13 1.107 509
92.06 1.028 1000
84.38 0.943 368
このシグナルは 1.03 ppm, 3H, m, J = 7.4 Hz
隣が水素2個だから、t になっている。ニトロ基から最も
離れているので、最も高磁場にある。
Q3 (1) - a), (2) - d)
CH3CH2CH2NO2
3位
1位
2位 1位
1位
3位
2位 1位
2位
2位
Hz ppm 強度
201.19 2.247 23
193.81 2.165 109
186.81 2.086 209
179.50 2.005 230
172.50 1.927 144
165.19 1.845 37
(例) Ha
C
C
6重線なのは、隣の水素数が計5個だから。
(J値は各間隔7.38, 7.00, 7.31, 7.00, 7.31 Hzの平均)
カップリングの仕方が単純なら、1位のJ値は2位のJ値と一致するはず。 2位のJ
値は3位のJ値と一致するはず。そのときは、平均してしまってよい。
Haの影響
で分裂
Ha
Hb
J
J
C
Hb
C
Hb
Hbの影響
Hbの影響
で分裂
Ha で分裂 Hb
Haの影響
で分裂
2H分の強度
J (積分値)
J J
δa
δb
δa
δb
Q3 (1) - b)
参考:分裂線の強度比
(例) Ha
パスカルの三角形
1
singlet
1 : 1
doublet
triplet
1 : 3 : 3 : 1
quartet
1 : 4 : 6 : 4 : 1
quintet
1 : 5 : 10 : 10 : 5 : 1
sextet
1 : 6 : 15 : 20 : 15 : 6 : 1
J
J
もし、微妙に違っているなら(磁気的非等価などにより)、よーく見ると複雑に分裂
しているはずだし、そうであるならむやみに平均してはいけない。
1 : 2 : 1
Ha
J
Hbの影響
で分裂
このシグナルは 2.05 ppm, 2H, m, J = 7.2 Hz
(1) - a),
(2) - d)
Hb
J
C
Hbの影響
で分裂
J
Hb
C
Haの影響
で分裂
Ha
Hb
J
J
δa
δb
(1) - b)
Ha
Hb
C
C
いずれも singlet
Hb
Ha
heptet
δa
δb
2
Q3 (1) - c), (2) - a)
Q3 (1) - d)
(1) - c),
(2) - a)
Ha
C
J1
Ha
Hb
J
Hb
Hc
J
C
Ha
J=J
C
C
Haの影響 Hcの影響
で分裂 Hb で分裂
J3
J2 Hc
Hbの影響
Ha
で分裂
J1 = J3 ≠ 0 Hz, J2 = 0 Hz
(HaとHcは非等価)
Hc
J
J
J J
δa
δb
J1
Hb
J2
C
Hc
C
Haの影響 Hcの影響
で分裂 Hb で分裂
Hbの影響
で分裂
Hbの影響
Ha
で分裂
J
J1
δc
δa
Hc
J1
Hbの影響
で分裂
J2
J2 J2
δb
δc
ダブルダブレットの重心
Q5 (2) – b), c)
J
(2) – b) Ha
Q5 (1) - a), (2) - d)
(2) – c)
Hb
Ha
J1
J
J
Hb
J3
J2 Hc
Hc
Hb
Hc
Ha
Hb
Hc
J
J
J
J1
J1
J2
J J
J J
J J
J2 J2
J3 J3
J3 J3
δa
δb
δc
δa
δb
δc
Q4 90 MHzです
H
H
H
Hb
Hbの影響
Hbの影響
で分裂
Ha で分裂 Hb
Haの影響
で分裂
J
J1 = J2 ≠ 0 Hz, J3 = 0 Hz
(HbとHcは等価)
J
J J
δa
H
H
p-methylstyrene
2H分の強度
(積分値)
δb
p-methylstyrene
H
H
H
H3 C
H
H
J2=17.6 Hz
J3 =1.1 Hz
6.650 ppm
Hb
J2 Hc
J3
J2=17.6 Hz
J1 =10.8 Hz
C
J
J3
Hb
Q4
H
H
J2 H
H
H
H3 C
J1
J
C
J1
Ha
Ha
H
Ha
(1) - a),
(2) - d)
5.673 ppm
H
2.302 ppm
H
H
H
H
J1 =10.8 Hz
J3 =1.1 Hz
5.153 ppm
CH3
AB qualtet →
p-ジ置換ベンゼンの特徴
H
J ≒ 8 Hz
(詳細にはかなり複雑
に分裂している。次回
講義予定)
7.26 ppm, 7.10 ppm
ダブルダブレット( dd ) → 二重結合の存在などを推測できる材料
3
Q5 (1)
Q5 (2)
1H-NMR
CHOで
矛盾なし
(CDCl3, 90MHz)
δ 9.86
CHO
1
3
C=O
4
IRから
CHO
Chemical shift (ppm)
CH3O
ベンゼン環か
Q5 (3)
CHOで
矛盾なし
Q5 (4)
δ 9.86
δ 9.86
1
3
CH3O
IRから
CHO
Chemical shift (ppm)
Chemical shift (ppm)
フォルミル基(-CHO)、カルボキシ基(-COOH)のプロトンは
かなり低磁場に出る。ただし、環境によって化学シフトが変化
することがある。シグナルの形が極めて幅広く、シグナル強度
が弱くなって見分けづらいこともしばしばある。(場合によって
は、アルコール性OHやNHがこのような低磁場領域に現れる
こともある)
Q5 (5)
アルキル基のC-Hであろう。Singletで、しかも積分比3であること
から、他のプロトンから離れた位置(スピン−スピン結合しない位
置)にある-CH3かもしれない。3.9 ppmはアルキル基のC-Hとし
ては低磁場なので、隣に電子吸引性の原子(酸素など)または
官能基(カルボニル基など)がある-CH3かもしれない。
Q6
a) 3.97 ppm, J = 7.2 Hz, OCH2CH3
δ 9.86
CHO
O
Chemical shift (ppm)
CHO
CHO
b) 1.37 ppm, J = 7.2 Hz, OCH2CH3
c) 1.21 ppm, J = 7.2 Hz, CH(CH3)3
OH
OH
分子式からCHOと芳香環を除き、さらに p-ジ置換であ
ると考えると、上の3つの可能性がある。
しかし、IRにOHの吸収はないし、
NMRには芳香環とCHOの他にCH2とOHもシグナルを与
えるはずだから、シグナル数が合わない。
よって、p-methoxybenzaldehydeが答え。
OCH2CH3のCH2とCH3はつながっているので、
互いに同じ相互作用を及ぼし合っているはずで
ある。したがって、a)とb)のJ値は必ず等しくなる。
4
Q7
Q8 おまけ
「①脳死を採用すると、非常に奇妙なことを認めなければならないことになる。②
今の今まで、医者は、相手を患者さんと呼び、その生命を守るために最善を尽くし、
その手段の一つとして「生命維持」装置も使ってきたのである。③ところが(しかし、
だが)、その同じ医者が脳死を認めた瞬間から(外見上は「患者」に何ら変化がな
いにもかかわらず)、その「患者」はもはや「患者」ではなく「死体」であり、その「死
体」につけられているのは「生命維持」装置ではなく「臓器維持」装置になる。臓器
を「新鮮かつ健康に」保存するための、言わば冷蔵庫のような装置になるのである。
④これは周囲の家族や関係者ばかりでなく 当の医者にとってさえ いささか分か
④これは周囲の家族や関係者ばかりでなく、当の医者にとってさえ、いささか分か
りにくい事態ではあるまいか」。(村上陽一朗「脳死を考える」)
(1)
患者は
患者
脳死
(3) 「起承転結」
死体
次の文章には文法的な間違いがある。適切に修正し、その理由
を簡潔に説明せよ。
a) 「母は父への気配りや、私たち子供のことも常に思ってくれて
います」。
b) 「私が一生懸命教えた結果、「わかった」と言って笑顔を見せ
てくれたり 成績が上が たりすると 本当にやりがいのある
てくれたり、成績が上がったりすると、本当にやりがいのある
仕事です」。
c) 「世の中でよく言われる職場の風通しは、情報の共有化をス
ムーズにする方法や提案のしやすさなど、制度面を改善する
方法が多く検討されている」。
「生命維持」装置
脳死
「死体」につけられているのは
「臓器維持」装置
Q8 a) おまけ
「母は父への気配りや、私たち子供のことも常に思ってくれていま
す」。
これでは「気配りを思っている」ことになって、主部と述部が対応し
ていない。そこで、たとえば、
「母は父への気配りを忘れず、そのうえ私たち子供のことも常に
思 てくれています」 や、
思ってくれています」
や
「母は父への気配りを欠かさない上に、私たち子供のことも常に
思ってくれています」 などと直すとよい。
Q8 C) おまけ
「世の中でよく言われる職場の風通しは、情報の共有化をスムーズ
にする方法や提案のしやすさなど、制度面を改善する方法が多く検
討されている」。
主語が「風通し」なのか、「方法」なのか不明確だ。前者では「風通
しは検討されている」となって、主部と述部が対応しない。後者では
「世の中~風通しは」がつながるべき部分が見当たらず、冒頭部分
が宙に浮いてしま ている この文章は 複数の意味を無理に
が宙に浮いてしまっている。この文章は、複数の意味を無理に一つ
の長い文に押し込んでいるところに問題があるのだ。書いている本
人だけは意味がわかっている(読む人には伝わらない)という好例(
悪例)。そこで、たとえば、
「世の中では、職場の風通しがしばしば問題にされる。風通しを良く
するために、制度を改善することも多い。たとえば、情報の共有を
容易にしたり、アイディアを提案しやすくする方法などが検討されて
いる」と直すとよい。
Q8 b) おまけ
「私が一生懸命教えた結果、「わかった」と言って笑顔を見せてくれたり、成績が上
がったりすると、本当にやりがいのある仕事です」。
主部と述部のミスマッチがある。「やりがいのある仕事です」を述部にするなら、 主
部は「私の仕事は」とすべきだ。「成績が上がると」に続けたいなら、「やりがいのあ
る仕事に感じる」とすべきだ。文が長くてわかりにくくなっているので、短く簡潔な文
に分割するのもよい。この文章は、2つの文章を共通部分(「『わかった』~上がった
りすると」)で無理につなげているところに問題があるのだ(書いているうちに つな
りすると」)で無理につなげているところに問題があるのだ(書いているうちに、つな
がりを忘れてしまったか、推敲しなかったのだろう)。
したがって、解答例は、
「私が一生懸命教えた結果、「わかった」と言って笑顔を見せてくれたり、成績が上
がったりすると、本当にやりがいのある仕事に感じます(やりがいを感じます)」。
「私の仕事は、本当にやりがいのある仕事です。なぜなら、私が一生懸命教えると、
子供たちが「わかった!」と言って笑顔を見せてくれたり、彼らの成績が上がること
があるからです」。
次回の予告
次回の達成目標
・ 色々な分子のスピン-スピン結合を理解し、説明できる。
・ 溶媒、平衡、酸性度の影響を理解し、説明できる。
本日のあなたの達成目標
・ IR, 1H-NMRの組み合わせから、分子構造を推定できる。
・ 化学的等価性を調べることができる。
・ カップリング・ツリーを描くことができる。
5