情報満載のオフィシャルサイトへアクセス! ACC 公益 ACC 2015年8月号 No.320 I 02 食への好奇心と探求心から生まれた、 美味しそうな物語の数々。 作 家・翻 訳 家 なんじょう たけのり さん 区に住むきっかけとなった三ノ輪の 小説を多く手がける南條さん。荒川 そうで、親しみやすいファンタジー 住界隈を描写した物語など、美味し 食べ物やお酒にまつわる話、南千 年。 す?﹂と、不動産屋を紹介してくれ んが﹁この辺も住みいいからどうで ろ、 ﹁砂 場﹂の 亡 く な っ た お か み さ か見つかりません。困っていたとこ い﹂という条件に見合う家はなかな できました。その後、賞金で中国の 画雑誌のインタビューで会うことが 秀賞を受賞。ジョイ・ウォンとは映 ジーノベル大賞に応募し、みごと優 ら 小 説 を 執 筆。 ﹃酒 仙﹄で フ ァ ン タ るかもしれないと、教鞭をとりなが 社がジョイ・ウォンに会わせてくれ り、それから たことから、荒川区に住むことにな や作家・翻訳家の仕事について伺い 香港女優に会いたい思いで 初の長編小説に挑み、みごと受賞 寄るようになったと言います。 それからは近くに用があれば、立ち 場﹂。蕎麦が好きだったこともあり、 そうです。そのひとつが三ノ輪﹁砂 などあちこち連れて行ってもらった 方で、浅草の馬肉屋、根岸のふぐ屋 主人が下町で食べ歩くのが大好きな とき、家庭教師をしていたお宅の御 成中学・高校。その後、大学院生の 荒川区との最初の縁は進学先の開 ことがうかがえるエピソードです。 幼い頃から食への関心が高かった いました﹂ 名物で、子ども心に本当に旨いと思 こにも行きました。そこは卵焼きが 柳界に、親戚の料理屋があって、そ から、神田明神下にあった小さな花 く連れて行ってもらいました。それ 分のところにあったお寿司屋に、よ 好きで、浅草にいた頃は、家から1 いました。お祖母さんが、お寿司が ﹁子 ど も の 頃 は 贅 沢 を さ せ て も ら そうです。 まい、千束町に5∼6年間、住んだ が、ご祖父母が浅草を気に入ってし 一度浅草に。1∼2年の予定でした したが、方角が悪く、方違えのため、 けに、原宿へ引っ越すことになりま 南條さん。お祖父様の引退をきっか 問屋を営むご祖父母と暮らしていた 生まれは日本橋本石町。そろばん 通っていて、その同人誌に短い小説 稲田の幻想文学会というサークルに ﹁僕 は 東 大 だ っ た ん だ け れ ど、早 女に会いたいという一心から。 ジョイ・ウォンに一目惚れして、彼 ゴースト・ストーリー﹄の主演女優、 は、なんと香港映画﹃チャイニーズ・ 一方、長編小説を書いたきっかけ です﹂ ので、その辺の兼ね合いが難しいん 然わからないと翻訳する意味がない しなきゃいけないでしょ。でも、全 ているから、何かしらわかりにくく す。凝ってわざとわかりにくく書い 使う人の文章だと困ってしまいま た人の書いた原文や古くさい言葉を 対する見方で違ってきます。変わっ 判断するかは訳者の文学観や作品に 判断するか、枝葉末節だからいいと けです。捨てちゃいけない部分だと ようにするには、どこかを捨てるわ りませんから、日本語として読める ﹁翻 訳 は 1 対 1 の 言 葉 の 対 応 が あ れたそうです。 に南條さんが翻訳したものが採用さ たとき、声楽曲やオペラの歌詞の訳 品集の記念版CDが出ることになっ した。それが縁で、ディーリアス作 評論家、三浦淳史氏へ手紙を出しま 名を広めたいという思いから、音楽 好きだった南條さんは、日本で彼の ク・ディーリアスという作曲家が大 学生のとき。イギリスのフレデリッ いかと今から楽しみです。 盛りだくさんの内容になるのではな えてくださいました。美味しい話が 背景を取材しているところ﹂と、教 らないので、 親やおじさんに聞いて、 どもだったから、細かいことがわか まとめようと思っています。僕は子 んかをエッセイのような形で1冊に ﹁子 ど も の 頃 食 べ た 卵 焼 き の 話 な 伺ってみました。 最 後 に 温 め て い る 作 品 に つ い て 語る南條さん。 荒川区に引っ越してきた頃の様子を 本場でたくさんあったんですよ﹂と でした。特に串煮込み屋。この辺は ね。再開発前の駅前の飲み屋も好き コがいっぱいいるのが好きでした ﹁こ の 界 隈 は 古 い 建 物 が 多 く、ネ 辺り。 風景はまさに南條さんがお住まいの 路地裏が描写されていますが、その 務所がある南千住 探偵﹄では、主人公の自宅兼探偵事 の 路 地 裏 が 登 場 す る も の も。 ﹃魔 法 著書のなかには﹁砂場﹂や荒川区 タイトルの本にも綴られています。 美食の大宴を開いたその様子は、同 を企画し、中国・杭州で素晴らしい 宮廷料理 ﹁満漢全席﹂ を食べるツアー ﹁砂 場﹂さ ん に て、小 さ い 頃 の お 話 ました。 中学進学にはじまり、 そして、原宿を引っ越さなければ 初めて翻訳で収入を得たのは、中 な ら な く な っ た と き、子 ど も の 頃、 を書いたりしていました。ただ、長 丁目︵架空︶の 子どもの頃の美味しい話 次作は、エッセイ風にまとめた 慣れ親しんだ浅草に物件を探した南 いものを書いたのは、 それが初めて﹂ 南條さんの食の備忘録ブログも必見! http://jardindessupplices. cocolog-nifty.com/ 南條竹則さんのブログ ﹃ 猫 城 通 信 / 南 蝶 食 単 ﹄ 10 かたたが 條 さ ん で し た が、﹁マ ン シ ョ ン は 大 小説を書いて賞でも取れば、出版 徐々に深まっていく荒川区との縁 15 嫌 い﹂﹁2 階 よ り 上 に は 住 み た く な ■プロフィール 昭和33年東京生まれ。開成中学・高校を経て東京大学文学部・同大学院英語英文学修士 課程修了。 『酒仙』(新潮社)で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。主な著書に『中 華文人食物語』、 『悲恋の詩人ダウスン』、 『人生はうしろ向きに』(以上集英社新書)、 『魔法探 偵』(集英社)など。訳書に『ねじの回転』(ジェイムズ 共訳 創元推理文庫)、 『木曜日だった男 一つの悪夢』(チェスタトン 光文社古典新訳文庫)、 『秘書奇譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作 集』(ブラックウッド 光文社古典新訳文庫)、 『人間和声』(光文社古典新訳文庫 近刊予定)な どがある。 南條 竹則 「満漢全席」 「魔法探偵」 「怪奇三昧 英国恐怖小説の世界」
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