No.238 南條 竹則

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ACC 2015年8月号 No.320 I 02
食への好奇心と探求心から生まれた、
美味しそうな物語の数々。
作 家・翻 訳 家
なんじょう
たけのり
さん
区に住むきっかけとなった三ノ輪の
小説を多く手がける南條さん。荒川
そうで、親しみやすいファンタジー
住界隈を描写した物語など、美味し
食べ物やお酒にまつわる話、南千
年。
す?﹂と、不動産屋を紹介してくれ
んが﹁この辺も住みいいからどうで
ろ、
﹁砂 場﹂の 亡 く な っ た お か み さ
か見つかりません。困っていたとこ
い﹂という条件に見合う家はなかな
できました。その後、賞金で中国の
画雑誌のインタビューで会うことが
秀賞を受賞。ジョイ・ウォンとは映
ジーノベル大賞に応募し、みごと優
ら 小 説 を 執 筆。
﹃酒 仙﹄で フ ァ ン タ
るかもしれないと、教鞭をとりなが
社がジョイ・ウォンに会わせてくれ
り、それから
たことから、荒川区に住むことにな
や作家・翻訳家の仕事について伺い
香港女優に会いたい思いで
初の長編小説に挑み、みごと受賞
寄るようになったと言います。
それからは近くに用があれば、立ち
場﹂。蕎麦が好きだったこともあり、
そうです。そのひとつが三ノ輪﹁砂
などあちこち連れて行ってもらった
方で、浅草の馬肉屋、根岸のふぐ屋
主人が下町で食べ歩くのが大好きな
とき、家庭教師をしていたお宅の御
成中学・高校。その後、大学院生の
荒川区との最初の縁は進学先の開
ことがうかがえるエピソードです。
幼い頃から食への関心が高かった
いました﹂
名物で、子ども心に本当に旨いと思
こにも行きました。そこは卵焼きが
柳界に、親戚の料理屋があって、そ
から、神田明神下にあった小さな花
く連れて行ってもらいました。それ
分のところにあったお寿司屋に、よ
好きで、浅草にいた頃は、家から1
いました。お祖母さんが、お寿司が
﹁子 ど も の 頃 は 贅 沢 を さ せ て も ら
そうです。
まい、千束町に5∼6年間、住んだ
が、ご祖父母が浅草を気に入ってし
一度浅草に。1∼2年の予定でした
したが、方角が悪く、方違えのため、
けに、原宿へ引っ越すことになりま
南條さん。お祖父様の引退をきっか
問屋を営むご祖父母と暮らしていた
生まれは日本橋本石町。そろばん
通っていて、その同人誌に短い小説
稲田の幻想文学会というサークルに
﹁僕 は 東 大 だ っ た ん だ け れ ど、早
女に会いたいという一心から。
ジョイ・ウォンに一目惚れして、彼
ゴースト・ストーリー﹄の主演女優、
は、なんと香港映画﹃チャイニーズ・
一方、長編小説を書いたきっかけ
です﹂
ので、その辺の兼ね合いが難しいん
然わからないと翻訳する意味がない
しなきゃいけないでしょ。でも、全
ているから、何かしらわかりにくく
す。凝ってわざとわかりにくく書い
使う人の文章だと困ってしまいま
た人の書いた原文や古くさい言葉を
対する見方で違ってきます。変わっ
判断するかは訳者の文学観や作品に
判断するか、枝葉末節だからいいと
けです。捨てちゃいけない部分だと
ようにするには、どこかを捨てるわ
りませんから、日本語として読める
﹁翻 訳 は 1 対 1 の 言 葉 の 対 応 が あ
れたそうです。
に南條さんが翻訳したものが採用さ
たとき、声楽曲やオペラの歌詞の訳
品集の記念版CDが出ることになっ
した。それが縁で、ディーリアス作
評論家、三浦淳史氏へ手紙を出しま
名を広めたいという思いから、音楽
好きだった南條さんは、日本で彼の
ク・ディーリアスという作曲家が大
学生のとき。イギリスのフレデリッ
いかと今から楽しみです。
盛りだくさんの内容になるのではな
えてくださいました。美味しい話が
背景を取材しているところ﹂と、教
らないので、
親やおじさんに聞いて、
どもだったから、細かいことがわか
まとめようと思っています。僕は子
んかをエッセイのような形で1冊に
﹁子 ど も の 頃 食 べ た 卵 焼 き の 話 な
伺ってみました。
最 後 に 温 め て い る 作 品 に つ い て
語る南條さん。
荒川区に引っ越してきた頃の様子を
本場でたくさんあったんですよ﹂と
でした。特に串煮込み屋。この辺は
ね。再開発前の駅前の飲み屋も好き
コがいっぱいいるのが好きでした
﹁こ の 界 隈 は 古 い 建 物 が 多 く、ネ
辺り。
風景はまさに南條さんがお住まいの
路地裏が描写されていますが、その
務所がある南千住
探偵﹄では、主人公の自宅兼探偵事
の 路 地 裏 が 登 場 す る も の も。
﹃魔 法
著書のなかには﹁砂場﹂や荒川区
タイトルの本にも綴られています。
美食の大宴を開いたその様子は、同
を企画し、中国・杭州で素晴らしい
宮廷料理
﹁満漢全席﹂
を食べるツアー
﹁砂 場﹂さ ん に て、小 さ い 頃 の お 話
ました。
中学進学にはじまり、
そして、原宿を引っ越さなければ
初めて翻訳で収入を得たのは、中
な ら な く な っ た と き、子 ど も の 頃、
を書いたりしていました。ただ、長
丁目︵架空︶の
子どもの頃の美味しい話
次作は、エッセイ風にまとめた
慣れ親しんだ浅草に物件を探した南
いものを書いたのは、
それが初めて﹂
南條さんの食の備忘録ブログも必見!
http://jardindessupplices.
cocolog-nifty.com/
南條竹則さんのブログ
﹃ 猫 城 通 信 / 南 蝶 食 単 ﹄
10
かたたが
條 さ ん で し た が、﹁マ ン シ ョ ン は 大
小説を書いて賞でも取れば、出版
徐々に深まっていく荒川区との縁
15
嫌 い﹂﹁2 階 よ り 上 に は 住 み た く な
■プロフィール
昭和33年東京生まれ。開成中学・高校を経て東京大学文学部・同大学院英語英文学修士
課程修了。
『酒仙』(新潮社)で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。主な著書に『中
華文人食物語』、
『悲恋の詩人ダウスン』、
『人生はうしろ向きに』(以上集英社新書)、
『魔法探
偵』(集英社)など。訳書に『ねじの回転』(ジェイムズ 共訳 創元推理文庫)、
『木曜日だった男
一つの悪夢』(チェスタトン 光文社古典新訳文庫)、
『秘書奇譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作
集』(ブラックウッド 光文社古典新訳文庫)、
『人間和声』(光文社古典新訳文庫 近刊予定)な
どがある。
南條 竹則
「満漢全席」
「魔法探偵」
「怪奇三昧 英国恐怖小説の世界」