緑内障とはどんな病気? もうまく カメラのフィルムにあたる網膜には、脳へ映像を送 し しんけい る視神経が一面にはりめぐらされています。緑内障は がんあつ 視神経のはたらきが眼圧や眼血流の低下などで障害さ し や れ、視野(見える範囲)が徐々に欠けていく病気です。 初期の段階では、視野の一部に見えない所が出てきて も、 2 つの眼でお互いの視野をカバーしてしまうため、 自覚症状はほとんどありません。 初期には、両眼で見ると正常に見えるため 多くの人は障害に気がつきません。 1 緑内障は、中途失明原因※のなかで最も多い疾患で す。一度失った視野を取り戻すことは難しく、何より も早期発見、早期治療が非常に重要です。 その他 強度近視 2.5% 脳卒中 2.8% 緑内障 21.0% 角膜疾患 3.5% 白内障 4.8% 視覚障害の 原因(日本) 視神経萎縮 5.4% 糖尿病網膜症 15.6% 脈絡網膜萎縮 8.4% 黄斑変性 9.5% 網膜色素変性症 12.0% ※身体障害者手帳申請時の調査による 若生里奈他:日眼会誌118:495-501, 2014より作成 2 C O L U M N 眼圧のおはなし 眼圧とは目の中の圧力のことを言います。目の中で一定量の 水(房水)が作られ、それと同じ量が目から流れ出て行くこと で、眼圧は一定に保たれています。 房水は毛様体というところでつくられ、眼球の外に排出され ます。房水の生産量と排出量がバランスよくつりあっていれば 眼圧は一定に保たれますが、房水が過剰につくられたり、排出 経路が閉ざされると、房水がたまってしまい、眼圧が高くなり ます。 ぼ う す い も う よ う た い 水晶体 角膜 房水の流れ 硝子体 視神経 乳頭 毛様体 視神経 3 日本人に多い緑内障のタイプ ∼正常眼圧緑内障( (NTG NTG) )∼ 緑内障になる主な原因は眼圧が正常範囲より高くな り、視神経が障害されるためといわれています。しか し、近年の疫学調査で眼圧が正常範囲にあるにもかかわ らず、視神経の障害や視野欠損がおこる正常眼圧緑内 障(NTG:Normal Tension Glaucoma)が日本 人に 最も多い緑内障のタイプであることが分かっています。 C O L U M N 40歳以上の20人に1人が緑内障・・・ 岐阜県多治見市で40歳以 上の住民を対象に行われた 大規模な緑内障疫学調査 「多治見スタディ」の結果、 約20人に 1 人が緑内障で、 緑内障のいくつかのタイプ の うち「 正 常 眼 圧 緑 内 障 (NTG) 」の割合が最も高い ことが明らかになりました。 また、NTGの大部分の人たちは調査を受けるまで緑内障に 気付いていない潜在患者でした。 この調査から、緑内障は決して珍しくなく、自分自身では気付 きにくい病気であることが分かります。40歳を過ぎたら、眼 科で緑内障の定期検査を受けることが大切になってきます。 4 NTGの病態 し しんけい 視神経が全部寄り集まって束になるところを視神経 にゅうとう 乳頭といいます。NTGでも、他の緑内障と同じく「眼圧」 により視神経乳頭が圧迫されることで視神経が障害 され、視野が欠損していきます。 視神経乳頭の構造の強さには個人差があり、 “正常”な 眼圧でも、その人にとっては視神経乳頭を圧迫する高さに なることがあります。つまり、眼圧と視神経乳頭の強さの バランスが崩れることで、視神経の障害が進んでいきます。 正常眼圧 正常眼圧 視神経の障害が 起こる 正常視神経乳頭 緑内障性視神経乳頭 5 弱い 強い 視神経乳頭の構造の強弱 NTGの検査と治療 ∼早期発見と適切な治療について∼ NTGは、眼圧が正常範囲内にあるため、眼圧検 査だけでは発見することができません。したがっ て、視神経乳頭の状態を観察する眼底検査、視野の状 態を観察する視野検査を行うことが重要です。特に、 眼底検査は視神経乳頭 の異常が視野の異常よ りも先に現れることか ら、NTGの 早 期 発 見 に大切な検査です。 ●正常な眼底写真● ●NTGの眼底写真● 【解説】 視神経乳頭(中央右寄りの丸い部分)は 正常です。 【解説】 視神経乳頭が圧迫され、中央の白っぽ い部分(陥凹)が広がっています。 6 C O L U M N 最近の検査機器:OCT 光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography) では、視神経乳頭や網膜の様子を詳しく調べます。視野検査で 異常が出る前に視神経の異常を発見することができます。 眼底のようす 実際の検査画像 正 常 うすい 緑 内 障 あつい うすい あつい 緑内障では、グレーの部分(視神経乳頭)の中の赤い線で示した部分(視神経 乳頭陥凹)が広がり、視神経乳頭に集まる視神経の層がうすくなっています。 7 緑内障の治療は眼圧を下げる点眼薬による治療 が中心に行われます。 眼圧が正常な緑内障の患者さんを対象にした試験か らも、視野障害の進行を抑制するためには、眼圧をよ り低くすることが有効であることがわかりました。病 気の進行を遅らせるためにも、主治医の指導のもと、 根気良く治療を続けることが大切です。 眼圧下降治療をした患者さんでは、 視野障害の進行が抑制されます。 8
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