高知大学 医学部 附属病院 次世代医療創造センター 臨床試験セミナー これからの研究主導臨床研究について 2015 年 1 月 20 日 武田薬品工業株式会社 医薬開発本部 岩 崎 幸 司 本講演は、個人的見解であり、武田薬品工業株式会社の意見・意向 を反映又は主張するものではないことを予めお断り申しあげます Koji Iwasaki, Ph.D. 今日のおはなし 1.メディカルアフェアーズ(Medical Affaires)という お仕事 2.臨床研究の枠組みと倫理指針及び法制化の動向 3.臨床研究の実際 4.臨床研究の効率化に向けて 1 Koji Iwasaki, Ph.D. Function of Medical Affaires (MA) Function US Japan HEOR MA SDD KOL management MA S&M / R&D Education MA S&M / R&D Medical consultation MA R&D Publication strategy MA S&M / R&D IICS support MA R&D 2 Koji Iwasaki, Ph.D. As is and To be for Function of Medical Affairs As is To Be Supported by Donation Supported by Contract Expense Function of MA Function of MA HEOR HEOR KOL management Education KOL management Medical consultation Publication strategy IICS support Collecting Differentiation Data Seeding Study Education Medical consultation Publication strategy IICS support Building Scientific Evidence for Japanese population 3 Koji Iwasaki, Ph.D. Activities in Medical Affairs •Core MA activities •Sometimes owned by MA • • • • • • • • • • • • • Medical strategy IISR support MACS MSLs KOL engagement Advisory board meeting Congress activities Medical review of promotional materials Internal/external education/training Collaborative works with the other depts. HTA Medical information Publication support • • • • • • • • • LCM planning Evaluation of in-licensing candidates Phase I-IV publication strategy Competitive intelligence Medical expert for Phase I study PMDA consultation CTD discussion Epidemiology Biostatistics and analytics 4 Koji Iwasaki, Ph.D. Strong Medical Team Medical Director (MD) Medical Science Liaisons (MSL) Strategic Medical Research Planning(SMRP) 5 Koji Iwasaki, Ph.D. Role of Medical Affairs in Global Clinical Development Contribute input to all team deliverables based on Patient, Physician and Payer perspectives Represent LOC, Regional and Global perspectives to the Global Clinical Development Communicate with LOCs and Regions to build the Global Medical Strategy Identify Trial Endpoints to address payer and reimbursement requests 6 Koji Iwasaki, Ph.D. Clinical Development Process Clinical Concern KOL Management Ph5 Evidence Building Large Scale Clin. Research Observational Study Ph4 PMS Phase 4 Study Post Marketing Surveillance Long Term Study Ph3 Pivotal Long Term Non Clin. to Cin. Translational Ph1 FIH TR Ph2 POC Dose Finding Confirmatory Study Tolerance PK-PD 探索的試験 POC Dose Ranging Study Bridging Stregy International Clin. Study 7 Koji Iwasaki, Ph.D. Medical Affairs input, by development phase, into the clinical development plan Pre Clinical Ph I Draft of core Creation of medical core medical strategy strategy Ph II Expand and enhance of medical strategy Creation of launch excellence plan Ph III Ph IV/LCM Finalize robust Finalize and medical clinical research strategy strategy including launch Outcomesoptimization based plan Prospective Observational Execution of Studies launch excellence Develop clinical research strategy 8 Koji Iwasaki, Ph.D. The Medical Scientific Liaison role is central to the in-field medical capability Definition Core Activities • Field-based medical/scientific expert whose mission is to foster collaborative relationships with opinion leaders and to facilitate the exchange of unbiased scientific information between the key stakeholders and Takeda • “Catalysts of collaboration” between pharmaceutical companies and key stakeholders • Pivotal role for the communication of in-field intelligence to internal stakeholders, which can be leveraged to refine/guide brand and clinical strategy Drive scientific engagement with Key Opinion Leaders/HCPs Act as the external face of Takeda at scientific and medical congress Enable the implementatio n of trials and investigator led research Provide medical support and leadership to internal functions • Non-promotional role reporting to medical Medical/ Scientific Liaison Definition adapted from Albert E. et al The Medical Science Liaison: An A to Z Guide, 2007 and Jane Chin The MSL Institute: http://mslinstitute.com 9 Koji Iwasaki, Ph.D. Mission Medical Affairs Japan 10 Koji Iwasaki, Ph.D. 創薬 と 育薬 創 薬 育 薬 上市 使用成績調査 治験 製造販売後 臨床試験 臨床研究 有害事象 自発報告 大規模 臨床試験 特定使用 成績調査 疫学研究 症例数の増加 11 Koji Iwasaki, Ph.D. 治験、企業主導臨床研究、研究者主導臨床研究の違い 企業主導 臨床研究 研究者主導 臨床研究 当局への届出:不要 GCP、GPSP遵守:不要 治験 製造販売後臨床試験 製造販売後調査 エビデンス構築のため の企業主導委受託 による臨床試験 自主臨床試験 (IISR/ IITs) 育薬のための試験 コンプライアンス遵守、契約締結、 透明性の確保がポイント 12 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究と治験の枠組み(イメージ) 医学系研究 臨床研究 治験 治験以外の 臨床研究 それ以外の目的(学術目的) 医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法 の改善、疾病原因及び病態の理解に並び患者の生活の 質の向上を目的として実施されるヒトを対象とする研究。 〇介入研究 〇観察研究 に分類される。 臨床研究に関する倫理指針等を遵守 被験者保護を重視する観点から研究者等が遵守すべき 事項を規定。データの信頼性保証に関する規定がGCPほ ど厳格ではない。 医師主導 治験 企業治験 薬事法の承認取得目的 医薬品・医療機器の開発のために薬事法の承認申請の 際に提出すべき資料の収集を目的として実施される試験 のうちヒトを対象とする研究。 薬事法、GCP省令を遵守 被験者保護に関する規定のほか、モニタリング、監査、記 録の保存など、データの信頼性保証に関する規定あり。 第1回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議(平成25年2月20日)資料より抜粋 13 Koji Iwasaki, Ph.D. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 平成26年12月22日 人を対象とする医学系研究(以下「研究」という。)については、「疫学研究に関 する倫理指針」(平成19 年文部科学省・厚生労働省告示第1号)及び「臨床 研究に関する倫理指針」(平成20 年厚生労働省告示第415 号)により、その 適正な実施を図ってきたところです。 近年の研究の多様化に伴い、両指針の適用関係が不明確になってきたことや、 研究をめぐる不正事案が発生したこと等を踏まえて見直しの検討を行い、「人 を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26 年文部科学省・厚生 労働省告示第3号。以下「本指針」という。)として両指針を統合しました。 14 Koji Iwasaki, Ph.D. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 ~ 主な改訂点 ~ 1.研究機関の長及び研究責任者等の責務に関する規定(第2章関係) 研究機関の長へ研究に対する総括的な監督義務を課すとともに、研究責任者 の責務を明確化しました。また、研究者への教育・研修の規定を充実しました。 2.いわゆるバンク・アーカイブに関する規定(第1章、第3章関係) 試料・情報を収集し、他の研究機関に反復継続して研究用に提供する機関に ついて、「試料・情報の収集・分譲を行う機関」として位置付け、本指針を適用 することとしました。 3.研究に関する登録・公表に関する規定(第3章関係) 介入を行う研究を実施する場合には、あらかじめ当該研究の概要を公開デー タベースに登録、適宜登録内容を更新し、研究を終了したときは結果を登録す ることを求めることとしました。 15 Koji Iwasaki, Ph.D. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 ~ 主な改訂点 ~ 4.倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保に関する規定(第4章関係) 委員構成、成立要件、教育・研修の規定、倫理審査委員会の情報公開に関す る規定を充実しました。 5.インフォームド・コンセント等に関する規定(第5章関係) 研究対象者に生じる負担・リスクに応じて、インフォームド・コンセントの手続を 整理しました。また、未成年者等を研究対象者とする場合、親権者等のイン フォームド・コンセントに加えて、研究対象者本人にも理解力に応じた分かりや すい説明を行い、研究についての賛意(インフォームド・アセント)を得るよう努 めることとしました。 6.個人情報等に関する規定(第6章関係) 死者について特定の個人を識別することができる情報について、研究者等及 び研究機関の長の責務規定を充実しました。また、研究対象者の個人情報に 限らず、研究の実施に伴って取得される個人情報等を広く対象とすることとしま した。 16 Koji Iwasaki, Ph.D. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 ~ 主な改訂点 ~ 7.利益相反の管理に関する規定(第8章関係) 研究責任者や研究者がとるべき措置を明確化しました。 8.研究に関する試料・情報等の保管に関する規定(第8章関係) 侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い、介入を行う研究に係る情報等は、研究終了 後5年又は結果の最終公表後3年のいずれか遅い日までの保管を新たに求め ることとしました。 9.モニタリング・監査に関する規定(第8章関係) 侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い、介入を行う研究について、モニタリングや必 要に応じた監査の実施を新たに求めることとしました。 10.施行日(第9章関係) 平成27 年4月1日から施行します。ただし、第8章のモニタリング・監査に関す る規定については、同年10 月1日から施行することとしました。 17 Koji Iwasaki, Ph.D. 法制化の動向 臨床研究に係る制度の在り方に 関する報告書 平成 26 年 12 月 11 日 臨床研究に係る制度の在り方に関する 検討会 18 Koji Iwasaki, Ph.D. 本検討会の開催状況 検討会 開催日 第1回 平成26年(2014年)4月17日 第2回 平成26年(2014年)5月16日 第3回 平成26年(2014年)6月25日 第4回 平成26年(2014年)7月23日 第5回 平成26年(2014年)8月27日 第6回 平成26年(2014年)10月1日 第7回 平成26年(2014年)10月22日 第8回 平成26年(2014年)11月6日 第9回 平成26年(2014年)11月26日 19 Koji Iwasaki, Ph.D. 法制化の対象範囲 1. 未承認又は適応外の医薬品・医療機器等を用いた臨床研究 2. 医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究 20 Koji Iwasaki, Ph.D. 具体的な規制や対策の内容 1.倫理審査委員会 倫理審査委員会の役割や審査すべき内容を明らかにしつつ、具備すべき委員 構成等の要件を設定するなど、その質を確保するための方策を検討すること が必要である 2.臨床研究に関する情報の公開等について 臨床研究の実施状況が適切に公開されることは、透明性確保を通じた研究の 質の確保、ひいては被験者保護にとって有用であり、臨床研究に対する国民 の理解増進にも資する 3.臨床研究の実施基準について 臨床研究の実施基準としては、対象となる臨床研究の質の確保(モニタリング・ 監査の実施、記録の保存等)及び被験者保護(インフォームド・コンセント、個人 情報の保護等)の観点から、ICH-GCP等を踏まえて定め、関係者にその遵守 を求めるべきである 21 Koji Iwasaki, Ph.D. 具体的な規制や対策の内容 4.有害事象発生時の対応について 対象となる臨床研究については、予期しない重篤な有害事象等が発生した場 合、速やかに倫理審査委員会に報告することの徹底を求めるべきである 倫理審査委員会は当該報告を踏まえ研究継続の可否について検討するととも に、必要な措置を講じるよう求めるべきである 5.行政当局による監視指導及び研究者等へのペナルティーについて 行政指導や改善命令等による是正を促した上で、なお改善が図られない場合 にペナルティーを適用することを原則とすべきである 6.製薬企業等の透明性確保について 医薬品・医療機器等の研究開発に際し、産学連携の中で必然的に生じる利益 相反については、資金提供等の透明性をもって管理することが必要である 行政は製薬企業等の取組状況も踏まえ、法的規制も視野に対応を検討すべき である 労務提供についても、業界による行動指針等の策定が必要である 22 Koji Iwasaki, Ph.D. 新薬開発手法の変化 ① ~1998年頃 外国 (欧米) Stand Alone Study:日本で第Ⅰ相~申請まで完結する 第Ⅰ相 第Ⅱ相 第Ⅲ相 試験 試験 試験 申請 承認 第Ⅰ相 第Ⅱ相 第Ⅲ相 試験 試験 試験 日本 ② 1998年頃~2006年頃 外国 (欧米) 申請 承認 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 試験 ③ 2006年頃~ 外国 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 (欧米) 試験 日本 Bridging Study:外国データを利用して申請する 第Ⅰ相 第Ⅱ相 第Ⅲ相 試験 試験 試験 日本 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 試験 申請 承認 利 用 申請 承認 Global Study:日本と外国(欧米)で同時に開発・申請する Asian Study:日本での申請のためにアジアで試験を実施 第Ⅲ相 試験 申請 承認 岩崎幸司: Clinical Research Professionals, 1, 21-24(2007) 23 例 : ABC-123 の申請データパッケージ 国内データ 第Ⅰ相単回投与試験〔評価〕 第 第Ⅰ相反復投与試験〔評価〕 Ⅰ 薬物動態に及ぼす加齢の影響の検討〔評価〕 相 食事の影響の検討〔評価〕 申請製剤を用いた食事の影響の検討〔評価〕 Koji Iwasaki, Ph.D. 海外データ 第Ⅰ相単回投与試験〔評価〕 第Ⅰ相反復投与試験〔参考〕 薬物動態に及ぼす加齢、性別、人種の影響の検討〔参考〕 食事の影響の検討〔参考〕 忍容性 申請製剤を用いた食事の影響の検討〔参考〕 PK/PD 腎機能障害者における薬物動態の検討〔評価〕 肝機能障害者における薬物動態の検討〔評価〕 各種薬物相互作用試験〔参考〕 用量反応 安全性 第III相試験製剤と申請製剤の生物学的同等性試験〔評価〕 吸収、分布、代謝、排泄の検討〔参考〕 QTc間隔への影響の検討〔参考〕 第 Ⅱ 相 第Ⅱ相用量設定試験〔評価〕 第Ⅱ相用量設定試験〔評価〕 第Ⅱ相長期継続投与試験〔評価〕 第 Ⅲ 相 第Ⅲ相 プラセボ対照二重盲検比較試験〔評価〕 第Ⅲ相 併用薬Aとの併用試験〔参考〕 外挿 第Ⅲ相 併用薬Bとの併用試験〔参考〕 第Ⅲ相 併用薬Cとの併用試験〔参考〕 第Ⅲ相 併用薬Dとの併用試験〔参考〕 第Ⅲ相 併用薬Eとの併用試験〔参考〕 長期継続投与試験〔参考〕 24 Koji Iwasaki, Ph.D. 日本における 製造販売後データ収集 の 必要性 現在は、国際共同治験を活用した臨床データパッケージにより、 従来(日本でフル開発を実施していた頃)に比較して、日本での 症例が少ない状態で、承認を取得することが可能になってきてい る 欧米と日本における、薬物代謝、生活様式、疾患構成、医療制度 などに相違があり、医療現場では日本の患者さんに対する適切な 治療方針を判断するための情報が必要である 日本の患者さんに対する適切な治療方針を判断するための情報が 必要なのに、日本人での情報が少ない 製造販売後データの収集により 日本人のエビデンスを構築 Koji Iwasaki, Ph.D. 製造販売後のエビデンス構築の状況変化 1998年頃~2006年頃 外国 (欧米) 第Ⅰ相 第Ⅱ相 第Ⅲ相 試験 試験 試験 申請 承認 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 試験 日本 欧米で、製造販売後の安全性及 び有効性のデータが集積されて から、日本でPMSを実施していた PMC 利 用 申請 承認 PMS 欧米と同時にPMSを実施し なければならない 治験段階での宿題事項に対 応しなければならない 2006年頃~現在 外国 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 (欧米) 試験 日本 第Ⅰ相 第Ⅱ相 試験 試験 PMC 第Ⅲ相 試験 申請 承認 PMS 26 Koji Iwasaki, Ph.D. 米国(US) と 日本の 製造販売後の育薬フェーズ の 相違 NDA US(FDA) Basic R. Discovery R. Development Review NDA JAPAN(PMDA) 基礎研究 Approval 非臨床試験 臨床試験 PMC Approval 審査 製造販売後調査 製販後臨床試験 研究者主導臨床研究 ICHでハーモナイズされている 製造販売後のインフラ整備、 グローバル化に対応する ハーモナイゼーションが必要! 重複、非効率が 発生! 27 Koji Iwasaki, Ph.D. 基礎 及び 臨床論文数における日本の国際順位の推移 0 1993-1997 1998-2002 2003-2007 2008-2011 5 10 15 20 25 30 1993-1997、1998-2002、2003-2007の国際順位は政策研ニュースNo.25(2008年7月)による Web of ScienceSM (トムソン・ロイター)をもとに作成(2012年1月23日現在) 出所: 辰巳邦彦 主要基礎・臨床医学論文掲載数の国際比較、政策研ニュース、No.35、48-49(2012) 28 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究に関する提言 今村恭子:臨床研究に関する提言, 日本製薬医学会HP( http://japhmed.jp/whats_new/post_18.html )よりダウンロード 29 Koji Iwasaki, Ph.D. 今村恭子:臨床研究に関する提言, 日本製薬医学会HP( http://japhmed.jp/whats_new/post_18.html )よりダウンロード 30 Koji Iwasaki, Ph.D. 31 Koji Iwasaki, Ph.D. 資料掲載: 第3版医法研・JAPhMed研究者主導臨床研究契約(サンプル) 日本製薬医学会では、2011年9月に「医師主導臨床研究に関する契約書サ ンプル(JAPhMed版)」、2012年5月に「第2版 JAPhMed版臨床研究契約サ ンプル」を発表し、多くの反響を頂きました。 その後、日本製薬工業協会(製薬協)をはじめとする各団体より、研究者主導 臨床研究に対する資金は奨学寄附ではなく「契約」を締結しての提供が強く 求められるようになり、米国研究製薬工業協会(PhRMA)や欧州製薬団体連 合会(EFPIA)からも世界標準での対応を求める指針が出されました。また、 「臨床研究に関する倫理指針」の改正が審議されるなど、臨床研究の信頼性 を高める機運が高まってきています。 今般JAPhMedでは、薬業界の法務専門家集団である医薬品企業法務研究 会(医法研)経済法研究部会と共に第2版に更に改善を加えて、研究契約書 サンプル第3版を発行しました。医法研の皆様の御協力に厚く御礼申し上げ るとともに、この第3版サンプルを活用した研究契約を通して今後の質の高い 臨床研究が推進されることを期待します。 http://japhmed.jp/pdf/20141126_%E7%AC%AC3%E7%89%88%E5%8C%BB%E6%B3%95%E7%A0%94JAPhMed %20%E7%A0%94%E7%A9%B6%E8%80%85%E4%B8%BB%E5%B0%8E%E8%87%A8%E5%BA%8A%E7%A0% 94%E7%A9%B6%E5%A5%91%E7%B4%84%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AB.pdf 32 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究の実行手順とプロジェクトマネジメントの5つのプロセス プロジェクトマネジメントの 5つのプロセス 立ち上げ Deliverablesの定義, 品質、納期の設定・確認 クリニカルクエスチョンから リサーチクエスチョンへ 出所:九州大学病院 ARO次世代医療センター 研究支援体制より一部改変 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/support/index.html 33 臨床研究立案の全体の流れ Koji Iwasaki, Ph.D. クリニカルクエスチョンの確認 リサーチクエスチョンの組立 研究計画書の作成 34 Koji Iwasaki, Ph.D. クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへ リサーチクエスチョンとは? 臨床家が臨床の現場で出会う「わからないこと・知りたいこと」を 一定の形式にそって、臨床研究で解明しうる形に整理したもの クリニカルクエスチョン リサーチクエスチョン 医師が持つ臨床上の疑問・課題 医師が持つ臨床上の疑問・課題 に対する解決策を「臨床研究」とい う手段で解決するための手法 研究デザイン(提案)の質を向上させる 35 クリニカルクエスチョン(CQ)の要素をPICO/PECOにあてはめてみる Patients Koji Iwasaki, Ph.D. :誰に?(対象) Intervention/Exposure :何をすると?(介入)/何によって?(要因) Comparison :何と比較して Outcomes :どうなる(効果) 36 Koji Iwasaki, Ph.D. リサーチクエスチョン(RQ)の作り方 クリニカルクエスチョン SU剤を処方すると低血 糖 に な りや すい 糖 尿 病 リサーチクエスチョン 【誰に?】 P → 軽症2型糖尿病患者に ※要確認:本当に「軽症糖尿病患者」か? 患者さんに対して、長期 に安定した血糖コント ロールするには、どの薬 I/E 【何をすると?】 → DPP4 Inhvt. を処方すると 剤 を処方 する の がいい のかなぁ? C 【何と比較して?】 → SU剤と比較して 【どうなる?】 O → 低血糖を起こさない → 長期に血糖コントロールができる 37 Koji Iwasaki, Ph.D. リサーチクエスチョン(RQ)から臨床研究デザインへ リサーチクエスチョン 臨床研究デザイン 【誰に?】 → 軽症2型糖尿病患者に ※要確認:本当に「軽症糖尿病患者」か? 【何をすると?】 → DPP4 Inhvt. を処方すると 【何と比較して?】 → SU剤と比較して P 軽症2型糖尿病患者 【方法】 I/E C 【どうなる?】 → 低血糖を起こさない → 長期に血糖コントロールができる 【対象】 O A群:ネシーナ25mg/日 投与群と B群:グリベンクラミド2.5mg/日 投与群 【評価方法】 A群とB群の間で、以下の項目を比較 低血糖発症頻度 投与後〇〇週までのHbA1cの推移 ※比較内容・比較方法を明確化 38 臨床研究におけるリサーチクエスチョンの確認方法(FINER) Koji Iwasaki, Ph.D. リサーチクエスチョン PICO(PECO) きちんとできていないと・・・ 取り返しのつかない問題発生し、 行き詰まることも ex)収集すべきデータの設定ミス 漠然とした疑問を明確化し、科学的に検証する よいPECOかどうかをFINERでチェック! FINERとは・・・ Feasible(実現可能性) ・・・・・・ 予算、時間、症例数は実現可能? Interesting(科学的興味深さ) ・・・・・・ 関心が高い? Nobel(新規性) ・・・・・・ 過去の文献にない? Ethical(倫理的) ・・・・・・ 同意説明は?倫理審査委員会? Relevant(社会的な意味) ・・・・・・ 患者、臨床家、社会に役立つ? 39 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究におけるリサーチクエスチョンの確認方法(PECO+T) PECO(PICO)+T + Type of question (疑問のタイプ) ・・・・・・ 頻度?、原因?、予後?、リスク?、 治療?、予防?、コスト? etc + Type of design (デザインのタイプ) ・・・・・・ ランダム化比較試験?、コホート研究?、 横断研究?、症例対照研究? etc ランダム化比較試験: 被験者をランダムに処置群(治験薬群)と比較対照群(治療薬群、プラセボ群など)に割り付け て実施し、評価する。 コホート研究: ある薬を飲んでいる集団と飲んでいない集団というように分類し、比較分析してその間にある 因果関係を調べる。 横断研究: ある一時点(時期)での断面調査。要因と結果を同じ時点で観察する。 症例対照研究: ある疾病にかかった集団とかかっていない集団について、特定の要因への曝露状況を調査し 比較することで、要因と疾病の関連を評価する。 40 データが入っていればなんとかなる? 大きな間違い! Koji Iwasaki, Ph.D. 日付データを集計したい 「~年ごろ」の入力法は? 部分日付を許容するのか? このデータは、 使うかどうか わかんないけ ど、一応、いれ とこうか・・・・・ スコア化したデータで解析したい そのスコアはバリデートされていますか? 部分日付を許容するのか? ステロイド剤の用量で層別解析したい どれがステロイド? 服用率のデータは収集してますか? プレドニン換算では? 服用開始日、服用終了日のデータは? 41 Koji Iwasaki, Ph.D. 断捨離 入ってくる要らない「モノ」が断つ 断行 セット検査項目で測定されて いるから収集しておこう・・・ 要らない「モノ」を捨てる 捨行 前回、収集したから今回も・・・ 離行 収集しておけば、何か解析で きるだろう・・・・ 「モノ」への執着から離れる 固定概念、思い込みにとり憑かれて、凝り固まってしまった 「ココロ」をヨガの行法を用いてときほぐし、知らないうちに 自分で作ってしまっている重荷からの解放を図り、快適な 生活・人生をとりもどすための方法 出所:やましたひでこ, 新・片づけ術「断捨離」,マガジンハウス(2009)から一部改変 42 Koji Iwasaki, Ph.D. 断捨離 入ってくる要らない「モノ」が断つ 断行 セット検査項目で測定されて いるから収集しておこう・・・ 要らない「モノ」を捨てる 捨行 前回、収集したから今回も・・・ 離行 収集しておけば、何か解析で きるだろう・・・・ 「モノ」への執着から離れる 解析する項目を試験開始前に設定し、解析に用いない項 目は収集しない。 主要評価項目、副次評価項目、その他の評価項目のよう に、収集項目に優先順位を明確につける 出所:やましたひでこ, 新・片づけ術「断捨離」,マガジンハウス(2009)から一部改変 43 臨床試験の「質」 ~2段階の切り口~ 臨床試験の「質」 臨床試験そのものが適切に 実施されること 倫理指針/GCP等の遵守 • 手続きモニタリング • インフォームドコンセント(IC) • 安全性報告 コンプラインス • 利益相反(COI) 進捗状況 • スケジュール通りか? • 予算の範囲内か? 臨床試験データの「質」 臨床試験データが適切に 集計・解析されること 症例データの質 • 原資料との整合性 • 要求通りのデータ 解析に用いないデータの収集方法 • モニタリング報告書 • CRC記録 データ収集プロセスの管理 • ALCOA 44 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究の実行手順とプロジェクトマネジメントの5つのプロセス プロジェクトマネジメントの 5つのプロセス 立ち上げ 計 画 実行計画の作成、 管理方針の策定 実行プラン ・モニタリング計画 ・品質管理計画など 実行スケジュール 役割分担 出所:九州大学病院 ARO次世代医療センター 研究支援体制より一部改変 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/support/index.html 45 Koji Iwasaki, Ph.D. 計画立案(Planning)の手順 プロジェクトの目的 1. 成果物を特定する WBSを作成する 2. 作業を特定する 10日 3. 担当者を特定する リソースマップを作成する 4. 作業時間を見積もる 予測する 5. 作業を構造化する ネットワークダイアグラムを組む 出所:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド) 第5版、PMI(2013)から一部改変 46 Koji Iwasaki, Ph.D. モニタリング計画書・報告書 1 目的と適用範囲 ....................................................................................................................................... 4 2 データの品質方針、品質目標の設定 ................................................................................................... 5 2.1 品質方針の設定 .................................................................................................................................. 5 2.2 品質目標の設定 .................................................................................................................................. 5 3 データの品質方針及び品質目標を実現するための手法.................................................................... 6 3.1 品質管理計画の立案 .......................................................................................................................... 8 3.2 施設モニタリングに関する計画 ...................................................................................................... 9 3.3 中央モニタリングに関する計画 .................................................................................................... 10 3.4 モニタリングに関する報告書等のテンプレートの作成 ............................................................ 10 4 モニタリング担当者 ............................................................................................................................. 11 5 モニタリングの実施体制 ..................................................................................................................... 12 6 モニタリング実施ポイントと実施時期.............................................................................................. 12 7 モニタリング実施方法 ......................................................................................................................... 15 7.1 モニタリング実施前 ........................................................................................................................ 15 7.1.1 モニターの指名と削除 ............................................................................................................. 15 7.1.2 モニター配布資料 .......................................................................................................................... 15 7.2 モニタリング実施準備 .................................................................................................................... 16 7.3 モニタリング確認内容 .................................................................................................................... 17 7.3.1 治験開始前 17 47 Koji Iwasaki, Ph.D. モニタリング部門とデータマネジメント部門の協業 データマネジメント部門 (Off-site monitoring) モニタリング部門 (On-site monitoring) 中央モニタリング 担当者 モニター (データマネージャー) クエリー発行 中央 モニタリング オンサイト モニタリング クエリー発行 実施医療機関 EDCによる データ入力 臨床試験 データベース 48 Koji Iwasaki, Ph.D. モニタリング報告書 目次 1. 登録状況 ..................................................................................................................................... 2 1.1 登録症例数 ............................................................................................................................... 2 1.2 月別登録状況 ............................................................................................................................ 2 1.3 施設別症例登録数..................................................................................................................... 3 2. 症例情報 ..................................................................................................................................... 3 2.1 症例進捗状況 ............................................................................................................................ 3 2.2 中止例内訳 ............................................................................................................................... 4 2.3 中止例詳細 ............................................................................................................................... 4 3. EDC 入力状況 ............................................................................................................................. 4 3.1 入力状況進捗 ............................................................................................................................ 4 3.2 クエリ発行状況 ........................................................................................................................ 5 4. 有害事象 ..................................................................................................................................... 5 4.1 重篤な有害事象 ........................................................................................................................ 5 4.2 非重篤な有害事象(関連あり)................................................................................................ 5 5. 治験実施計画書からの逸脱......................................................................................................... 6 6. 施設モニタリングに関する問題点 .............................................................................................. 6 7. データクリーニング(データマネジメント)に関する問題点.................................................... 6 8. 今後のモニタリング計画 ............................................................................................................ 6 49 Koji Iwasaki, Ph.D. モニタリング報告書と中央モニタリングレポートの統合 自ら治験を実施する者(治験調整委員会) 計画Phase Quality Management Plan (データマネジメント計画書、モニタリング計画書) モニタリング部門 モニタリング報告書 統合Phase 実行Phase (Off-site) データマネジメント部門 中央モニタリングレポート (データマネジメント報告書) 自ら治験を実施する者(治験調整委員会) 妥当性を検討し、 計画を見直す 実行Phase (On-site) PDCA cycle モニタリング結果報告書 (モニタリング報告書と中央モニタリングレポートの統合) 治験審査委員会 Change control 各実施医療機関・責任医師等へのフィードバック (進捗管理目標の変更) 50 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究の実行手順とプロジェクトマネジメントの5つのプロセス プロジェクトマネジメントの 5つのプロセス 立ち上げ 計 画 実 行 プロジェクトの実行 KKI? 出所:九州大学病院 ARO次世代医療センター 研究支援体制より一部改変 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/support/index.html 51 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床試験での事例・・・CRCさんの ある日の業務分担 ① ② <プロセスマップ・プロセス定義書> <役割分担表> <標準WBS> <MS-Projectテンプレート> 3.2.2 標準WBSの策定 標準WBS(一部抜粋) 策定した標準WBSの一部を以下に示す。 3パターンで進捗定義 業務を 3階層化 51 出所:②鶴丸雅子,CRCに求められる能力とは?, フレッシュCRAのためのテキスト, 日本病院薬剤師会,68-73,(2005) ①松島由紀子,CRAに対して、CRCはなぜ熱くなるのか, フレッシュCRAのためのテキスト, 日本病院薬剤師会,43-47,(2005) 52 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究の実行手順とプロジェクトマネジメントの5つのプロセス プロジェクトマネジメントの 5つのプロセス 立ち上げ 計 画 実 行 監視・コントロール 管理方針に基づく制御測定 QMS (Quality Management System) 品質に関して組織を指揮し、管理 するためのマネジメントシステム 出所:九州大学病院 ARO次世代医療センター 研究支援体制より一部改変 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/support/index.html 53 Koji Iwasaki, Ph.D. 品質マネジメント 品質マネジメントとは 「顧客の要求にあった品質の製品やサービスを経済的に作り出すため の一連のプロセス」のこと 品質とは 「製品やサービスに備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」のこと 顧客満足:顧客による品質評価 要求水準:GCP等の規制要件、倫理指針等を見なす品質 診療上の新しい方法(予防法、診断法、治療法など)開発できる すでに存在している診療上の方法(予防法、診断法、治療法など)に関する新しい臨 床的エビデンスを得ることができる 厚労省、PMDAの審査に適合し、承認される 目指した学術雑誌に論文が掲載される 54 Koji Iwasaki, Ph.D. 品質計画 品質管理 品質保証 Plan Check Review 品質マネジメント計画 ・役割分担 ・チェックシート ・スケジュール ・品質管理基準設定 QCの実行 ・チェック項目の確認 ・スケジュールの確認 ・品質管理記録作成 品質の確認 ・QC policy ・スケジュール ・チェックシート マネジメントレヒビュー ・品質管理記録 ナレジマネジメント 監査 品質方針 Quality Policy:品質方針の実施 品質改善 55 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床試験にあてはめてみると・・・ 品質マネジメントポリシー 品質マネジメント計画書(QMP) 監 査 計 画 書 試験手続 安全性報告 症例データ On Off On Off On Off R R R R R R 監 査 報 告 書 品質マネジメント報告書(QMR) On:On-Site Monitoring Off:Off-Site Monitoring R:Report 56 Koji Iwasaki, Ph.D. 自分の臨床研究とICH-GCPおよび倫理指針*の関係(1) 項目 ICH-GCP 治験審査委員会 本臨床研究の 審議 新・倫理指針 自分の臨床研究 倫理審査委員会 各医療機関の規定 審議資料: 審議資料: 臨床研究実施計画書、CRF、 臨床研究実施計画書(及び同 同意説明文書、治験薬概要書、 意説明文書) 補償に関する資料、 研究責任者の最新の履歴書等 審議資料: ・臨床研究実施計画書 ・同意説明文書 ・添付文書(破格薬剤のみ) ・補償に関する資料 ・研究責任者の最新の履歴書 合意書 ○ 規定なし ○ COI管理 規定なし ○ ○ (研究責任者のみ) 分担者リスト ○ ○ ○ 履歴書の 作成・提供 研究責任者 研究分担者 研究責任者 規定なし (審議資料として) 研究分担者 (保管資料として) 57 Koji Iwasaki, Ph.D. 自分の臨床研究とICH-GCPおよび倫理指針*の関係(2) 項目 ICH-GCP 新・倫理指針 自分の臨床試験 モニタリング ○ ● ○ 監査 ○ 必要に応じて - 記録の保存 ○ ● 臨床検査の 精度管理の保証 ○ 規定なし 臨床検査 基準値 ○ 規定なし 中止又は終了後5年 (臨床研究実施計画書12.3) ○ ○ JCOG共用基準範囲 58 Koji Iwasaki, Ph.D. 臨床研究の実行手順とプロジェクトマネジメントの5つのプロセス プロジェクトマネジメントの 5つのプロセス 立ち上げ 計 画 実 行 監視・コントロール 終 結 Deliverablesの納入、 ふりかえり 出所:九州大学病院 ARO次世代医療センター 研究支援体制より一部改変 http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/support/index.html 論文作成 KPT 59 Koji Iwasaki, Ph.D. ふりかえり(Keep-Problem-Try) 出来たこと(Keep) こんど試したいこと・ 次の業務に活かせること(Try) 出来なかったこと(Problem) 60 End of file. Koji Iwasaki, Ph.D. Takeda Pharmaceutical Company Limited
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