半導体レーザのコ ヒーレン ト光位相同期ループ の開発

半導体 レーザの コ ヒー レン ト光位相同期 ループ
の 開発
大津
充
―
東京工業大学
大 学院総合理工学研究科
物理情報工学専攻
助 教授
1 . は じめに
コ ヒー レン ト光通信、 コヒー レン ト光計測なと、 レーザの コ ヒー レンスを積極的 に利用する光
応用 システムにおいて光位相同期 の開発は必須である。木研究では半導体 レーザのヘ テ ロダイン
形お よびホモダイン形光位相同期 ループを構築す ることを目的 とする。
2 . 半 導体 レーザの発振 スペク トル線幅狭窄化
光位相同期 ループ ( O P I フ1 ン
) を 実現す るためには発振 スペ ク トル線幅の狭 い ( 周波数揺 らぎ
の少 ない) 半 導体 レーザを使 う必要がある。従来 の 半導体 レーザの線幅 は数M H z で あ り、 これ
実現 しな い。そ こで、我 々は半導体 レーザの注入電流を制御す る ( 電気的負帰還
法) こ とによ り線幅 2 5 0 H z を得た。 さ らに、外部の高 Q フ ァブ リ ・ペ ロー共振器か らの戻 り
光を半導体 レーザに注 入す る方法 ( 光帰還法) を 補助的 に用 いた電 気的負帰還法 により、線幅
ではO P L L は
7 H z を 得 た.
1.0
5
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︵コ∞︶ぁ〓のCOヤ
―
卜1トー7 Hz
Frequency
50Hz/div
図 1 自 動制御 され た 半導体 レーザの発振 スペ ク トル形状
図 1 に その発振 スペ ク トル形状 を示す。 また、 この 制御 によ り制御帯域 内へ の 光 パ ワー集 中率
は9 8 % に 及 ぶ ことが 確認 された。 つ ま り、周波数揺 らぎの 高速成分 も十分 に抑圧 された。
3 . ヘ テ ロダイ ン形光位相 同期 ル ー プ
前節で実現 した超 高 ヨ ヒー レン ト半導体 レーザを主 レーザ と して 用 い、 もう一 つの半導体 レー
ザ ( 従レーザ) と の 間で ヘ テ ロ ダイン形 光位相同期 ル ー プを構成す ることを試みた。
―
- 7
Spectrum Analyzer
OscllloscOpe
(Master)
ー
田 2 ヘ テ ロ ダイ ンT'光位相同期 ル プの実験装 置
図 2 の よ うに局部発振器 と して周波数安定 なマ イクロ波発振器 を利用す る。 この場合、 O P L
ー
Iフ
実現 時 には■ レーザ と従 レ ザ との 周波数値 は局部発振器 周波数 に等 しくなる。 O P I ソ L の 実
現 のための ル ー ブ フ ィル タな どは回路解析 の手法 を用 いて最適設計 した.
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一
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図 3 ( a ) 局 部発振器 の 発振 スペ ク トル形状
(b)光
位相同期時 の二 台 の レーザ間の ヘ テ ログイ ン信号 スペ ク トル形状
8 -
はO P L L 実
は局部発振器 の 発振 スペ ク トル形状 の測定結果、( b ) に
現時 の両 レーザ 間
図 3(a)に
のヘ テ ロ グイ ン信 号 スペ ク トル形状 を示す。( b l の
形状 とよ く一 致 してお り、良好 な
形状 は( a ) の
の実現が確認 され た。 なお、 これ らの形状 の線幅 はスペ ク トラムアナライザの分 解能 に
OPIフ Iン
よ り制限 されて い る( ,
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(sec)
図 4 ヘ テ ロダイ ン信号 の 残留周波数揺 らぎを表す分散 の平方根
横軸 は測定 の 積分時間。縦軸 は分散 の平方根であるが、 これ は光 の周波数値 ( 3 6 1 T H z )
で規 格化 してあ る。 白丸 は測定値。実線 は白丸 に最小 自乗 当て はめを行 った結果。破 線 は局
部発振器 の 周波数揺 らぎの測定値
次 にO P L I フ の性能 を定量的に評価す るためにヘ テ ロダイ ン信号周波数 の 残留揺 らぎ量を測定
した。図 4 の 白丸および実線 はその揺 らぎの 分散値 の平方根 の測定結果 を示す。 一 方、破線 は局
部発振器 の値 であ る。縦軸 は光周波 数値 で規格化 した分散値 の平方根を、横軸 は測定の積分時間
で あ る。積分時間7 0 s で は白丸 の値 は1 . l X 1 0 1 8 とな って い る。 つ ま り、 ヘ テ ロダイ ン信号周
波数揺 らぎは 0 . 4 m H z ま で抑圧 されて いることを示 して い る. こ の値 か らヘ テ ロダイ ン信号 の
残留位相揺 らぎの分散値を計算す ることがで き、その結果 0 . 0 2 r a d 2 で ぁ ることがわか った。
つ ま り、l r a d 2 以
下 の値 が 得 られ、 O P L L の
実現 が 再確認 された。 さ らに、 この結果か ら
従 レーザの全光 パ ワーの うち、主 レーザ と位相同期 して いる割合を計算す ることがで き、その値
と して9 9 % を 得た。 この値 もきわ めて良好 なO P L L の
実現 を証明 して いる。以上 によ りO P L
L の 性能が定量的 に評価 された。
なお、 白丸 と破線 との比較 によると現在 の O P L L の
性能 は局 部発振器 の性能 によ り制限 され
て い ることがわか るc 従 って 、 よ り高性能 の局部発振器 を使えば O P L I 夕 の性能 はよ り向上す る
- 9 -
の 値を もとに図 3 ( b ) の
真の スペ ク トル線幅 が推定で き、約 2 0 m H
ことが 期待 され る。 なお、白ナと
z の 値 が得 られ る3
4 . ホ モダイ ン形光位相同期 ル ー プ
を軽減 し、デ ー タ伝送容 量をよ り増
次 に、 コ ヒー レン ト光通信 システムにおいて受信系 の 負i 巳
大 させ るた めに必 要 な O P I フ L 、 す なわ ち、 ホモ ダイ ン形 O P I ン L 、 を実現す ることを試み た。
detector
RF Spectrum
Analyzer
ー
図 5 ホ モ ダイ ン形光位相同期 ル プの実験装 置
図 5 に 示す よ うに二つの 光検出器を用 いて バ ラ ンス形光位相検 出器 と して用 いた。 その他、 ル
プフ ィル タな どの最適設計 は前節 と同様 に行 った。
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図 6 ホ モ ダイ ン信号 の 残留位相揺 らぎの パ ワ スペ ク トル密度 の測定結果
- 10 -
ー
その 結果、図 6 の よ うに残留位相揺 らぎの パ ワー スペ ク トル密度が得 られた。 制御帯域 1 . 5 M
H z 内 で 位相揺 らきが著 しく減 少 して い ることがわか る。 この実験結果よ り残留位相揺 らぎの分
散値 は0 . 0 2 r a d 2 、 従 レーザの光 パ ワーの うち主 レーザに位相同期 された割合 は9 8 % 、 と見積
られ、 良好 なホモ ダイン形 O P I フ I ク
が実現 した ことが 確認 された.
なお、上記の帯域 は コ ヒー レン ト光 システムヘ の 応用上、やや小 さいので これを拡大す ること
PZT contro‖ er
F
一E
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図 7 広 帯域 ホ モ ダイ ン形光h L 相同期 のための 従 レーザの位相 変調効率を最適化す るための
十
寸カロ│=1路
を試み た, そ のために図 7 に 示す よ うに従 レーザの 位相変調効率特性 を O P L I ン のために最適化
す るよ うに制御系 を 付加 したを その結果、図 S に 示す よ うに、 O P L L の
残留位相揺 らぎの パ ワ
ー スペ ク トル宙度 の 値 はフー リエ 周波敢 1 8 1 ヽ
イH z 以 下 で 著 しい減少を示 した。 つ ま り、 O P I フ
L 帯 域が 1 3 1 ヽ
III zま
で拡大 した.
け け い
宿 I さ Ooじ 含 ︶e の
134MHz
10-13
0
100
200
f(MHz)
図 8 ホ モ ダイン│ 1 号' D 攻留 f i l H 揺らぎの ノ( ワー スペ ク トル密度
a 、 b は 淑1 定結 果. c , d は 計 算結果, 曲 線 a ― c は 非位相同期時.
H41線
1 ) 。d は l i ■
lR同
社
月時=
5 , ま とめ
発振 スペ ク トル線幅 の きわ め司 ' t い
半導体 レーザを用 い、高性能 のヘテ ロ ダ イ ン形 およびホモ
ダイ ン形光位 l l l 同
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期 を実現 することに成功 した, 前 師 まで に言
た十
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界の トッブデ
ー タであ ることに ご注, ま
l _ P lたい
き , こ の 手法 は コ ヒー レン ト光通 信 の実用 システム実現 のために
必須 の基礎技 術 とな る十
1 な お、 本稿で は制 定 したが、 これ らの システム は我 々の考実 した受動共
1 1
-
振形光 フ ァイバ ジ ャイ ロ、 フ ォ トン走査 トンネル顕微鏡、 の システムに採用 され、 これ らの 光応
用 システムの性能 を著 しく高 め るために役立 って いる。今後 は光 位相同期 その ものの 一 層 の性能
向上が応用 システムの性能向上 に直接寄与す ると思われ る。
なお 本研究を成功 させ ることが 出来 ま したの はい
つ高柳記念電子科学技術振興財団 の ご援助 によ
る もので あ り、理事長 は じめ関係 の皆様 に深 く感謝 いた します。最後 に、 故高柳先生 の ご冥福を
心 よ りお祈 り致 します。
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