ISSN 1880-2451 テーマ/変革する医療、今こそ挑戦の時 月日/平成 27 年 2 月 28 日(土)~3 月 1 日(日) 会場/広島 YMCA 国際文化ホール 主催:一般社団法人 広島県臨床検査技師会 後援:広島県 / 広島市 / 一般社団法人 広島県医師会/一般社団法人 広島市医師会 「第 32 回広島県医学検査学会」抄録集 目 次 1. 学会長挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. 学会運営のお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3. 会場案内図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 4. 学会日程表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 5. 学会抄録目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 6. 「シンポジウム」抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 7. 「教育講演」抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 8. 「市民公開講座」抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 9. 「一般演題」抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 10. 「広島臨床検査」論文投稿規定・・・・・・・・・・・・・・ 39 11. 広告・協賛企業一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 12. 学会実行委員会名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 《 学会長挨拶 》 【ご挨拶】 第 32 回広島県医学検査学会 学会長 水野 誠士 この度、第32回広島県医学検査学会を広島地区並びに西部地区が担当して、広島県、 広島市、広島県医師会、広島市医師会のご後援を得て広島YMCA国際文化ホールにて 2月28日、3月1日の2日間にわたり開催いたします。 本学会が有意義な場になるよう実行委員会で企画、準備をしていただきましたことに 対して厚くお礼申し上げます。また、開催に当たりまして賛助会員の皆様には多大なご 支援、ご協力を賜りまして深く感謝申し上げます。 学会テーマは「変革する医療。今こそ挑戦のとき」といたしました。 初日は学会に先立って「会員のための情報交換会」を開催し、法改正に伴い大きな変 化を求められている私達の状況を中心に報告いたします。続いて学会に入りシンポジウ ム「検査最前線」として形態検査部門、生理検査部門、感染制御部門、移植検査部門の 4名の演者に最新の検査を取り上げていただきました。 2日目は一般演題 16題、教育講演、市民公開講座を予定しています。一般演題で は若手技師の発表が多いと思いますが、日頃の成果を発表していただき、明日に役立て ていただきたいと思います。教育講演は、広島大学大学院工学研究院社会環境空間部門 建設構造工学講座の有尾一郎先生に「災害復旧で活躍する技術・橋梁、モバイルブリッ ジ®」と題して、災害時に必要なライフラインを確保するため有用なインフラ復旧用の モバイルブリッジの開発についてお話いただきます。市民公開講座は、広島大学原爆放 射線医科学研究所ゲノム疾患治療研究部門・腫瘍外科教授 岡田守人先生に「肺がんに 対する低侵襲手術」と題して、患者の体への負担を軽減する最新の外科的治療として Hybrid VATSを紹介していただきます。 企業各社のご協力により、ランチョンセミナー2題が行われます。 また初日終了後、恒例となっております懇親会を開催いたします。会員相互並びに、 日頃お世話になっています賛助会員の皆様と親睦を深めていただければ幸いです。 最後に本学会が皆様にとって、有意義な学術研鑽と会員親睦の場になりますことを祈 念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。 -1- 【学会運営のお知らせ】 「学会に参加される方へ」 1) 受付について ☆ 会員証を必ず持参してください。 設置場所:広島 YMCA 国際文化ホールロビー(地下 1 階) 受付時間:2 月 28 日(土)13 時~13 時 30 分 3 月 1 日(日) 9 時~ 9 時 30 分 2月28日(土) 3月1日(日) 会員のための情報交換会 シンポジウム 広島県医学検査学会 13:30~14:45 14:55~17:00 9:30~15:40 2)学会参加費 参加費は会員の方は無料です。 県法人賛助会員・関連団体会員・学生の方も参加できます。 3)受付方法 日臨技会員の方は、「日臨技会員証」で参加受付を行いますので、参加登録受付に, 会員証を提示してください。 4)懇親会について 2 月 28 日(土)18 時 30 分~20 時 30 分 (受付:18 時~) ANA クラウンプラザホテル 広島 にて行います。 参加は事前申し込みとなります。参加される方は受付にて参加費(6,000 円)を納めてくださ い。 5)ランチョンセミナーについて ・ランチョンセミナー弁当引換券は、3 月 1 日の 9 時から総合受付で配布します。 200 名分を準備しておりますが、なくなり次第終了とさせていただきます。 ・ 弁当引換え券をお持ちの上、会場へお越しください。 ・ 引換え券はひとり 1 枚とさせていただきます。 「一般演題の発表者・シンポジスト・座長の方へ」 1)受付について 設置場所:広島YMCA 国際文化ホールロビー(地下 1 階) 受付日時: 2 月 28 日(土)13 時~ 3 月 1 日 (日)9 時~ ・ 指定された時間の 30 分前までに受付をお済ませください。 (一般演題 1.2 の発表者の方は、前日あるいは当日 9 時からの受付にお越しください。 シンポジストの方は,2 月 28 日 14 時 25 分までに,受付へお越しください。) ・ 発表会場では次演者席を設けますので、前演者が移動すると同時に着席してください。 -2- 2)プレゼンテーションデータの作成・受付・確認等について ・ 事前に(2 月 20 日(金)まで)CD‐Rで学会事務局へ提出してください。 ・ 発表当日は、学会会場へ予備データを必ずご持参ください。 ・ 液晶プロジェクター(パワーポイント)のみの発表とします。 ・ プレゼンテーション用 PC の OS は Windows 7 を使用し、Microsoft Power Point は 2010 を使用します(2007・2013 も対応可能です) ・ 上記アプリケーションにて正常に動作するデータをご用意ください。 ・ 会場で使用する画面の解像度は XGA(1024×768)です。これ以外のサイズで作成した場合、 正確に表示できませんのでご注意ください。 ・動画ファイルは Windows Media Player にて再生可能であるものに限ります。 3)発表時間・質疑討論時間について 発表時間は質疑討論時間を含めて 8 分以内(発表 6 分 + 質疑応答 2 分)とします。 座長の方は、円滑な進行と時間厳守にご協力ください。 「その他の注意事項」 1) 会場内では携帯電話の電源を切るか、マナーモードにしてください。 2) 喫煙およびゴミは指定された場所にてお願いします。 3) クロークは、用意していません。 4) 会場内は全館禁煙とします。また、会場内での飲食はランチョンセミナーを除き禁止いたします。 5) 交通機関・駐車場について 公共交通機関をご利用ください。 自家用車でお越しの方は、会場近隣の有料駐車場をご利用ください。 「問い合わせ」 【学会事務局】 中国電力株式会社 中電病院 臨床検査科 〒 730-8562 広島市中区大手町 3 丁目 4 番 27 号 TEL (082) 241-8221 (内線 2834) FAX (082) 541-4061 Email [email protected] 担当 吉井 恵子 -3- 【会場周辺のご案内】 会場:広島 YMCA 本館 地階 〒730-8523 国際文化ホール 広島市中区八丁堀 7-11 TEL:(082)227-6816 ■会場へのアクセス ・JR 広島駅より市内路面電車( 電車(5 番以外)、 「立町」電停下車徒歩 3 分 ・JR 広島駅よりタクシー約 10 分 ・広島バスセンターから市民病院と県庁の間(東方面 市民病院と県庁の間(東方面へ)徒歩 7 分 ・アストラムライン「県庁前」下車、市民病院と県庁の間(東方面 ・アストラムライン「県庁前」下車、市民病院と県庁の間(東方面へ)徒歩 徒歩 7 分 ■駐車場のご案内 会場の駐車場(有料)は、少数です。近隣の有料駐車場をご利用ください。 -4- 【会場のご案内】 ■受付:国際文化ホールロビー(地下 1 階) -5- 【第 32 回 広島県医学検査学会 日程表】 ◆日時:平成27年2月28日(土)~3月1日(日) ◆場所:広島 YMCA 国際文化ホール(広島市中区八丁堀 7-11) ◆テーマ:変革する医療、今こそ挑戦の時 ◆プログラム 第1日目 時 2月28日(土) 間 内 13:00~13:30 受付 13:30~14:45 会員のための情報交換会 容 ~集まれ広臨技-いろんな情報教えます~ 司会:米田組織調査部長 形式:法改正に伴い大きな変化を求められている私達の状況を中心に、 水野会長による報告 ※多数の会員の参加をお願いします。 14:45~14:55 開会の挨拶 14:55~17:00 シンポジウム「検査最前線」 18:30~20:30 懇親会(受付:18:00~) ANA クラウンプラザホテル広島 第2日目 時 水野 学会長 3月 1 日(日) 間 内 9:00~9:30 受付 9:30~11:50 一般演題 16 題 12:00~13:10 ランチョンセミナー 容 司会:森田 副会長 ①シスメックス株式会社(12:00~12:35) ②フクダ電子(12:35~13:10) 13:20~13:25 表彰式 13:25~14:15 教育講演「夢の架け橋」 14:20~14:35 臨床検査プロモーションタイム 14:35~15:35 市民公開講座「肺がんに対する低浸襲手術」 広島大学大学院 助教 有尾 一郎 広島大学病院 教授 岡田 守人 15:35~15:40 閉会の挨拶 飯伏 実行委員長 -6- 【学会抄録目次】 第1日目 【会員のための情報交換会】 2月28日(土) ~集まれ広臨技-いろんな情報教えます~ [13:30~14:45] 司会:米田登志男(組織調査部長) 《要旨》 昨年6月18日に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整 備等に関する法律案(一括法)」より臨床検査技師の業務範囲の拡大が決まり、全国で「検体採取等厚生 労働省指定講習会」が企画・実施されています。今、私達は大きく変わりつつある周囲の環境に応えてい く必要があります。今回、このような変化における私達の状況を中心に説明し、意見交換の場となればと 思います。 水野誠士(広島県臨床検査技師会 会長) 【シンポジウム】 [14:55~17:00] テーマ: 『検査最前線』 司会:足免弘章(広島原爆障害対策協議会 健康管理・増進センター) 1.当院の臓器移植関連検査について 河野真由(広島大学病院 診療支援部) 2.病理検査技師の新たな挑戦 坂根潤一(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター 病理診断科) 3.質量分析装置 MALDI Biotyper の使用経験と日常業務への導入状況 高岡俊介(広島赤十字・原爆病院 検査部) 4.心房細動患者における左心耳壁収縮速度での新しい左心耳機能評価法 難波淨美(県立広島病院 臨床研究検査科) 第2日目 【一般演題】 3月 1 日(日) [9:30 ~11:50] ◆生理検査部門 [9:30~9:48] 座長:島谷文彦(尾道市立市民病院) 1. 脈波伝播速度(PWV)および頸動脈プラークと動脈硬化危険因子との関連 宇根千尋 (公立学校共済組合 中国中央病院) 2. 一過性心房細動患者における、左心耳収縮速度での左心機能評価の有用性 粟村尚史(県立広島病院) ◆形態検査部門・病理 [9:49~10:15] 座長:栗田佑希(広島大学病院) 3. 免疫染色におけるコントロール標本の検討 田中美帆(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター) 4. 組織切片自動作製装置を用いた病理業務効率化の検討 中川裕可里(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター) 5. 当センターにおけるセルブロック作製法とその有用性について ―子宮内膜細胞診を中心に― 太田 歩(福山市医師会健康支援センター) ◆形態検査部門・血液 [10:16~10:50] 座長:西村龍太(広島赤十字・原爆病院) 6. 急性骨髄性白血病最未分化型(AML-M0)との鑑別に苦慮した急性リンパ性白血病(ALL)の1例 國廣まり(福山市民病院) 7. 原因不明の腎不全の治療中に多発性骨髄腫と診断された1例 横山真理(福山市民病院) -7- 8. 透析患者における XE2100 の網赤血球ヘモグロビン等量と鉄動態について 山本真代(地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 9. 新生児末梢血塗抹標本における細胞崩壊像のアルブミン添加による改善の検討 内田理加(県立広島病院) ◆移植検査部門 [10:51~11:25] 座長:山本加代子(厚生連廣島総合病院) 10. 一次免疫応答が疑われた遅発性溶血性輸血副作用の1例 荒木康晴(国家公務員共済組合連合会 呉共済病院) 11. ABO 式血液型おもて・うら不一致の症例 高橋沙弥(公立みつぎ総合病院) 12. 不規則抗体検出に影響を及ぼす要因の検討 實近理那(県立広島病院) 13. 出生時血液型判定の有用性について 長谷川 春(山陽女子短期大学) ◆感染制御部門 [11:26~11:50] 座長:辻 隆弘(庄原赤十字病院) 14. 当施設における血液培養複数セット採取の有用性についての検証 行廣五月(福山市医師会健康支援センター) 15. ERCP で採取された胆汁のグラム染色で発見されたランブル鞭毛虫症の1例 大村和廣(福山市民病院) 16. 侵襲性髄膜炎菌感染症の 1 例 池田光泰 (厚生連 廣島総合病院) 【ランチョンセミナー】 [12:00~13:10] 司会:森田益子(地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立安佐市民病院) 1.シスメックス株式会社 [12:00~12:35] 『肝炎治療の最前線』 演者:吉良臣介(済生会広島病院 消化器内科医長) 2.フクダ電子株式会社 [12:35~13:10] 『生理検査システムの現在とこれから』 ~生理検査を電子的に活用する為のポイント~ 演者:野間 充(独立行政法人 地域医療機能推進機構 九州病院) 【教育講演】 [13:25~14:15] 司会:飯伏義弘(地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 変革する医療(橋技術)。今こそ挑戦の時『災害復旧で活躍する技術・橋梁、モバイルブリッジ® 』 有尾一郎(広島大学大学院 工学研究科・土木構造工学研究室 助教) 【臨床検査プロモーションタイム】 [14:20~14:35] 大塚崇通(国家公務員共済組合連合会 吉島病院) 【市民公開講座】 [14:35~15:35] 司会:水野誠士(厚生連 廣島総合病院) 『肺がんに対する低浸襲手術』 岡田守人(広島大学・腫瘍外科学 教授) -8- シンポジウム 教育講演 市民公開講座 【シンポジウム】 —検査最前線— 1.当院の臓器移植関連検査について 河野真由 1)、平岡朝子 1)、栗田絵美 1)、野間慎尋 1)、広瀬祥子 1)、小松真由美 1)、 山岡愛子 1)、矢内綾佳 1)、山崎尚也 2)、齊藤誠司 2)、藤井輝久 2) 広島大学病院診療支援部 1)、輸血部 2) 【はじめに】 【症例 1】 臓器移植において DSA(Donor specific antibody) 66 歳女性(A 型 RhD 陽性)。自己免疫性肝炎、アル は移植片への拒絶反応に関与し、生着不全や機能 コール性肝炎のため娘(O 型 RhD 陽性)をドナーと 廃絶となり、移植予後に影響を及ぼすことが知ら する生体肝移植を希望され来院された。術前検査 れている。事前に検査を行い DSA の存在を把握す で ICFA が強陽性となり、DSA となる HLA-A26、B51 抗体が検出された。 ることによりドナー適合性や前処置の必要性を 診断することが必要である。また、移植後に DSA が産生され、拒絶反応を起こす可能性もあるため、 移植後のモニタリングも重要となる。過去の妊娠 や輸血により産生された抗 HLA 抗体は移植臓器へ の拒絶に関与する。そのためには特異的かつ高感 【症例 2】 25 歳男性(O 型 RhD 陽性)。5 年前に、母親(A 型 RhD 陽性)をドナーとした ABO 血液型不適合腎移植を 受けたが、171 日目に移植腎が廃絶した。その後、 父親(A 型 RhD 陽性)をドナーとした ABO 血液型不 適合腎移植を希望されたが、術前検査で DSA とな 度に抗 HLA 抗体を検出できる方法が必要である。 る HLA-B52 抗体が検出された。 また、当院では主に肝臓と腎臓の移植が行われて 【結果】 いる。これらの移植には ABO 血液型の適合も重要 2 症例とも、移植前に DSA を保有していたため、 であり、メジャーミスマッチの移植では抗 A ある 移植前処置が必要と判断された。前処置として、 いは抗 B の抗体価測定も重要となる。 症例 1 ではリツキシマブの投与と FFP を使用した 今回、我々の部門で行っている検査および過去に 血漿交換、症例 2 ではリツキシマブ+ボルテゾミ 経験した 2 症例を報告する。 ブの投与、FFP を使用した血漿交換と二重膜濾過 【昨年の実績】 法(DFPP)を行い移植が施行された。前処置と術後 当院は高度救命救急センターが設置されている の DSA の推移を、LABScreen 法と ICFA 法で経過を 三次救急病院であり、病床数は 746 床である。2013 追った。両症例とも抗体による移植片への異常を 年は肝臓移植 13 例、腎臓移植 8 例、膵腎同時移 植 2 例が行われた。 認めていない。 【まとめ】 今回、当院で経験した DSA 陽性の移植症例を紹介 【当院の移植関連検査】 当院では抗HLA抗体検査として、リコンビナント 抗原を付けたビーズを用いるLABScreen法 した。当院で行っている検査は抗体を特異的かつ 高感度に検出できる方法である。脳死下臓器移植 では腎肝ともに ABO 血液型不一致、 腎移植では DSA (LABScreen single antigen)やドナーリンパ球を 陽性の場合は移植適応外とされている。日本では 用いたICFA(Immunocomplex capture 脳死下臓器移植件数が少なく、DSA 陽性移植症例 fluorescence analysis)とフローサイトメトリー が増加すると考えられため、より安全で効果的な によるLIFT(Lymphocyte immunofluorescence 移植医療を確立するために特異的で高感度な検 test)を行っている。レシピエントとドナーのHLA 査方法が必要となる。検査部門として、移植医療 タイピングも実施している。 推進のために貢献していきたい。 -11― 【シンポジウム】 —検査最前線— 2.病理検査技師の新たな挑戦 ○坂根潤一 1), 中川裕可里 1), 安村奈緒子 1), 田中美帆 1), 西村俊直 1) 仲野秀樹 2), 谷山大樹 1), 齋藤彰久 1), 倉岡和矢 1,3), 尾上隆司 2,3), 谷山清己 4) 独立行政法人国立病院機構呉医療センター中国がんセンター 病理診断科 1), 臨床検査科 2), 臨床研究部 3), 病院長 4) 【はじめに】 近年、病理検査では最新の技術・検査法、自動 化の参入が著しく進んでいる。乳癌や大腸癌、血 液疾患等の遺伝子検査の導入も同様である。我々 の身の回りにある自動包埋装置・自動染色(免疫染 色を含む)装置・自動封入装置等は、多くの施設で 導入され我々技師の作業補助として活躍してい る。それらは、内部精度管理にも大きな影響を与 えており、安定した標本作製が可能になった。 当センターでは、新たな技術をいち早く取り入 れ、詳細に検討を重ねている。2009 年には自動 免疫染色評価、2013 年には組織切片自動作製装 置を導入し運用開始している。更には、2010 年 4 月より多施設共同研究で集められた液状細胞診 検体の遺伝子解析から、子宮頸部病変進行予測マ ーカーの検討を行っている。 本シンポジウムでは、当センターに導入された 最新技術を紹介し、現在の運用状況と成果を報告 する。また、技師として”飛躍する技術”に対し、 どのように関わるべきか考察する。 1) パラフィンブロック薄切の自動化 組織切片作製は、高い技術と経験が必要であり、 技師の手作業に委ねられている。2013 年 9 月に 組織切片自動作製装置(AS-400M)(倉敷紡績株 式会社)を導入した。AS-400M は、薄切からス ライドガラスへの切片貼り付け、伸展、乾燥まで の一連の工程を自動で行い、病理システムとの連 携により貼り付け間違い等のリスクマネージメ ントにも有効である。現在、日常業務として摘出 リンパ節や子宮筋腫、消化管等の切り出しブロッ ク数が多い検体を中心に薄切を行っている。自動 薄切装置の利点は、安定した標本作製が可能であ る事であり、患者間違いを防げる点である。 2) 免疫組織化学的染色評価の自動化 個別化医療が発展し病理検査結果がより重要 視されてきた。多くの施設では免疫染色評価を観 察者が主観的に目視評価(濃い/薄い、多い/少ない) を行っているのが現状である。適切な治療方針の 選択や治療効果判定には、客観的で正確なデータ 解析が求められる。当センターは、2009 年 3 月 より ER、PgR、HER2 の免疫染色評価に対して 自動画像解析装置(解析ソフト GenieⓇ)による評 価方法を取り入れ運用している。また、内部精度 管理として自施設で培養した乳癌細胞株を用い ている。培養細胞株の特性を理解し精度管理に用 いることは、免疫染色標本を評価する上で非常に 重要と考えられる。 3) 細胞診検体を用いた遺伝子解析 子宮頸癌は、発がんリスクの高い HPV 感染が 原因で引き起こされる。これらの HPV は 8 割も の女性が一度は感染するありふれたウイルスで あり、感染女性の 99%は子宮頸癌を発症しない。 すなわち、HPV 感染検査による子宮頸癌発症予 測は困難であり、子宮頸癌の発症リスクを判定す るには新たな分子マーカーの開発が必要とされ ている。これまでに我々は、DNA メチル化異常 に着目し DLX4 及び SIM1 遺伝子の異常メチル化 が子宮頸部病変進行に関わる事を報告している。 本遺伝子を解析する事で LSIL 病変の進行予測が 可能であり、臨床経過を予測する上で非常に有用 と考えられる。 【考察】 当センターは、前述した技術を各担当技師が専 任で行っている。病理検査に導入される技術や機 器は、技師が大きく関わるため、マニュアル通り の作業を行っても、時に不測の事態に陥る事があ る。そのような場合、役立つのは正確な知識と技 術である。今後導入される新たな技術に対して、 知識を整理しておく必要があると考えられる。各 自正しい知識を身につけるよう、日々努力してい る。 連絡先:0823-22-3111 ―12― 【シンポジウム】 —検査最前線— 3.質量分析装置 MALDI Biotyper の使用経験と日常業務への導入状況 高岡 俊介 広島赤十字・原爆病院 検査部 [はじめに] MALDI-TOF MS(マトリックス支 Streptococcus 属において、S. mitis/oralis と S. 援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法) pneumoniae は属レベルの同定は可能であったが、 は新たな微生物同定法として臨床検査に普及し 各菌種の鑑別は不可能であった。Candida 属は属 つつある。この検査法は 2002 年にノーベル化学 レベル・菌種レベルでの一致率は共に 98%であり、 賞を受賞した田中耕一博士が開発した「マトリッ 嫌気性菌の属レベルでの一致率は 100%、菌種レ クス」と総称される補助剤を用いて、試料をソフ ベルでの一致率は 98%であった。 トにイオン化し、質量分析による同定を行う方法 [日常業務への導入] 通常検体にて起炎菌と思 である。従来の生化学的手法と比べ、低コストで、 われる菌の発育を認めた場合、質量分析法で同定 迅速性・正確性に優れている。今回、当院に新し を行い、菌種に応じた性状確認培地等を併用して、 く導入された質量分析装置 MALDI Biotyper 菌種名を決定し臨床側へ報告している。血液培養 (Bruker Daltonics 社)の従来法との比較検討、お においては陽性判明後、質量分析法で陽性ボトル よび日常業務への導入状況を報告する。 から直接同定を行い、グラム染色の形態と合わせ [MALDI-TOF MS 法の原理] 試料とマトリック て菌種名を臨床側へ約 1 時間で中間報告している。 スを混合結晶化し、レーザーを照射することによ その後、発育してきたコロニーより再度質量分析 って試料をイオン化させる。イオンは高電圧をか 法で同定し、性状確認培地等を併用し、菌種名を けた真空中で飛行し、検出器に到達する時間を質 最終報告している。 量に換算してマススペクトルを求める。そのマス [まとめ] MALDI Biotyper を用いた質量分析法 スペクトルを既知のリファレンスライブラリと では、従来の生化学的性状を利用した方法と同等 パターンマッチングさせ、菌種を同定する。 の結果がより迅速に得られた。また、従来最終報 [対象および方法] 2008 年 1 月から 2014 年 10 告に時間を要していた嫌気性菌や真菌の菌種名 月の期間に血液培養より検出された保存菌株 186 の迅速報告も可能である。しかし、データベース 株、および 2012 年 12 月から 2014 年 10 月の期 に登録されていない菌種には対応できないこと 間に便検体より検出された Clostridium diffcile や、遺伝子近縁の菌種を区別できないなど、使用 20 株の計 206 株を対象とした。内訳は陰性桿菌 者は機器の性質を十分に理解した上で日常検査 60 株、グラム陽性球菌 55 株、Candida 属 48 株、 に取り入れる必要がある。現時点では 嫌気性菌 43 株(Clostridium 属 26 株、 Bacteroides MALDI-TOF MS での同定結果は菌種に応じて追 属 17 株)であった。これらの分離菌を用い、質量 加試験を行い臨床側へ報告しているが、今後 分析法と従来法(VITEK2、RapID ANAⅡ、アピ MALDI-TOF MS による微生物同定法が主流にな ケンキ)の両方法による同定を行った。 り、様々なデータや論文等が発表されることによ [結果] 質量分析装置 MALDI Biotyper の従来 り結果をそのまま報告できるのではないかと考 法との比較では、グラム陰性桿菌の属レベルでの えた。当院においても糸状菌や抗酸菌など検討対 一致率は 100%、菌種レベルでの一致率は 98%で 象を増やし、臨床へ貢献していきたい。 あった。グラム陽性球菌の属レベルでの一致率は 100%、菌種レベルでの一致率は 87%であった。 -13- 【シンポジウム】 —検査最前線— 4.心房細動患者における左心耳壁収縮速度での新しい左心耳機能評価法 難波 淨美 県立広島病院 臨床研究検査科 心房細動は脳塞栓症の大きな原因の一つであり、 score ≤1 の患者 46 例中 19 例でも severe SEC を認 左心耳は血栓の好発部位であることから、左心耳機 めた。経胸壁 LAAWV <10 cm/s を cut-off とした場合、 能を評価することは、脳塞栓のリスク評価や抗凝固療 低 CHADS2 score ≤2 の患者における severe SEC の 法の適応を決定する上で重要である。一般的にその 診断能は、感度 81%、特異度 92%で、低 CHADS2 評 価 は 、 経 食 道 心 エ コ ー の spontaneous score ≤1 の患者では、感度 74%、特異度 91%であっ echocontrast (SEC)、左心耳内血流速度を用いて行 た。これらのことから、組織ドプラによる経胸壁 われているが、経食道心エコーは麻酔を必要とし、や LAAWV は、心房細動患者おいて、CHADS2 score や侵襲的である。簡便な方法として、臨床的には が低値にもかかわらず、血栓塞栓症のリスクの高い CHADS2score が用いられているが、CHADS2score severe SEC を有する症例を非侵襲的に検出する方 には、左心耳機能の評価がなく、CHADS2 score 低 法として、極めて有用であることを報告した(J Cardiol, 値でも脳塞栓を発症する患者が、散見されることから、 2012 ) 。 こ れ らの 報 告 か ら、 経 胸 壁 心 エ コ ー で の 患者のリスク評価において、非侵襲的に左心耳機能 LAAWV は、心房細動患者の左心耳機能を非侵襲 を評価する方法が必要と考えられる。そこで、私達は、 的に簡便に評価できる、新しい有用な方法であると 血流ドプラに比しドプラ強度が強い利点があるパルス 考えられた。 組織ドプラ法を用いて、経胸壁心エコーでの左心耳 壁収縮速度 (LAAWV)(図.1、2)から、簡便に左心 ROI 耳機能を評価する方法として、健常人で経胸壁 LAAWV が 95%の症例で測定できること、経食道と経 AO 胸壁エコーの LAAWV が、密な相関(r=0.97)を示し、 また経胸壁 LAAWV と経食道エコーでの左心耳内血 LAA LA 流速度が、有意な相関関係(r=0.64, p<0.001)を示す LAAWV ことを示し、経胸壁 LAAWV で左心耳機能評価する ことが、可能であることを報告している 図.1 洞調律 (Echocardiography, 2010)。また、持続性心房細動 患者における検討では、経胸壁 LAAWV は 97%で測 定でき、経食道と経胸壁エコーの LAAWV が密な相 関関係(r=0.98)、経胸壁 LAAWV が経食道エコーで 測定した左心耳内血流速度と有意な相関関係を認 めた(r=0.82, p<0.001)こと、経胸壁 LAAWV は SEC の重症度に伴って低下 ( SEC なし: 14.5±5.54 cm/s, LAA AO LA mild:10.2±3.3 cm/s, severe: 5.7±2 .4 cm/s)したこ LAAWV と、また低 CHADS2 score ≤2 の患者 61 例中 31 例で severe SEC、2 例で脳塞栓症を認め、低 CHADS2 -14- ROI 図.2 心房細動 【教育講演】 変革する医療(橋技術)。今こそ挑戦の時 災害復旧で活躍する技術・橋梁、モバイルブリッジ 災害復旧で活躍する技術 、モバイルブリッジ® 有尾 一郎(広島大学大学院工学研究科・ 広島大学大学院工学研究科・土木構造工学研究室 土木構造工学研究室) 想定されるが、折りたためる橋があれば、迅速な が、折りたためる橋があれば、迅速な 救助やライフラインの確保に役立てることが期 待できる。 今回、災害時の復旧で活躍する技術・橋梁とし てのモバイルブリッジの研究開発から活用・実績 までの経緯を説明する。 TBS「夢の扉+」2014 年 6 月放映時の取材写真 1.災害時のインフラ復旧や被災者救助が可能 災害時のインフラ復旧や被災者救助が可能に 迅速な災害復旧を可能にする「折りたためる橋 (モバイルブリッジ)」の建設基礎技術を、社団法 」の建設基礎技術を、社団法 人建設機械化協会施工技術総合研究所と共同開 施工技術総合研究所と共同開 発し、橋のプロトタイプを公開した。 公開した。 この橋は、幅 0.5m、長さは 0.5mから 0.5 6mまで アコーディオン状に伸縮可能であり、コンパクト に折りたためて移動ができ、人が歩ける橋として は、世界で始めての原型プロトタイプで は、世界で始めての原型プロトタイプである。既 存のインフラ復旧用の応急橋は、大型車両の荷重 を基に設計されるため、短い橋であっても重厚な 構造物の組み立てとなり、時間がかかるほか、被 災者の救助救援仕様にはなっていない ない。時間が最 優先される被災現場であるにもかかわらず、橋の 組立てに時間がかかってしまう点は、危機管理上 の大きなデメリットである。 2. 折紙の力学研究から 構造工学において、構造の不安定に座屈という 重要な問題がある。今回、 今回、折紙を用いた円筒シェ ル構造における、「対称性が破れる座屈」を研究 する機会を得た。両端で固定されたロール紙を両 手で押さえながら雑巾絞りのようにねじると、あ る臨界点で周期的なしわが出現する。このしわ模 様は折紙の世界では「クレスリング折り」と呼ば れ、フランスの折紙研究家の Kresling によって 紹介されており、これに関連した これに関連した工学実験として、 YAMAKI の円筒シェル構造の著名な座屈実験があ る。 私は、この座屈研究の解析 私は、この座屈研究の解析検証モデルとし、こ の折紙を後座屈理論に適用し、その折畳み現象の 観察と再現性について連日 Yamaki の論文を片手 に調べていた。 3. 構造不安定からの開眼 折紙のクレスリング折りの重要な部分を残し てトラスをつくり、これを軽量展開構造に応用し ようという提案があった。折紙が座屈する欠点を 逆手にとって、少ない力で座屈のように折り畳め る軽いトラス構造体を創出するという利点を引 き出し、宇宙展開構造のデザインへ利用しようと いう、新しいイノベーションと工学的価値を創造 し、問題解決するための視点を培う上で研究のタ ーニングポイントになった になった。 今回開発した技術は、あらかじめ橋に展開機構 を設けることによって、架設組立て時間を短縮さ せる画期的な建設技術であり、開発上の課題も幾 開発上の課題も幾 つか残されてはいるが、この技術を確立できれば、 が、この技術を確立できれば、 橋梁そのものをコンパクトに折りたたんで被災 現場に運搬し、それを展開施工することが可能と 4. モバイルブリッジ開発のきっかけ 開発のきっかけ なる。実際の運用に当たっては、被災現場の規模 。実際の運用に当たっては、被災現場の規模 子供が伸縮する玩具で遊んでいるのを見て、橋 や状況などから、様々な制約条件や技術的課題も -15- も「折紙のように折り畳めないか、もしシンプル に折り畳めたら?」 という展開構造によって、 革新的な橋の可能性や有益性が生まれるのでは ないかと考えた。すなわち、エネルギー最小原理 より自然の「折り」をお手本に、最適な構造部材 を配置し、最小の力で橋を展開するというアイデ アである。 パンタグラフ構造の構造不安定性の利用と床 版の固定部材で複合的最適なスマート構造概念 を組み合わせることで、システム全体を多重構造 安定性(構造的に多重フェイルセーフを設定)に 展開できる。 開架設実験と渡橋体験を実施する機会を得た。桟 橋専業メーカーと福山のパンタグラフの昇降機 製作メーカーと共同研究に加わり、現在実寸大の 実験橋が完成している 6. 今後の災害に備えて 我が国は、地震、津波や台風(大雨)など幾多の 自然災害を経験し、今後もそれらの災害の猛威と 共存していかなければならない宿命のようなも のを抱えております。 「備えあれば憂い無し」と言われるように、災 害発生後の国民の財産と人命を守るために、この 分野の研究開発の必要性と災害に強い国土(防災 基盤)づくりにつながるような開発、防災、復旧 法、産業強化をセットで制度として整備していく ことは、災害の教訓を活かす上でも重要なことで しょう。現場で容易かつ瞬時に架橋し、インフラ 復旧用のモバイルブリッジ開発は汎用俊速復旧 ツールの一つだと考えている。 5. モバイルブリッジ開発の同志 この機動性のある折り畳める仮橋案を一般社 団法人日本建設機械施工協会施工技術総合研究 所に提案した。 その後、大学内のスタッフと相談し、本橋の効 用と技術の進展を信じ、大学のイベントに合わせ てプロトタイプを 9m に延長させ、県の河川に公 ●プロフィール: フ リ ガ ナ 氏 名 アリオ イチロウ 現 住 所 広島県東広島市鏡山2-260 ががら2-1-204 年 月 昭和62年3月 平成元年3月 平成3年3月 平成3年4月 平成4年4月 平成6年6月 平成9年4月 平成16年5月 平成19年7月 年 月 有 尾 一 郎 生年月日(年齢) 事 昭和41年4月14日(満 48歳) 電話 082-424-7792 項 国立明石工業高等専門学校土木工学科 卒業 長岡技術科学大学工学部建設系建設工学課程 卒業 長岡技術科学大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程 修了 三菱重工業株式会社入社 国立和歌山工業高等専門学校環境都市工学科助手 博士(工学)取得 広島大学工学部第四類(建設系) 助手 英国バース大学長期特定国在外研究員(~2004.5まで1年間) ポーランド科学アカデミーIPPT 短期特定国研究者派遣 賞 罰 事 項 平成10年10月 広島大学工学部教育顕彰(2回表彰) 平成19年10月 ●論文賞など ・緊急小型車両の通行を想定した新しい緊急橋の実験的研究, 建設施工と建設機械シンポジウム論文 集, H25,(2013.11) pp.49-54 (優秀論文賞) ・Structural analysis and experimental study for MB travelable vehicles, Proc. of Int. Conference on Civil and Environmental Engineering, 12, (2013) 102-107 (Paper Award) -16- 【市民公開講座】 肺がんに対する低浸襲手術 広島大学・腫瘍外科学教授 岡田 守人 【はじめに】 肺がんに対する標準術式は肺葉切除(肺は解剖 学上、右側は上中下の 3 つに、左側は上下の 2 つ に分かれている)及び肺門・縦隔リンパ節郭清で ある。しかし、最近小型早期肺がんが爆発的に増 加しており、標準術式より縮小した手術でも根治 可能と思われる症例が多く含まれる。このような 症例を臨床的に選別し、肺の切除範囲やリンパ節 郭清の範囲を縮小したり手術創を小さくする手 術を機能温存術・低侵襲手術と呼ぶ。低侵襲手術 は安全性や根治性を大前提に患者の身体への負 担を軽減する最新の外科的治療である。 その成果として得られる最大限の予後と、機能温 存・Quality of Life の維持に他ならない。患者 にとっての最大の手術侵襲は肺の切除量である。 同じ手術の質なら、創が小さく痛みは少ないこと に越したことはないが、創を小さくするために正 常な肺を取り過ぎたり、癌を取り残しては本末転 倒である。内視鏡手術か否かはあくまでもアプロ ーチ、体表面の問題であることを決して忘れては ならない。 VATS の定義については皮膚切開の長さ、開胸器 (rib spreader)の有無、直視の取り扱いなど様々 な意見が存在し、未だコンセンサスは得られてい ない。VATS か否かは結果であり、実践では症例ご とに手術難度が異なるため、症例に応じた可能な 限りの低侵襲アプローチを選択実施することが 呼吸器外科専門医に求められる。 私が提唱する Hybrid VATS について概説する。 通常、皮膚切開は 2 箇所、ひとつは 1cm 長の胸腔 鏡用穴、他方は 4~5cm 長の小切開創である。筋 肉・肋骨は切離せず、開創部には開胸器は使わず 軟らかい wound retractor (silicon rubber)を使 用し、術後の創部痛の軽減を図る。後に胸腔外へ 切除肺を取り出すこと(少なくとも 4cm 程度の皮 膚切開が必要となる)を考慮すると、これ以上の 低侵襲アプローチは考えられない。重要なことは 手術の質と安全性の確保であり、手術の難度によ っては必要に応じた必要なだけの創拡大を躊躇 しない。多くは術翌朝から病棟内歩行が可能とな り、術後 3~5 日で退院する。 【肺がんに対する内視鏡手術】 Video-assisted thoracic surgery(以下、VATS) は光学機器の発達と手術器具の改良を伴って、呼 吸器外科手術の質を維持しながら、患者負担の軽 減に貢献してきた。ただ、現時点でも悪性疾患に 対する VATS の適応は解決すべき多くの問題点を 含む。アプローチが制限されることにより、すな わち小さな創から手術を行なうことにより、がん 手術の質が低下しないかという懸念である。最良 のがん手術とは、がん根治性と侵襲のバランス、 【肺がんに対する縮小手術】 画像診断機器の高性能化と CT 検診の普及によ って、小型早期肺がんの発見が激増している。た だ、腫瘍が如何に小さくても進行がんの可能性が あるという理由で、これまで約 50 年間、肺葉以 上の肺切除と肺門及び縦隔リンパ節の画一的な 廓清が標準外科治療とされてきた。縮小手術(区 域切除術と楔状切除術)の利点は、肺機能の温存 に他ならない。後者は非常に簡単な術式であるが、 前者は一般的に肺葉切除より手技的難度が高い -17- と考えられている。 縮小手術にとって、対象症例の選択が最大の問 題点である。腫瘍径は、その客観性から考えても 画像による質的診断が発展した今日でさえ重要 である。縮小手術では、充分なマージンが必要な ので、腫瘍径の上限は 2cm が妥当であろう。今後 の課題は、如何に臨床的な早期肺がんを術前に定 義するかであり、可能な限り客観性をもつ基準を 多施設で検証して縮小手術の適応設定を急ぐこ とである。 【まとめ】 早期小型肺がんに対する Hybrid VATS による縮 小手術は、がん根治性を確保しつつ最大限の低侵 襲を追求した患者に優しい術式であり、今後標準 術式に発展することを期待する。 【略歴】 現勤務先:広島大学・教授 広島大学原爆放射線医科学研究所 放射線災害医療研究センター 腫瘍外科研究分野 広島大学大学院医歯薬総合研究科 創生医科学専攻 放射線ゲノム医科学講座腫瘍外科 広島大学病院 乳腺外科・呼吸器外科 環境省中央環境審議会専門委員 最終学歴:1995 年 神戸大学大学院医学系研究科(循環呼吸器外科)修了(医学博士) 職 歴:1999 年 米国ニューヨーク・コロンビア大学・胸部心臓外科 2002 年 兵庫県立がんセンター・呼吸器外科 2007 年 広島大学・腫瘍外科 所属学会:Member of the American Association for Thoracic Surgery (AATS) Member of the American Society of Clinical Oncology (ASCO) 日本外科学会:指導医・専門医・代議員 日本胸部外科学会:指導医・評議員 日本呼吸器外科学会:理事・指導医・評議員 日本肺癌学会:理事・評議員 日本癌治療学会:代議員 日本臨床腫瘍学会:評議員 Reviewer/Editor:Journal of Clinical Oncology Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Chest Annals of Thoracic Surgery European Journal of Cardiothoracic Surgery Lung Cancer Journal of Thoracic Oncology Surgery Today Cancer Science Japanese Journal of Clinical Oncology(Editor) General Thoracic and Cardiovascular Surgery(Editor) -18- 一般演題 1.脈波伝播速度(PWV)および頸動脈プラークと動脈硬化危険因子との関連 ○宇根千尋 羽原利幸 西畑綾子 田中浩美 池田妙子 園部 宏 公立学校共済組合中国中央病院 臨床検査科 【はじめに】 脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は、発 症すると身体や精神機能への障害が大きく、QOL の低下につながるので、動脈硬化危険因子を早期 発見し予防することは重要である。動脈硬化の客 観的な評価には、脈波伝播速度(PWV)やプラーク の有無を調べる頸動脈エコーなどが用いられる。 今回われわれは、PWV 値および頸動脈内のプラ ーク所見と種々の動脈硬化危険因子との関連に ついて検討した。さらに、平成 26 年 4 月に発表 された日本人間ドック学会(以下人間ドック学会) の基準範囲と、日本動脈硬化学会(以下動脈硬化学 会)が設定した基準範囲が異なっているので、両者 間で最も差の著しい LDL 値に焦点を当てて、基 準範囲の違いが PWV やプラークの有無にどのよ うな影響があるのかを検討した。 【対象・方法】 対象は、2014 年 1 月から 6 月までに当院の人 間ドックで、PWV と頸動脈エコーの両検査を受 けた 201 名(男性 100 名、女性 101 名)であり、平 均年齢は男性 59.0 歳、女性 60.3 歳であった。方 法は、動脈硬化危険因子 (LDL、HDL、TG、HbA1c、 空腹時血糖、収縮期血圧、BMI、年齢、喫煙の有 無)の各々と、PWV 値およびプラークの有無とを 統計学的に解析し、p<0.05 を有意差ありとした。 また LDL に関しては、人間ドック学会で正常範 囲であるが、動脈硬化学会では LDL 高値群(表 1) と、両学会の基準値とも正常範囲内の 2 群に分け、 PWV 値、プラークの有無、各動脈硬化危険因子 について検討した。 高LDL血症 低HDL血症 高TG血症 LDL 年齢 30-44 45-64 65-80 140mg/dl以上 40mg/dl未満 150mg/dl以上 男 72-178mg/dl 女 61-152mg/dl 73-183mg/dl 84-190mg/dl 表1 動脈硬化学会(上)と人間ドック学会(下)の基準値 【結果】 PWV 値と各動脈硬化危険因子との検討では、 男性で年齢、血圧において、女性で年齢、血圧、 空腹時血糖において PWV 値と有意な正の相関が 認められた。プラークの有無については、男性で 血圧、年齢、喫煙者の割合、女性で血圧、年齢、 HbA1c、空腹時血糖において、プラーク(+)群がプ ラーク(-)群よりも有意に高値を示し、また人間ド ックおよび動脈硬化学会における LDL の基準値 の違いに関しては、PWV 値、プラークの有無、 動脈硬化危険因子で、2 群間に有意差は認められ ないが、両学会での正常範囲内の群よりも、人間 ドック学会で正常範囲で、動脈硬化学会での高値 群が、男性では高 TG 血症、低 HDL 血症(表 1)、 肥満(BMI≧25)、プラーク(+)、喫煙者の割合が高 い傾向を示した。女性では高 TG 血症、肥満、プ ラーク(+)、メタボリックシンドロームの人数の割 合が高い傾向がみられた。 【考察・まとめ】 今回の検討では、これまでの報告と同様に、男 女とも年齢と血圧が PWV との間に有意な相関を 認め、プラーク(+)群のほうが(-)群よりも有意に高 値を示したので、加齢と血圧の上昇は動脈硬化を 促進する因子と考えられる。また、男性では喫煙 群が、 女性では空腹時血糖値と HbA1c 値が、 PWV 値や頸動脈プラークとの間に有意に相関が認め られ、動脈硬化の要因は性別による違いがあるこ とが示唆された。 今回発表された人間ドック学会の基準値は、ド ックの受診者の中から学会が規定する”超健康人” 集団の検査値の分布から設定されている。一方、 動脈硬化学会の基準値は、生活習慣の改善や薬物 療法により心血管イベントを未然に防ぐことを 目的として定められている。今回の LDL の検討 において、人間ドック学会では正常範囲であるが 動脈硬化学会では高 LDL 血症と診断される群は、 両学会の基準値が正常範囲である群よりも、高 TG 血症、肥満、頸動脈内にプラークありの者の 割合が高かった。従って、健診で LDL 値が基準 範囲内であっても、男性では喫煙を控える、女性 では血糖値を低くするなどの適切な生活習慣の 改善を指導する必要があると考えられる。今後は さらに症例数を増やして、詳細に検討したい。 連絡先:TEL(084)970-2121 -21- 2.一過性心房細動患者における、左心耳収縮速度での左心機能評価の有用性 ○粟村尚史 難波淨美 藤野愛弓 高野孝江 平田勝美 西阪 隆 県立広島病院 臨床研究検査科 【背景と目的】 心房細動は脳塞栓症の原因として重要であり、 血栓の多くは左心耳に発生することから、左心耳 機能評価がその予防に欠かせない。一般的に左心 耳機能は経食道エコー(TEE)で評価されている が、TEE はやや侵襲的である。当院では、簡便に 左心耳機能を評価する方法として、経胸壁組織ド プラ法での左心耳壁の収縮速度(LAAWV)から 左心耳を評価する方法を提唱している。そこで、 一過性心房細動患者の LAAWV での左心耳機能 評価の有用性について検討した。 たが、LAAA、TMA、E’、E/E’とは有意な相関関 係を認めなかった(図 3) 。また、LAAA と LAD も有意な相関関係を認めなかった。 【方法】 対象は、TEE および経胸壁エコー(TTE)を施 工した一過性心房細動(PAF)患者 36 例である。 方法は、TEE で、左心耳収縮時血流速度(LAAV)、 左心耳最大面積(LAAA)を、TTE でパルス組織 ドプラ法での左心耳壁収縮速度 (LAAWV) (図 1)、 心房収縮期左室流入血流速度(TMA)、拡張早期 弁輪部速度(E’) 、E(拡張早期流入血流)/E’、左 房径(LAD)を測定した。TEE、TTE は同一日 に測定し、全例測定時洞調律であった。 【結論】 PAF 患者において、LAAW と LAAWV が有意 な相関関係を認めたことから、LAAWV で、左心 耳機能評価が経胸壁からでも評価できると考え られた。しかし、LAAV と TMA は有意な相関関 係を認めなかったことから、TMA で左心耳機能 を評価することは困難であると考えられた。また、 LAAWV と E’、E/E’が有意な相関関係を認めなか ったことから、PAF 患者において、LAAWV は左 房圧、左室拡張期圧の影響を受けにくい指標であ ると考えられた。 【結果】 LAAV と LAAWV が 有 意 な 相 関 関 係 ( r = 0.67,p<0.001、r=-0.39,p=0.023) (図 2)を認め -22- 連絡先:(082)254-1818(内線 1203) 3.免疫染色におけるコントロール標本の検討 田中美帆 1)、安村奈緒子 1)、中川裕可里 1)、坂根潤一 1)、西村俊直 1)、仲野秀樹 2) 谷山大樹 1)、齊藤彰久 1)、尾上隆司 2,3)、倉岡和矢 1,3) 、谷山清己 4) 独立行政法人国立病院機構呉医療センター中国がんセンター 1)病理診断科、2)臨床検査科、3)臨床研究部、4)病院長 【はじめに】近年、個別化医療が進み、特に乳 4℃(Z)、③冷凍庫-18℃(T)の 3 種類とした。IHC がん治療において病理診断と共に免疫組織化 実施前に、64℃の孵卵機にて約 90 分ベーキングし、 学染色(IHC)や FISH 法が適切な治療方針の選 常温に戻った後、スキムミルク処理を 10 分行った。 択や効果判定予測に重要となっている。しかし、 自動染色装置は、Benchmark XT(Roche)を用いた。 IHC の精度管理は自施設内での内部精度管理実 対象抗体は、Estorogen Recepter (ER, SP1, Roche, 施に任されており、確立された方法がない。当 1:1)、Progesteron Recepter (PgR, 1E2, Roche, 1:1)、 センターでは、2009 年より乳癌 IHC にバーチャ HER2(4B5, Roche, 1:1)の 3 種を用いた。検討保管 ルマイクロスコピー(VM)撮影と自動画像解析 期間は、コントロール切片作製後、使用頻度の高い ® 装置(解析ソフト Genie ) を用い、IHC 判定の (ⅰ)7 日目、(ⅱ)14 日目とした。対象切片は、3 自動化を行っている。その内部精度管理用に発 日間に分けて薄切を行い、各日最初の 3 枚の IHC 結 現の分かっている培養細胞株(80~90%コンフ 果を基礎データとした。なお、保管温度条件別に各 ルエントでの回収)を使用している。現在、乳 10 枚ずつ計 30 枚を同時に染色した。IHC 染色結果 がんマーカーの染色依頼増加に伴い、コントロ を VM でデジタル化しコントロール標本に対して自 ール用未染切片を一度に多数作製し保管後使 動解析を行った。【結果】陽性率(基礎データ)の 用する機会が増えた。【目的】未染切片の切り 平均値±標準偏差値は、ER 88.02±5.34%, PgR 13.32 置きは、経時的に抗原性が低下を生じることが ±6.15%, HER2 3+であった。ER, PgR の検討結果は 報告されており、一般的に 4℃保存が推奨され 表 1 にまとめた。HER2 は、14 日目の冷凍庫保管で ている。今回、組織切片自動作製装置を用いて 2+が 1 例あったが、それ以外は全て 3+であった。 連続切片を作製し、コントロール標本薄切後、 (表 1)ER,PgR の保管温度別陽性率の平均値および標準偏差値(%) IHC 実施までの標本保管温度条件および適切な 保管期間の検討を行ったので報告する。なお、 我々は、第 63 回日本医学検査学会にて培養細 胞株の薄切の深さ(深達度)による陽性率の差 はほとんど見られないことを報告している。 【対象と方法】乳癌細胞株 MCF-7(核)と乳癌 培養細胞株 SKBR3(細胞膜)を自施設にて継代 培養し、80~90%コンフルエントで細胞回収後、 3 ヶ月間-80℃で保管した。使用時、常温に解凍 し、沈渣の 10 倍量の 10%中性緩衝ホルマリン を入れ攪拌し 3 時間固定後、スポイトを用いて セルブロックを作製した。セルブロックの薄切 は、組織切片自動作製装置 AS400M(倉敷紡績株 式会社)を用い、4μm 厚で連続切片を作製した。 スライドグラスはスターフロスト水緑磨(武藤 ER PgR % 7 日目 14 日目 7 日目 14 日目 常温 90.68±1.01 86.59±0.63 11.09±4.08 10.34±2.90 冷蔵 90.55±0.91 86.16±0.98 14.05±2.92 13.07±3.96 冷凍 90.49±0.73 86.79±0.91 14.02±3.11 14.64±4.13 7 日目では、3 種とも保管温度条件の違いによる有 意差は見られなかった。PgR は 14 日目に有意差 (p=0.046)が見られた。また、ER では 7 日目と 14 日目の間に有意差(p<0.001)が見られ、陽性率が 約 4%低下していた。 【考察】14 日目まででは保管温 度条件よりも保管期間が陽性率の違いに影響を与 える可能性がある。今後は、この特徴を理解した上 で内部精度管理を行う必要がある。また、保管期間 を延長し、追加検討を行いたい。 (連絡先)0823-22-3111 化学)を用いた。薄切後の標本は 45℃の伸展器 で約 90 分伸展させ、標本ケースに保管した。 保管検討温度は、①常温 25℃(J)、②冷蔵庫 -23- 4.組織切片自動作製装置を用いた病理業務効率化の検討 ○中川裕可里 1)、井上三鈴 1)、安村奈緒子 1)、田中美帆 1)、坂根潤一 1)、西村俊直 1)、 仲野秀樹 2)、谷山大樹 1)、斉藤彰久 1)、倉岡和矢 1)、尾上隆司 2)3)、谷山清己 4) 独立行政法人国立病院機構呉医療センター中国がんセンター 病理診断科 1)、臨床検査科 2)、臨床研究部 3)、病院長 4) 【はじめに】病理標本作製技術の均一化は、信頼 性の高い病理診断につながる。病理組織検査は、 業務効率化・精度管理向上のために病理標本作製 過程において自動化が進んでいる。多くの施設で 自動染色装置や封入装置を導入している一方で、 組織切片作製は高い技術と経験が必要であり、技 師の手作業に委ねられている。 当院では、2013 年 9 月に組織切片自動作製装 置(AS-400M) (倉敷紡績株式会社)を導入した。 【目的】標本作製業務の効率化及び、AS-400M の薄切安定性を検証し、業務運用状況と今後の展 望について報告する。 【対象】2013 年 9 月から 2014 年 6 月に提出され た手術材料 451 例、組織パラフィンブロック 4937 個について AS-400M を用いて標本作製を行った。 【方法】AS-400M は、薄切からスライドガラス への切片の貼り付け、伸展、乾燥までの一連の工 程を自動で行うことができる。また、病理システ ムとの連携により、カセットバーコードを読み取 り、スライドへのバーコード情報の印字を行うこ とも可能である。薄切刃は、FEATHER 社製ミク ロトーム替刃(A35)を用い、1 度に最大 96 ブロ ック、400 枚の標本スライドガラスを作製するこ とができる。 さらに、薄切条件を詳細に設定することが可能 であり、当院では「消化管用」 「硬組織用」 「血液 が多い検体用」 「その他」の 4 種の薄切条件を設 定して運用している。 AS-400M 導入にあたり、 以下の検討を行った。 1)AS-400M 薄切標本の評価 組織パラフィンブロック 4937 個を AS-400M で薄切を行い、HE 染色による標本評価を行った。 不良標本は、貼り付け不良(切片の剥がれ)、標 本切片上の傷を目視で確認した。また、HE 標本 作製後に顕微鏡的に診断に影響を及ぼすアーチ ファクト(メス傷、剥がれ、しわ等)がある場合 を不良とした。 2)CT 撮影による石灰化物同定の有効性 組織パラフィンブロック 540 個を CT 撮影し、 石灰化物同定の有効性を検証した。 【結果】 1)AS-400M 薄切標本の評価 4937 個中 3438 個(69.6%)で良好な標本作製 が可能であった。不良標本(30.4%)は、面出し 不良やしわ、貼り付け不良が認められた。 薄切成功率が高い臓器は、子宮円錐切除検体 (91.7%)と虫垂(92.3%) 、成功率が低い臓器は、 甲状腺(28.6%) 、脾臓(0%)が挙げられる。 2)CT 撮影による石灰化物同定の有効性 組織パラフィンブロック 540 個中 96 個(17.7%) に CT で確認できる石灰化が検出された。 【考察】AS-400M 薄切成功率の低い甲状腺は、 コロイドを上手く薄切できずしわが目立ち、脾臓 は血液成分が多く剥がれを認めた。また、脂肪が 多い乳腺は剥がれやすく、消化管は粘膜部や筋層 にしわが多い傾向が認められた。一方、成功率の 高い検体は、組織の硬度が全体的に均一であり、 薄切面に対して検体が 2 割~6 割程度の大きさで あった。 CT 撮影は、組織ブロックの石灰化を判別し、 AS-400M を効率よく運用するために有効であっ た。AS-400M は、面出し機能を有するが、組織 ブロックの石灰化や手術時に使用されるホッチ キス等は認識できない。よって、CT 撮影による 石灰化の検出は有効であると考える。 パラフィンブロックの薄切は、経験年数や技術 の高さにより標本の出来上がりが左右される。 AS-400M 庫内は冷房で温度管理されており、湿 度も一定の安定した条件下で薄切することがで きる。よって、AS-400M で薄切する利点は、厚 みが均一で組織切片の貼り付け位置が一定の標 本 を作 製でき るこ とが挙 げら れる。 さら に、 AS-400M はバーコード読み取りによる検体取り 間違えのリスクを低減することができる。 【結語】組織切片自動作製装置による安定した標 本作製は、業務効率化の向上に繋がる。今後は、 さらなる成功率向上を目指し、生検材料への応用 を図りたい。 -24- 連絡先:0823-22-3111 5.当センターにおけるセルブロック作製法とその有用性について ―子宮内膜細胞診を中心に― ○太田 歩 佐藤恵子 藤井千登勢 藤井里佳 野間麻美 髙野千代美 栗原久美子 尾崎未那 長谷川哲也 桒田浩子 岡田美恵子 小林孝子 福山市医師会健康支援センター 検査課 【はじめに】 子宮体癌は、ホルモン治療やリスク因子保有者の 増加に伴い近年増加傾向にある。子宮内膜細胞診は、 子宮内膜の前癌病変や子宮内膜癌のスクリーニング に用いられるが、血液混入などにより細胞が塗抹し にくい場合があり、構造所見がとらえにくく、細胞 診標本のみでは診断が困難なことが多い。当センタ ーでは、塗抹標本作製後の残りの細胞は組織診であ るセルブロック法を作製し、診断の補助として活用 している。一般にこの方法は作製に時間と手間がか かるなどの面から日常的には広く普及していない。 しかし、当センターでは、子宮体部をはじめとして 胸腹水や心嚢水など様々な検体で日常的に作製して いる。今回我々は、クルパックを用いた簡便なセル ブロック作製法を紹介し、子宮内膜細胞診において 特に診断に有用であった症例について報告する。 【対象と方法】 対象:当センターに 2010 年 1 月~2014 年 9 月に細 胞診の依頼のあった子宮体部検体 11,598 件につい て検討した。 方法: ①各病医院の臨床医がエンドサイトで採取した材料 をスライドに塗抹後、エンドサイトの先端を 20% 無臭中性緩衝ホルマリン(製品名:マイルドホルム) 入りスピッツへ入れる。このスピッツが塗抹標本と ともに当センターへ提出される。特別な場合を除き、 ほとんど全ての検体についてこのスピッツの提出を お願いしている。 ②スピッツはエンドサイトに付着している細胞を液 内に充分にふりおとした後、エンドサイトを取り除 き遠心分離を行う。その沈渣をクルパック(不織布 製のメッシュの小袋 3.0cm×3.0cm)に入れる。 ③クルパックごとカセットに入れ、あらためて 20%ホルマリンで固定する。その後自動密閉式包埋 装置にかけ通常のプロセッシング後パラフィンブロ ックにする。切片薄切後、HE 染色標本を作製する。 ④提出された塗抹スライドは Papanicolaou 染色を し、スクリーニングを行う。作製された HE 標本は、 細胞診標本と合わせて検討し、必要に応じて免疫染 色を施す。 【結果】 対象件数のうち、セルブロック標本が判定の一助 となったのは、11,598 件中、146 件であった。この うち塗抹標本には上皮細胞が認められず判定が困難 であったが、セルブロック標本には内膜腺細胞が認 められ陰性と判定した症例が 94 件あった。また、 塗抹標本では細胞構築がよみづらかったが、セルブ ロック標本で陰性と判定できた症例は 26 件であっ た。さらに、塗抹標本で異型細胞が認められ、セル ブロック標本で免疫染色を追加して確定診断にいた った症例が 26 件あった。 【症例提示】 セルブロック標本が特に有用であった子宮内膜細 胞診の症例を提示する。 【考察】 セルブロック標本は、スライドガラスに塗抹され た残りの材料で作製された標本であり廃棄されるエ ンドサイトに付着した細胞を利用して作製した標本 である。 さらに塗抹標本のみに比して、圧倒的に多量の情報 を有しており、この標本から得られる情報で判定が 可能になっている症例が少なくない。 また、セルブロックを作製していることにより、 同一検体で多数の標本を作製できる。これらは後日 免疫染色などの追加検査が可能であり、特に内膜癌 を疑う症例では、その判定の一助になっている。 今回紹介したクルパックを用いたセルブロック作 製法は、操作が簡便で安価である。また、組織診と 同じ過程で標本作製することが可能であることも日 常検査にとり入れやすい要因となっている。 【結語】 当センターで日常的に行っているセルブロック作 製法を紹介し、特に子宮内膜細胞診について若干の 検討を行った。この方法は採取された検体を最大限 活用し、無駄な再検査などを行わないことにつなが り、何よりも患者本人にとって大いに有益であると 考える。 -25- 連絡先 084-928-9922 6.急性骨髄性白血病最未分化型(AML-M0)との鑑別に苦慮した 急性リンパ性白血病(ALL)の1例 ○國廣まり 1) 横山真理 1) 小林謙司 1) 後藤千帆 1) 福井寿美 1) 松岡里佳 1), 三甲野久美子 1) 廣瀬 匡 2) 佐野史典 2) 末次慶收 2) 重西邦浩 3) 1)福山市民病院医療技術部臨床検査科, 2)福山市民病院診療部内科, 3)福山市民病院病理診断科 【はじめに】 ALL と AML では治療方針が異なるため,より迅 速な診断が求められるが,ALL と M0 の形態学的 判別は困難である.このような場合,細胞表面マ ーカーや染色体,遺伝子検査を考慮し診断するこ とが多いが,当院ではこれらの検査を外部委託し ており検査結果に時間を要する.今回我々は末梢 血および骨髄標本にて ALL と M0 の鑑別に苦慮 した症例を経験したので報告する. 【症例】 50 歳代女性.感冒様症状,悪寒,盗汗,頭痛のた め近医を受診.血液検査で白血球数>30 万/μl あ り白血病疑いで当院血液内科に紹介となった.入 院時検査所見は,WBC 324,100/μl, Hb 9.8g/dl, Plt 3.1 万/μl, LD 1,379IU/L.末梢血標本では, N/C 比が高く核クロマチン構造が繊細緻密で顆 粒は認められず一部に核形不整を伴う大小不同 の異常細胞が 97%を占め,それらの POD 染色陽 性率は 3%未満であった.骨髄検査所見は,有核 細胞数 90.5 万/μl, 巨核球数<15/μl であり,末 梢血と同様の異常細胞が 96%占めていた.骨髄標 本の PAS 染色では,異常細胞の一部に粗大な陽 性顆粒が認められた.細胞表面マーカー結果にて, CD10, CD19, CD34, HLA-DR が陽性,CD20, CD33 が弱陽性,Igκ, Igλが陰性であることから PreB-ALL が疑われた.最終的に染色体検査と遺 伝子検査より,t(9;22)(q34; q11.2); BCR-ABL1 を 有する B-ALL/LBL と診断されたが,患者は脳出 血をきたし初診日から 6 日後に永眠された. 【考察】 ALL と M0 は共に N/C 比が高く核クロマチン構 造が繊細緻密であり顆粒が認められないことや, 一部に核形不整や大小不同があることから,形態 学的に鑑別することが困難である.また,M0 で 認める芽球は POD 活性が電子顕微鏡でのみ証明 できるレベルのため,ALL と AML の鑑別に有効 である POD 染色が陰性となりその判別ができな い.通常,細胞表面マーカー検査を外部委託する 場合は,リンパ系と骨髄系でそれぞれ細胞表面マ ーカーの種類がセットとして組み込まれており, あらかじめどちらかを選択しなければならない. 今回は,形態学的に鑑別が困難であったことや POD 染色が陰性であったことよりその判断に迷 い,末梢血検体でリンパ系の依頼を,骨髄検体で 骨髄系の依頼をそれぞれ行い ALL と判断された が,患者は治療開始前に亡くなられた.今回の経 験から,少しでも早く治療に入るためにリンパ系 と骨髄系をできるだけ早期に見極める必要性を 感じた.そこで,ALL の診断の参考となる PAS 染色を末梢血標本にて行ったところ,骨髄標本で みられた粗大な陽性顆粒が同様に認められリン パ系を示唆することができた.ALL の診断におい て必ずしも PAS 染色が陽性になるとは限らない が,今回のように特徴的な粗大な陽性顆粒を認め ることができればリンパ系を支持できると考え られる.当院における PAS 染色は,骨髄標本の みを他の病理標本と一括で行っているため検査 時間を要する.しかし,今後リンパ系と骨髄系で 判断に迷う場合は,骨髄標本だけではなく末梢血 標本も PAS 染色を迅速に施行するなど症例毎に 対応していくことが重要であると考えられた.ま た,迅速に PAS 染色を行いリンパ系を支持する ことができれば,細胞表面マーカー検査を依頼す る際のリンパ系か骨髄系かの判断を手助けする ことができると考えられた. 【まとめ】 今回我々は M0 との鑑別に苦慮した ALL の 1 例 を経験した.ALL と M0 は形態および POD 染色 での鑑別は困難なため最終的には細胞表面マー カーの結果で判断されるが,少しでも早く治療に 入るために事前にできる限りの検査を行うこと が重要であると考えられる. -26- 連絡先 084-941-5151(内線 1262) 7.原因不明の腎不全の治療中に多発性骨髄腫と診断された1例 1) ○横山真理 1) 小林謙司 1) 国廣まり 1) 後藤千帆 1) 福井寿美 1) 松岡里佳 1) 三甲野久美子 1) 廣瀬 匡 2) 末次慶收 2) 田村麻衣子 3) 重西邦浩 3) 佐藤康晴4) 福山市民病院医療技術部臨床検査科,2)福山市民病院診療部内科,3) 福山市民病院病理診断科, 4) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学(腫瘍病理/第二病理)分野 【はじめに】 多発性骨髄腫とは骨髄において形質細胞が単 クローン性に増殖するリンパ系の腫瘍であり,増 殖した骨髄腫細胞や,そこから産生される単クロ ーン性免疫グロブリンが骨病変,腎機能障害,M 蛋白血症などを引き起こす疾患である.今回,原 因不明の腎不全の治療中に心機能の精査目的で 紹介され,多発性骨髄腫と診断された症例を経験 したので報告する. 【症例】 60 代男性.他院にて原因不明の腎不全とエリス ロポエチン抵抗性貧血の治療中,心エコーで機能 低下を認めたため精査目的で当院循環器内科に 紹介受診となった.初診時,生化学の検査データ は尿素窒素 30.8mg/dl,クレアチニン 7.11 mg/dl, 尿蛋白 1556mg/dl と高値で,腎不全を示すもの であった.末梢血では,WBC 5100/μl,RBC 240 ×104/μl,Hb 7.6g/dl,PLT 8.8×104/μl であり, 末梢血液標本に連銭形成と N/C が高い小型の異 常細胞を 27%認め,一部は集塊を形成していた. 総蛋白 9.1g/dl,Alb 3.7g/dl,A/G 比 0.69 より多 発性骨髄腫が疑われ,骨髄穿刺が施行された.骨 髄は高度過形成,有核細胞数 8.1×104/μl ,巨核 球数<15/μl ,細胞分類では形質細胞を 95.8%認 めた.また血清の蛋白分画は Alb 45.8%,α1 グ ロブリン 2.3%,α2 グロブリン 12.7%,βグロ ブリン 7.5%,γグロブリン 31.7%であり,IgG 269mg/dl,IgA 11mg/dl,IgM 9mg/dl,IgE 4IU/ml, IgD≦0.6mg/dl.尿,血清ともに Bence-Jones Protein-κ型 M 蛋白を認めたため,Bence-Jones 型の多発性骨髄腫と診断された. 【考察】 末梢血液標本で見られた集塊状の異常細胞は 骨髄標本で見られた骨髄腫細胞と形態が類似し ており,同一の細胞であると考えられた.これら の骨髄腫細胞は CD56 陽性であり,CD56 抗原は 接着因子のアイソフォームの一つで,発現してい る細胞同士が結合する性質を持っているため,今 回の症例では末梢血の骨髄腫細胞が集塊状に認 められたと考えられた. Bence-Jones 型の多発性骨髄腫では骨髄腫細胞 から多量の Bence-Jones 蛋白が産生される. Bence-Jones 蛋白は免疫グロブリンの遊離の L 鎖 が単一クローン性に出現したもので,分子量が小 さいため糸球体で濾過され,血清の総蛋白は正常 もしくは低値となることが多い.実際に他院測定 時の総蛋白は正常範囲内であり,多発性骨髄腫が 疑われにくく,なかなか腎不全の原因が判明しな かったものと考えられた.当院紹介時には 9.1g/dl と 軽 度 増 加 し て お り , 血 清 に も Bence-Jones Protein-κ型 M 蛋白を認めた.これは腎不全によ る糸球体濾過能の低下,腎異化能を上回る Bence-Jones 蛋白の多量生産によるものと考えら れた. 糸球体で濾過された Bence-Jones 蛋白の一部 は尿とともに排泄されるが,多くは近位尿細管で 再吸収される.その際,尿細管上皮に沈着したり, 円柱を形成し尿細管を閉塞させることで,尿細管 を障害し,腎機能を低下させる.他の蛋白よりも Bence-Jones 蛋白による腎への障害は大きく,骨 髄腫腎やアミロイド腎の原因ともなるため,腎機 能障害では多発性骨髄腫も念頭においた検査が 必要であり,生化学のデータのみならず,末梢血 液標本の詳細な観察も重要であると考えられた. 連絡先:福山市民病院 084-941-5151(内線番号 1262) -27- 8.透析患者における XE2100 の網赤血球ヘモグロビン等量と鉄動態について ○山本真代 河野浩善 三好夏季 井上芳彦 兼丸恵子 飯伏義弘 地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院 【はじめに】 近年、バイエルメディカル社で測定される網赤 血球ヘモグロビン含量(CHr)が、「慢性腎臓病 患者における腎性貧血治療のガイドライン」の鉄 補充療法の開始基準のひとつとして掲載され、注 目されている。また、XE-2100(Sysmex 社)で 測定される網赤血球ヘモグロビン等量(Ret-He) が簡便で、なおかつ CHr と同等の有用性がある と報告されている。当院の透析患者で、Ret-He による鉄動態の把握が可能か検討したので報告 する。 【対象】 健常人ボランティア 40 例(健常群)及び透析 患者 40 例(透析群) 【方法】 ① 末梢血液検査 対象項目:Hb、Ret-He、赤血球ヘモグロビン等 量(RBC-He)、D-He(D-He= Ret-He-RBC-He)、 網赤血球実数(RET 実数) 測定装置:XE-2100(Sysmex 株式会社)の CBC +RET モード ② 生化学検査 対象項目:血清鉄(Fe)、フェリチン(FER) 測定装置:BM2250(日本電子株式会社) 測定試薬:クイックオートネオ Fe(株式会社シノ テスト)、LZ テスト栄研 FER(栄研化学株式会社) 【結果】 健常群と透析群の各項目の平均値比較では、 FER 以外の項目で有意差が認められた。 健常群(N=40) 透析群(N=40) Hb(g/dL) 14.1±1.26 10.1±1.14** Fe(μg/dl) 100.1±29.0 45.5±18.0** FER(ng/ml) 99.6±112.1 65.2±86.3 Ret 実数 5.2±1.6 3.6±1.3** Ret-He(pg) 35.2±2.1 31.3±4.1** RBC-He(pg) 31.6±1.8 29.1±3.0** D-He(pg) 3.6±0.9 2.1±2.5** 透析群における相関では、Ret-He、RBC-He と Fe(r=0.613、r=0.450、各 p<0.01)は有意な 相関関係が認められた。FER(r=0.230、r=0.232、 各 p<0.05)は統計上の有意差はあるものの、相関 係数は低かった。また、Hb 及び RET 実数では認 められなかった。 一方、Ret-He、RBC-He および D-He では、透 析群は、健常群に比べ低値側に広く分布していた。 特に、D-He がマイナス値だった症例は、健常群 では見られなかったのに対し、透析群では 6 例見 られた。 【考察】 Ret-He、RBC-He および D-He において健常群 に比べ、透析群が有意に低かった。さらに、透析 群の Ret-He 及び RBC-He は、RET 実数には依 存せず、鉄動態を反映している可能性が示唆され た。ただし、FER については、炎症などでも上昇 することから鉄動態を正確に反映していない症 例も含まれている可能性が高い。 さらに、D-He のマイナス値は透析時に Fe 剤を 投与していない症例であったことから、直近の赤 血球成熟過程における鉄量低下が示唆され、造血 刺激に鉄供給が追いつかない現象を迅速に把握 できる可能性がある。しかし、検討症例が少ない ため、今後検討症例を増やすとともに、マイナス 値だった症例を追跡調査し、鉄剤投与を含め変化 を見ていくことが必要である。 **p<0.001 -28- 連絡先:082-221-2291 9.新生児末梢血塗抹標本における 細胞崩壊像のアルブミン添加による改善の検討 ○内田理加 井上礼子 藤井弘美 渡部八重子 山根博行 平田勝美 西阪 隆 県立広島病院 臨床研究検査科 【はじめに】 当院では新生児集中治療室(NICU)から新生 児の白血球分類の目視依頼が多く提出されその 標本の大半では多数の細胞崩壊像が認められる。 そこで、反応性リンパ球や異常リンパ球の崩壊を 防ぐ方法として浸透しつつある、血液にアルブミ ン溶液を添加してウェッジ標本を作製する方法 が、新生児末梢血塗抹標本の細胞崩壊像にも有効 であるか検討した。また、これまで反応性リンパ 球の細胞崩壊が著しい症例に関してはスピナー 法を用いて対策としてきたが、血液形態観察は原 則的にウェッジ法を利用するとされていること から、それらの症例についてもアルブミン添加法 の検証を行った。 【対象と方法】 平成 26 年 8 月から 9 月の間に提出された NICU 検体のうち 41 例、平均日齢 39 日、男児 23 例、 女児 18 例を対象とした。また、同期間中に反応 性リンパ球と思われる細胞崩壊像を多数認めた 新生児以外の検体(以下、成人検体)8 例、平均 38 歳、男性 3 例、女性 5 例も対象とした。 NICU 検体は XS800i(シスメックス)で、成 人検体は XE5000(シスメックス)で CBC を測 定したのち、通常のウェッジ標本(W)、アルブ ミン添加ウェッジ標本(A)、スピナー標本(S) の 3 種類の標本を作製した。標本 A は、22%ウシ アルブミン溶液を5%の割合で血液に加えて作 製した。それぞれ白血球 200 カウント中に出現し た細胞崩壊像をカウントし、細胞崩壊像の改善と、 白血球分画の変化について検討した。 【結果】 NICU 検体の細胞崩壊像(/200WBC)は W) 9~237 個、A)0~37 個、S)0~16 個であった。 自動血球分類装置と各標本の白血球分画を比較 すると、リンパ球、好中球ともに、標本 W に比 べ標本 A、S の方がやや自動分類に近い値となっ た。標本 W、A、S の間で白血球分画に変化がみ られたが、増減する分画は標本ごとに異なってい た。 また、成人検体の細胞崩壊像は W)34~197 個、 A)13~37 個、S)0~1 個であった。 【考察】 NICU 検体の細胞崩壊像は、標本 W に比べ標 本 A で大幅に改善し、新生児末梢血塗抹標本の細 胞崩壊像への対策としてアルブミン添加法が有 効であることがわかった。アルブミン添加法は反 応性リンパ球や異常リンパ球といったリンパ系 の細胞崩壊の対策として知られているため、主に リンパ球の細胞崩壊が改善されると予測してい た。しかし、標本 W と標本 A で白血球分画に変 化はあったものの、細胞崩壊像の改善によって特 定の分画のみが変動することはなかった。このこ とから、アルブミン添加によりリンパ球に限らず 様々な分画の細胞崩壊が防がれたと推測される。 成人検体についてもアルブミン添加法での細 胞崩壊の改善が認められ、その有用性が確認でき た。 細胞崩壊像の値としてはスピナー法が最も少 ない結果となったが、形態観察にはウェッジ法が 適していること、また、ウェッジ法とスピナー法 では細胞の見え方に若干の違いがあることから、 新生児末梢血塗抹標本の細胞崩壊像改善には、ア ルブミン添加法が適していると考えられた。 -29- 連絡先:082-254-1818(内線 1201) 10.一次免疫応答が疑われた遅発性溶血性輸血副作用の1例 ○荒木康晴 河津沙耶佳 月原麻美 宗本聖 荒谷千登美 丹下富士男 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 検査部 【はじめに】 遅発性溶血性輸血副作用(DHTR)とは、輸血さ れた赤血球が抗原刺激となって産生された抗体 が輸血赤血球と反応し、破壊される事により起こ る副作用のことである。DHTR は過去に輸血や妊 娠歴のある場合に二次免疫応答により発症する とされており、一次免疫応答で発症することは稀 とされている。今回、輸血検査に配属になり経験 の浅い時期に遭遇した DHTR の症例を報告する。 【症例】 73 歳 女性 血液型 AB 型 Rh(+) 僧房弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症による僧房 弁・大動脈弁置換術(弁形成術)の適応となり、手 術が施行された。手術前の不規則抗体スクリーニ ング検査は陰性。赤血球製剤は手術当日に 4 単位、 手術翌日に 4 単位、術後 3 日目に 2 単位の計 10 単位が輸血された。 【臨床経過】 術後一ヶ月間の経過は良好で、Hb は 11g/dl 前 後で安定していたが、手術(2/4 施行)から約 5 週間 経った 3/12 に貧血進行(Hb6.7g/dl)、網状赤血球 増加(113.4‰)、LD(929IU/L)、T-Bil (1.6mg/dl)、 I-Bil (1.1mg/dl)が 高値となり、血清の外観は正 常であったが溶血を疑う検査データとなった。こ の時、臨床は弁置換術による機械的溶血を疑って いたが、輸血準備の不規則抗体スクリーニング検 査が弱陽性となったため精査となった。 【溶血の原因検索】 PEG-IAT による不規則抗体同定検査で抗 E 抗 体が検出された。患者の Rh 式血液型のタイピン グは CCDee であった。そこで抗 E 抗体産生によ る DHTR を疑い、輸血された赤血球製剤の E 抗 原を調べた結果、10 単位のうち 8 単位分が E 抗 原陽性であった。次に患者に輸血した E 抗原陽性 の血球を確認するため貧血が進行し始めた 3/6 の 保存検体と貧血が確認された 3/12 日の検体を用 いて直接抗グロブリン試験(DAT)を実施した。3/6 の検体では DAT 陽性、貧血が進行した 3/12 の検 体では陰性であった。また 3/6 の時点での不規則 抗体スクリーニング検査は術前同様陰性であっ たことから、輸血により産生された抗 E 抗体が輸 血された E 抗原陽性の血球に反応して飽和状態 となり DHTR を引き起こしたものと推測された。 DAT が陽性となった 3/6 の検体を用いて DT 解離 液による抗体解離試験を実施したが解離液から は不規則抗体は検出されなかった。その後、貧血 の進行はおさまり、不規則抗体は貧血進行時の弱 陽性反応から次第に強度を増していき、術後 6 週 には新たに抗 c 抗体の産生も認められた。 【考察】 本症例は、当初は弁置換術による機械的溶血を 疑われていたが輸血関連検査の精査により DHTR と判明したものである。溶血が輸血後 1 ヶ 月を経過して発症したことから一次免疫応答に よるものと推測された。また、DAT が陽性の場合、 通常は解離液から原因抗体が証明されるが、今回 は保存血球が少量しか残っていなかったため解 離試験では原因抗体が確認できなかった。 臨床には Hb の低下は、手術時に輸血された赤 血球が DHTR により破壊された事が原因である 事や、DHTR を発症した患者に対する輸血は産生 された不規則抗体が原因となって症状を悪化さ せる危険性があるため注意を要する事を報告し た。また造血の為の鉄剤補給に関する問合せもあ ったが、溶血による血清鉄の上昇を認めたため、 鉄剤は必要無いと説明した。また本症例の造血機 能は網状赤血球の増加から問題はないと判断し、 今回は輸血も行わず自然回復をした。 以上より、DHTR の発症が予測される場合は輸 血部門から担当医師に十分な情報提供を行い、追 加輸血の必要性と危険性を慎重に検討すること で患者の予後に大きく貢献できると思われる。 【まとめ】 今回の症例から、経験の浅い時期に輸血関連検 査の臨床に結びつく様々な知識を習得でき、また 臨床との連携をしっかり行うことは、その後の治 療において患者の予後を大きく左右するため不 可欠であると痛感した。この経験を活かし、今後 も輸血検査の技術のみならず臨床に対応できる 知識とコミュニケーション力の習得を心がけて いきたいと思う。 連絡先 0823-22-2111(内線 4305) -30- 11.ABO 式血液型おもて・うら不一致の症例 ○高橋沙弥 奥 成美 髙瀬圭一 國友孝幸 公立みつぎ総合病院 臨床検査室 【はじめに】 ABO 式 血 液 型 検 査 に お い て 、 お も て ・ うら不一致となる原因には、抗原量が少 ない、または減弱している場合や、冷式 不規則抗体、亜型、異型輸血、造血幹細 胞 移 植 後 、キ メ ラ・モ ザ イ ク な ど が あ る 。 今回、術前の試験管法による血液型検 査でおもて・うら不一致となった症例を 経験した。 【症例】 58 歳 女 性 。 脾 動 脈 瘤 の 手 術 の た め 入 院 となった。既往歴は子宮筋腫。輸血歴・ 移植歴はなし。 【結果】 試 験 管 法 お も て 検 査 で は 抗 A(-) 、 抗 B(4+)、 抗 D(4+)で B 型 Rh(+)、 う ら 検 査 で は A1 血 球 (-)、B 血 球 (-)で AB 型 と な り 、 おもて・うら不一致により判定保留とな った。当院では血液型判定が困難であっ たため、赤十字血液センターに精査を依 頼した。 赤十字血液センターでも試験管法によ る血液型検査が行われ、当院と同様判定 保留となった。しかし、半日放置後おも て検査抗 A で 1 ㎜以下の微細凝集を検出 し た 。レ ク チ ン と の 反 応 は 抗 A1 レ ク チ ン (-)、 抗 H レ ク チ ン (3 +)。 血 清 中 の 型 転 移 酵 素 活 性 測 定 は A 型 転 移 酵 素 128 倍 、 B 型 転 移 酵 素 32 倍 で と も に 高 活 性 。唾 液 中 の 血 液 型 物 質 検 査 は A 型 物 質 、B 型 物 質 、 H 型物質全て陽性。吸着解離試験では解 離液中に抗 A を認めた。赤血球分離後の 血 液 型 検 査 で は B 型 Fy(a+b-) と A1B 型 Fy(a+b+)の 2 種 類 の 血 球 の 混 在 を 認 め た 。 フローサイトメトリー検査でも B 型血球 約 98.5% 、 AB 型 血 球 約 1.5% の 割 合 で 2 種類の血球の混在を認めた。また、グラ フがキメラで特徴的な二峰性を示した。 こ れ ら の 結 果 か ら B/AB キ メ ラ で あ る 可 能性が高いという結果になった。 血液型検査法には試験管法の他に、カ ラム法、スライド法があり、今回の症例 を用いて試験管法、カラム法、スライド 法でのおもて検査抗 A の反応を比較した。 試験管法では直後判定で抗 A に凝集は認 められなかったが、半日放置後 1 ㎜以下 の微細凝集を認めた。カラム法では抗 A の凝集は全く確認できなかった。スライ ド法では検査実施直後に抗 A で微細凝集 を検出した。 【まとめ】 今回、試験管法による血液型検査でお もて・うら不一致となり、精査の結果 B/AB キ メ ラ と 考 え ら れ る 症 例 を 経 験 し た。 試験管法、カラム法、スライド法の 3 種の血液型検査法で微細凝集の検出を比 較したところ、スライド法で最も瞬時に 微細凝集が検出できた。 血液型検査用手法では試験管法が推奨 されているが、症例によっては今回のよ うに凝集の検出にばらつきが出る可能性 があるため、試験管法でおもて・うら不 一致となった場合にはスライド法の実施 が有用ではないかと考えられた。 血液型判定不能時に緊急輸血を要する 場 合 、「 輸 血 療 法 の 実 施 に 関 す る 指 針 」 に 基づいて、赤血球製剤は O 型、血漿・血 小 板 製 剤 は AB 型 を 使 用 す る よ う 定 め ら れている。今回の症例では手術用の輸血 製剤の確保が必要であったため、血液型 判定不能時の輸血の対応について再認識 することができた。 -31- 連絡先:0848-76-1111 内線 1163 12.不規則抗体検出に影響を及ぼす要因の検討 ○實近理那,兒玉有里,藤井明美,藤井弘美,平田勝美,西阪 隆 県立広島病院 臨床研究検査科 【はじめに】 輸血検査において臨床的意義のある不規則抗 体を検出することは重要であり,その方法として 間接抗グロブリン法は必須である。しかし,間接 抗グロブリン法は検査方法や試薬などで結果が 異なることがある。通常,輸血検査における赤血 球と血漿の割合は赤血球 1 滴:血漿 2 滴と表示さ れることが多いが,正確な比は赤血球 1:血漿 80 である。今回,赤血球と血漿の比により抗体検出 及び凝集の強さに差を認めるかについて検討を 行ったので報告する。 【方法】 検体:リファレンス抗 D コントロールキット (抗 D 0.1 iu/ml 含:オーソ社) 赤血球:AlbaQ-Check○R J Tube-2(O 型 RhD 陽 性:オーソ社) 試薬:ポリエチレングリコール(ガンマペグ: イムコア社),アルブミン液(重合ウシアルブミ ン液 22%:オーソ社) ,クームス試薬(抗ヒト IgG 血清:オーソ社) 条件:①3%赤血球,②5%赤血球 (A)血漿 2 滴 80μl, (B)血漿 3 滴 120μl, (C) 血漿 5 滴 200μl 条件の各組み合わせで,ポリエチレングリコー ル間接抗グロブリン法(以下 PEG-IAT),アルブ ミン間接抗グロブリン法(以下 Alb-IAT) ,反応増 強剤無添加間接抗グロブリン法(以下 1h-IAT) を実施した。 なお,スポイト(樹脂製)は検定を行い,1 滴 40μl であることを確認した。 【結果】 ①3%赤血球 A:PEG-IAT(1+) Alb-IAT(w+) 1h-IAT(1+) B:PEG-IAT(2+) Alb-IAT(w+) 1h-IAT(1+) ②5%赤血球 A:PEG-IAT(1+) Alb-IAT(w+) 1h-IAT(w+) B:PEG-IAT(1+) Alb-IAT(w+) 1h-IAT(w+) C:PEG-IAT(2+) Alb-IAT(1+) 1h-IAT(w+) 【考察】 ①の条件下では,PEG-IAT においては A より B に強い凝集を認め,Alb-IAT,1h-IAT では差は 認められなかった。②の条件下では,PEG-IAT, Alb-IAT においては A,B より C に強い凝集を認 め,1h-IAT では差は認められなかった。 抗原抗体反応の最適比は赤血球 1:血漿 80 であ り,3%赤血球では血漿 3 滴,5%赤血球では血漿 5 滴である。今回の結果でも,それぞれの最適比 である①B,②C の条件下でより強い凝集が認め られた。 血漿 3 滴の場合の凝集の強さは,PEG-IAT, 1h-IAT において 5%より 3%赤血球のほうが強か った。 当院の IAT は血漿を 3 滴使用としているが, 結果より血球濃度は 5%より 3%のほうが最適で あると思われた。 また,今回の検討では PEG-IAT において赤血 球 と 血 漿 の 比 に よ る 影 響 が あ り , Alb-IAT と 1h-IAT ではほとんど影響がなかった。 なお,全ての検査方法において赤血球と血漿の 比を変えても抗体の検出は可能であった。 【まとめ】 近年輸血検査の自動機器導入施設は増加し,赤 血球浮遊液の濃度や血漿量を考慮せずとも一定 の検査結果が得られるようになった。しかし,試 験管法による間接抗グロブリン法は輸血検査の 基本である。検査手技や凝集の見方を習得するこ とも必要であるが,抗体検出の最も基本である赤 血球と血漿の比を正確にすることも重要である と認識した。当院では,赤血球と血漿の最適比を 考慮し血漿は 3 滴としている。血漿の滴下数につ いて検討するなど,自施設の器具の精度管理を行 うことによって不規則抗体をより正確に検出す ることができるのではないかと考える。 -32- 連絡先:082-254-1818(内線 1332) 13.出生時血液型判定の有用性について ○長谷川 春 永尾祐香里 小野寺利恵 (山陽女子短期大学 臨床検査学科) 【はじめに】 自分は生まれた時にスライド法で B 型と判定さ れ、自分も家族も B 型だと思い込んでいた。しか し、学校のオープンキャンパスの体験実習で AB 型であることが判明し、入学後の学内実習で追加 検査を行った。自分自身の経験からなぜそのよう な結果になったのか、出生時血液型判定の有用性 について考えた。 【方法】 ①ABO 血液型判定(試験管法、スライド法) ②抗 H レクチン、抗 A₁レクチンとの反応 ③唾液中の型物質測定 ④抗 A、抗 B に対する被凝集価測定 ⑤フローサイトメトリー(FCM)による A 抗原、 B 抗原量の測定 FCM による A 抗原、B 抗原の検出は、二塩酸ス ベルイミノ酸ジメチル(DMS)処理した末梢血を 抗 A、抗 B モノクローナル抗体と反応させ、その 後 PE 標識抗マウスポリクローナル抗体で染色し、 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社の BD Accuri™ C6 フローサイトメーターを用いて測定 した。 【結果】 ①試験管法:オモテ検査 抗 A(4+)、抗 B(4+) 、 ウラ検査 A₁血球(0)、B 血球(0)、O 血球(0) スライド法:抗 A(+ 反応が遅かったが凝集を確 認することができた)、抗 B(+) ②抗 H レクチン(3+) 、抗 A₁レクチン(0) ③型物質の抑制価:A 型物質(4 倍)、B 型物質(2 倍)、H 型物質(64 倍) ④被凝集価:抗 A 256 倍(A₁B 対照 1024 倍)、 抗 B 1024 倍(A₁B 対照 1024 倍) スコア:抗 A 84(A₁B 対照 119)、抗 B 117(A₁ B 対照 115) ⑤蛍光強度 Mean channel:A 抗原量 2357(A₁B 対照 14379)、B 抗原量 11855(A₁B 対照 12929) 問題なく判定できた。しかし、スライド法では抗 A の反応が抗 B に比べ凝集が遅く、弱い凝集を検 出した。またレクチンとの反応は、対照 A₁B と 比べて、抗 H レクチンとは強く反応し、抗 A₁レ クチンとは反応せず A₁抗原を確認することがで きなかった。唾液中の型物質検査においては、A 型物質、B 型物質、H 型物質の確認ができたが、 対照の A₁B 型より型物質の量が少なく、A 型物質、 B 型物質より H 型物質の方が多い結果となり、亜 型の可能性が示唆された。また A 型物質のみ減少 しているのかと予測していたが、A 型物質と B 型 物質が共に減少していた。これは型物質の測定に は個人差の影響も考慮する必要があると考えら れた。 抗 A、抗 B に対する被凝集価測定においても、対 照 A₁B と比較すると抗 A では被凝集価が 2 管差 以上、スコアの差が 10 以上であり、またフロー サイトメトリーにおける抗原量の測定でも A 抗 原量が少ないことが確認できた。フローサイトメ トリーでは抗原量が数字で評価できるため客観 性に優れていた。 これらを総合的に判断し自分の血液は出生時の 抗原未発達に加え A2B であったと考えられた。 【まとめ】 出生時の血液型判定は、新生児の抗体が未産生な ためオモテ検査のみで判定されることが多い。さ らに、抗体だけでなく抗原も未発達なことが知ら れており、新生児が亜型の場合もオモテ検査だけ では誤判定される可能性がある。出生時血液型判 定は今回のような誤判定も有り得るため慎重に 行う必要がある。正しい判定のためには出生時の 簡易な血液型判定は推奨されない。血液型の判定 は抗原抗体が十分に産生された後に試験管法や カラム凝集法でオモテ検査とウラ検査を実施す る必要性があると考えられる。 連絡先:0829-32-3465 【考察】 試験管法での凝集は、抗 A、抗 B ともに(4+)と -33- 14.当施設における血液培養複数セット採取の有用性についての検証 ○ 行廣五月 志田原郁子 寺岡尚美 岩室徳子 大隅莉南 藤井千登勢 藤上良寛 福山市医師会健康支援センター 【はじめに】 血液培養検査は、血流感染症の起因菌検索にお いて重要で緊急性の高い検査である。2014 年 4 月の診療報酬改定により、2 セット採取による 2 回の算定が可能となり、今後更に血液培養検査の 検体数増加が期待される。 今回、当施設の血液培養における複数セット採 取の有用性の検証を目的に、培養陽性率、分離菌 種を 1 セット採取と比較した。 【対象・方法】 2009 年 1 月~2014 年 6 月までの間に、当施設 において血液培養検査が実地された 7,526 検体を 対象とした。なお、1 セット採取、複数セット採 取のいずれも検体数は 1 とし、セット中の 1 本で も菌が検出された場合を陽性 1 と算定した。 自動血液培養分析装置は 2009 年~2013 年まで はバクテック 9120、2014 年はバクテック FX(日 本 BD)を使用した。培養期間は 5 日間に設定し、 陽性検体からの分離菌の同定はバイテック 2(シ スメックス・ビオメリュー)で行った。 【結果】 検討期間中の総検体数は 7,526 検体、1 セット 採取は 4,399 検体、複数セット採取は 3,127 検体 であり、各年の複数セット採取実施率は 2009 年 で 27.6%(363/1,316 検体)、2014 年で 57.1% (452/791 検体)と上昇がみられた。 1 セット採取における培養陽性率は、2009 年で 24.9%(237/953 検体)、 2010 年で 28.9%(252/871 検体) 、2011 年で 28.1%(199/709 検体)、2012 で年 21.6%(169/781 検体)、2013 年で 24.8% (185/746 検体)、2014 年で 25.1%(85/339 検体) であった。 2 セット採取における培養陽性率は、2009 年で 16.5%(60/363 検体) 、2010 年で 18.9%(83/439 検体) 、2011 年で 25.8%(130/503 検体)、2012 年で 28.0%(153/546 検体)、2013 年で 26.0% (214/824 検体)、2014 年 22.1%(100/452 検体) であり、1 セット採取よりやや低い陽性率であっ た。 1 セット採取で分離された菌の検出割合(1 セ ット採取での検出菌全体に対する割合)は、CNS が 28.2%と最も高く、次いで E. coli などの 腸内 細菌群の 24.3%、黄色ブドウ球菌 (MRSA・MSSA) の 18.6%となり、これら 3 群の菌で全体の 71.1% を占めた。 複数セット採取で分離された菌の検出割合(複 数セット採取での検出菌全体に対する割合)は、 E. coli などの腸内細菌群が 39.6%と最も多く、次 いで CNS の 25.3%、黄色ブドウ球菌(MRSA・ MSSA)の 12.2%となり、これら 3 群の菌で全体 の 77.1%を占めた。1 セット採取での分離菌と比 べると、E. coli などの腸内細菌群の割合が高い結 果となった。複数セット採取から分離した CNS の 77.0%は 1 セットのみ陽性であった。 【考察・まとめ】 今回の検証では、培養陽性率は 1 セット採取に 比べ、複数セット採取がやや低い傾向にあった。 複数セット採取率は経年的に上昇がみられ、有意 性の高い E. coli などの腸内細菌群検出割合は複 数セット採取のほうが高く、培養における複数セ ット採取は起因菌の決定において重要であると 思われた。一方、汚染の指標にも利用される CNS については、複数採取で 1 セットのみ陽性となる 場合が多く、CNS 検出時の起因菌か汚染菌かの判 断には複数セット採取が有用であることが検証 された。今後、採血手技についても臨床サイドと 協力して確認し、複数セット採取の重要性を発信 しなければならないと考える。 -34- 連絡先:084-922-8520 15.ERCP で採取された胆汁のグラム染色で発見された ランブル鞭毛虫症の1例 ○大村和廣 國廣まり 磯﨑綱次 福井寿美 後藤千帆 平田直也、 植田佳弥 早田奈都美 梅本千佳 三甲野久美子 福山市民病院 臨床検査科 【はじめに】 ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)はヒトの小 腸や胆道に寄生して、下痢症状を引き起こすこと が知られている。日本土着の症例もあるが、最近 では海外旅行で感染する例が多く、汚染された食 品や飲料水を経口摂取して感染する。今回我々は、 胆管閉塞を伴う膵頭部癌患者より ERCP(内視鏡 的逆行性胆管膵管造影)で採取された胆汁のグラ ム染色で栄養型のランブル鞭毛虫を検出したの で報告する。 【症例】 患者:60 代 男性。 海外渡航歴:グアム。 主訴:肝機能障害。 既往歴:2001 年 心筋梗塞で冠動脈ステント留置。 2005 年 肺癌手術施行。 現病歴:2013 年 11 月、他院にて原因不明の肝機 能障害を指摘され、精査目的で当院に紹介された。 当院初回検査所見:AST 249U/L、ALT 333U/L, T-Bil 1.4mg/dl,D-Bil 0.9mg/dl,ALP 724U/L, LAP 470U/L,γ-GTP 1984U/L となり肝胆道系 の検査値が高値であった。CT 検査を行ったとこ ろ、膵頭部癌による閉塞性黄疸疑いで精査となっ た。入院後、ERCP による胆道ステント留置術を 施行した際に胆汁と膵液が採取され、胆汁は細菌 検査、膵液は細胞診検査に提出された。 細菌検査所見:胆汁のグラム染色を行ったところ、 扁平上皮、白血球は見られず、細菌も陰性であっ たが、ランブル鞭毛虫の栄養型と思われる虫体を 認め、生標本の作製とギムザ染色を行ったところ、 生標本では運動性を伴う虫体を確認し、ギムザ染 色では核と鞭毛を確認した。また、細胞診検査に 提出された膵液のパパニコロウ染色からも、ラン ブル鞭毛虫の栄養型を確認した。尚、一般細菌培 養は陰性であった。 治療:メトロニダゾール 750mg/日・5 日間処方さ れ、その後のドレーン排液の塗抹検査でランブル 鞭毛虫の陰性化を確認し、SSPPD(亜全胃温存膵 頭十二指腸切除術)が施行された。術後、肝胆道系 の検査値は低下し、肝機能障害は改善傾向を示し た。 【考察】 今回、膵頭部癌による閉塞性黄疸にランブル鞭 毛虫症が合併した症例を経験した。ランブル鞭毛 虫症は日本土着の感染例もあるが、患者はグアム への渡航歴があり、海外旅行での感染も考えられ た。今回、グラム染色で発見したランブル鞭毛虫 の栄養型は、好中球と同等の大きさで、よく観察 しなければ見間違う可能性があったが、前方は丸 く後方は尖る独特の形状に加え、4 対 8 本ある鞭 毛の一部と思われるものを認めたことがランブ ル鞭毛虫症を疑う要因となった。しかし、虫体の 内容物は不鮮明のため確定には至らず、追加検査 として生標本の作製とギムザ染色を行い、生標本 では鞭毛による運動性を、ギムザ染色では 2 個の 核と鞭毛を認めたことが確定につながった。 グラム染色は簡便な検査法であるが、迅速に細 菌感染の存在を推定できるため、その重要性は高 い。また、今回の症例のように細菌以外の病原体 も推定することができる。しかし、経験不足や、 染色目的の相違ゆえに病原体を見逃してしまう 可能性がある。今回のランブル鞭毛虫の栄養型も 一見するだけでは細胞成分と見間違う可能性が あった。そのため、グラム染色を実施する際には 海外渡航歴などの患者背景、臨床症状、臨床材料 の種類などを把握することが重要であると考え られた。 -35- 連絡先:(084)941-5151 (内線 1263) 16.侵襲性髄膜炎菌感染症の 1 例 ○池田光泰 梶川裕子 外丸香織 池部晃司 山本加代子 笹谷真奈美 水野誠士 広島厚生連廣島総合病院 臨床研究検査科 【はじめに】 髄膜炎菌は感染力が強く、集団感染を起こしや すいことから、髄膜炎菌性髄膜炎は流行性髄膜炎 とも呼ばれる。呼吸器分泌物を介して飛沫感染し、 無症状の健康保菌者も存在するが、血液や髄液に 菌が侵入すると、敗血症や髄膜炎など重篤な感染 症 を発 症する 。ま た、侵 襲性 髄膜炎 菌感 染症 (Invasive Meningococcal Disease:以下 IMD) は感染症法では第 5 類感染症の全数把握対象疾患 にあたり、国内での報告数は年間 20 例程度とま れな疾患である。今回我々は、血液および髄液か ら髄膜炎菌を検出した症例を経験したので報告 する。 【症例】 患者:63 歳、男性。主訴:発熱、関節痛。 現病歴:2013 年 12 月 13 日より 39℃の発熱、全 身の関節痛を認めた。翌日近医受診し、インフル エンザ迅速検査は陰性。39℃台の発熱、低血圧を 指摘され、当院に救急搬送された。既往歴:特に なし。 【経過】 入院時血液検査では、WBC 8200/μL、PLT 6.2 ×103/μL、CRP 24.4mg/dL、LDH 368U/L、BUN 42mg/dL、CRE 1.85mg/dL、GLU 91mg/dL であ った。CT では明らかな炎症の focus は認めず、 インフルエンザ疑いにて入院加療となった。入院 後、SBT/ABPC 投与されていたが、その日の夜間 に意識障害を認めた。髄膜刺激様症状があり、腰 椎穿刺を施行されたが髄液十分量採取できず、髄 液糖 36mg/dL、髄液糖/血糖比 0.48 とやや低値で あった。抗菌薬は MEPM 2g×3 回/日+TEIC 800mg×3 回/日に変更され、髄膜炎菌同定後は CTRX 2g×2 回/日 に de-escalation した。また感 染力を考慮し、患者は個室隔離して、濃厚接触者 には予防内服を実施した。患者はその後順調に回 復し、12 月 28 日に軽快退院となった。 【細菌学的検査】 入院時髄液検査ではグラム染色にて菌体は確 認 でき ず、培 養も 陰性で あっ た。血 液培 養は BacT/ALERT 3D(シスメックス・ビオメリュー) を用いて培養し、2 セット好気・嫌気両ボトルと も約 7 時間後に陽性となった。グラム染色にてグ ラム陰性双球菌を認め、髄膜炎菌が疑われた。羊 血液寒天培地(極東製薬)、チョコレートⅡ寒天 培地(日本 BD)にて 35℃24 時間炭酸ガス培養 し、灰白色、半透明、光沢のあるコロニーの発育 を認めた。VITEK2(シスメックス・ビオメリュ ー)にて髄膜炎菌を同定した。薬剤感受性試験も 実施し、測定したすべての薬剤に感受性を示した。 同時に院内で髄膜炎菌に特異的なプライマーを 用いて PCR により、髄液からも髄膜炎菌を検出 した。また、国立感染症研究所に精査を依頼たと ころ、血清型 Y、遺伝子型 23 と解析された。 【考察】 IMD の初期症状は、発熱、頭痛、嘔吐などで風 邪の症状と似ているため鑑別が難しいが、その後 病状は急速に進行するのが特徴的で、治療開始の 遅れが致命的な結果となる。今回の症例でも当初 インフルエンザを疑っていたが症状改善せず、そ の後、意識障害が出現し髄膜炎を疑い、血液培養 と髄液 PCR にて髄膜炎菌が同定され、IMD と診 断できた。IMD は病状の進行が速いために、各種 検査を迅速かつ適切に行うことが重要と思われ た。 【謝辞】 今回、ご協力いただいた国立感染症研究所 細 菌第一部 高橋英之先生に深謝いたします。 -36- 連絡先:0829-36-3111 (内線 2247) 学術誌「広島臨床検査」投稿規定 広告・協賛企業一覧 実行委員会名簿 学術誌「広島臨床検査」投稿規定 (平成 26 年 10 月 1 日改訂) 1.投稿資格 (3) 研究:臨床検査の新しい発見や将来的な 投稿者は広島県臨床検査技師会(本会という)の 検査法開発など学術的な新規性を主題と 会員に限る. するもの. 共著の場合,筆頭著者は本会会員でなければなら (3)技術:臨床検査の発展に寄与する技術の ない.ただし,賛助会員の紹介ないし依頼原稿の場 応用や既存技術の問題を解決する工夫や 合はこの限りでない. 改良を主題とするもの. 2.投稿論文の種別 (4)症例報告:臨床検査に関して有用な情報 1)論文の種別は,総説,原著,研究,技術,症 を提供する症例報告を主題とするもの. 例,事業報告,解説,資料,Forum 等の原稿を (5)事業報告:本会の事業,公益事業の成果 受け付ける.ただし,総説は原則として編集 を取りまとめたものであり,本会の活動 委員会の依頼によるものとし,その著者は本 に関する提言を主題とするもの. 会会員に限定しない. (6)解説:臨床検査,あるいは臨床検査に関 2)投稿原稿は他誌に発表(掲載) ,あるいは投稿 係する技術の解説や業務管理・運営方法 されていないものとする.ただし,すでにそ の紹介,教育的な内容のもの. の内容の一部を学会等で発表したものについ (7)資料:調査データや検査データの解析, ては,その旨を論文末尾に掲載すること. 検査の基礎となる内容など検査技師に有 3)論文の著作権は本会に帰属し,著者は本会が 用な資料. 電子公開する場合には承諾するものとする. (8)Forum:国内外を問わず臨床検査に関連す 4)セルフ・アーカイブ(自身の Web ページや所 る学術集会やトピックスの紹介や医療全 属機関のリポジトリなど)において,表題, 所属,著者名,内容抄録の公開は本誌の発行 般における話題性の高い内容. 3.執筆要領 の後に認められる. 1)文章と文体 5)論文執筆に際しては,プライバシー保護の観 (1)ひらがな,常用漢字,現代仮名づかいを用い, 点も含め,ヘルシンキ宣言ならびに臨床研究 横書きとし,数字は算用数字とする.ただし, に関する倫理指針が遵守されていること. 固有名詞,専門性の高い学術用語はこの限り 6)本文中の謝辞は,関係者同士が事前に確認了 解を得ることを前提とし,編集委員会はこれ に関する責務を負わない. ではない. (2)数字,欧文は半角とし,菌名などの学名はイ タリック体で表記する. 7)論文の種別説明 (3) 数字はアラビア数字を用い,数量の記号は (1)総説:1つのテーマについて広範囲に文 km,m,cm , mm ,μm , nm , L , dL , 献的調査を行い,そのテーマに関する現 mL , kg , g ,mg,μg,ng,pg,℃,%, 状と将来の展望をまとめたもの. h,bp,dpm,ppm 等を用いる. (「mL」などのリ (2)原著:臨床検査の新しい発見や将来的な 検査法開発など臨床検査の分野をテーマ して深く研究・調査を行いまとめたもの で,そのテーマにオリジナリティがある 内容のもの. -39- ットルは大文字表記のこと.) (4) 一般名や薬物名は略語を用いない.ただし, にし,図の原稿とは別に作成する.補分内の 記述が数回にわたる場合には初回は省略せず 図表の挿入箇所を本文欄外に赤字等で明記す に記述し,その後ろに略語を( ること. )内に記し, 以後その略語を用いる. (8)カタカナ,カンマ,ピリオドなどは全角文字 例:Bence Jones Protein (BJP) とし,英字,数字は半角文字とする. (5) 学名は,本文中(要旨は除く)の初出は省略 (9)新語,専門性の高い用語などは,脚注をつけ せずにイタリック体で記述する.二度目から ること.脚注は一連の番号を参照箇所の右上 は断りなく属名だけを略し,種形容名は略さ に”1”のように記載する.説明文は原稿の ない(例: Escherichia coli,二度目以降は そのページの下に脚注として記載する. E. coli とし,ピリオド「.」の後は,半角ス また,各著者の所属施設名を記入する場合も, ペースを空ける) . この要領で一連の番号に含める. 2)原稿の書式 (10)原稿中の数式は,原則としてイタリックで印 (1)用語:和文,英文のいずれでも受け付ける. 刷される.イタリック以外の表記を希望する (2)用紙と文字数:和文の場合は,ワープロソフ 場合は,その旨を原稿 1 ページ最下部に明記 トでA4サイズの用紙を基準とし,1 行 40 文 すること. 字(全角),1 ページ 38 行として作成すること. 3)原稿の長さ 英文は,A4サイズダブルスペースとする. (1)総説および原著:本文,文献を含めて刷り上 (3)和文の形式:原稿の 1 ページ目に,投稿原稿 がり 20 ページ以内とする.図・表は 10 枚以 の種別,表題,著者名,所属施設名,英文表 内とし,写真も 10 枚以内とする.ただし, 題,英文著者名,英文所属施設名を記すこと. 必要最小限の枚数にすること. また,施設の所在地,校正刷りの送付先,担 (2)研究および技術:本文,文献を含めて刷り上 当者名,E-Mail アドレス,電話番号,FAX 番 がり 10 ページ以内とする.図・表・写真等 号を記すこと. は必要最小限にし,10 枚以内とする. (4)抄録:和文原稿の場合は,原稿の 1 ページ目 (3)症例報告:本文,文献を含めて刷り上がり 8 後半に 400 字程度で記すこと.また,キーワ ページ以内とする.図・表・写真等は必要最 ードは 5 個以内とし,日臨技の「医学検査」 小限にし,10 枚以内とする. 論文の書き方等を参考に記載することを推奨 (4)事業報告および解説:本文,文献を含めて刷 する. り上がり 6 ページ以内とする.図・表・写真 なお,「資料」「Forum」では抄録は必要ない. 等は必要最小限にし,8 枚以内とする. (5)本文:原稿の 2 ページ目からとする.本文は (5)資料:本文,文献を含めて刷り上がり 6 ペー 原則として,序論(はじめに),目的,方法, ジ程度とする. (図・表・写真等を含む) 結果,考察,結論,文献の順に記すこと.ま (7)Forum:刷り上がり 2 ページ程度とする. (図・ た,解説,資料,Forum においては,その限り ではない. (6)略号:初出部分でその正式名(略号)を記し, 以下,略号でも可とする.ただし,略号が広 く一般化している場合はこの限りではない. (7)図・表・写真:可能な限り鮮明なものを採用 すること.原稿投稿では 1 枚ずつ作成し,図 (図の下),表(表の上),写真(写真の下)に 必ず表題をつける.図の説明文は区別を明確 -40- 表・写真等を含む) 4)引用文献 原則として著者の校正は,初稿時に 1 回のみとし, (1)引用文献は,本文中の該当部分右上に,引用 順に番号1)を記載し,本文最後に引用順に 再校以降は編集委員会において行う. 6.著作権 まとめこと. 1)本誌に掲載された原稿の著作権は,一般社団 (2)文献の項の書式は,バンクーバー・スタイル 法人広島県臨床検査技師会に帰属する. (the Vancouver style)に従うものとする. 2)本誌に掲載された原稿その他のすべて,また 【参考】 は一部をそのままの形で他の出版物等に掲載 (雑誌) する場合は,所定の書式に基づいた文書によ 著者名. 題名. 雑誌名 発行年;巻;通巻ページ り編集委員長の許可を得ると共に,掲載する (始め−終わり). 出版物等に「広島臨床検査」からの転載であ または, 著者名. 題名. ることを明記すること. 雑誌名 発行年;巻;号数, 3)投稿原稿が本誌に掲載されることが決定した 号ページ(始め−終わり). 際,著者は編集委員長が送付する「著作権譲 渡書」に署名,捺印した後,速やかに編集委 (書籍) 員長宛に返信すること. 著者名. 題名(編者名). 書名:発行所, 4)著者は,論文の内容を無断で改変,改ざんさ 発行年:ページ(始め−終わり). れない権利を有する. 7.倫理規定 (3)著者の記載方法 (1)二重投稿の禁止,ただし国際的な学会,大会等 姓と名の間にコンマを入れない. は例外とする. 名に省略記号(.)をつけない. (2)事実に基づかないデータを故意に作る捏造,デ 著者が 4 名以下であれば全員の名前を記す. ータを根拠なく改変する改ざん,他から得たデ 必ず姓名を記すこと. ータを許可なく自身の得たものとする盗用は, 著者と著者の間には,コンマを入れる. これを固く禁止する. 5 名以上の場合は,最初の 3 名のみを列記し (3)著者の所属する機関,団体等が定める倫理規定 て,それに「ら」 ,"et al."を付記すること. を犯してはならない. (4)電子媒体や Web site またはオンライン上の文 (4)当会の編集委員長が上記の禁止事項に違反し 献について たと判断した場合は,下記の罰則が適用される 媒体名やサイト URL 等を[ ]で囲むこと. ことがある. (CD-ROM,DVD など)著者名. 題名. 収載名[媒 体または URL]. ・本誌論文の不採録,または掲載取り消し 発行所,発行年:ページがあ ・著者全員の本誌への投稿禁止 れば(始め-終わり). ・二重投稿先および著者の所属する機関,団体等 4.採否の審査 への通知 1)投稿原稿は編集委員会にて審査のうえ,採用 8.個人情報保護について の可否を決定する. 個人情報保護の観点から,投稿原稿において容易 2)本誌掲載においては期限を指定して原稿の一 部修正を求めることがある. に個人が特定されないように,症例等の記載には十 分注意をはらうこと. 3)修正を求められた原稿は,編集委員会が指定 した期限(原則として 2 週間程度)以内に再投 症例報告等で個人を対象とした論文の際は,以下の 点を十分留意すること. 稿することとする. (1)患者個人の姓名,イニシャルは記載しない. 5.著者校正 (2)経過日,日付等は記載せず,○○日前,○○ -41- ヶ月後などの記載方法にすること. 「筆頭執筆者」「使用アプリケーション名およ (3)他の医療機関等で診断を受けている場合,他 びそのバージョン」を明記すること. の施設の検査データを記載するときは,その 4)写真などの画像データは,JPEG フォーマット 医療機関名,施設名は記載しない. とし,文字データとは別ファイルに保存して送 (4)個人を特定できる情報(診療録番号,標本番 付すること. 号,画像内の整理番号等)は削除すること. 5)図表データは,学術誌がモノクロ印刷である (5)顔写真などを使用する場合は,特に注意をは ことを考慮し,明確に識別できるコントラスト らうこと. を保つよう作成すること. なお,プライバシーに関する患者の権利,保護な 6)保存する画像データ,図表データには,論文 どに関しては,外科関連学会による「症例報告を含 内で割り当てた番号等を明確にしたファイル む医学論文及び学会研究会発表における患者プライ 名称を用いること. バシー保護に関する指針」を参考に原稿作成を行う 7)図表作成に Microsoft PowerPoint を使用した こと. 場合は,その元データも添付すること. 8)原則として原稿は返却しない. http://www.jssoc.or.jp/other/info/privacy.html 10.本規定の改定 本投稿規定の改定は,理事会にて承認を得なけれ 9.論文原稿の送付方法 ばならない. 1)論文投稿には,所定の「論文投稿用紙」 ,およ 11.付記 び「誓約書・同意書」に必要事項を記入し,下 記の原稿に同封すること. 1)論文の書き方については,日本臨床衛生検査 技師会ホームページに「医学検査」論文の書 2)論文投稿用紙には,原稿の発送日を明記する こと. き方(改訂版)が掲載されているので,それ を参考にするとよい. 2)原稿の送付には,印刷した原稿2部(オリジ ナル 1 部,コピー1部) ,および図表,写真等 2)本誌編集の都合上,印刷レイアウト等は広報 部にて作成する. の画像データとテキスト形式の原稿データま 3)上記の要領で提出できない場合や印刷レイア たは Microsoft Word 形式のデータファイルと ウト等,原稿作成に関して質問・確認が必要 して CD-R な場合は,本会 1 枚に保存して送付する. 3)記録媒体(CD-R)には, 「タイトル」 「施設名」 学術部または広報部まで連 絡すること. 平成 24 年 10 月 1 日 作成 平成 25 年 10 月 1 日 改訂 平成 26 年 10 月 1 日 改訂 ■原稿の送付先:一般社団法人広島県臨床検査技師会 事務所 郵便番号 730-0013 住 所 広島市中区八丁堀6-10 グレイスビル801 連絡先 FAX 082-502-6031(事務所) 問い合わせ先メールアドレス <[email protected]> -42- 【広告・協賛企業一覧】 アークレイマーケティング株式会社 アボットジャパン株式会社 株式会社 エスアールエル 栄研化学株式会社 極東製薬工業株式会社 シスメックス株式会社 積水メディカル株式会社 テルモ株式会社 日本光電株式会社 日本電子株式会社 フクダ電子広島販売株式会社 株式会社 福山臨床検査センター 日立アロカメディカル株式会社 富士レビオ株式会社 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 (順不同) -43- 【第 32 回広島県医学検査学会 実行委員会名簿】 学会長 水野誠士 実行委員長 飯伏義弘 (厚生連 廣島総合病院) (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 副実行委員長 吉井恵子 (中電病院) 副実行委員長 兒玉有里 (県立広島病院) 事務局長 田中美樹 (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 学術部長 尾田三世 (広島大学病院) 経理部長 浅野清司 (広島赤十字・原爆病院) 組織調査部長 米田登志男(広島赤十字・原爆病院) 渉外・法規部長 大塚崇通 広報部長 若林信浩 (国家公務員共済組合連合会 吉島病院) (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立安佐市民病院) 委 員 濵田麻紀 (広島大学病院) 山本健一 (広島共立病院) 西村龍太 (広島赤十字・原爆病院) 中迫祐平 (広島赤十字・原爆病院) 永田衣里賀(広島赤十字・原爆病院) 河野浩善 (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 増原美幸 (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 永井友子 (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院) 小松浩基 (厚生連廣島総合病院) 井町海太 (厚生連廣島総合病院) 丸山恭平 (厚生連廣島総合病院) 小田康子 (広島鉄道病院) 岡田卓也 (広島鉄道病院) (順不同) -44- 一般社団法人 広島県臨床検査技師会 会報 Mar.2015 Vol.44 No.1 平成 27 年 2 月 1 日 発行責任者 水野 誠士 編集・発行 一般社団法人 広島県臨床検査技師会 事務所 〒730-0013 広島市中区八丁堀 6-10 グレイスビル 801 号 一般社団法人 広島県臨床検査技師会 事務所 TEL 082-502-6011 FAX 082-502-6031 URL http://www.hiroringi.or.jp E-Mail [email protected] 印刷所 可部印刷株式会社 〒731-0221 広島市安佐北区可部三丁目 43-7 代表 平尾 岐 TEL 082-814-2065 FAX 082-814-3569
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