愛 媛 大 学 農 学 部 農場 報 告 (Bu1l Exp, Farm Fac, Agr , Ehime Univ)25:17-24(2003) 水耕 メ ロ ンの簡易栽培装置 大 久保 直 樹 ・三 好 譲 Development of a Silnple Hydroponic Device for 単 Ielon (Cど cど盟お r2eFo L.) Naok1 0HKUBO and Yuzuru MIYOSHI Summary A simplc less expensive hydroponic dcavice for melon vas 、 developed. The bed area was O.45m× 7.2 m and the nutrient fllm technique was employed. The plant space was 40cm. The promising cuitivars for this system seemed to be rlchibakoujl' strains t Pansoll emulsion vas 、 used for sanitation of beds. Ohtsuka No.l and No.2 were mixed at the rate of 3 :2 as nutrient solution. The maximum temperature in the house was maintained at 30℃ and the minimum temperature 16℃ , The EC and pH of the nut rient solutionvere 、 kept at l.0-2.O m/s and 5.5-6.5, respectively. For pollination, bees 、 vere released inside the house. The careful pest management was conducted throughout the culture The fruit vere 、 harvested 59 days after pollination. 緒 ロ ガラス温室 な どの施設 の建設 には莫大 な費用 がかか る。それ を回収す るためには施設 の生 産性 を高 め る必 要 があ る。そ の方法 と しては利用率 を高めた り、 よ り収益性 の高 い作物 を導 入す るこ とな どが 考 え られ る。 この ようなことか ら、現在 わが 国 の温室 メ ロンにお い ては栽培期 間が短 く、周年栽培 が 67)。 可能であ るア ー ルス系統 の栽培 が主流 をな して きた しか し、そのほ とん どが土 耕栽培 である。 メ ロ ンは他 の作物 と比 べ て水耕栽培が非常 に難 しく、水耕で栽 培 されて い るのは全 体 の 1%程 度 に過 ぎな い。当農場 にお い て も、ア ー ルス系統 の 地床 栽培 、金網 ベ ッ ト栽培 お よび水耕栽培 を行 って きた。 水耕栽培 にお い ては、1果 重1.5∼1.7kgの果実 をつ くる ことと良品率 90%以 上 を目指 して栽培 に取 り 組 んで きた。 当初、 い ろい ろな点 で不明確 な ところが 多 か った水耕栽培 ではあるが 、 ここ に きて よ う や く安定 した栽培がで きる よ うになって きた。 そ こで 今回、当農場 における水耕 メ ロ ンの 簡易栽培装 置 につい て と りまとめてみた。 なお 、本栽培 は 当農場 の ミス ト温室 (81 nf)で行 った。 また栽培方式 と して、 シー トカ ルチ ャー (NFT;Nutrient Fllm Technique)1)を 用 い た。 - 1 7 - 材 料 お よび 方 法 1.品 種 の選択 3415)の 春作 における メロ ンの水耕栽培 にお いては、アー ルスナイ ト春 ・秋系 (サカタ交配) 前 3報 を主流 に栽培 を行 って きた。 しか し、最近栽培 を行 って い る市場小路 と市場小 路 レッ ドの ほ うが 栽培 しゃす く、 また、糖度 も上が りやす いわで有望 と思われ る。 2.播 種 (1)催 芽 ー シャー レにバ ー ミキ ュ ライ トを入れ、水 を加 えて十分吸水 させ てお く。 バ ミキ ユ ライ トは粒子 が ー 粗 い と水持 ちが悪 いので 、透 して細 か い もの を使用す る。 シヤ レ 1皿 に種子 1袋 (100粒程度)を ベ ー タは30℃に設定 し、 シヤー レの 入れ るが 、そ の とき種子 同士があ た らない よ うにす る。 イ ンキュ ー ー ー せ 上下 を濡 れ布 巾で 覆 う。 また、 イ ンキ ュベ タ内 には水 を入れ た ビ カ を置 き、室内 を乾燥 さ な い よ うに注意す る。 (2)播 種 育苗箱 に100 24時 間 イ ンキ ュベ ー タの中に入れ る と根 が l cm程度伸 びるので、それ を510×360111mの る い い 粒程度 (10粒×10列)ず つ播種す る。ピンセ ッ トで種子 の根 を下 に向け、て ね に播種 し覆土す 。 した。播種後 育苗箱 の土 はク レハ 園芸培 上 を使用 す る。 なお、 これ に含 まれ る肥 料含量 を第 1表 に示 十分 に濯水 し、そ の上 に濡 れ新聞紙 を置 いて乾 きを抑 制す る。発 芽す れば新聞紙 を除去す る。 第 1表 ク レハ 園芸培± l k9当た りの肥料含量 (9) 肥料成分 看言 含 素 窒 0.4 ん酸 り 1.9 0.6 苦 里 加 土 0.2 3=簡 易栽培装置 メ ロ ンの簡易 戻 り水手前 に付 いているパ ル ブは、送 る液肥量 の調節 のため取 り付 け た。 なお、水耕 栽培装置 を第 1図 に示 した。 4.材 料 費 す ー 携 帯用 pH/EC/温 度計 は、1本 のセ ンサ で pH、 導電率 (EC)お よび温度 を測定す る こ とが で きる。 なお、 主 な材料 費 を第 2表 に示 した。 第 2表 主 な材料費 品 名 pH/EC/温 度計 ミニ ポ ンプ 格 規 シヨナル) PX 62A(ナ ロー リー タ ンク 300L コンパ ネ 182× 角材 3× 52,500 帯用 携 額 (円) 金 17,850 22,000 91cm 6 ×4 0 0 c m -18- 900 350 ハ │ │ 45cm l ↓ m 図 c O 面 2 7 側 6cm o 側面拡 大 図 第 1 図 栽 培 装置 の概 要 - 1 9 - m c 3◇ 平面図 5口 移植 ・定植 の準備 (1)温 宣消毒 前 回栽培 した時 の メロンの花弁がた くさん落 ちて い るため 、そ の ままで栽 者 を行 う と病気や害虫が 発生 しやす い。そ れ を防 ぐため温室内の薬剤消毒 を行 う。最初 にガラス温 室 を密 閉 し、通常使用す る 濃度 の 3倍 程度 の 殺虫殺菌剤 を、地 表 の花弁が飛 び散 らない よ うに温室全体 にて い ね い に散布す る。 そ の後、24時間以 上 密 閉 してお い てか ら換気す る。後 で薬害が出ない よ う、温室内 の換気 には十分注 意す る。 なお、播種 の 1週 間前 までには消毒 を済 ませ てお く。 (2)栽 培床 の洗浄 栽培床 と養液槽 ( 3 0 0 リッ トル) の 洗浄 には、 パ ンソ イル乳剤 を使用 す る。育苗床 と養液槽 に水 を 十分溜め、それに1 0 p p m の濃度 のパ ンソイ ル乳剤 を加 え、 3 日 間循環 してお く。そ の後 、菜液 を抜 き 育苗床 と養液槽 を水 で きれ い に洗浄す る。 ( 3 ) 液 肥 の作成 液肥 の作成 には大塚 ハ ウス 1号 と2号 を使用 し、使用害J合は 3:2と した。なお、それ らに含 まれ る肥料成分 を第 3表 に示 した。水各50リッ トルに対 して 1号 を 9 kg、 2号 を6k9、 それに殺菌剤 とし てパ ンソイル乳剤 を各 l mι ずつ加え、 よ く槍拌す る。液肥 の色は 1号 が黄色、 2号 は透明 になる。 第 3表 大 塚 ハ ウス 1号 と 2号 の肥料成分 (%) 肥料の名称 大塚 ハ ウス 1号 大塚 ハ ウス 2号 肥料の種類 配合肥料 硝酸石灰 窒素全量 10,0 内ア ンモ ニ ア性窒素 1 . 5 硫酸性窒素 8 . 2 水溶性 りん酸 8 . 0 水溶1生加里 11,0 27.0 水溶性苦土 4 . 0 水溶性 マ ンガ ン 0 . 1 水溶性 ほ う素 0 . 1 6 口 環境 設定 ( 1 ) 温 度管理 温室 内 の 温度 は神谷 の報告 6)を 参考 に し、最 高温度 を3 0 ℃、最低温度 を1 6 ℃に設定 した。 なお、 温度 の設定 の推移 を第 2 図 に示 した。 また、暖房 には温湯 ボイラー を使用 す る。 ( 2 ) 養 液温 水耕 メ ロ ンを栽培す る上では 、養液 の 温度 も重 要 である。 もし、養液温が低 い とメ ロンの生 育 自体 に支障 を きたす こ とになる。 3 月 中旬 頃 の水温 は1 3 ℃程度 しかな いの で 、それ を2 0 ∼2 2 ℃ ぐらい まで 上げる必要がある。今 回 は栽培床、養液槽 とも温 室内 にあるため 、 ヒー ター を使用 しなか った。 7 日 養液管理 養液槽 に必要 に応 じて水 を加 え、 まず 、大塚 ハ ウス 1 号 と 2 号 を均等 に入れて い きE C 濃 度 の調整 -20- ( ℃) 35 30 四興 25 20 ③ ← ③← ②← ⑥← の日 ③← ②← ①← 15 10 2/5 2/28 3/23 4/16 5/9 6/1 6/24 月/日 第 2図 温 度の設定の推移 ※① ∼③ はそれぞれ①播種、②移植、③定植、④摘志、⑤開花、 ⑥摘果、⑦ ネット始、①ネ ット終、③収穫の時期を示す を行 う。それか ら、p H 調 整剤 を使 って p H の 調整 を行 う。 (1)EC濃 度 E C 濃 度 は前 2 報 4 1 5 ) の調査結果 を参考 に し、1 . 0 ∼2 . O m / s の 範 囲 に調整 した。 なお 、 E C 濃 度 の調整 の推 移 を第 3 図 に示 した。 (2)pH p H は 5 . 5 ∼6 . 5 の間 に設 定 した。 生 育 が順 調 な ら生 育初期 は p H が 次 第 に低下 して い く。呆実 の肥 大 が は じまる と安 定 し、最後 には逆 に上 昇す る よ うになる。 なお、p H の 調整 には養液栽培用 p H 調 整剤 ア ップ ( 大塚化学株式会社) と ダウ ンを用 い た ( 3 ) 殺 菌剤 根 の病気防止 のため殺菌剤 を使用 した。 4 p p m の濃度 のパ ンソ イル乳剤 を、1 週 間に 1 度 ず つ 養液 に加 えた。 8 口 移植 ・定植 (1)移 植 苗 は 白い 発砲 スチ ロー ル に移植す るが 、発砲 スチ ロー ル に太陽 光線が反射 して苗が 日焼 け をお こす ので 、発砲 スチ ロー ルの上面 に濡 れ新 聞紙 を敦 い てか ら移 植 を行 う。 (2)定 植 温室内 の 温度があ ま り上が らない午前 中に定植 を行 う。定植 間隔 は4 0 c m とした。 また、定植 直後 は 述光 カー テ ンを し、植 え痛 みの緩和 に務 めた。 -21- (m/s) 2_5 5 巴襲 0 回 0.5 2/24 3/18 ② ↓ ↓ 5/1 4/9 ③← ② ← ① ← ③④⑤ ⑥ ↓ ↓ ↓ 5/23 6/14 月/日 第 3図 EC濃 度の調整の推移 ※① ∼⑥ はそれぞれ①移植、②定植、③摘芯、④開花、⑤摘果、 ⑥ ネット始、②ネ ット終、⑥収穫の時期 を示す 9.管 理 ( 1 ) 栽 培 管理 3 ) の メ ロ ンの栽培管 理 を第 4 表 に示 した。 なお、果実 の収穫 は交配後5 9 日目に行 った。 前報 第 4表 メ ロンの栽培管 理 水耕/ナ イ ト 栽培/品 種 】 2月18日 播 種 移 植 3 月1 日 定 植 3 月1 0 日 摘 志 4月 7日 開 花 4 月1 1 日 摘 呆 4 月1 8 日 ネ ッ ト始 4 月2 6 日 ネ ッ ト終 5 月5 日 収 6 月9 日 穫 - 2 2 - (2' 病虫害 うどんこ病や立枯れ病な どの病気、オ ンシツ コナジラ ミ、 アブラムシ、 アォム シな どの害虫 の発生 に注意 した。なお、摘呆か らネ ット終 わ りまでの 間 は某害が出 るので 、薬剤散布 を行 わ な い よ うにす る。 (3)支 柱 メ ロ ンを誘 引す るために、以前 は ビニ ー ル ひ もに誘引 して い たが 、風 や薬剤 散布等 で葉が折 れてい た。 しか し、支柱 を利用す るこ とに よってメ ロン全体 が しっか りと固定 され 、あ ま り揺れな くな り葉 の折 れ も少 な くなった。 また 、芽か きや玉 吊 りな どの管理 も容 易 になった 。 (4)支 配 メ ロンの交配は蜜蜂 によって行 う。蜜蜂が交配時期 に活 に活動 で きるよ う開花 の 3日 ぐらい前か 発 ら蜜蜂 を入れてお き、 ガラス温室に慣 らしてお く。蜜蜂は着果に必要な部分 の交配がすべ て わるよ 終 う、1週 間 ぐらい入れてお く。その後温室か ら出 して、薬剤散布 を行 う。 考 零 メロンの水耕栽培 を行 うには、装置 等 かな りの コス トがかかる。そ こで 、今 回簡易 の水耕栽培方法 を まとめてみた。水耕栽 培 は 、土 耕栽培 よ りも生育異 常 に早期 に対処で きる とい う利点があ る 。それ は 、土耕栽培 では根 の発育状況 を見 るこ とはで きず 、 メロンの生 育状況 は茎 の 大 きさや葉 の色 や大 き さ等 、地上の部分 で しか判断で きない。 しか し、水耕栽培 においては根 の色や伸 び具合や根毛あ量が 一 目で分か り、メロンの生 育状況 を地上の部分 と地下 の部分 の両方か ら見る ことがで きるからである。 現在、当農場では秋作 で もメロ ンの水耕栽培 を行 ってい るが 、今後は秋作 にお けるメロ ンの水耕栽 培 の各種 の調査にも取 り組み、その報告 も行 ってい きたい。 また、 メロンの生育 を促進 した り、逆 に 徒長 ・過繁茂 を抑制 した りと、メロンの生育 を思 い どお りにコ ン トロールで きるよう、液体微量要 素 複合肥料 も取 り入れていこ うと思 っている。そ して、それ らが水耕 メロンの生育 に及ぼす影響 を調査 するとともに、糖度 を高めるための栽培方法 を検討する必 要がある。 最後 に、 メロンは播種か ら収穫 までに 4ヶ 月間を要するため、土耕栽培 では年 3回 の周年栽培 しか 行えない。 しか し、水耕栽培では移植等 を行 えば、年 4回 の周年栽培が可 能 ではないかと えられる 考 5)。 す F笥 要 水耕 メロ ンの 簡易栽 培法 を開発 した。 ベ ッ トの 大 きさはo . 4 5 m × 7 . 2 m で N F T 法 は市場小路 系が有望 である。催芽 は3 0 ℃で行 い 、播種 にはクレハ 園芸培土 を用 い た を用 い た。 品種 。育苗床 の洗浄 に はパ ンソ イ ル乳剤 を使 った。液肥 の作成 には大 塚 ハ ウス 1 号 と 2 号 を使用 し 、使用害」 合は 3 ! 2 と し た。 温室 内 の 温度 は最 高 を3 0 ℃、最 低 を1 6 ℃と した。養 液 は E C 濃 度 を1 . o ∼2 . O m / s 、 pHを 5.5∼ 6 . 5 の間 に調整 した。定植 間隔 は4 0 c m で行 った。病害虫 の発生 に 意 し、交 配 には 注 蜜蜂 を用 い た。呆 実 の収穫 は交配後5 9 日目に行 った。 - 2 3 - 参 考 文 献 1 章 ∼第 ( 1 1 板木利隆 . 1 9 8 3 . 施 設 園芸 装 置 と栽培技 術 第 4 編 養 液栽者 の装置 と利用技 術 第 1 0 章. p p . 3 8 6 4 7 6 . ( 2 ) 大 久保直樹 ・三好譲 . 2 0 0 0 . 春 作水耕 メ ロ ンの栽培 マニ ュアル栽培方法 . 愛 拡大学農学 部 附属農 場報告 2 2 : 1 9 2 5 . ・ ( 3 1 大久保 直樹 ・大杉佳世 ・村 上汎司 ・三島博 美 秋好広 明. 1 9 9 8 . 栽 培方法 ( 土耕 、水耕) と 品種 の違 い が メ ロンの生 育 、品質 に及ぼす影響 . 愛 媛大学農学部 附属農場報告 1 9 : 2 9 3 8 . ・ 。 メ ロ ンの水耕栽培 ( 4 ) 大 久保直樹 ・大杉佳 世 ・村 上汎司 三 島博 美 秋好広明 , 1 9 9 7 . 春 作 における ( その 2 ) . 愛 城 大学農学部 附属農場報告 1 8 : 3 9 4 6 . ・ ・ メロ ンの養液栽培 . 愛 媛大学 ( 5 ) 大 久保直樹 ・村 上汎司 吉井宗利 秋好広 明 . 1 9 9 6 . 春 作 における 農学部 附属農場報告 1 7 : 4 7 5 2 . ー ルスメ ロ ンの 地床 栽培 . 脩 ) 東海種苗園. 一 ( 6 ) 神 谷国 . 1 9 8 4 . ア ( 7 ) 鈴 木芳夫 . 1 9 9 3 . 野 菜 の基礎 知識 I 果 菜 7 メ ロン. p p . 1 0 3 1 1 2 . - 2 4 - 、
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