第7回申入書

第7回申入書
平成27年4月3日
札幌市中央区北 1 条西 9 丁目
フルーフビルディング 5 階
秋元法律事務所
株式会社北日本システム代理人
弁護士
秋
元
忠
史
殿
〒060-0004
札幌市中央区北4条西12丁目ほくろうビル4階
TEL 011-221-5884
FAX 011-221-5887
内閣総理大臣認定適格消費者団体
特定非営利活動法人消費者支援ネット北海道
理事長
向
田
直
範
当法人は,貴職からの平成27年2月14日付けご回答(以下「本件回答書」
といいます)に関し,以下のとおり再度の申し入れを致します。
つきましては,本申し入れに対する,貴職のお考え・ご対応を文書にて平成
27年5月15日までに,当NPO法人にご回答下さい。
また,貴職からのご回答の有無及びご回答内容につきましては,当法人の活
動目的のため,公表することがあることを申し添えます。
記
1
貴職主張の要旨
本件回答書における貴職主張の要旨は以下のとおりと解しております。
【要旨】
調査代金支払義務を明記し,契約解除に伴う損害賠償を行わないこととし
たのであるから,かかる損害賠償について規定する消費者契約法9条1号及
1
び特定商取引法10条1項3号は問題とならない。また,調査代金額の改定
を以て消費者契約法9条1項及び特定商取引法10条1項3号の対象とする
根拠が不明である。
2
当法人の見解
これに対し,当法人の見解は以下のとおりです。
(1)貴職もご認識のとおり,貴職依頼人が従前使用されていた調査依頼書に
おいては,調査代金を無料とし,調査依頼者が貴職依頼人に請負工事を依
頼しない場合には,保険金額の確定後においては「認定された金額」(こ
れは調査依頼者に支払われる保険金額を指すものと解されます)の1~2
割を違約金として支払うものとし,保険金額の確定前においては書類作成
料として5万円を支払うものとされていました(以下「従前の調査代金条
項」といいます)。
その後の改訂を経て,現在,貴職依頼人は,調査代金について有料と明
示のうえで,保険金入金の合計額に応じた調査代金を設定しつつ,貴職依
頼人に請負工事を発注し締結となった場合には調査代金は無料となる旨
規定しています(以下「現在の調査代金条項」といいます)。この現在の
調査代金条項によれば,例えば保険金額が200万円の場合にはその5割
に相当する金100万円の支払を要することになりますが,調査依頼者が
貴職依頼人と請負工事契約締結に至った場合には調査費用は無料となり
ます(平成26年9月12日に当法人が貴職依頼人から受領した調査依頼
書第5項の「・・・当社に工事を発注頂き,保険金の合計額を充当頂いた
場合は無料とさせて頂きます」との規定はかかる趣旨であると解されま
す。)。
しかしながら,現在の調査代金条項及びその後の請負契約の一連の流れ
を全体的にみると,結局は従前の調査代金条項と同様に,消費者に対して
調査依頼契約が無料であるとして請負契約の予約契約を勧誘・締結したう
えで,その後、当該消費者がこれを解除した場合には多額の違約金を支払
わせるものといえます。このことは,貴職依頼人が,現在もホームページ
上で「調査は無料」「無料診断」としたうえで,「保険申請の結果,支払
2
われた保険金は修繕工事に充当して頂きます」と明示し,保険金が修繕工
事代金に充当されなかった場合には前記のとおり多額の調査費用の支払
を課していることからも明らかです。
従いまして,現在の調査代金条項においても,消費者契約法第9条第1
号及び特定商取引法10条1項3号の適用を免れるものではないと解さ
れます。
なお,貴職において調査依頼契約がなおも有料であると主張されるので
あれば,貴職依頼人は自社ホームページ上で調査依頼契約が有料であるの
に無料と明示していることになりますから,有利誤認表示(不当景品類及
び不当表示防止法第4条第1項第2号)に該当することになると考えま
す。
(2)また,本件には,消費者契約法10条の適用があるものと解します。
すなわち,従前の条項であれば調査依頼者の違約金支払額は保険金額の
2割が上限であったものの,現在の調査代金条項では前記のとおり最大で
保険金額の5割を調査代金として支払うものとされています。
かかる調査代金条項の変遷及び現在の調査代金条項の規定ぶりに鑑み
ますと,調査代金が保険金入金額の相当割合(最大5割)に及ぶために,
調査依頼者は貴職依頼者に請負契約を依頼することを事実上強制される
可能性があります。すなわち,例えば200万円の保険金を受領した後に
貴職依頼人以外の業者に工事を発注する場合は,その5割相当額である1
00万円を貴職依頼人に支払う必要があることになり,これを避けるには
貴職依頼人と請負契約を締結せざるを得ないということになります(当該
調査代金額それ自体の有効性については本書面では触れないことと致し
ます)。しかし,これは契約締結の自由,及び契約相手方選択の自由を著
しく制限するものと考えられます。
また,調査依頼者が貴職依頼人と請負工事を契約するにしても,たとえ
ば上記の例の場合,貴職依頼人との請負契約が成立しなければ保険金入金
額200万円のうち5割相当額となる100万円の支払を免れることは
できないこととなり,それゆえ,調査依頼者は契約を成立させるために,
貴職依頼人の意向に沿う内容を甘受せざるをえないこととなり得るとこ
3
ろ,これは契約内容形成の自由を著しく制限するものといえます。
また,消費者契約法10条は「民法,商法(明治三十二年法律第四十八
号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消
費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であ
って,民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方
的に害するものは,無効とする。」と規定していますが,明文の規定だけ
ではなく一般法理に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重するも
のも同条の適用対象と解されています。そのため,契約締結の自由,契約
相手方選択の自由,及び契約内容形成の自由といった一般法理に比して消
費者の権利を制限すると考えられる本件においても,同条は適用されると
解されます。
そして,前述のとおり,現在の調査代金条項は民法1条2項に規定する
信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものと考えられ
ますので,現在の調査代金条項は消費者契約法10条により無効であると
解されます。
3
以上のことから,現在の調査代金条項は,消費者契約法9条1号,特定商
取引法10条1項3号,及び消費者契約法10条に該当するものと考えてい
るところです。
当法人の見解は以上のとおりでありますので,改めて現在の調査代金条項
を適切なものに改訂されますよう,再度,申し入れます。
なお,貴職からは当法人との協議の場を設けることのご提案を頂いており
ますが,貴職のご見解に対する当法人の考えは本書において述べたとおりで
あり,現時点では書面によるもの以外に協議の場を設ける必要はないと思料
致しますので,その旨お伝えする次第です。
以
4
上