長野県上伊那農業高等学校

第3分科会:第8会場
さぁ、Jプロジェクトがスタートだ!
~未来へつながる新たな一歩へ~
クラブ員代表者会議
北信越ブロック
長野県上伊那農業高等学校
生物科学科
3年
川上
翔平
園芸科学科
3年
三澤
綾香
園芸科学科
3年
松﨑
陽名子
生産環境科
3年
平澤
弘樹
生産環境科
3年
那須野
生物科学科
2年
中村
香月
緑地創造科
1年
十文字
いよ
巧
1.はじめに
私たちの通う上伊那農業高校は、南アルプスと中央アルプスに囲まれた自然豊かな場所
に位置する学校です。県内の農業高校で最大の敷地面積を持ち、昨年度創立 120 周年を迎
えた県内でも有数の歴史ある高校で、地域の方々からは“上農”という愛称で親しまれて
います。
そんな上農高校は、生産環境科、園芸科学科、生
物科学科、緑地創造科の計 4 学科から成り、充実し
た農業学習を行っています。さらに 2 年生よりコー
スに分かれ、より専門的な知識や技術の習得、課題
研究などに取り組んでいます。また、上農高校で収
穫した野菜や加工品は定期的に近くの市民病院や
“上農青空まるしぇ”等で販売し、地域とも関わり
が深い学校です。
2.分科会テーマのとらえ方
まず私達は今回のテーマである「農業高校で学んだ専門学習に関する基礎的な知識や技
術を農業や社会の発展に生かすためにはどうしたらよいか。」についてどう考えるか、全ク
ラブ員にアンケート調査を実施しました。
その結果、
・農業の楽しさや知識を人に伝える
・農家を手伝う
・地域の活性化に協力する
といった意見が出ましたが、
「 生かす方法もあると
は思うが、具体的にどうしたらいいかがわからない」
といった声が多く聞かれました。そこで、実際に社
会に出て活躍している OB・OG の方々に、「農業高校で学んだ知識や技術がどう生かされて
いるのか」等を聞き取り調査しました。
その結果、
酪農家の柴さんからは
「高校卒業後に実家の農家を継ぎながら、自分だからこそできることは何かを考えまし
た。そこで、高校時代に学んだ専門知識を生かして、一般の人に向けた農業教育を実施し
ているよ。」
農家の水上さんからは
「農業高校ならではの活動を通して “多面的で自由”な発想ができるようになりました。
高校生には自ら課題を見つけ、それに向って仲間と共に楽しく活動して欲しいね!」
等、この他にも沢山の先輩方から様々なメッセージを頂きました。
そこで私達は、クラブ員に
「実際に活動してみよう!まずは、私達農業高校生にできることを考えてみようよ!」
「地域に飛び出し、自分たちもワクワクするような活動を出し合おう!」
と呼びかけました。
すると、なんと全 22 ものアイデアが上げられ、
これを元に本校農業クラブにある 6 つの研究班か
ら新しいプロジェクトが立ち上がりました!その
名も、『J プロジェクト』!J プロジェクトの J は
上農の「J」。上農高校の学びを最大限に生かす活
動が始まりました。
3.さぁ、J プロジェクトがスタートだ!
【J プロジェクト1】伝統食の継承と農地の活用!『雑穀パワープロジェクト』
作物班では、古くから食べられている雑穀「ア
マランサス」を用いて、伝統的な栄養バランスの
良い食文化を地域に広めたいと活動を開始。アマ
ラ ン サス 研 究 会 や 信 州 大 学 と連 携 し て約 30a の
耕作放棄地にアマランサスを作付けすることで、
耕作放棄地の有効活用にも貢献しています。また、
食育交流を通して地域の子供たちに雑穀の食文化
や魅力を伝える活動も行いました。
【J プロジェクト2】農業の楽しさを子供たちに伝える!『まっくん田んぼ体験隊』
環境班では、稲を育てる栽培の知識をベースに
地域の子供達に向け農業体験を開始。田んぼ体験
隊として、地域の子供たちに模造紙などで分かり
やすく案山子の作り方や役割、イナゴの調理方法
などを教えました。また、稲作の作業工程、西天
竜用水路の歴史、昔と今の田んぼの生き物等を子
供たちに楽しく伝えるため、紙芝居の読み聞かせ
や体験を交えて説明しました。除草作業では草相撲などを取り入れることで、大変な作業
も楽しんでもらえる工夫もしています。
【J プロジェクト3】バイテク技術で幻の花を守ろう!『アツモリソウプロジェクト』
バイテク班では、バイオ技術を用いて絶滅危惧種アツモリソウの増殖・保護を行い、未
来に残そうと活動しています。現在、長野県に自生するアツモリソウはわずか 1000 固体。
中でも美ヶ原は 3 個体と危機的状況にあります。今年度は新たに、長野県林野庁・環境部
や慶応義塾大学との連携を図り、研究の更なる充実を目指します。そして、地域の財産を
未来に残していきます!
【J プロジェクト4】地元の味を伝え広めよう!『上農味噌改造計画』
加工班では、食品加工の知識や技術を地域に還元しようと活動を開始。毎年地域の方々
から人気のある上農オリジナル味噌を、今年度は、地域の魅力を伝えられるような味噌に
するための改良をしました。味噌の材料は全て地元産にこだわり、地元のそば麹を使った
味噌を手作りしました。味噌を通して地域の農家の味を各家庭に届けることができました。
【J プロジェクト5】資源、生命を無駄なく食べよう!『上農鹿肉プロジェクト』
畜産班では、全県で問題になっている有害獣(鹿)
を、安く、美味しく無駄なく食べて欲しい!とい
う思いから活動を開始。自分たちの手で解体し、
雌雄の精肉歩留まりを調べました。さらに上農オ
リジナルジャーキーや餃子、ワンコイン丼ぶりを
作り、地域のイベントなどに参加。各家庭の食卓
に鹿肉の美味しさを広めています。
【J プロジェクト6】里山や森林に目を向けよう!『KEES プロジェクト』
緑地班では、地元産の間伐を地域で活用しようと、産学官協働で活動を開始。地元の木
から組み立て式木材である「KEES」をつくり、商店街や地域の人々に木のある暮らしを伝
え広めています。また、間伐材を活用することで森林整備を促進し、小・中学校との交流
を通して地元の子供たちに森林について考えてもらう活動もしています。森と人々の暮ら
しを繋ぐ、まさに信州ならではの活動です。
以上、私たちが企画し取り組んだ「J プロジェクト」は、地域で沢山の人々の笑顔を見
ることができました。他にも農業クラブ員ならではの活動を自ら考え楽しく行ってきまし
た。
4.考察
クラブ員を対象に、
「J プロジェクトが農業や社会の発展に役立つと実感できたか」をア
ンケート調査しました。すると、約 96%の人が「実感できた」と回答し、活動を通してク
ラブ員の意識に大きな変化が見られました。
また、この経験を通して、
・農業高校で日々学んでいることが、社会でどう
生かせるのかがイメージできた。
・実は生活の色んな場面で農業が生かされている
ことが分かった。
・私達のアイデアが地域の人に喜んでもらえた。
・自分のやりたいことや夢が見つかった。
等の前向きな意見が多く聞かれました。
5.まとめ
今回の J プロジェクトを通して、まずは実際に地域に出て、自ら五感を使って学び、体
験してみる中で課題を見つけることが必要だと感じました。
私たちが目指すべきもの、それは、農
業の知識や技術を身に付けることはもち
ろん、そこに農業高校生ならではの想像
力、夢や希望をもって楽しく活動してい
くことです。
これが、今回の分科会テーマである「農
業高校で学んだ専門学習に関する基礎的
な知識や技術を農業や社会の発展に生か
すためにはどうしたらよいか。」の私たち
が考えた答えです。
未来へつながる新たな一歩へ
~An another step leading to our future.~