対日戦略計画 - NSW Government

対日戦略計画
NSW 州国際関係強化戦略
2015 年 7 月
はじめに
エグゼクティブサマリー
この対日戦略計画書には 貿易、投資、教育、観光、文化面における日
本との結びつきを NSW 州政府がどのように拡大していくかについて
の実務的な方針がまとめられています。
NSW 州首相
マイク・ベアード下院議員
NSW州貿易・観光・大型イベント
大臣兼スポーツ大臣
スチュアート・エアーズ下院議員
日本と NSW 州の緊密なパートナーシップは長年に
わたる両者の協力関係と共通の利益に基づいていま
す。日本は NSW 州最大の輸出市場であり、NSW 州
に対する日本の投資もますます増えています。
私たちの経済関係は相互補完性が非常に高く、双方において富と雇用を創出して
います。両者はともに開放的な市場経済であり、確実性と安定性を提供する透明性
の高い強力な規制制度で支えられています。日豪経済連携協定によって両者間の
貿易・投資関係は今後ますます増大し、多様化することでしょう。
本書は今後 NSW 州と日本双方に利益をもたらす新し
い機会が生じるにつれ、定期的に内容の更新と見直し
が行われるものです。
NSW 州政府は民間セクターと緊密に協力しながら、 次の分野を中心に日本との関係を拡大していきます。
1.NSW 州の投資環境改善
2.
日豪経済連携協定によって得られる利点の加速化
3.2020年東京オリンピックの開催支援
4. 観光業の拡大
5. 金融サービスと関連技術の対日輸出促進
6. 日本と NSW 州の連携関係拡大
7. 技術革新と研究における連携強化
8. 日本と NSW 州の間の留学生増加
本戦略計画書には NSW 州が日本とのパートナーシップを今後引き続きどのよう
に築き、強化していくかについてまとめられています。
2
3
日本 – NSW 州の優先市場
日本と NSW 州は相互補完性が非常に高い経済関係にあり、長年に
わたり実りある協力関係を有してきました。
日本は NSW 州
最大の輸出先
26%
NSW 州の対日輸出
日本以外の国々への輸出
世界第 3 位の経済大国である日本
日本は高度に産業化した経済大国で、教育水準と生産
性の高い労働者を有しています。
日本経済は 2008 年の
リーマンショックと、2011 年の地震と津波の二大災害か
ら立ち直りました。
安倍政権による景気刺激策「アベノミクス」には、医療、
教育、農業といった重要分野における日本経済の規制
緩和に加え、高等教育の国際化とグローバルな労働力
の育成を図る内容が含まれています。 日本は 1 億 2700 万人に及ぶ人口を有し、国民の可
処分所得が多いため、世界上位の消費者市場です。 これは NSW 州にとって貿易と投資における大きな機
会を意味します。
日本は NSW 州最大の輸出市場
2013-2014 会計年度における NSW 州の対日物品輸出
総額は96 億ドルでした。
160 億ドル
4
増加を続けています。
日本は世界中で多額の投資を行っており、
日本の対外
直接投資総額は過去 10 年間で倍増しました。
日本からの投資はこれまでは資源セクターが主でし
たが、今では投資先も多様化し、金融サービス、インフ
ラ、 ICT、不動産、食品、
アグリビジネスに投資が行われ
ており、NSW 州はこれらすべての分野で優れた実績を
誇っています。
年間支出総額
NSW州と日本の関係はアジア太平洋地域
でもっとも成熟した関係
本から車両、石油、
タイヤ、電子機器を輸入しています。
日本人がもっとも多く住んでいるオーストラリアの州
は NSW州 (34%) です (2011 年国勢調査)。
日本へのサービスの輸出総額はオーストラリア全体
で 20 億ドルに及びます (豪統計局 2014 年)。 NSW 州
と日本はともに多様なサービス産業を有しており、サ
ービス業における相互貿易も大きく増大する可能性
を秘めています。
NSW 州の日本人観光客による オーストラリアも日本に対して多額の投資を行ってお
り、投資総額は 500 億ドルに及びます。
日本と NSW 州の間には、長年にわたって経済界や地域
社会で存在してきた強力な結びつきが多数存在します。
2015 年 1 月に発効した日豪経済連携協定ではオース
トラリアの対日輸出の97% 以上において優遇措置や
3.16 億ドル
対豪投資においては日本は第 4 位に位置し、
オースト
ラリアへの投資総額 1740 億ドル (2014 年) の三分の
一以上が直接投資です。
NSW 州の石炭、銅、原料炭の最大の輸出先は日本であ
り、
日本は NSW 州で生産されるチーズや牛肉などの
農業製品も大量に輸入しています。他方NSW 州は日
免税アクセスが与えられることになっており、同協定
に基づいて日豪間の貿易は今後増大する見込みです。
NSW 州と日本の相互貿易総額
NSW 州における日本の投資は多額に及び、
275,000 人
NSW 州に居住する日本出身者の数は 12,108 人に及び、 観光を通じた結びつきも強く、2014 年 9 月末まで
の 1 年間に日本から NSW 州を訪れた訪問者の数は合
計 142,470 人で (豪観光調査局)、同州から日本を訪れ
た訪問者数はほぼ8万人にのぼります (2014年) 。
オーストラリアの日本語学習者数 NSW 州の日本人留学生は約 4,400 人にのぼります。交
換留学も盛んで、2014 年に交換留学生として日本に滞
在したオーストラリア人生徒の数は 4,443 人に及びま
す。
オーストラリアの学校と大学で学習者数がもっと
も多い外国語は日本語です。
5
日本との既存関係
NSW 州と東京の姉妹都市関係は 31 周年を迎え、両者間の既存の事業
取引や文化面での強力な結びつきが両者の経済関係の継続的拡大を促
進しています。
増加する日本の対豪投資
両国経済界トップの効果的な結びつき
日豪経済界のリーダーたちはシドニーに事務局のあ
る豪日経済委員会 (AJBCC) と東京にある日本側の日
豪経済委員会 (JABCC) を通じて、50 年あまりにわた
り緊密な関係を維持してきました。
オーストラリアの
会員企業 60 社は物品の対日輸出総額の 70-80% を
占めています。
70
日本の対豪直接投資 (単位:10億ドル)
60
50
40
30
両委員会は両国経済界の結びつきをより緊密にし、 貿易関係を促進し、障壁を軽減することをめざしてい
ます。
20
10
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
両委員会の合同委員会会議は毎年日豪間で交互に開
催され、2015 年には 53 周年を迎えます。合同会議は
両国間最高レベルでオープンに議論のできる場を提
供し、
オーストラリアを代表する 300 人以上の経済人
が集まります。
対日輸出に依存する NSW 州の多くの産業
NSW 州の物品輸出に占める対日輸出の割合
0%
10%
20%
30%
40%
50%
55%
胴
46%
石炭
32%
チーズおよびカード
24%
アルミニウム
測定器
牛肉
6
70%
73%
石炭コークスおよび半成コークス
飼料
60%
22%
21%
19%
豪日経済委員会は 2007 年にインフラ計画小委員会を
確立し、
日本とアジア第三国における合弁機会の調査
と促進を行っています。
80%
こういった長期にわたる経済界のきずなが日本と
NSW 州の確固とした関係を支えています。
広範な各種政府間の結びつき
NSW 州政府は東京都と姉妹都市関係にあり、この関
係は 1984 年 5 月に当時の鈴木俊一都知事とネビル・
ウラン NSW 州首相によって締結されました。姉妹都
市の覚え書きにはさまざまな分野で協力関係の促進
を図ることが定められていますが、
もっとも最近の合
意書では教育、研究、観光、経済開発が主要対象分野
としてあげられています。
NSW 州と東京はオリンピック、官民パートナーシップ、
災害被害回復措置の分野で協力しています。2011 年の
東日本大震災では、NSW州は災害対策支援として都心
型捜索救助隊を派遣しました。NSW 州から 65 人が参
加したこの「ヘビー級」
ランクの救助チームは同州消
防救助局が中心となり、州救急局と州警察の支援のも
とに結成されました。
NSW 州と日本の間には 39 の姉妹都市関係があり、両
者間最初の姉妹都市は奈良県大和高田市と NSW 州
北部のリズモアで、両者の関係は 1963 年に結ばれま
した。
こういった姉妹都市関係の締結により、NSW 州
と日本の学校や地元住民の間で長年のきずなが築か
れることとなりました。
教育機関や研究機関の間の結びつきも 拡大
大学や公立職業専門学校 TAFE、初等・中等学校も交換
留学や学術研究面での連携、共同研究などを通じてま
すます多くの結びつきを構築しています。
NSW 州政府は 2014 年、日本の物質・材料研究機構と
覚え書きを締結しました。
これは重要なイニシアチブ
で、NSW 州の多数の研究機関が関与する複数の共同
研究を対象としており、実際に役立つ技術革新の達成
を目的としています。
また NSW 州の大学は日本と多くの実りある共同研究
プロジェクトを有しており、
その分野は物質科学、エン
ジニアリング、農業、医療研究に及びます。
文化面や地元社会に根ざした結びつき
シドニーと日本は次のものをはじめ多くの文化やスポ
ーツにおけるイベントを共有しています。
• 毎年開催されているハンダ・オペラ・オン・シドニー
ハーバーのスポンサーは日本人の実業家、慈善活
動家である半田晴久博士
• NSW 州各地の美術館は日本の絵画を展示
• シドニーでは日本の舞台芸術を地元住民に披露す
る
「祭り」
フェスティバルが毎年開催され、国際都市
シドニーの文化多様性を体現しています。
• 毎年 9 月に開催されるシドニーマラソンには多数
の日本人走者が参加
• オーストラリアラグビー基金は日本と選手交換プロ
グラムを実施。今後4年間の7人制ラグビーワール
ドシリーズのオーストラリア側の試合はシドニーで
開催されます。
7
日本における貿易・投資機会を重視
NSW 州は既存の対日関係の実績を基盤に今後も引き続き連携を拡大し、
競争力のある分野における貿易と投資促進の機会を把握します。
NSW 州の日本事務所
NSW 州政府は東京に貿易・投資事務所を構え、オース
NSW 州
日本
バンクスタウン
吹田市 バサースト
大熊町 ブルーマウンテンズ
三田市 カムデン
柏市 キャンベルタウン
越谷市 • 貿易や投資を共同で促進する機会を活用
クラレンスバレー
伊豆の国市 NSW 州の政府観光局であり、大型イベントの開催に
も関与するデスティネーション NSW も東京に事務所
コフスハーバー
佐世保市 クーマ-モナロ
山鹿市 コロワ
三木市 ダボ
美濃加茂市 ゴスフォード
江戸川区 ゴーボーン・マルワリー
士別市
ホークスベリー
京丹波町 ハーストビル
白石市
レイクマッコーリー
函館、棚倉町
リズモー
大和高田市
リバプール
戸田市
マンリー
台東区
ニューカッスル
宇部(山口市)
オレンジ
牛久市
ペンリス
藤枝市、白山市
ピットウォーター
忠岡町
ポートマッコーリー-ヘイスティングス
半田市
ポートスティーブンス
湯河原、館山市
クインビヤン
南アルプス市
ロックデール
矢祭町 シングルトン
高畠町 スノウイーリバー
草津市
サザランド
中央区 トラリア政府と緊密に協力しながら次の役割を果たし
ています。
• NSW 州企業の日本市場参入を支援
• 日本からの生産性の高い NSW 州向け投資案件の
調査と誘致
があり、航空会社や旅行会社、
メディアと緊密に協力
しながら日本人の方々のシドニーと同州への訪問促進
と NSW 州の宿泊客数の増加を図っています。
NSW 州政府の閣僚は頻繁に日本を訪れており、2011 年
以来の訪日団は次の通りです。
• 2015 年5 月、NSW 州マイク・ベアード首相が使節団
を率いて訪日。訪日目的は日豪経済連携協定の利
益の最大化と、NSW州の投資環境の推奨および観
光業の拡大促進。
• 2014 年 2 月、バリー・オファレル前 NSW 州首相が使
節団を率いて 4 日間訪日。訪日目的は既存の貿易・
投資関係に基づいたさらなる関係強化と、優先分
野への新規投資の誘致。
• 2012 年および 2014 年に当時財務大臣だったマイ
ク・ベアード州議員が訪日。訪日目的はファンド運用
会社を対象とした NSW 州政府債への投資の推奨。
• 2013 年 10 月、前 NSW 州副首相アンドリュー・ストー
ナー州議員が貿易使節団を率いて訪日。訪日目的
は NSW 州代表として第 51 回日豪経済合同委員会
会議に参加することと、経済界トップとの会合。
8
NSW 州と日本の姉妹都市リスト
シドニー
名古屋市 タムワース
三戸町 テモラ
泉崎市
ワリンガー
秩父市
ウェリントン
富山市 ウィロビー
杉並区
ウーロンゴン
川崎市 日本の経済改革から生じる貿易・投資機会
基盤となる業務環境上の利点
安倍政権は経済成長の 2% 幅底上げを目標とする積
極的な景気刺激策を導入しています。
NSW 州は引き続き次の理由から、海外業務を拡大し
ている日本の多国籍企業が業務拠点を確立する場所
として魅力的です。
「アベノミクス」経済改革には 3 本の矢があり、最初の
矢は日本の輸出の競争力を支えるための量的緩和政
策、2 本目は需要創出のための新規政府支出、3 本目は
日本の産業の競争力を増すための多様な規制緩和で
す。安倍政権はまた、NSW 州政府のアプローチと同様に
インフラ資産と郵政公社をはじめとする各種公社の完
全民営化を加速させています。
これまで日本が NSW 州に対して行ってきた貿易と投資
の分野は主にエネルギー、資源、
アグリビジネス、穀物
商品などでした。
この州の対日輸出の上位を占めるの
は今も石油、金属鉱物、非鉄金属、牛肉です。
日本の商社は NSW 州と長い歴史をもっており、中には
三菱商事のように同州との関係が 100 年以上に及ぶも
のもあります。
この商社の多くは現在、
アグリビジネスや
下流加工、インフラなどの分野で新しい投資を行うこと
でその投資先の多様化を図っています。
新しい連携分野の増加と NSW 州に業務拠点をもつ日
本金融機関の増加により、
この州における日本の投資
の新しい原動力となる分野は増加しています。近年の
大型企業買収にはキリンによるライオンネイサン買
収、富士通による KAZ グループの買収、大手人材会社
リクルートによるチャンドラーマクラウドとピープルバ
ンクの買収があります。
• 信用格付け AAA
• 安定した政府
• 相互補完性が高く、多様な経済
• 良好な規制制度と日本に類似した政治制度
• 革新的な知識産業
• 研究開発における実績
• 高度の職業訓練を受けた、日本語を話せる者も多
い文化的に多様な労働者
• 魅力的な観光地と観光体験
• 信頼できる石炭の長期的安定供給源
• 高品質食品の衛生的で安全な供給源
• アジアの新市場へのアクセス
• 良好な生活環境
NSW 州の事業環境をさらに容易にするため、大型プロ
ジェクトの承認プロセスの迅速化や資源セクターにお
ける確実性の改善が行われています。
具体的な市場とセクターに重点
9
NSW 州の日本との結びつき
京でしたが、
日本は多数の市場で構成されています。 下記の表にあるように、今後 NSW 州は貿易・投資機会
のある場所の優先セクターに重点を置いて貿易と投資
の促進を進めていきます。
またこの対象地域とセクター
は将来新しく生じる機会に対応して変化していきます。
名古屋
名古屋は中部地方最大の都市で総生産額は 5600 億ド
ルに及びます。製造業の拠点で車両、車両パーツ、機械
工具、航空機パーツが製造されています。豊田市も近く
にあり、名古屋市には高級陶磁器メーカーのノリタケ、
電機メーカーのブラザー、鉄道会社 JR 東海があります。
東京
札幌
NSW 州の貿易・投資促進の主な対象はこれまで東
NSW 州教育機関の結びつき
函館
東京都との姉妹都市関係
福岡
福岡は、
日本の南西部にある九州のビジネスと交通
輸送の拠点で、中国と韓国に近いことから、
日本のア
ジアへの玄関口として長らく栄えてきました。福岡の
GDP は 2050 億ドルに及び、ソニー、東芝、日立、三菱
電機といった日本の多くの革新的企業が業務拠点を
置いています。
大阪
大阪は日本第三の都市で、その人口は約 880 万
人に及びます。大阪経済は日本の国内総生産
の 8% を占め、製造業、卸販売業、サービス業が
盛んで、バランスのとれた経済を推進していま
す。大阪には中小企業が非常に多いのが特徴で
す。関西には大学と研究機関も多数あります。
東北
Tokyo
中部
Osaka
中国
近畿
日本各地の NSW 州優先セクター
観光
教育
3
3
3
クリーン
テクノロジー
10
3
3
3
3
3
札幌
福岡
資源
3
3
3
貿易
アグリビジネス
3
3
専門家サービス
3
3
先端製造業
名古屋
ICT
大阪
インフラ
東京
四国
貿易 & 投資
3
3
3
3
3
3
3
東京
関東
名古屋
大阪
Fukuoka
投資
Sapporo
北海道
NSW 州 TAFE
NSW 州公立学校
北海道の道都、札幌は日本 5 位の都市でその人口は
ほぼ 200 万人です。主要産業は卸売/小売産業、サー
ビス産業と情報産業です。札幌は IT、
デジタルコンテ
ンツ、バイオテクノロジーの企業や、食品製造業の誘
致を図っています。
人口 1300 万人以上の東京は、
アルファと格付けされた
上位の世界都市のひとつで、都内総生産は 2 兆ドルに
及びます。非常に大きな市場規模、膨大な数の国際的
大企業、公共交通、優れた公共の安全、多数のホテル
や外食産業などでよく知られています。国際的なビジ
ネス拠点でもあり、
日本の外資系企業の 76% が東京
に業務拠点を置いています。
HOKKAIDO
NSW Trade &
Investment office
Destination NSW office
Sister State Relationship NSW 州貿易・投資事務所
with Tokyo Metropolitan
デスティネーション NSW 事務所
Government
九州
3
3
3
3
11
優先的に取り組む行動計画
NSW州政府は優先セクターに重点をおいて日本との貿易・投資関係を
拡大する努力を行います。
1
NSW 州の投資環境改善
国別の対豪投資において日本は第 4 位を占
めており、2014 年における日本のオーストラ
リアへの投資総額は 1740 億ドルで、その三
分 の 一 以上 は 外 国 直 接 投 資で す ( 豪 外 務 貿 易
省 2014 年)。
この度の日豪経済連携協定は日本の対豪
投資をより魅力的なものにし、外国投資審査委員会の
審査対象下限額を、センシティブでないセクターにお
いては 2.52 億から 10.94 億ドルに引き上げました (豪
外務貿易省 2014 年)。
多額の運用資産を有する日本の投資家は高いリター
ンとリスクの分散された投資先を提供する海外投資機
会を求めており、
これは特に日本の商社と銀行にあて
はまります。
この日本の投資先として、NSW 州は特にインフラやア
グリビジネスにおいて魅力的な機会を提供できる立
場にあります。
NSW 州政府は今後 10 年間で総額 200 億ドルを投じ
る NSW 州再建計画プログラムに加え、州内各地の経
済発展の原動力となるインフラ整備に向けて 2017-18 会
計年度に総額 615 億豪ドルを支出すると発表していま
す。
この中の相当部分は個々の入札や官民パートナー
シップ (PPP) を通じて民間セクターが請け負うことに
なっています。
NSW 州政府は日本の投資家に対し、特に PPP による
インフラへの投資機会を推奨する予定です。
日本における PPP プロジェクトはこの投資形態につい
てよく知っている NSW 州企業にとっては新たな事業機
会であり、
その専門知識と経験を日本のパートナーと
共有するよい機会となります。
日本企業は NSW 州の石炭産業と長い歴史を有してい
ます。
この州には現在も資源セクターや再生エネルギ
ーなどのエネルギーセクターに対する投資誘致の機
会があり、鉱山採掘・採掘機械・技術サービスを専門と
する州内企業をグローバルサプライチェーンに統合す
る機会も存在しています。
日本は必要な食料の過半数を輸入品に頼っています。
これはNSW 州で農産物や加工食品、飲料の輸出に関
わる企業に新しい事業機会をもたらします。
行動計画 1
NSW 州の投資環境を改善する
• 現在の NSW 州インフラプロジェクトへの直
接・間接投資を、海外投資先の分散化を求め
る日本の銀行や商社に推奨する。
• 日本の商社とオーストラリアの資産運用会社
を結びつけ、両国のインフラ投資を目的とし
た連携を組む可能性を探る。
• 鉱山機械、再生エネルギー、エネルギー効率
化に関する技術やサービスなど、NSW 州の
資源・エネルギーセクターへの投資機会を促
進する。
• 資源関連プロジェクトをはじめとする大型プ
ロジェクトの審査期間を今後 4 年間で半減
し、
より好ましい投資環境を作り出す。
• 投資の分散化と日本の食料供給確保の手段
として、NSW 州のアグリフードと先端食品加
工に対する投資機会を推奨する。
2
日豪経済連携協定によって得られ
る利点の加速化
日豪経済連携協定 (JAEPA) は 2014 年 7 月
に 安 倍 首 相とアボット首 相 が 調 印し、 2015 年 1 月 15 日に発効しました。完全に実施されます
と、同協定はオーストラリアの対日輸出の 97% 以上にお
いて優遇措置や免税アクセスを与えることになります。
NSW 州にとって同協定は、牛肉、海産物、くだもの、 チーズといった州農産物の輸出を拡大する機会をもた
らします。
また同協定は金融、法律、教育、電気通信とい
った NSW 州のさまざまなサービス産業に日本市場へ
のアクセスを保証しています。
日本は必要な食料の 61% (供給熱量ベース) を輸入
品に頼っています。
この日本の輸入食品への依存と、
高品質で安全な食品の供給源としての NSW 州の評
判はこの州の食品・飲料セクターに新しい事業機会を
もたらします。
2015 年 3 月の牛肉の輸入量は、前年同期に比べて 24% 増加しており、同協定による輸入増加がすでに生
じていることを示しています。
具体的な事業機会としてあげられているものには次の
ものがあります:
行動計画 2
日豪経済連携協定によって得られる利点を加
速化する
• オーストラリア政府と連携し、産業グループと
の共同ワークショップを開催したり、関税軽減
についての情報を提供することによって同協
定の利点に関する情報を普及する。
• 産業界と連携し、競争力のある分野における
貿易使節団を派遣する。
• NSW 州で食品や飲料を生産する企業に対し、
日本市場やアジアにおける日本のサプライチ
ェーンへの参入や既存業務拡大に向けた実
務的支援を提供する。
• 資産運用、法律、教育といったサービス産業の
輸出拡大を促進する。
• 残存する障壁の撤廃など、州内産業が貿易機
会を活用できるようにするための具体策を考
案する。
• ワイン: ボトル入りワインの 15% の関税は 7 年間で
撤廃され、バルクワイン (150 リットル以上) につい
ては関税即時撤廃
• 牛肉: 冷凍牛肉の関税は 18 年間で最高 19% 軽減
• マカデミアナッツ: 最高 6% の即時関税撤廃
• クルミ: 10% の関税は 5 年間で段階的撤廃
日本の国内消費向けの輸出に加え、NSW 州で食品や
飲料を生産する企業には東南アジア各地にある広範
な日本のサプライチェーンに参入する機会もあります。
NSW 州には一次産業、食品生産、精密農業といった
さまざまな関連分野での研究開発にも実績がありま
す。
また同州は金融、資本市場、サービス業における
研究にも長けています。
12
13
優先的に取り組む行動計画
3
2020 年東京オリンピックの開催
支援
東京は 2020 年オリンピックと 2019 年ラグビ
ーワールドカップの開催地です。
NSW 州は日本と協力し、2000 年シドニーオリンピック
の開催経験とその後 2012 年ロンドンオリンピックをは
じめとする大型国際スポーツ大会に関与した経験から
得た広範な専門知識を共有いたします。
シドニーはま
た過去 15 年間にわたり、
オリンピック跡地の優れた利
用を実現してきましたが、
この実施経験についても東
京側と共有させていただきます。
東京都は複数の新規スタジアムの建設委託を行う予
定です。
このプロジェクト向けの海外入札は行われま
せんが、NSW 州企業には日本企業と連携を組む機会
が存在します。設計、改装、環境負荷を考慮した設計支
援、安全確保計画、イベント管理、セレモニー制作、ホス
ピタリティ、ボランティアやスポーツ訓練向け人材訓練
などの分野において、
日本は海外の技能や専門知識を
求めることでしょう。
NSW 州は大規模なスポーツイベントの開催
において世界一流の能力を有しています。
2000 年シドニーオリンピック以来、オーストラリアの
140 社以上の企業やイベント専門会社が世界の大型
スポーツイベントに関与してきました。2020 年東京オ
リンピック招致に向けた海外アドバイザーの中の三社
は NSW 州企業でした (ウェイズ&ミーンズコンサルタ
ンシー、インテリジェントリスクス、
ダイアン・バーンスタ
インデザイン)。
また LHC グローバルも戦略計画の構築
において東京オリンピック組織委員会を支援しました。
NSW 州は特に次の分野で優れた能力を有しています。
• 大型スポーツイベント向けプロジェクト管理の訓練
豪国内建築設計事務所の 33% は NSW 州にあり、建築
設計業界で働く人の 29% がこの州に住んでいます。 建築設計も行う国内エンジニアリング・コンサルタント
会社の多くも NSW 州に所在しています。
NSW 州の多くの建築設計事務所は世界各地で大規模
な業務を行っており、北京の国立水泳競技場や中東の
大型建造物をはじめ革新的で環境負荷を考慮した革
新的開発に実績があります。
レンドリースは 1996 年ア
トランタオリンピックと 2000 年シドニーオリンピック
のインフラ建設を行い、2012 年ロンドンオリンピック
では選手村を建設しました。
行動計画 3
2020 年東京オリンピック開催を支援する
• 大型スポーツイベントの計画と開催を支援
するために、東京との姉妹都市関係を通じて
NSW 州の専門知識と能力の共有を申し出る。
• シドニーを訪問する日本側の意思決定者を対
象に完全な訪問プログラムを組み、オリンピッ
ク開催の専門家へのアクセスを提供する。
• 連邦官庁の促進活動を活用しながら、州の能
力を推奨する。大型スポーツイベントにけるオ
ーストラリアの国際的実績を海外イベント開
催組織に紹介する豪国際スポーツ事業プログ
ラム「マッチ・オーストラリア」
も活用する。
• 2019 年ラグビーワールドカップと 2020 年
東京オリンピックに関連した請負契約に向
けて入札を行う、
もしくは入札準備をしてい
る NSW 州企業を支援する。
4
観光業の拡大
オーストラリアを訪れる日本人
の約半数は NSW 州を訪問
2014 年 9 月までの一年間に NSW 州を訪れた日本人の
数は 142,47 人で、訪問者全体の宿泊日数はのべ 350 万日、一人あたり平均滞在日数は 25 日でした。
行動計画 4
観光業を拡大する
• 航空会社、団体・個人向けおよびオンラインの
旅行会社と協力して日本でマーケティング活動
を実施し、
シドニーと NSW 州への訪問者増加
を図る。
国別の NSW 州訪問者数では日本は第 6 位に位置し
ています。若者の訪問者数では日本は上位 10 位内に
入っており、2014 年 9 月までの一年間では日本人訪問
者の 41% が 15 歳から 29 歳の年齢層でした。
• 航空産業の開発と路線開発を支援する。
オーストラリアへの日本人訪問者の 40.2% は NSW 州
を訪れており、宿泊日数においてもこの州が全体
の 40.2% を占めています。
• スタディ NSW と連携し、NSW 州の日本人留学
• 日本市場向け販売促進の対象となっている訪
問体験を多様化し、その質を向上させる。
生の増加を図る。
日本を訪れる NSW 州居住者も増加しており、2014 年
の日本訪問者数はほぼ 8 万人でした。
• 旅行会社への支援と研修プログラムを増やす。
2020 年までに NSW 州訪問者の支出額を増加すると
開発し、ツアープログラムの訪問先に地方を組
み入れることを推奨する。
いう目標に向け、
日本はその原動力となるターゲット
市場のひとつとなっています。
NSW 州政府の観光局であり、大型イベント開催にも関
与するデスティネーション NSW は、東京に事務所を構
え、航空会社や旅行会社、
メディアと緊密に協力しなが
ら日本人の方々のシドニーおよび NSW 州への訪問促
進と NSW 州の宿泊客数増加を図っています。
• 旅行会社と協力して NSW 州独自の旅行日程を
• 民間企業と各種政府官庁との連携を増大する。
• NSW 州各地の旅行先や訪問体験、イベントを
宣伝するための広報活動を増加する。
NSW 州政府はデスティネーション NSW を通じて航空
会社や旅行会社など協力してマーケティングキャンペ
ーンを実施するとともに、旅行会社への支援や日本で
の研修プログラムの実施を継続していきます。
とボランティアの訓練・採用
• イベントステージングサービス
• 大型スポーツイベント用の大規模インフラ施設の
設計、建設、
プロジェクト管理
14
15
優先的に取り組む行動計画
5
NSW 州金融サービスと関連技術
の対日輸出促進
NSW 州の金融サービスの対日輸出におい
ては、新しい可能性を秘める機会が生じて
います。
また洗練した日本市場においては、デジタルメ
ディアや携帯メディアを通じた金融サービス提供方法
である金融テクノロジー (フィンテック) を求める需要が
ますます高まっています。
日本の銀行は銀行サービスのデジタル化や自動化と、
顧客サービス向上のために IT 企業との提携に投資して
おり、例えば三菱東京UFJ銀行は最近、携帯電話による
サービスを実現するためのプラットフォームと技術の
開発に向けたコンテストを開始しました。
NSW 州にはすでに日本で業務を確立している金融機
関があり、
この多くは日本企業との共有が可能な携帯
サービスやデジタル化されたサービスをすでに導入
しています。
また日豪経済連携協定により、NSW 企業には日本で
完全な業務拠点を確立することなく、
「国境を越えて」
金融サービスを提供できる機会が生まれました。
これ
はNSW 州金融機関に対し、世界最大級の資産運用市
場 (年金基金を含む) へのアクセスを実質的に保証
することになります。
日本の投資家は投資信託などを利用して利益の向上を
実現できる新しい金融商品を求めています。
オーストラリアの投資可能資金総額は世界第3 位に
位置し、国内資産運用セクターには多様な資産クラス
を網羅した機関投資家の資産運用に広範な実績をも
つ、高度に洗練され、国際競争力のある企業が存在し
ます。NSW 州には国内上位 10 社の資産運用会社の
内 9 社が所在しています。
またシドニーにはスタートア
ップからすでに確立した企業まで、
フィンテックセクタ
ーで活躍する企業が約 450 社あります (シドニー委員
会)。
これら企業は同セクターの拡大と共同研究開発の
増加を目的として 2015 年 3 月に発足した業界主導のハ
ブ (Knowledge Hub in Fintech) の支援を受けていま
す。
「Stone and Chalk」や「The Tyro fintech hub」
とい
ったシドニーのフィンテックハブも質の高いフィンテッ
クスタートアップエコシステムの構築を図っています。
行動計画 5
NSW州金融サービスと関連技術の対日輸出
を促進する
• ポートフォリオ資産運用サービスとフィンテッ
クに重点を置いて、双方向の金融サービス提
供機会を推進する。
• 豪投資促進庁と協力し、日本における豪資産
運用サービスを推奨し、その確立に向けた促
進活動を行う。
• 貿易使節団やNSW 州で開催される CeBIT (シドニーで開催される ICT 国際トレードショ
アメリカやイギリスと比べて
ー) などを通じ、
低コストでありながら世界一流レベルの質
の高いフィンテックソリューションを提供する
NSW 州企業の能力を推奨する。
• Fintech Knowledge Hub を通じ、日本におけ
る事業機会についての情報を州内フィンテッ
ク企業に普及する。
• 需要に応じて、大型日本投資家やベンシャー
キャピタルのネットワークとの連携を促進し、
需要の多いフィンテックソリューション向けの
資金調達ができるようにNSW 州企業を支援
する。
6
日本と NSW 州の連携関係拡大
インフラ整備のためのNSW州 と日本の連携
アジア太平洋地域の大型インフラプロジェクトの実施
において、NSW 州と日本はともに主導的立場にありま
す。NSW 州は官民パートナーシップの利用を早くから
始めたため、
この州の企業は最高 20 年にわたって政
府とともにインフラにおける課題を解決してきた実績
を有しています。
日本企業には特に出資者として世界
中の都市で大型インフラプロジェクトを実施してきた
広範な実績があります。
日本企業と NSW 州企業はシ
ドニーハーバートンネルなどをはじめ、
シドニーのイ
ンフラプロジェクトを共同で成功裏に実施できること
を実証しています。
NSW 州と日本は急成長するアジア太平洋地域にとも
に位置しています。
この地域の政府は将来の人口と経
済成長を支えるため、世界一流のインフラ整備をます
ます必要としています。NSW 州と日本には両者の企業
がそれぞれの専門知識を集め、共同で同地域のインフ
ラプロジェクトに入札を行う機会が存在しています。
この実現に向け、NSW 州政府はこの州と日本の有能
な企業を結びつけ、連携関係を築くお手伝いをするこ
とができます。
また州政府はこういった企業と協力し
て 20 年あまりに及ぶ実績を築いてきた経験について
ご説明させていただくことができます。 NSW 州と日本の姉妹都市関係
日本と NSW 州の関係は共有する価値観と相互信頼感
に基づいています。
NSW 州と東京都は 1984 年 5 月 9 日に姉妹都市関係を
結び、その後覚え書きを締結して行政、経済成長、テクノ
ロジー、教育、文化、観光といった広範な分野における
協力を進めることを正式に定めました。
また NSW 州は引き続き、高いレベルの貿易・投資使
節団を定期的に日本へ派遣していく所存ですが、
日本
の閣僚や高官の方々、
また経済界や企業の使節団に
も NSW 州を訪問していただくことを願っています。
行動計画 6
日本と NSW 州の連携関係を拡大する
• 両国企業がそれぞれの専門知識をもちより、
アジア太平洋地域の官民パートナーシップに
よるインフラ建設に向けた共同入札を行うこ
とを推奨する。
• NSW 州企業と日本企業を結びつける。
• より多くの NSW 企業に、インフラプロジェクト
に関する専門知識の輸出を推奨する。
• 豪日経済委員会と協力して NSW 州と日本の
合同インフラ使節団の第三国への派遣を支援
する。
• 官民パートナーシップと資産民営化における
NSW 州の能力と専門知識を推奨する。特にエ
ンジニア、建築家、
プロジェクトマネージャー、
その他設計専門家の技能や専門知識を継承
することで日本企業を支援できる能力など。
• オリンピック大会開催に関する専門知識の
共有や教育面での結びつき、官民パートナー
シップによるインフラ整備、農業、災害管理な
ど、NSW 州と東京の姉妹都市協定に基づいた
将来の協力分野を探る。
• 各種同窓会ネットワークと協力し、文化的つな
がりを強化する。
NSW 州がこの覚え書きに基づいて将来協力できる分
野と考えているものには、
オリンピック大会開催に関
する専門知識の共有や官民パートナーシップによる
インフラ整備、農業、災害管理、教育、観光があります。
16
17
優先的に取り組む行動計画
7
技術革新と研究における連携強化
NSW 州は研究開発における日本との連携
強化も図っています。
NSW 州で行われている科学研究は広範囲に
及び、次世代通信からエネルギー技術、金融、ロボット
工学、バイオテクノロジー、e リサーチ、健康や医療にお
ける研究、物質科学、各種デバイスなどをはじめとする
多様な分野で優れた実績を出しています。
この技術革新の文化は NSW 州にあるさまざまな研究
組織によって支えられおり (企業、大学、公共研究機関、
医療研究機関など)、
これにはオーストラリア研究会議
のセンター・オブ・エクセレンスや各種共同研究セン
ターも含まれます。
農業とロボット工学は NSW 州が得意とする分野の例
としてあげられますが、
これらは日本と同州双方の産
業が優先的研究を求めている分野です。2015 年初頭
には宇宙情報センターの研究チームが日本政府の予
算で衛星を使った稲作用ロボットトラクターの試作実
験を NSW 州の地方で行いました。
2014 年 に NS W 州 は 日 本 の 物 質・材 料 研 究 機
構 (NIMS) と合意書を結び、州内の大学は同機構の
提携研究所だけを対象とした各種訪問研究員プログ
ラムを利用できるようになりました。NSW 州と同機構の
研究グループの間には代替エネルギー技術やバッテリ
ー、光通信学、量子物質、生体材料をはじめとする分野
で効果的に共同研究を進められる可能性があります。
NSW 州と NIMS の研究者間の共同研究について正式な
合意が結ばれたことにより、
これまで活用されてこなか
った研究開発機会の推進が可能となりました。
18
日豪両国はサイエンス・メディア・センター・グローバル
ネットワークで結ばれており、同ネットワークはNSW 州
の研究力についての情報を普及し、
日本における共同
研究を促進する画期的な機会を提供しています。
博士課程の学生たちが日本と NSW 州の間を行き来す
ることには大きな意義があります。
このような動きは
学術研究における連携強化につながるとともに、両者
研究チームによる共同出版の推進にも有益でしょう。
NSW 州は医療研究においても主導的立場にあり、ガ
ーバン医療研究所をはじめとする世界一流の医療研
究組織があります。最近設立された日本医療研究開
発機構などと共同研究などの協力関係を確立する機
会が存在します。
行動計画 7
技術革新と開発における連携を強化する
• 研究機関との合意書の提携などを通じ、共同
研究開発を増加する。
• NIMS との合意に基づいた研究機会を促進す
る。
• 日本のサイエンス・メディア・センターなどを
通じてオーストラリアの科学研究能力を推奨
する。
• ロボット工学における両者の実績を利用し
て、特に農業や高齢者ケアで新しく利用でき
る技術革新をめざした研究を進める。
8
日本と NSW 州の間の留学生を
増加
日本と NSW 州の間の教育面におけるきず
なも重要です。2014 年に NSW 州の各種コー
スに入学した日本人留学生は 4,380 人に及
び、
この数は国内の州の中で最高でした。
もっとも人気
のあるコースは職業訓練コース (入学者数 1,443 人) と
英語コース (入学者数 2,141 人) です。
NSW 州で実施される学校訪問ツアーでは日本市場
が最大で、2014年に NSW 州の学校を訪問した日本
人グループは 95 グループにのぼり、
ツアー参加者数
は 4,190 人でした。
また東京都教育委員会を通じ、57 人
の日本人教師が教員向け研修プログラムに参加しま
した。
日本政府は大規模な教育改革を発表し、英語力、異文
化を理解する文化リテラシー、
リーダーシップを養成
するコースを通じた「グローバル人材」 の育成をめざ
しています。
この政策を補う形で日本企業は従業員の
国際化を重視する傾向を強めています。
国際的人材の育成を図る日本の強い姿勢は、2020 年ま
でに留学生数を 6 万人から 12 万人に倍増し、留学プロ
グラム用予算を大幅に増加するという文部科学省の計
画によって裏付けられています。
日本は「スーパーグロ
ーバルハイスクール」100 校と国際バカロレア校 200 校
を確立し、
「スーパーグローバル大学創成支援」
プロジ
ェクトを通じて日本の高等教育の国際化と国際競争力
強化を図るとも発表しています。
NSW 州はこういった日本の人材面におけるニーズに
応えられるユニークな立場にあります。英語環境であ
ることは言うまでもなく、
この州は文化多様性が高く、
日本をはじめとするアジア諸国との業務上のつながり
や、
アジア諸国についての知識も有しています。NSW 州
のサービス輸出額では留学生向け教育サービスがもっ
とも大きい割合を占め、 2014年の輸出額は 57.79 億ド
ルに及び、留学生の出身国はほとんどがアジア諸国でし
た。2014 年 12 月の時点で NSW 州に留学している留学
生の出身国別リストでは、
日本は 11 位を占めています。
日豪経済連携協定に基づき、
オーストラリアの教育機
関は職業訓練も含めた日本の高等教育市場へのアク
セスが保証されることになります。
また日本は初等教
育と中等教育以外においては豪教育機関が平等な扱
いを受けることを保証しています。
このほか、
オーストラリアのさまざまな教育訓練機関
への留学を希望する日本人学生は、
日本学生支援機
構が提供する低金利ローンを申請することができます。
行動計画 8
日本と NSW 州の間の留学生を増加する
• 日本市場において引き続き積極的に、中等教
育、高等教育、国際的人材育成を目的とした
一流の留学先としてNSW 州を 位置づける。
• NSW 州教育訓練機関が提供できる次のよう
な教育内容を推奨することにより、州内の職
業訓練校、英語専門学校、大学の市場シェア
を増大する: 大学の各種課程、目的に応じた
企業向け研修プログラム、大型スポーツイベ
ント向けのボランティアの訓練、英語コース
になんらかの学習/見習い体験を加えたプ
ラスαコース、職業訓練コースから大学へと
進む へ進学方法、
スーパーグローバル大学
創成支援プロジェクトを支援する学部教職員
向け訓練、
日本のスーパーグローバルハイス
クールを支援するための高等教育機関によ
る教員向けの研修。
• NSW 州の学校への留学ツアーや一年間の留
学プログラムを推奨し、学校機関の機会を増
大する。
• 日本人留学生向けの情報提供・助言など支援
態勢の改善など、
日本人の留学体験を支援す
る NSW 州政府の活動について日本側関係者
に最新情報を提供する。
19
実施計画
NSW 州は次のことを行います。
行動計画
1
主導機関
NSW 州は次のことを行います。
行動計画
3
NSW 州の投資環境を改善する
2020 年東京オリンピック開催を支援する
• 現在の NSW 州インフラプロジェクトへの直接・間接投資を、海外投資先の分散化を求める日本の銀行や商社
• 大型スポーツイベントの計画と開催を支援するために、東京との姉妹都市関係を通じて NSW 州の専門知識と
• 日本の商社とオーストラリアの資産運用会社を結びつけ、両国のインフラ投資を目的とした連携を組む可能
• シドニーを訪問する日本側の意思決定者を対象に完全な訪問プログラムを組み、オリンピック開催の専門家
能力の共有を申し出る。
に推奨する。
性を探る。
• 鉱山機械、再生エネルギー、エネルギー効率化に関する技術やサービスなど、NSW 州の資源・エネルギーセク
主導機関
首相・内閣省
へのアクセスを提供する。
首相・内閣省
• 連邦官庁の促進活動を活用しながら、州の能力を推奨する。大型スポーツイベントにけるオーストラリアの国
際的実績を海外イベント開催組織に紹介する豪国際スポーツ事業プログラム「マッチ・オーストラリア」
も活用
する。
ターへの投資機会を促進する。
• 資源関連プロジェクトをはじめとする大型プロジェクトの審査期間を今後 4 年間で半減し、より好ましい投資環
•2019 年ラグビーワールドカップと 2020 年東京オリンピックに関連した請負契約に向けて入札を行う、もしく
境を作り出す。
は入札準備をしている NSW 州企業を支援する。
• 投資の分散化と日本の食料供給確保の手段として、NSW州のアグリフードと先端食品加工に対する投資機会
を推奨する。 行動計画
行動計画
2
4
日豪経済連携協定によって得られる利点を加速化する
観光業を拡大する
• 航空会社、団体・個人向けおよびオンラインの旅行会社と協力して日本でマーケティング活動を実施し、 シドニーと NSW 州への訪問者増加を図る。
• オーストラリア政府と連携し、産業グループとの共同ワークショップを開催したり、関税軽減についての情報を
提供することによって同協定の利点に関する情報を普及する。
• 産業界と連携し、競争力のある分野における貿易使節団を派遣する。
•NSW州で食品や飲料を生産する企業に対し、日本市場やアジアにおける日本のサプライチェーンへの参入や
既存業務拡大に向けた実務的支援を提供する。
• 資産運用、法律、教育といったサービス産業の輸出拡大を促進する。
• 残存する障壁の撤廃など、州内産業が貿易機会を活用できるようにするための具体策を考案する。
20
首相・内閣省
• 航空産業の開発と路線開発を支援する。
• 日本市場向け販売促進の対象となっている訪問体験を多様化し、その質を向上させる。
• スタディ NSW と連携し、NSW 州の日本人留学生の増加を図る。
• 旅行会社への支援と研修プログラムを増やす。
• 旅行会社と協力して NSW 州独自の旅行日程を開発し、ツアープログラムの訪問先に地方を組み入れることを
デスティネー
ション NSW
推奨する。
• 民間企業と各種政府官庁との連携を増大する。
•NSW 州各地の旅行先や訪問体験、イベントを宣伝するための広報活動を増加する。
21
実施計画
NSW 州は次のことを行います。
行動計画
5
主導機関
行動計画
NSW 州金融サービスと関連技術の対日輸出を促進する
7
• ポートフォリオ資産運用サービスとフィンテックに重点を置いて、双方向の金融サービス提供機会を推進
する。
• 豪投資促進庁と協力し、日本における豪資産運用サービスを推奨し、その確立に向けた促進活動を行う。
• 貿易使節団やNSW 州で開催される CeBIT (シドニーで開催される ICT 国際トレードショー) などを通じ、
首相・内閣省
アメリカやイギリスと比べて低コストでありながら世界一流レベルの質の高いフィンテックソリューション
を提供するNSW 州企業の能力を推奨する。
• Fintech Knowledge Hub を通じ、日本における事業機会についての情報を州内フィンテック企業に普及
ンテックソリューション向けの資金調達ができるようにNSW 州企業を支援する。
6
日本と NSW 州の間の留学生を増加する
• 日本市場において引き続き積極的に、中等教育、高等教育、国際的人材育成を目的とした一流の留学先として
NSW 州を 位置づける。
• NSW 州教育訓練機関が提供できる次のような教育内容を推奨することにより、州内の職業訓練校、英語専門
日本と NSW 州の連携関係を拡大する
学校、大学の市場シェアを増大する:大学の各種課程、目的に応じた企業向け研修プログラム、大型スポーツ
イベント向けのボランティアの訓練、英語コースになんらかの学習/見習い体験を加えたプラスαコース、職
業訓練コースから大学へと進む へ進学方法、
スーパーグローバル大学創成支援プロジェクトを支援する学部
教職員向け訓練、
日本のスーパーグローバルハイスクールを支援するための高等教育機関による教員向けの
研修。
• 両国企業がそれぞれの専門知識をもちより、アジア太平洋地域の官民パートナーシップによるインフラ建設
に向けた共同入札を行うことを推奨する。
•NSW 州企業と日本企業を結びつける。
• より多くのNSW 企業に、インフラプロジェクトに関する専門知識の輸出を推奨する。
• 豪日経済委員会と協力してNSW 州と日本の合同インフラ使節団の第三国への派遣を支援する。
• 官民パートナーシップと資産民営化におけるNSW 州の能力と専門知識を推奨する。特にエンジニア、建築
産業・技能・ 地方開発省
した研究を進める。
8
• 需要に応じて、大型日本投資家やベンシャーキャピタルのネットワークとの連携を促進し、需要の多いフィ
主導機関
技術革新と開発における連携を強化する
• 研究機関との合意書の提携などを通じ、共同研究開発を増加する。
• NIMS との合意に基づいた研究機会を促進する。
• 日本のサイエンス・メディア・センターなどを通じてオーストラリアの科学研究能力を推奨する。
• ロボット工学における両者の実績を利用して、特に農業や高齢者ケアで新しく利用できる技術革新をめざ
行動計画
する。
行動計画
NSW 州は次のことを行います。
首相・内閣省
• NSW州の学校への留学ツアーや一年間の留学プログラムを推奨し、学校機関の機会を増大する。
首相・内閣省
• 日本人留学生向けの情報提供・助言など支援態勢の改善など、日本人の留学体験を支援する NSW 州政府の
活動について日本側関係者に最新情報を提供する。
家、
プロジェクトマネージャー、その他設計専門家の技能や専門知識を継承することで日本企業を支援でき
る能力など。
• オリンピック大会開催に関する専門知識の共有や教育面での結びつき、官民パートナーシップによるインフ
ラ整備、農業、災害管理など、NSW 州と東京の姉妹都市協定に基づいた将来の協力分野を探る。
• 各種同窓会ネットワークと協力し、文化的つながりを強化する。
22
23
お問い合わせは:
NSW 州政府貿易・投資
日本駐在代表 ジェフリー・ウォーカー
電話:+81 (0) 3 6459 1731-2
メール:[email protected]
NSW 州首相・内閣省
国際関係強化事務局長
スーザン・カルバート
電話:+61 (2) 9228 5195
メール:[email protected]