地域活性化のための地域類型に関する研究

地域活性化のための地域類型に関する研究
小塩篤史(事業構想大学院大学)
Keyword: 地域類型、将来推計人口、高齢化、人口減少
【問題・目的・背景】
地域活性を考える際に、
「地域」をどのような単位で捉え
るべきか、様々な議論がなされてきた。特に地方自治論や
地域計画の文脈において様々な検討がなされてきており、
「地域」の捉え方は様々である。2015 年度は、
「地方版総
合戦略」の策定に各自治体が取り組んでいるが、ここでは
地域活性の単位としての基礎自治体が想定されている。一
方で地域活性は、自治体を越えたより広域の課題であるこ
とも多く、また一方で自治体の単位よりもより小さな「地
区」や「コミュニティ」の課題であることも多い。地域活
性化という時に想定している「地域」がどのような単位な
のか認識することは、その活性化施策の実行可能性や応用
範囲、潜在力の推定に重要な課題である。さらに「地域」
大都市圏に関しては、国土交通省の分類では都心と郊
も多様である。地域活性化施策を他地域に応用する際には、
外の区別が明確ではない。そこで、ここでは東洋経済 地
非常に慎重な検討が必要とされるが、それは地域の多様性
域経済データ 2011 を用いて、市外への通勤者が 50%以
があるからである。一方で、有効な地域活性化施策を展開
上の市区町村を郊外都市とした。この分類に基づくと日
することは非常に喫緊の課題である。この際に地域の特性
本を以下の 5 地域に分類が可能である。
をある程度理解することが出来れば、展開可能性の検証が
・大都市
比較的容易になる。そこで本研究では、地域の類型を基礎
・大都市郊外
づける分類方法に関して検討を行う。そのための第一の段
・地方中核都市
階として、自治体レベルで類型化を行い、各自治体の特性
・地方中小都市
を把握し、特性に基づいた地域活性化策に結びつく地域分
・自然共生地域
類法を提案することを目的とする。
【研究方法・研究内容】
地域分類には国土交通省
「新しい国の形
「2 層の広域圏」
を支える総合的な交通体系最終報告書」の分類を採用し
た。この分類では、まず人口 10 万人以上で、昼夜間人口
比率が 1 以上の都市を核都市と定め、そこから公共交通
機関で 1 時間以内に移動できる範囲を、一つの都市圏と
して設定している。その結果、日本全国に5つの大都市
圏(札幌、東京、名古屋、京阪神、博多)と 77 の都市圏
に分類される。
【研究・調査・分析結果】
まず、各地方の地域分類を検討した。
もっとも資源が少ない自然共生地域の割合を分析した結
果が以下である。
自然共生地域に居住している人口の割合では、北海道、
東北、四国、九州、中国という順番である。これを面積
で見た場合は、北海道、中国、四国、東北という順番と
なり、中国・四国地方には北海道と同程度の割合で自然
共生地域が広がっていることが分かる。
大都市郊外は、他市区町村への通勤者が 50%以上の市
区町村とした結果、東京圏に関しては以下の結果が得ら
れた。都心は、東京 23 区・横浜市・千葉市となり、周辺
地域が郊外として同定された(下表の濃い青色部分)
。そ
の他大都市圏は、それぞれ札幌、名古屋、京都・大阪・
神戸、博多・北九州となり、その周辺地域が郊外として
同定された。
都心、大都市郊外、地方中核都市、地方中小都市、
自然共生地域の人口を集計したものが左図である。現
在は、大都市郊外の人口が最も多く、次いで地方中核
都市の人口が多い。右図は 2030 年の将来推計人口で
ある(将来推計人口は、国立社会保障人口問題研究所
による市区町村別将来推計人口を利用)
。2030 年にお
いても大都市郊外の人口が最も多い。
減少率を見ると、
5%減、7%減、11%減、15%減、22%減となっており、
都心ほど人口減少率が少ない状況である。
5 地域の高齢化率を見ると、現在一番高いのは自然共
生地域であり、
2030 年も最も高い値である。
一方現在、
最も低い大都市郊外地域も今後 20 年で一気に高齢化
が進展する。
また、需要に関して、各地域の社会保障人口問題研究所
による将来推計人口に年齢ごとの発生確率を掛け合わせ
推計した。
次に 5 地域ごとに、どのような環境におかれているか
認知症患者・要介護者共に今後増加が見込まれるの
を保健医療分野の指標をベースに検討を行った。
は、大都市郊外、大都市、地方中核都市で、それ以外
まず、医師数の分布であるが、人口当たりの医師数は、
「都
の地域はおおきな増加は推定されなかった。
心」が圧倒的に多く、
「地方中核都市」も非常に多い。そ
の他の地域は相対的に少なくなっており、郊外型の都市
は人口規模が大きくても都心に資源依存をしているケー
スが多いことが分かる。
「郊外(新興・既存)
」
「中間地域」
「山間地域」といった
分類が可能である。特に平成の大合併によって多くの地
方中核都市や中小都市が山間地域を取り込むことになっ
た。自治体の内部でも多様性があり、その多様性の分類
は有益である。
人口減少の中で地域活性化を行っていくためには、自
治体の連携も不可欠である。今回都市圏分析には触れて
いないが、地域の活性化を自治体レベルだけでなく都市
圏という生態系で捉えていく必要がある。特に公共施設
やインフラ整備等ハード面に関しては、選択と集中を含
めた検討を地域圏で実施することは効果的な活性化施策
に繋がる可能性がある。地域分類や地域論研究の推進を
通じて必要な自治体連携や有効な地域の持続可能性策の
創出につなげていきたい。
【引用・参考文献】
国土交通省(2010)
「国土の長期展望」
社会保障人口問題研究所(2015)
「将来推計人口」
厚労省検討会資料(2013)
「認知症推計患者数データ」
厚生労働省(2013)
「介護給付費実態調査」
小塩篤史(2013)
「地域分類に基づいた医療需給の把握-
国土交通省分類に基づいた医療資源の分布と将来推計
-」
『病院内外の連携構築に係る病院管理マネジメントに
関する研究 平成 23 年度 厚生労働科学研究費補助金
地域医療基盤開発推進研究事業 総括・分担研究報告書』
【考察・今後の展開】
今回、地域分類の考え方として、
「5 地域」に分類可能
であることを検証した。各地域を 5 地域のどの地域であ
るかを考えることによって、一定程度地域の環境・資源
の把握に繋がると考えられる。
今後高齢化の影響が特に顕著と考えられるのが、
「大都
市郊外」
「大都市」
「地方中核都市」であり、
「地方中小都
市」や「自然共生地域」ではある程度高齢化の課題は既
に出尽くしていると言えるかもしれない。地方中小都市」
や「自然共生地域」ではこれから人口減少の影響が顕著
であり、減少する人口の中で増加する高齢化率にどう対
処するかという課題が出てくる。
今回、自治体単位のデータをもとに分析を行ったが、
さらに小さな単位での分析も有益であると考えられる。
現在取り組んでいる長野県飯田市の将来推計人口分析に
関して見てみると、同じ自治体内部であっても、
「都心」