いつもの自分 を拡げる お気に入り消費

VOL.
68
増税後の生活者の消費意識
2015.1
いつもの自分 を拡げる
お気に入り消費
2014 年は増税後の 4 月以降、7 か月続けて消費支出が前年を下回
「アサヒスー
2014 年は、
り、生活者の節約志向が暮らしに定着した 1 年となった。そうしたな
パードライ」
のプレミアム版
かでも消費支出はゆるやかな回復を見せており、11 月には食料品の
「ドライプレミアム」や、サン
消費支出が前年を上回るなど、ささやかながら消費回復の兆しも捉
トリー「伊右衛門」が展開
えられはじめた
(図 1)。
するトクホ飲料「伊右衛門
*
図 1 消費支出に関する実質増減率の推移(前年同月比)
8
-2
今号では、生活者の節
-6
約志向における消費意
識に注目する。
5
のヒットが目立った。「お
0
気に入り」の商品への期待
-4
と関心の高さが、消費意欲
-8
2014年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
総務省統計局
「家計調査」
*実質増減率は、物価水準の変動の影響を考慮した、1 世帯あたり
の実質的な増減をみた数値
家電製品
への期待が高まるなか、
気商品の高付加価値商品
外食・
レストラン
0
2
10
洋服
どによる個人消費拡大
特茶」といった、従来の人
2014 年 10 月
15
コンディショナー
4
食料品
2012 年 8 月
20
シャンプー・
格の下落や賃金上昇な
消費支出全体
6
であること」
を重視する割合
ビール類
(%)
25
(%)
菓子類
2015 年に入り、原油価
図 3 買い物の際「お気に入りの商品・サービス
DNP「日常生活とギフトに関する調査」
を刺激したと考えられる。調査では商品への「お気に入り」という意
識が、
「使用経験」
と関連性が高いことが分かっている。生活者にとっ
て
「お気に入り」
の商品を買うことは、 いつもの自分 の暮らしを充実
商品選択では、
“いつもの自分”に価値をおく
消費税引き上げから半年後の 2014 年 10 月に実施した調査では、
させることにつながり、さらに、商品を通じて暮らしの楽しみを拡げて
食料品や飲料など日常の買い物で商品を選択する際重視する点とし
ファッション業界では、過度に着飾らず、
トレンドに流されないシンプ
て、ほとんどの商品カテゴリーで「安さ」
「お得感」が最も高く、次いで
ルな格好をする「ノームコア」
というファッションが生まれている。長く
「安全性」
「品質」が上位に挙がった。商品の話題性やイメージよりも
着られる洋服を選び、普段の自分のスタイルとして楽しむ。居心地の
安心して購入できる商品を低価格で購入したいという生活者の意識
よい、いつもの自分 に価値をおくトレンドは、新しい発見を追い求め
を捉えることができる。そして、それらに加え生活者が重視する項目と
るのではなく、
「お気に入り」
の商品を選択する消費意識と共通する。
いるのだ。
して目立ったのが、
「お気に入りの商品・サービスであること」
だ
(図2)
。
「安全性が高い、安心して使えること」を重視する割合が 2012 年 8
月の調査と比較して低下するなかで、
「お気に入りであること」
への意
「お気に入りの商品」が、消費を拡げる
スターバックスコーヒージャパンは、Facebook や LINE などの
識は高まっている
(図 3)。生活防衛意識が高まるなか、
価格が安いこ
SNS でコーヒーを気軽に贈るソーシャルギフトを展開している。い
とや安全であることと合わせて、
自分の暮らしに合っている
「お気に入
つも飲んでいる自分のお気に入りのコーヒーを、
身近な友人への贈り
り」
の商品であるということが、
商品選択で意識されている。
ものとして購入する体験は、日常的な利用とは異なる視点で商品や
図 2 商品を選択する際重視する点
加工食品
(%)
菓子類
ジュース
ビール類
サービスと向き合う機会となり、スターバックスの魅力を再認識する
きっかけともなっている。
食料品や公共料金の値上がりが発表され、その後に控える消費税
1位
安全性
35.5 お得感
28.7 安さ
23.5 安さ
2位
お得感
28.5 安全性
25.6 安全性
21.9 お気に入り 18.1
3位
品質
22.9 安さ
25.4 お得感
20.8 お得感
4位
安さ
22.1 直観
20.4 お気に入り 17.0 品質
16.5
磨かれていくことが考えられる。企業は「いつも買っている商品」を
5位
キャンペーン 19.2 お気に入り
20.0 品質
15.9
「お気に入りの商品」として再認識してもらうような接点をつくること
16.9 安全性
21.9
18.1
DNP「日常生活とギフトに関する調査」
* 29 項目の重視点(複数回答)
のなかで、上位 5 項目を掲載
(16 ∼ 79 歳男女 2600 名を対象としたインターネット調査、2014 年 10 月実施)
引上げの動きのなかで、生活者の買い物における選択眼はますます
で、生活者の新たな消費を拡げていくことが求められている。
「お気に入り」
の商品を選択するなかでの、
クチコミの役割
生活者が「お気に入りであること」を重視して商品を選ぶ傾向が高
リーをマッピングすると、いずれも意識されているのは「外食、レスト
まっている一方で、SNS などインターネットでの商品情報のやり取り
ラン」
、
「化粧品」
などとなった。これらについては、
ランキングやクチコ
も定着。メディアバリュー研究の調査では、普段の会話やインター
ミ情報など他者の評価を確認することで、改めて自分の気に入った
ネットを通じた情報交換が、多くの商品カテゴリーにおいて活発に
ポイントを実感したり、他の商品との違いや新たな魅力を知るなど、
なっていることがわかっている。商品選択の際重視する項目のなか
商品価値を再確認している。自分の基準で商品を選びたいという意
で、自分自身の基準である「お気に入りであること」と、他者の評価を
識が高まるなかで、クチコミ情報は買い物の納得感や満足感を高め
基準にする「周囲の評判がよいこと」という2 つの項目で商品カテゴ
る役割を担うようになっている。
●「普段の会話やネット上のコミュニティなどでよく語り合う仲間がいる」割合
2013 年 10 月
30
2014 年 10 月
(%)
25
20
15
10
5
0
加工食品
菓子類
ジュース・ アルコール
清涼飲料水
飲料
洋服
化粧品
家電製品
自動車
● 商品選択基準マップ
書籍
音楽・
旅行
映像ソフト
DNP「メディアバリュー研究」
商品を選ぶ際重視する点のなかで、
「お気に入りの商品・サービスであること」
と
「ネット上や周囲の人の評判がよいこと」
の割合をもとにマッピング
菓子類
20
(%)
洋服
自分の好きなもの
を選びたい!
お気に入りの商品・サービスであること
ビール類
ジュース
化粧品
加工食品
バッグ、靴
15
「菓子類」
「ビール類」などの食品や
シャンプー、コンディショナー、
トリートメント
飲料のほか、
「洋服」
や
「バッグ、靴」
などは、自分の基準である「お気に
外食、レストラン
入り」
を優先して購入。
平均
ジュエリー、
アクセサリー
書籍
家電製品
自動車
「化粧品」
「外食、レストラン」は、自
贈り物
分の「お気に入り」と「周囲の評判」
10
を照らしあわせて商品やサービス
を評価。他者の評価を確認するこ
市販の医薬品
とで商品価値を再確認して購入。
5
購入頻度が低く、
購入経験が少ない
「家電製品」
「自動車」などの高額
商品は、ユーザーの評価など「周囲
0
0
5
10
(%)15
の評判」
を重視して購入。
ネット上や周囲の人の評判がよいこと
みんながいいといっている
ものを選びたい!
生活者とのコミュニケーションチャネルを探る
「メディアバリュー研究」
http://www.dnp.co.jp/mediavalue
DNP「日常生活とギフトに関する調査」2014 年10 月
※それぞれの商品カテゴリーの購入者を対象に集計
• DNP は2001 年より、生活者の情報コミュニケーションや購買行動の変化をとらえる生活者調査研究
に取り組んでいます。
• 生活者の購買行動把握から、商品(ブランド)を通した、企業と生活者のコミュニケーション戦略まで
幅広くサポートしておりますので、
お気軽にご相談ください。
C&I事業部 マーケティング開発室
〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ いかなる形式でも本紙の一部または全部の複製および無断転載をお断りいたします。
」、
「コミュニケーション接点に関する調査」
(訪問留置法、
首都圏の15∼79歳男女2120名対象、
実施:2014年10月)
の分析結果をもとにしています。
当レポートは、
「日常生活とギフトに関する調査
(2014年10月)
©大日本印刷株式会社 2015 printed in japan
15.1