[第3回]鎮痛解熱薬

こどもの薬【第 3 回】
鎮痛解熱薬
鎮痛ならびに発熱の治療の目的
目的は患児の QOL(Quality Of Life:生活の質)の改善です。言い換えると、
“苦
痛の改善(軽減)”と言うこともできるでしょう。
「鎮痛」は 50%以上の痛みの軽減を、
「解熱」は不快感の軽減を目標とします。こ
こでは、解熱効果を中心として説明します。
なぜ発熱するの?熱は下げた方がいいの?
ヒトは感染症にかかるとなぜ発熱するのでしょうか?細菌やウイルスといった感
染症の病原体は一般に平熱を好み、高温を嫌います。発熱は、病原体の活動を抑制し
感染したヒトの免疫機能・白血球の殺菌能力を高めることで、からだ本来の抵抗力を
高め、原因物質(病原体)の力を弱めるといったからだの防御反応であり、正常な反
応です。安易に解熱剤を使用することにより正常な防御反応が機能しなくなり、症状
が遷延したり、より重症化したりするという報告も多くあります。
しかし、発熱により不快感・食欲不振・睡眠不足などを訴えることはよくあります。
また、基礎代謝が亢進することによって心臓・血管系の負担が増強し、体力が消耗す
ることも多いです。この様な時に鎮痛解熱薬を使用することで、訴えを軽減し体力の
消耗を抑えることは可能です。
どういうときに鎮痛解熱薬を使ったらいいの?
実際には、どのような時に鎮痛解熱薬を使ったらよいのでしょうか?わかりやすく
言うと、熱が原因と思われる生活での不自由さが強く、それらを軽減したい時
に使えばよいと思います。よく“38.5℃以上(あるいは 38℃以上)で使ってくださ
い。”という言い方をする病院(医師)がいます。病院での指示がなくても薬局で同
様の説明(指示)があることも多いでしょう。しかし、熱による苦痛の感じ方は一人
一人違います。また、同じ子供でも、年齢によって変わっていきます。乳幼児は 39℃
近く熱があっても平気で遊ぶことが多いです。でも、成長に伴い 38℃前後で色々な
訴えをするようになってくる場合が多いです。同じような年齢でも、39℃で平気な患
児もいますが、37.5℃でもアップアップしてしまう患児もいます。これらの事実を考
え合わせると以下のようなときに鎮痛解熱薬を使うとよいでしょう。
① 痛みがひどい時(鎮痛薬としての効果)
② 熱が原因と思われる次にあげるような苦痛が強い時
不機嫌、眠れない、水分が摂れない、遊ばない、話さないなど
使用法と薬剤
小児に対する非麻薬性鎮痛薬ならびに解熱薬として安全性の認められている薬は、
アセトアミノフェンとイブプロフェンです。他の薬剤には小児に対する安全性に問題
(表 1)があることを知っておく必要があります。
よく、鎮痛解熱薬を“1 日 3 回のみなさい”という処方箋を出される医療機関があ
ります。この様に時間を決めて鎮痛解熱薬を内服すると、薬の効果がある間は解熱し
ますが、効果がなくなると発熱するということを繰り返します。先にも書いたように、
発熱は生体防御反応で必要な反応です。熱を無理やり下げることは推奨できません。
また、患児の本当の熱の状態がわからなくなってしまいます。小児への鎮痛解熱薬の
使用は、
「屯用」
(一定以上の間隔をおいて、必要時に限って使用する)と明記して使
用します。
表 1:小児への安全性が認められていない鎮痛解熱薬
薬剤名
添付文書の記載
商品名
アスピリン
15 歳未満の水痘・インフルエン アスピリン
ザの患者に使用しないことを
原則とする
インドメタシン
小児に対して原則禁忌
ジクロフェナク
ナトリウム
小児のウイルス性疾患患者に ボルタレン
投与しないことを原則とする
スルピリン
必要最小量の使用にとどめる
スルピリン、メチロン
プラノプロフェン
投与しないことが望ましい
プランサス、二フラン
メフェナム酸
小児のインフルエンザに伴う ポンタール
発熱に対しては、原則として使
用しない
ロキソプロフェン
ナトリウム水和物
小児に対する安全性は確立し ロキソニン
ていない
インダシン、インテバン
① アセトアミノフェン(商品名:カロナール、コカール、アンヒバなど)
l シロップ(カロナールシロップなど)、ドライシロップ(コカール小児用ドライシ
ロップなど)、細粒(カロナール細流など)、末(ピリナジン末など)、錠(カロナ
ール錠 200 ㎎、300 ㎎など)、坐剤(アンヒバ坐剤小児用 50 ㎎、100 ㎎、200 ㎎
など)のように剤型が多岐にわたり使用しやすい。
l 小児容量は 1 回あたり 10~15 ㎎/㎏で 4~6 時間以上の間隔をとって投与します。
l 1 日の総量は 60 ㎎/㎏までで、1 回の最大用量は 500 ㎎/回までです。
l 投与後 30 分で解熱効果が現れはじめ、投与後 2~4 時間で最大の解熱効果を呈し、
投与後 7 時間で投与前の体温に戻るデータがあります。
l 血液中の成分濃度をみると、経口薬では投与後 15~30 分でピークに達し、坐剤
では投与後 30~60 分でピークに達します。
l 鎮痛を目的とする場合に投与量を 1.5 倍にすることがあります。
② イブプロフェン(商品名:ブルフェン、ユニプロンなど)
l 顆粒(ブルフェン顆粒など)、錠(ブルフェン錠 100 ㎎、200 ㎎など)、坐剤(ユ
ニプロン坐剤 50 ㎎、100 ㎎など)などの剤型があります。
l 小児用量は 1 回あたり 3~6 ㎎/㎏で 6 時間以上の間隔をとって投与します。
l 1 回の最大用量は 200 ㎎/回までです。
l 4 歳以下の幼児に対する安全性は確立されていないので投与を避けるべきです。
l 坐剤であっても 3 か月未満の乳児への投与は避けるとの注意があります。
l 鎮痛目的でも投与量は変わりません。
行徳総合病院 小児科 佐藤俊彦