B10 Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2015 「全国小地域別将来人口推計システム」の開発とウェブ公開について 井上 孝 青山学院大学 経済学部 Email: <[email protected]> (1) 動機: 昨年,政府は「まち・ひと・しごと創生本部」 を設置し,人口急減・超高齢化が進む現代日本に おいて地域社会をいかに持続させるかについて, さまざまな政策の立案を始めた.こうした政策立案 には,なるべく小さな単位での地域別将来人口推 計が基礎資料となることはいうまでもない.しかしな がら,公的な地域別将来人口推計はこれまで市区 町村単位が最小の区分であり,その区域は市町村 合併によって広域化が進んでいる.そのため,とく に政府や自治体の政策立案者にとって,より小さな 単位の将来人口推計のニーズが急速に高まって いる.このように,市区町村より小さい,いわゆる小 地域別の将来人口推計については大いにニーズ があるにもかかわらず,これまでそのような小地域 別の人口推計を全国レベルでかつ長期的に示し た例は皆無といってよく,報告者が知る限り世界的 にみても例がない.その理由は,小地域別の長期 の将来人口推計が技術的に相当に困難であった からに他ならない. (2) アプローチ: 報告者は,上述した技術的課題を解 消するため,人口ポテンシャル概念を用いた新し い手法を提案した(Inoue, 2014).この手法はいく つかの数式から成り立っており,基本的には,将来 人口推計に必要な 2 つの人口統計指標を平滑化 することによって,上述の課題の解決を図るもので ある.こうして,報告者は「全国小地域別将来人口 推計システム」を開発し,本年 6 月に Web 上に公開 するに至った. (3) 意義: 本システムは,全国の約 21 万 7 千の小地域 (町丁・字)単位に,2015 年から 60 年までの男女 5 歳階級別の将来推計人口を自由にダウンロード できる環境を提供し,高齢化率,人口密度,人口 増加率を表示することができる(図 1).したがって, 上述した政策立案をはじめとしてさまざまな用途に 活用でき,きわめて意義のあるシステムと考える. (4) 特徴: ・ 日本語版だけでなく英語版を同時に作成してい るため,世界中からアクセスできアルファベット のみで操作可能である.それぞれの URL は以 下のとおりである. 日本語版:http://arcg.is/1LqC6qN 英語版:http://arcg.is/1GkdZTX ・ 本システムは,Esri 社が提供する ArcGIS Online 上に構築されたものであるため,パソコンはもち ろんタブレットやスマートフォンからもアクセスで き,また,タッチパネル対応となっており,ユーザ ビリティが高い.また,インターフェイスの構造も 単純である. ・ 本システムは世界中の人口統計に応用可能で あり,拡張性が高い. (5) 謝辞: 本システムを作成するにあたり,JSPS 科研 費 25234567 の助成を受けた.また,本システムの 人口推計の基礎データとして用いたのは,「政府の 統 計 窓 口 ( e-Stat ) 」 の 「 地 図 で 見 る 統 計 ( 統 計 GIS)」サイトからダウンロードした,2005 年と 2010 年の国勢調査(小地域)のデータである.ここに感 謝の意を表する. (6) 参考文献: Inoue, T. (2014) A new method of estimating small area demographics using population potential. Working Paper Series, Institute of Economic Research, Aoyama Gakuin University, 2014(3), 1-16. 図 1: 高齢化率に関する表示モードの一例(京都市付近,左が 2015 年,右が 2060 年) - 29 -
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