災害対応ロボットとドローンの未来を 2 人の研究者が語る 京都産業 21 は

開催概要
災 害 対 応 ロボットとドローンの未 来 を 2 人 の研 究 者 が語 る
京 都 産 業 21 は 7 月 30 日 、ロボット事 業 参 入 のための情 報 発 信 を目 的 とした第 5
回 生 活 支 援 ロボットビジネス研 究 会 を開 催 、世 界 のロボット開 発 をリードする 2 人 の研
究 者 がロボットに対 する熱 い情 熱 と未 来 の姿 を語 り、聴 衆 を魅 了 しました。
講 師 のひとりは、災 害 対 応 ロボットの研 究 で知 られる東 北 大 学 リサーチプロフェッサ
ーで ImPACT(革 新 的 研 究 開 発 推 進 プログラム)タフ・ロボティクス・チャレンジプロジェ
クトマネージャの田 所 諭 氏 。福 島 第 一 原 発 で水 位 測 定 ・汚 染 水 採 取 ロボットとして大
活 躍 した「Quince(クインス)」の開 発 者 として知 られています。
もうひとりはドローン研 究 の第 一 人 者 である千 葉 大 学 特 別 教 授 で、㈱自 律 制 御 シス
テム研 究 所 の代 表 をつとめる野 波 健 蔵 氏 。国 産 のオートパイロット機 能 を持 つ同 社 製
ドローンは、非 GPS 環 境 下 での自 律 飛 行 では世 界 トップクラスの技 術 を有 します。約
140 社 で組 織 化 されている「ミニサーベイヤーコンソーシアム」の会 長 でもあり、オール
ジャパン体 制 による“日 の丸 ドローン”の普 及 事 業 を展 開 しています。
ロボットは防 災 の重 要 なツールになり、世 界 的 に実 用 化 と配 備 が進 む
田 所 氏 は「災 害 対 応 ロボットの社 会 実 装 」と題 して講 演 。田 所 氏 は「日 本 は世 界 一
災 害 リスクの高 い国 。東 日 本 大 震 災 など大 規 模 自 然 災 害 に見 舞 われ大 きな経 済 損
失 を被 った」と述 べたうえで、「こうした災 害 現 場 で人 間 では不 可 能 や危 険 を伴 う作 業
が数 多 く存 在 し、災 害 対 応 ロボットを活 用 することが求 められている」と指 摘 。しかし、
「市 場 が限 定 的 であることから民 間 の努 力 だけでは技 術 開 発 や社 会 実 装 は困 難 であ
る」と述 べ、「国 が積 極 的 に研 究 開 発 を推 進 し、運 用 管 理 していくべきである」と強 調 し
ました。
田 所 氏 は、ロボットが災 害 緊 急 対 応 の切 り札 として期 待 されているとしながらも 、「厳
しい屋 外 環 境 下 で必 要 な基 盤 技 術 が決 定 的 に不 足 している」と指 摘 し、 タフ・ロボティ
クスの開 発 が必 要 との考 えを示 唆 。そこで、これら開 発 推 進 の糸 口 を与 えるものとして
①現 場 で動 けない(極 限 環 境 アクセシビリティ)②現 場 の状 況 が不 明 (極 限 センシン
グ・状 況 理 解 ・推 定 )③失 敗 すると全 体 が破 綻 (作 業 失 敗 時 リカバリ)④作 業 条 件 が合
わない(極 限 環 境 適 合 性 )の 4 つの課 題 を挙 げ、これら革 新 的 な研 究 開 発 に取 り組 ん
でいるのが ImPACT タフ・ロボティクス・チャレンジプロジェクトであると説 明 しました。
今 後 のロボット市 場 について田 所 氏 は「ロボットは防 災 の重 要 なツールになり、世 界
的 に実 用 化 と配 備 が進 む」と述 べ、屋 外 におけるロボティクスを活 用 した新 しいビジネ
スが広 まると予 測 。ロボットがこうした巨 大 ビジネスに成 長 することで「家 電 や自 動 車 、ス
マホが喜 びを与 えたかつての時 代 のように新 しい価 値 観 と生 き甲 斐 の時 代 を迎 える」と
明 言 しました。
質 疑 応 答 では、「ロボットを開 発 するうえでの課 題 は何 か」と聞 かれ、田 所 氏 は「新
材 料 の開 発 、防 爆 、高 出 力 、通 信 機 能 の向 上 、バッテリー能 力 の向 上 、高 感 度 セン
サーの開 発 など課 題 は山 積 している。小 型 ・軽 量 化 、高 出 力 化 に向 けての開 発 はロ
ボットの宿 命 」と答 えました。
ドローンはこれから整 備 ・点 検 、災 害 調 査 、測 量 用 途 に使 われ国 内 市 場 が活 性 化
引 き続 き、野 波 氏 は「進 化 するドローンと空 の産 業 革 命 」と題 して講 演 。「ドローンは
大 きな産 業 になると確 信 している」と語 る野 波 氏 は、産 業 用 ドローンの応 用 についてリ
アルな動 画 を使 って紹 介 しました。
動 画 は、農 薬 散 布 、空 撮 による河 川 ・ダム点 検 、橋 梁 ・トンネル内 点 検 、メガソーラ
点 検 、製 鉄 所 の原 料 ヤード点 検 、多 重 衝 突 した高 速 道 路 での事 故 現 場 検 証 、スポー
ツ競 技 の迫 真 演 技 撮 影 、送 電 線 点 検 、災 害 現 場 での消 火 活 動 、箱 根 山 噴 煙 の撮 影 、
原 発 現 場 での放 射 線 測 定 で活 躍 するドローンを紹 介 し、この用 途 での市 場 がここ 2、3
年 で急 拡 大 すると予 想 。農 業 用 途 では植 物 の成 長 が遅 れているエリアをドローンで探
り、重 点 的 に肥 料 を与 えるといったスマート農 業 (精 密 農 業 )に役 立 っている事 例 を紹
介 。これからの注 目 分 野 としては、海 鳥 群 れをドローンが発 見 し、魚 群 の存 在 を知 らせ
る漁 場 調 査 だと付 け加 えました。さらに「鉄 道 や道 路 が未 発 達 のアフリカなどでの物 資
輸 送 は空 が中 心 となり輸 送 形 態 は劇 的 に変 わる」と語 気 を強 め、空 の産 業 革 命 到 来
を告 げました。
野 波 氏 は、ドローンビジネスに世 界 中 の企 業 が注 目 するなかで「自 律 飛 行 が可 能 な
ドローンは世 界 で 200 万 機 あり、うち日 本 では 5 万 機 しか飛 行 していない。アプリ開 発
を含 むドローン関 連 企 業 は米 国 の 1,000 社 、中 国 でも 700 社 と新 しいベンチャー企 業
が増 加 する一 方 で、日 本 は 100 社 ほどしかない」と指 摘 し、日 本 のドローン産 業 が世
界 をリードするためには、ベンチャー企 業 の育 成 に本 腰 を入 れるべきだとし、国 の政 策
に苦 言 を呈 しました。
ドローンによる事 故 防 止 や安 全 確 保 については「飛 行 禁 止 空 域 の設 定 (航 空 法 改
正 第 1 段 階 )はすでに閣 議 決 定 しており、本 延 長 国 会 で採 決 され来 年 1 月 より施 行 さ
れる予 定 」と新 しい法 整 備 を歓 迎 しながらも、航 空 法 改 正 案 第 2 段 階 (機 体 登 録 制 ・オ
ペレータ免 許 制 )の実 施 体 制 の整 備 を早 急 に検 討 すべき」との考 えを示 しました。
質 疑 応 答 では、「計 測 器 をドローンに搭 載 して新 しい事 業 を始 めたいが、 貴 社 との
共 同 開 発 は可 能 か」と聞 かれ、野 波 氏 は「配 布 資 料 の表 紙 にある私 のメールに連 絡
いただければ相 談 に応 じる」と答 えました。
ロボットリハビリテーションセンターを開 設 し、臨 床 研 究 がスタート
情 報 提 供 コーナーでは、京 都 府 立 医 科 大 学 大 学 院 の三 上 教 授 が京 都 府 の高 齢
化 対 策 プロジェクトのひとつとして昨 年 10 月 に開 講 されたリハビリテーション医 学 教 室
の目 的 や活 動 内 容 について説 明 。このあと、伊 藤 講 師 が今 年 4 月 に同 大 学 付 属 病
院 内 に開 設 された「ロボットリハビリテーションセンター」の 概 要 について説 明 しました。
同 センターは最 初 の取 り組 みとして訓 練 支 援 ロボットを活 用 し、歩 行 練 習 、バランス練
習 の臨 床 研 究 を行 っており、今 後 は工 学 部 門 と連 携 し、超 高 齢 化 社 会 に求 められる
先 進 的 リハビリテーションの開 発 を目 指 す考 えを示 しました。
「タフ・ロボティクスによる新 たなビジネス展 開 」をテーマに本 音 で議 論
パネルディスカッションでは、当 研 究 会 総 合 アドバイザーの松 野 文 俊 氏 がモデレー
タとなり、講 師 の田 所 氏 と野 波 氏 、さらには当 研 究 会 ビジネスアドバイザーの前 川 佳 一
氏 と同 サポーターの吉 川 典 子 氏 が加 わり「タフ・ロボティクスによる新 たなビジネス展 開 」
をテーマに活 発 な意 見 が交 わされました。
田 所 氏 の研 究 テーマでもある「タフ・ロボティクス」は、未 知 で状 況 が刻 一 刻 と変 化
する極 限 災 害 環 境 であっても「へこたれず、タフに仕 事 ができる遠 隔 自 律 ロボット」を実
現 する要 素 技 術 やシステム技 術 のこと。現 在 のロボットは「ひよわな優 等 生 」であり、災
害 の極 限 下 では通 常 の作 業 ができず、想 定 外 に対 応 する能 力 が低 い。こうした災 害
緊 急 対 応 を可 能 にするロボットの基 盤 技 術 が高 度 化 し普 及 することで屋 外 ロボットの
新 規 事 業 創 出 が期 待 されています。
ディスカッションでは「臓 器 移 植 や緊 急 医 療 など時 間 的 な制 約 がある医 療 現 場 で確
実 に動 き続 けるタフ・ロボティクスが求 められている」との意 見 や「画 像 技 術 を使 って屋
外 の暗 い場 所 でも動 き回 るロボットが登 場 すれば社 会 が大 きく変 わる」といった発 言 も。
また、「タフ・ロボティクスの開 発 推 進 は破 壊 的 イノベーションの原 動 力 になる」といった
意 見 がある一 方 で、「大 企 業 からイノベーティングは生 まれない。大 企 業 なら本 社 から
見 放 されている部 門 に期 待 するしかない」といった笑 うに笑 えないジョークも飛 び出 す
など本 音 の議 論 が交 わされました。