越塚 乗孝氏 - 札幌国際大学

【日 時】
平成27年3月17日(火)13:30∼15:00
【会 場】
ニューオータニイン札幌 2階「鶴の間」
【主 催】
新千歳空港建設促進期成会、北海道商工会議所連合会、北海道
【共 催】
新千歳空港国際化推進協議会、北海道経済連合会
【後 援】
国土交通省(東刻脚闇拝聴所、北海道開発局)
【プログラム】
13:30∼ 開会挨拶
13:40∼14:40 講演
講師 札幌国際大学 学長 越塚 乗孝 氏
14:40−14:55 質疑応答
15:00 開会
札幌国際大学 学長
越塚 乗孝氏
(こしつか むねたか)
【経歴】
昭和52年 静修短期大学教養学科観光学コース助手
平成11年 札幌国際大学観光学部観光学科教授
平成13年 札幌国際大学大学院観光学研究科観光学専攻教授
平成24年 札幌国際大学副学長
平成26年 札幌国際大学学長
【主な著書等】
「観光概論」、「現代観光総論」、「現代観光学の展開」、「北海道よ」
「新千歳空港の国際拠点空港化を目指して」
本日はこのような講演の機会をいただきありがとうございます。また、ご出席の皆様
には日頃より公私共にお世話になっております。この場をお借りしてお礼申し上げます。
さて、今日の講演テーマは「新千歳空港の国際拠点空港化を目指して」ですが、国際
空港と国づくり、地域づくりの関係は経済的視点、非経済的視点からこれまでも論じら
れてきました。お手元の資料 3 に、かつてのシンガポール首相、リー・クァン・ユー氏
が登場しますが、同氏はアジアにおいていち早く国づくりと国際空港の関係について論
究した人物の一人だと思っています。チャンギ国際空港は 1981 年のターミナルワン、
1990 年のターミナルツー、2008 年のターミナルスリー完成まで 27 年間かかっていま
すが、今では 102 の航空会社が乗り入れ、79 か国 302 都市と結ばれるまでに発展しま
した。この背景には国づくり、つまりシンガポールの国としての成長が挙げられます。
1980 年代までは外資系企業の誘致による製造業の集積が大きな影響を与えました。
1990 年代は FTA(自由貿易協定)、物流インフラ、ハブ機能強化を基にした諸外国との
関係強化によって得られた国際競争力、金融の自由化により世界の金融機関の集積が多
大な影響をもたらしました。
資料 1 にありますようにシンガポールは 1 人当たりの名目 GDP でアジア圏 1 位の豊
かな国で、この国からの来道観光客数は 35,600 人です。人口は約 540 万人で民族的に
は中華系が 74%を占めています。北海道開発局が中心となり、これまでに来道外国人
観光客のドライブ観光の実証実験が行われました。個人型観光が進んでいるのはシンガ
ポール、香港、韓国、台湾ですが、2006 年から新千歳空港における外国人観光客への
レンタカー貸出台数は年間 1 千台を超えるようになりました。同実証実験を行った協議
会は、「アジアからの観光客が期待する北海道の魅力を体験するには、個人が自由に移
動できるレンタカー観光が適しており、邦人観光客同様個人のドライブ観光のニーズは
高い。また、既に外国人ドライブ観光急増の兆しも出ている」と述べています。
さて、自由購買力を有した外国人観光客が来道すると地域の消費はかなり拡大してい
るようです。例えば、資料 1 にその一端をご紹介しました。A デパートではロレックス、
バーバリーが売れているそうです。そのため、A デパートは中国語が出来るスタッフを
雇用し、免税処理を行うカウンターを広くしたそうです。このような対応は他の量販店
等でも行われているようです。こうした状況をみるとアジア圏 1 人当たり名目 GDP が
高い 10 ヶ国の内、7 ヶ国から観光客が来道するとその経済効果が大きいことがわかり
ます。因みに、2014 年の訪日外国人旅行消費の総額は 2 兆 305 億円となりました。
観光行動を成立させる基本的条件はお金、まとまった時間、情報ですが、お金に関し
ては円安、デビットカード等クレジットカードの普及が影響していますし、情報に関し
てはスマートフォンの普及が大きいと思われます。例えば、アクセンチュアが 2011、
2012 年に実施した中国における消費市場調査では、5 つの変化が指摘されました。〇
意思決定のあり方に関してはインターネットが商品やサービスを購入する際に最も良
く利用されているチャネルであること〇ソーシャルメディアの台頭が購買行動に顕著
な影響を及ぼしていること〇利用頻度が高い店舗やブランドに多少のロイヤリティを
持っているものの、最良の商品、サービスを求めて行動していること。低価格はもはや
顧客満足度を満たすドライバーではないこと〇迅速かつ気軽にという顧客サービスへ
の期待がますます高まっていること〇企業の商品開発プロセスへの関与、関心が高いこ
と。これは企業と消費者との意見交換サイト、企業ブログ等を通じて商品の企画、改善
に参加したいというニーズがあることを示しています。このような消費スタイルは観光
場面における購買行動においても共通点がみられるのではないでしょうか。
さて、札幌のソフトウエア会社がタイ語のスマートフォン向け無料アプリケーション、
「トリッピーノ ホッカイドウ」を提供し始めました。食べる、遊ぶといった 6 分野の
情報、GPS 機能による店舗検索、加工した写真のフェイスブックへの投稿機能等が付
加されています。
無料 WiFi 環境の進展、多言語によるスマホ向けアプリの無料提供等、
所謂、情報通信の波は観光行動に大きな変化を与えていることは確かです。
資料 1 インバウンドトピックス A
札幌市内で見られる現象
A デパートのケース
外国人観光客の自由購買力の拡大(ア
ジア圏)
時計売場
(1 人当名目 GDP 2014 年 IMF 順位・
売れ筋商品→ロレックス
訪日外国人来道者数平成 25 年度)
衣料品売場
1 位 シンガポール 35,600
売れ筋商品→バーバリー
2 位 ブルネイ
不明
3 位 日本
対象外
4 位 香港
107,300
5 位 韓国
141,600
6 位 台湾
415,600
デパート側の対応
・TAX FREE カウンター
の増設
・中国語が出来る人材を
4 人雇用
7 位 マレーシア
36,400
8 位 中国
158,300
9 位 モルディブ
不明
10 位 タイ
98,800
10 ヶ国の内 7 ヶ国
から観光客が来道
インバウンド増がデパー
*実質比較には 1 人当購買力平価が用いられ
ト売上増に貢献
るが、ここでは 1 人当名目 GDP を用いた。
円安・クレジット(デビットカード)の普及
・クレジットカード(デビットカード)の普及により、高額商品の購入が可能になっ
たこと。
・ATM 利用で日本円を直ぐ引き出すことが可能になったこと。
(例) 中国銀聯の HP より
海外の加盟店 700 万店 日本の加盟店 6 万店
ATM の 30%で現金引き出しが可能(ゆうちょ銀行 セブン銀行 三菱東京 UFJ 銀
行 三井住友銀行 イオン銀行 京都銀行(一部店舗) みずほ銀行)
*平成 22 年度北海道の事業
中国銀聯カードと連携し、道内での利用拡大に努める
資料 2
インバウンドトピックス B
2014 年に見かけた個人型の外国人観光客(推定)
1)年齢
30 代前半の男女
2)年齢
10 代
アジア系
20 代 60 代
家族 6 人 アジア系
新千歳空港
女満別空港
斜里駅前の
女満別便ゲート
レンタカー会社
ホテル
・各航空会社のコードシェア便の増加により世界各都市への乗り継ぎが円滑になってい
ます。
(例) 全日空とアジアの航空会社
中国国際航空 マカオ航空
アシアナ航空
エバー航空 ガルーダ・インドネシア航空
フィリピン航空 山東航空
深セン航空 タイ国際航空
日本航空とアジアの航空会社
マレーシア航空
タイ国際航空
航空
バンコクエアウエイズ
大韓航空
ベトナム航空
大韓航空
中国東方航空
チャイナエアライン
中国南方
キャセイパシフィッ
ク航空
・北海道の観光価値は地理的に分散しており、ゲートウエイと各観光地を結ぶ移動ネッ
トワークは重要です。特に、個人型外国人観光客の市場が拡大すれば自ら情報を取得し、
移動手段を選択するといった行為は増すことになります。
また、時間的距離を重視する観光客は道内の航空ネットワークを利用することになりま
す。(参考)
観光庁調査平成 25 年版
台湾…団体旅行 53.8% 個人旅行 46.2%
韓国…団体旅行 31.2% 個人旅行 68.8%
中国…団体旅行 60.3% 個人旅行 39.7%
香港…団体旅行 32.6% 個人旅行 67.4%
タイ…団体旅行 32.9% 個人旅行 67.1%
シンガポール…団体旅行 28.4%
個人旅行 71.6%
昨年、新千歳空港から女満別空港でみかけた外国人観光客は資料 2 に記載した通りで
す。新千歳空港と女満別空港の移動に利用したのは ANA の女満別便、資料 2 の 1)に記
載したカップルの持ち物はスマホ。2)に記載した家族 6 人はトヨタレンタカーでワンボ
ックスを借りていました。これはほんの一例ですが、個人型の外国人観光客は北海道の
各地でみかけるようになりました。国によって観光の大衆化の進捗状況は異なりますが、
多様な観光スタイルの出現により、インバウンド市場を対象とした観光事業はきめの細
かさを要求される時代になったのではないでしょうか。
観光の選択場面において必ずしも安さだけが重視しされるわけではありません。例え
ば、知床へ行きたい観光客が時間を重視した場合には、新千歳空港から女満別まで航空
機を選択し、その後の移動はレンタカーを選択するといったことになります。全ての観
光客がこの一連の選択を行うわけではありませんが、時間距離を重視する観光客にとっ
て道内の航空ネットワークは不可欠な存在となります。資料 2 には観光庁の「訪日外国
人の消費動向」調査の一部を記載しました。国によって団体型、個人型の割合が異なっ
ていることが理解できます。観光目的地、例えば、北海道に関する情報はインターネッ
ト上に溢れ、多くの観光者がそれらを収得可能な時代になりました。また、航空機の座
席も同様に自分で予約、購入が可能となりました。経済的な面では割引がある、マイル
が貯まる、ラウンジサービスが利用できる等のメリットがあります。新千歳空港をゲー
トウエイとして地方への誘導路を確保し、多様な観光スタイルへの対応を行わなければ
ならない時代と言えます。北海道の観光価値は新千歳空港の「離れ」にもありますから、
今後、利尻空港、女満別空港、釧路空港等を結ぶ道内航空路は重要性を増すと思ってお
ります。因みに、個人型観光客を積極的に誘致し、その受入体制を整えている国の一つ
がスイスです。スイスでは鉄道、バス、湖船、ロープウエイ等の山岳交通機関、都市交
通機関、約 300 社が協力し、スイス全土をカバーする約 2600km の「スイストラベル
システム」を構築しています。日本語版はスイス個人旅行という表記でスイス政府観光
局のホームページからアクセスできます。同ページで販売されているスイストラベルパ
スはスイス国鉄もしくはそれに相当する鉄道に乗り放題パスで、他の鉄道、バス、湖船
も利用できます。6 歳未満の子供は無料、ユース(16~25 歳)、大人料金が設定されてい
ます。パスは 3 日間、4 日間、8 日間、15 日間タイプで、申請すれば同行の子供(16 歳
未満)が同じ旅程で使用できるスイスファミリーカードが付きます。3 日間パスの大人 1
人の料金は 38,500 円です。他にも旅行スタイルに対応したスイスフレキシーパス、ス
イストランスファーチケット、スイスカードがあります。注目したのは「ファストバケ
ージ」と「フライレールバケージ」です。ファストバケージは、出発する駅でスーツケ
ースなどの荷物を預けて列車に乗り、到着駅でそれを受け取るサービスです。フライレ
ールバケージは、日本を出発する際に空港でスーツケースなどの荷物をチェックインし
たら、それらの荷物をスイス国内の目的地の最寄駅で受け取れるサービスです。帰りは
最寄駅でチェックインして荷物を預け、日本の空港で受け取ることができます。
資料 3 空港と港は国づくりの要
かつてシンガポールの首相、リー・クァン・ユー氏は国づくりの要は空港と港にあると
述べ、その後、それらの整備を強く進めました。
面積 716 ㎢
人口 約 540 万人
(中華系 74%他)
言語(国語マレー語・公用語英語、中国語等)
主要産業(エレクトロニクス
化学関連
金融等)
貿易額(輸出 5,147 億 4,100 万 US ドル)
(輸入 4,596 億 5,500 万 US ドル)
2011 年
資料:PSA 2015 年 1 月 19 日 ニュースリリースより
港は世界最大級に成長
港湾事業により国の GDP の約 10%を担っています。
6,544 万 TEU(Twenty-foot Equivalent Unit) 2014 年の取扱量
(単位は 1TEU 20 フィートコンテナ 1 個)
・57 のコンテナバース ・710ha
・最大水深-18m
・212 のクレーン
・港の機能はトランシップ(船から船への積み替え)が基本
・24 時間営業テクニカルサービス(危険薬品、冷凍貨物等への対応)
*競争相手は隣国マレーシアのタンジュン・プルパス港(港湾使用料の安さ)
*トップは上海港
*北海道の海上出入貨物は下記の港で扱われています。
苫小牧 48.1%
その他 7.8%
函館
16.8% 室蘭 15% 釧路 7.2% 小樽 5.1%
(資料 2014 年苫小牧港港湾統計)
『苫小牧国際コンテナターミナルの施設概要』
岩壁 2(240m ・330m) 水深(12m・ 14m)
年間取扱可能量 24 万 1 千 TEU(2014 年実績 23 万 4,532TEU)
冷凍コンセント
1
ガントリークレーン 2
(資料:苫小牧外貿コンテナ事業協同組合)
「北海道未来創造プラン(新・北海道総合計画 平成 20 年度~概ね 10 年間)」
・市場競争力をもつ食産業の構築
国内市場 東アジアを中心とした国際市場
において、競争力のある道産食品を生み出
す
・都府県にない豊かな観光資源を十分に生
かした「住んでよし、訪れてよし」の観光
地づくり
・社会資本整備
国際交通ネットワークの形成
新千歳空港の国際拠点空港化、地方空港の
国際空港機能向上
苫小牧港等港湾機能の向上
(参考)
「国際物流を通じた道産品輸出促進研究会」
・北海道の強みである食品関係は道外経由による輸出が大半であり高い輸送費を負担
しています。
(北海道国際輸送プラットホームの構築)
宅配輸送(冷凍・冷蔵を含む航空輸送)
LCL 輸送(冷凍・冷蔵を含む海上輸送)
FCL 輸送(1 荷主の貨物を 1 コンテナで海上輸送)
〇フード特区の各種プロジェクトとの連携による道内サプライヤーの育成
〇ヤマトホームコンビニエンス・フード特区機構による集荷、商社機能の充実
〇宅配輸送の充実(ヤマトの国際宅配便)
(参照)
ヤマトの国際クール宅急便
平成 25 年 10 月 28 日サービス開始
仕向け国 香港
料金 サイズ 60cm 以内 2kg~120cm 以内 15kg
6,050 円~26,950 円
日本郵政クール EMS
仕向け国 台湾 香港 シンガポール マレーシア ベトナム
中札内村農業協同組合 「えだ豆輸出」 高品質の冷凍えだ豆が特徴
輸出量 約 2 トン(冷凍えだ豆)
輸出先 米国 ロシア 香港 ドバイ
資料 4
産業集積と観光消費-物と人-
新千歳空港の現場から-国際線ターミナル- *運休中路線は除く
□トリプルトラック
(韓国)
大韓航空(新千歳⇔ソウル)
ジンエアー(新千歳⇔ソウル)
新千歳発 土 日
ティーウェイ航空(新千歳⇔ソウル)
中国東方航空 13:30 分
機材 320 クラス CY
(台湾)
エバー航空(新千歳⇔台北)
C 8 席 Y128 席
チャイナ エアライン(新千歳⇔台北)
春秋航空
トランスアジア航空(新千歳⇔台北)
機材 320 クラス Y
□ダブルトラック
Y180 席
13:50 分
(中国)
中国東方航空(新千歳⇔上海)
新千歳発 金 土 日
春秋航空(新千歳⇔上海)
香港航空 15:55 分
(香港)
機材 332 クラス CY
キャセイパシフィツク航空(新千歳⇔香港)
C24 席 Y259 席
香港航空(新千歳⇔香港)
キャセイ 16:00 分
□シングルトラック
機材 747 クラス FCY
大韓航空(新千歳⇔釜山)
F9 席 C46 PY26 Y278
中国国際航空(新千歳⇔北京)
保安検査ライン 基本 2 レーン
ユナイテッド航空(新千歳⇔グァム)
・1 人 15 秒 荷物 1 個が基準
オーロラ航空(新千歳⇔ユジノサハリンクス)
現実は 1 人 50 秒 手荷物 5 個
タイ国際航空(新千歳⇔バンコク)
土産品の大量持ち込み
シンガポール航空(新千歳⇔シンガポール)
・2 社の出発時間差が 25 分しかな
*季節定期便 新千歳発火・土
いこと
シンガポール発月・金
ハワイアン航空(新千歳⇔ホノルル)
*到着便の混雑は
香港便 金土日 CX14:50
HX14:55
上海便 土日
MU12:30
9C12:50
JTB2015 年 1 月時刻表、各
航空会社の HP より作成
混雑 不満の主たる要因
食品産業の集積と土産品
(例)
ロイズチョコレートワールド 新千歳空港 3 階 営業時間 8 時~20 時
銀聯カード利用可能
商品:チョコ 焼菓子
国際線出発待合免税店
ギフト等
海外店舗:シンガポール 中国 マレーシア タイ フィリピン
ブルネイ インドネシア 台湾 韓国 インド等
石屋製菓 白い恋人パーク
一般社団法人北海道食品産業協議会 会員数 131 社
北海道食クラスター連携協議体
・付加価値の向上 道外・海外へ プロジェクト創出 食+関連産業の協働
(観光との関連を一部記載)
食クラスターの形成
北海道の土産品の
観光客の購入が
新たな創出
インセンティブ
海外販路開発 商品認知度への貢献
「2013 年 ジェトロ 地域ブランド認知度アンケート結果」より
対象市場 香港 シンガポール 回答者 20~50 代男女
認知されている産地、地域ブランド…北海道 22.6% 東京 8.6 大阪 7
「2010 年 北海道 アジア観光マーケティング戦略検討事業」より
ヒアリング対象 シンガポール 上海 ソウル
シンガポール…レベルの高いシーフード
上海…認知度の高い「白い恋人」
ソウル…ビールの認知度の高さ
*「第 5 回北海道観光産業経済効果調査報告書」平成 23 年北海道
訪日外国人来道者の消費は 12 万 2,128 円
直行便比率 58.6% 道内滞在日数 6.4 日 土産・買物代 36,536 円(総消費の約 30%)
(旅行期間中:道内路線飛行機消費約 13%・菓子類消費約 10%)
オーストラリアは宿泊費の割合が高いのが特徴 33.9%:長期滞在 9.7 日
台湾、中国、韓国、香港は土産品・買物代の割合が高いのが特徴約 30~40%
(話題)
新千歳空港国際線ターミナルで売れている商品…「東京ばな奈」
*㈱グレープストーン 設立 1978 年 売上 300 億円
店舗…羽田新国際線ターミナル 成田空港第 1、第 2 ターミナル 関空 中部 福岡等
さて、北海道への外国人観光客の流入量は基本的に各航空会社の戦略と関係していま
す。例えば、ANA グループはグローバルアライアンス、日米間 JV(ユナイテッド)、日
欧間 JV(ルフトハンザ)、バイラテラルと呼ばれるアライアンス加盟メンバー以外の航
空会社との個別提携が進められています。こうした戦略が展開されることにより、乗り
継ぎの利便性、シームレス化が進むことになり、今以上の乗客獲得に繋がるという目的
があるようです。
このような動きを考慮すると、成田国際空港、羽田空港等からの経由客にも注目しな
ければなりません。平成 26 年の新千歳、東京間の乗降客数は 946 万 6,612 人、利用率
は 75.94%、新千歳、成田間の乗降客数 127 万 8,053 人、利用率は 71.37%ですから、
まだ余裕がありそうです。かつて台湾からの観光客を誘致するため、当時の関係者は日
本アジア航空の国際線と日本航空の国内線を乗り継ぐルートで誘客チャネルを開発し
ました。この成功が今日の台湾と北海道の絆に繋がっていると考えております。平田真
幸氏の論文(台湾からの
「北海道旅行ブーム」はどのように生まれたか 平成 11 年度
第
5 回学術論文一席 一般財団法人 アジア太平洋観光交流センター)では、1996 年度の
台湾から北海道への台湾人客数は本州経由が 22,000 人、直行が 3,700 人であったこと
が記されています。
平田氏は日本航空が収益の伸び悩んでいる羽田及び関西空港発着の長距離路線の需
要喚起のため、日本アジア航空に台湾人送客を依頼したと述べています。具体的には、
1995 年 4 月、関空または成田、羽田経由新千歳空港と国内線の合計運賃より約 30%割
安の通し特別団体運賃を、系列の旅行会社に提供し始め、北海道ツアー商品の価格競争
力の向上に強力な支援となったと述べています。これに呼応し、日本観光協会台湾事務
所は重点誘客地域を九州から北海道へ切り替えたと述べています。
当時の台湾の外国旅行のピークシーズンは旧正月休みの時期で、
「さっぽろ雪まつり」
へのツアーが冬の訪日旅行の主流となっていましたので、同事務所は「冬以外の北海道」
をテーマに誘客対象地域を道東に絞り込むこととしたと述べています。1995 年 6 月、
台湾の有力日刊紙「聯合報」の旅行特集版で北海道が取り上げられ、同事務所の働きか
けで「日本の小さな北欧」という見出しが付けられたそうです。これが台湾からの観光
客を冬以外の季節に北海道へ誘導するマーケティングのスタートでした。8 月には
JNTO と北海道観光連盟(現北海道観光振興機構)が共催し、日本アジア航空が協力する
台湾の旅行会社 5 社を招聘した視察事業が実施されました。その後、「紅葉をテーマ」
としたツアー商品が造成販売され、9 月から 12 月までに 3,732 人の台湾からの観光客
が北海道を訪れました。
次に、日本アジア航空は「花をテーマ(ライラック、ラベンダー、さくらんぼ)」にイ
メージキャンペーンを展開したそうです。1996 年の秋季(10 月から 12 月)の日本アジア
航空による北海道への送客実績は約 10,500 人に達し、同年冬季(1 月から 3 月)の約 4,100
人を初めて上回ったと述べ、平田氏はこの 1996 年 10 月が台湾人の「北海道旅行ブー
ム」が始まった時期と指摘しています。
詳細については平田氏の論文がアジア太平洋観光交流センターのホームページに掲
載されていますのでご覧ください。こうした事例を振り返ると連携型のマーケティング
の重要性を感じます。直行便のチャネル開拓も重要ですが、時期、時間帯により空いて
いる枠を利用した羽田、成田、関空、中部からの経由客の確保も次の一手なのではない
でしょうか。20 年前と現在では社会経済的条件が異なりますし、IT 環境は大きく変化
しました。しかし、誘致したいと考える側が積極的に働きかける構図は変わっていない
と思われます。因みに、北海道観光振興機構の企画募集で登場する国はタイ、マレーシ
ア、ベトナム、インドネシアです。
平成 25 年度現在、北海道を訪れるタイ人観光客は全体の 8.6%ですが、タイ国際航空
の直行便就航以降、道内のタイ市場に対する期待は大きいようです。検索エンジンを使
って顧客を獲得する方法は SEM(サーチエンジンマーケティング)と呼ばれていますが、
アウンコンサルティング社は同事業を展開している会社です。同社はアジア 10 か国に
おける検索数(2014 年 1 月~12 月)から日本の訪問地ベスト 5 を発表しました。これに
よるとタイでのトップは北海道で、東京、大阪、福岡、京都と続きます。こうした調査
結果をみるとタイでの北海道への関心の高さが窺えます。因みに、バンコク、新千歳間
に就航を発表した長距離 LCC のエアアジア X は既に 2 月 11 日からチケット販売を開
始し、搭乗期間 2015 年 5 月 1 日から 2016 年 3 月 26 日まで、片道エコノミー発売記
念価格は 9,900 円から、ビジネスクラスは 38,000 円からと LCC のインセンティブを
発揮した運賃設定となっています。毎日運航の予定ですが、発着時間に関しては完璧と
は言えません。新千歳発は 08 時 55 分、バンコク着(ドンムアン空港)は 14 時 20 分、バ
ンコク発は 23 時 10 分、新千歳着 07 時 50 分ですから、個人的にはバンコク発の時間
が遅すぎるのが難点だと思っています。
タイエアアジア X は 2014 年末現在 A330 を 2 機使用していますが、2015 年に 5 機、
2016 年に 2 機導入すると発表しており、2016 年には 9 機体制になる予定です。2 地点
間の長距離路線を運航するエアアジア X グループはマレーシアとオーストラリア、台
湾、日本、韓国、中国を結ぶ路線は重要であると述べています。因みに、2014 年の同
社レポートでは同路線における市場占有率は中国路線 66%、日本路線 58%、オースト
ラリア路線 46%、台湾路線 45%、韓国路線 27%です。オーストラリア路線ではジェッ
トスターが 39%、日本路線でもジェットスターが 31%と検討していますが、他の市場
では強さを発揮しています。
なお、新千歳、バンコク間に同社が就航するとバンコクの乗り継ぎでエアアジアグル
ープの路線をシームレスで利用できる利便性が生まれますので、タイ国内のウドンタニ、
ウボンラチャタニ、クラビ、コーンケン、サコンナコ、スラタニ、マレーシアのクアラ
ルンプール、カンボジアのシェムリアップ、インドネシアのジャカルタ、シンガポール
とのチャネルが開かれます。
さて、冒頭でシンガポールについて空港は国づくりの要とお話ししましたが、もう一
つの要は港でした。港湾事業は国の GDP の約 10%を担っています。その概要は資料 3
に示した通りです。北海道を一つの国と想定した場合、空港と港、具体的には新千歳空
港と苫小牧港は北海道づくりの要と考えられます。北海道未来創造プランには国際交通
ネットワークの形成の項目において新千歳空港の国際拠点空港化、地方空港の国際空港
機能向上、苫小牧港等港湾機能の向上が記載されています。シンガポールとの単純比較
は出来ませんが、北海道に不足しているのは外資を含む産業集積だと思います。当たり
前の話ですが、空港と港は人、物の出入口の役割を担っていますが、人、物を生み出す
ことは出来ません。シンガポールはそれがわかっていましたから時代に対応した産業集
積を進めたものと推察されます。
観光振興は人と物の流れを生みますが、その量には限界があります。現在、北海道は
食と観光に政策の力点を置いていますが、さらなる食領域の産業集積で他地域より優位
に立ち、加えて航空貨物の対象となる製品を生み出す製造業の集積に努めなければ、空
港、港の活性化には繋がらないのではないでしょうか。この視点から考えると北海道食
品産業協議会、北海道食クラスター連携協議体、経済団体等の役割には大きなものを感
じます。因みに、平成 26 年の北海道外国貿易概況(函館税関)の輸出品目をみると魚介
類・同調製品は約 612 億円、主な輸出先で増加したのは中国、米国です。なお、野菜
に関しては「ながいも」が野菜全体の約 8 割を占めており、金額では約 15 億円です。
観光と食との関連は資料 4 の図に示した通りです。ジェトロの調査では地域ブランド
としての北海道の認知度は東京、大阪より上回っており、この優位性を活かした展開が
期待されます。因みに、訪日外国人来道者の消費額は 12 万 2,128 円、その内、36,536
円、約 30%が土産・買物代に使われています。特に、台湾、中国、韓国、香港からの
観光客は土産品・買物代の割合が高いようです。観光客の購入がインセンティブとなり、
北海道の企業の海外販路開発、商品認知度への貢献がみられるような流れが期待されま
す。インバウンドは観光消費額でみるとどの程度北海道の総観光消費に貢献しているの
でしょうか。資料 5 に示した調査では 6.6%、855 億円と推測されています。この調査
は平成 21 年 7 月から 22 年 6 月までに北海道を訪れた 70 万人を対象としたものです。
国別では、当時のトップ 5 は台湾約 18 万人、韓国約 14 万人、香港約 13 万人、中国約
9 万人、シンガポール約 4 万人ですから、平均消費単価が同じだと考えれば、人数が多
い順の消費額となります。直近の平成 25 年度では、約 115 万人と数的に増加していま
すので、この消費額を上回っていることと思われます。単純推計では 1,381 億円から
1,555 億円程度になります。国別のトップ 5 は台湾約 42 万人、中国約 16 万人、韓国約
14 万人、香港約 11 万人、シンガポール約 4 万人で、中国の増加が顕著です。因みに、
台湾宿泊客のピークは 7 月、中国宿泊客のそれは 2 月、韓国のそれは 8 月、香港のそ
れは 2 月、シンガポールのそれは 12 月となっています。中国と香港に共通性はみられ
ますが、他の国のピークは異なります。
資料 5 北海道の観光価値とインバウンドの促進
観光消費額でみた北海道観光への貢献度
「第 5 回北海道観光産業経済効果調査報告書」平成 23 年北海道
・道民観光消費 55.7% 来道者 37.7% 訪日外国人来道者
6.6%
・訪日外国人観光消費額単価 122,128 円
年間観光客数 70 万人回
*平成 21 年 7 月~22 年 6 月まで
総観光消費額 855 億円
・訪日外国人来道者の満足度及び期待度のポートフォリオをみると、
「景観」「観光施設」
は期待度、満足度ともに高かくなっています。また、
「食事」は期待度が高いものの満足度
が低く、重点改善分野となっています。
*調査サンプル 新千歳空港で 689 人 道内 17 宿泊施設 170 人(札幌 8・定山渓 1・ニセ
コ 2・登別 2・洞爺 2・函館 1・阿寒 1)
■平成 25 年度の訪日外国人来道者数 115 万 3,100 人
台湾 36% 中国 13.7%
韓国
12.3% タイ 8.6% その他 20.1%
■消費単価 120,124 円~135,207 円
(単純推計)
消費単価 下限 120,124 円×115 万 3,100 人
上限 135,207 円×115 万 3,100 人
総観光消費額
1,381 億円~1,555 億円
1 万人の増加で総観光消費額は 12 億円の増加
(参考)
福岡県の平成 24 年入国外国人数
83 万 5,101 人(韓国 48 万 5,316 人 台湾 10 万 6,972 人 中国 8 万 1,605 人)
福岡空港からの入国外国人数 60 万 9,911 人 博多港 20 万 6,636 人
北九州空港 18,523 人
「観光振興に関する要望」平成 26 年 8 月 九州経済連合会 *一部記載
・九州地域戦略会議(九州地方知事会・九州経済連合会・九州商工会議所連合会・九州経済
同友会・九州経営者協会)で観光を九州の基幹産業にすることを決定
・その道筋となる第二期九州観光戦略(2014 年~2023 年)を策定
・九州観光推進機構を中心に九州一体となった取組
・目標 外国人入国者数 188 万人(2016 年) 440 万人(2023 年)
・ラオス、カンボジア、ミャンマーに対するビザ免除、ロシアに対する数次ビザ発給
・中国人個人観光客の数次ビザ発給の適用対象地域拡大
・地方空港における CIQ 体制の充実
・クルーズ船観光客の入国審査のさらなる迅速化、港湾インフラ整備の推進
・旅客数国内第 3 位の福岡空港の滑走路増設の早期実現
■福岡空港概況
滑走路 2,800m×1
24 時間運用 駐車場 1,900 台
乗降客数 国内 1,610 万 2,247 人(平成 25 年) 国際 318 万 9,780 人(平成 25 年)
*表記は大阪航空局による
国際線就航先(平成 26 年 11 月)
ソウル 釜山 大連 青島
北京 上海 武漢 香港 台北 ハノイ ホーチミン
バンコク マニラ シンガポール グァム ホノルル アムステルダム
■新千歳空港概況
滑走路 3,000m×2 本 24 時間運用 駐車場 3,920 台
旅客数 国内 1,739 万 8,764 人(平成 25 年) 国際
127 万 5,580 人(平成 25 年)
*表記は東京航空局による
国際線就航先(平成 27 年 1 月) *運休中は除く 季節運航を含む
ソウル 大連 北京 上海
香港 台北 バンコク
グァム ホノルル シンガポール
ユジノサハリンクス
■航空会社と国際空港について
(例) 全日空グループ「2015 年度航空輸送事業計画」
羽田空港…国際線と国内線の乗り継ぎ拠点空港
成田空港…主として北米~アジア間の国際線乗り継ぎ拠点空港
・成田~ヒューストン新規開設 2015 年 6 月
・成田~シンガポール増便 2015 年 6 月
・成田~バンコク増便
2015 年 8 月
・成田~クアラルンプール新規開設 2015 年 9 月
・成田~ホノルル増便
2015 年 7 月
デュアルハブモデルの強化
羽田空港において最大の国際線ネットワークキャリア
(参考) LCC バニラエアの国際線は成田~ソウル、成田~台北
(例)日本航空グループ「2012 年~2016 年度中期経営計画」
路線ネットワーク…堅調な需要が見込まれ、JAL の強みを発揮できる国際線中距離
路線(欧米・東南アジア路線)に経営資源を重点的に投下し、他社との差別化を図る。
■航空貨物 「平成 23 年度航空貨物動態調査報告書」平成 24 年国土交通省航空局
発送量の多い都道府県 北海道 東京 沖縄 福岡
大阪 千葉 72%
到着量の多い都道府県 北海道 東京 沖縄 福岡
大阪 千葉 69.5%
発送量の多い空港 羽田 新千歳 福岡 那覇 大坂 78.8%
到着量の多い空港 羽田 新千歳 福岡 那覇 大坂 81.8%
新千歳と道内空港間のトランジット貨物量が多い
新千歳の多い品目は野菜、果物、水産品、農畜産物、製造食品・飲料
航空運送事業 全日空の場合 売上高内訳
国内線旅客 50% 国際線旅客 26% 貨物 10%
資料 イメージ yahoo より
・観光客 ビジネス客 貨物の三点セット
■新千歳空港の今後の方向性について
(各意見)
〇道内ネットワークの核としての位置付け
〇地域が主体となって空港戦略を提案すべき 地域間連携がコンセプト
〇新千歳を中心に道内と本州各地を結ぶネットワークの維持・拡充
〇新千歳空港の国際拠点空港化の促進他
・中国…個人観光数次ビザの導入 インドネシア…申請書類の簡素化 ビザ免除
・中国、ロシアの航空会社に対する乗り入れ制限の更なる緩和
・新千歳空港における自動化ゲートの導入
・時間あたり発着枠の拡大
・深夜、早朝時間帯の発着枠拡大に伴う地域対策への支援
・ILS 双方向化の着実な実現
・デアイシングエプロンの早期整備
(離陸時の雪の再付着を防止する作業を行う専用エプロン(駐機場)
(参考)
「新関空モデル」*中期経営計画から新しい取組みのいくつかを抜粋
・カスタマーズ・アイ…利用者、エアラインなどの目線に立った料金設定
・LCC ターミナル…我が国初の LCC 専用ターミナル整備、運営
・貨物ハブ…FedEx 社北太平洋地区ハブに向けた貨物施設整備
*2013 年外国人旅客数 496 万人(過去最高)
*2013 年国際線発着回数
13.3 万回(過去最高)
■北海道の観光価値と新千歳空港の役割
資料 東京航空局より一部抜粋し作成
滑走路の優位性 新千歳
3,000m×2
函館
3,000m×1
旭川
2,500m×1
帯広
2,500m×1
釧路
2,500m×1
女満別
2,500m×1
稚内
2,200m×1
紋別
2,000m×1
中標津
2,000m×1
利尻
1,800m×1
奥尻
1,500m×1
(観光価値と誘引)
□事例
オーストラリア
成田
新千歳
ジェットスター
ニセコでの滞在
札幌での滞在
スキーが目的
雪まつりが目的
網走
斜里地域での滞在
流氷が目的
(復路 想定) *上記の図と下記の想定は無関係です。
1 月 29 日(木) 13:45 分 新千歳発 15:30 分 成田着
20:10 分 成田発
4:40 分
ケアンズ着
10:10 分 ケアンズ発 12:20 分 ブリスベン着
○ライフスタイルに応じて価値を選択…長期休暇をとり、北海道での滞在を
楽しむ。
主たる滞在先はニセコのコンドミニアム
スキーだけではなく、札幌の雪まつりや
オホーツクの流氷も見たい
○ライフスタイルは十人十色…各国の個人型観光市場に対して北海道各地から
情報発信を
外国人目線で日本の観光、生活情報を提供している Japan Guide、
http://www.japan-guide.co.jp/には毎月 140 万人以上が訪れています。
・情報の信頼性 新鮮さ ユーザーとのコミュニケーションが特徴
□国の航空政策
平成 19 年 アジアゲートウェイ構想~平成 24 年国土交通省航空局「これまでの航空政策
について」より
○地方空港について
観光振興等を推進するため、自由化交渉を加速化、妥結する前でも路線開設や増便を暫定
的に認める。国際旅客チャーター便を促進。
○羽田、成田強化
○オープンスカイ合意国 22 か国・地域
■北海道の航空政策
北海道「平成 25 年度道内空港活性化ビジョン推進管理表」より
〇新千歳空港は我が国の北の拠点空港、北海道の航空ネットワークの核とする。
〇国際航空ネットワークについては、平成 25 年 3 月に策定した「道内空港における国際航
空路線の誘致指針」に基づき、戦略的な誘致活動を展開する。
〇国内、道内航空ネットワークについては、需要拡大が見込まれる地域との新規路線の開
設や既存路線の多頻度化などを図る。
▲福岡にあって新千歳にないのは *運休中を除く
欧州路線 福岡⇔アムステルダム 福岡発 月 木
土 KLM/AF 共同運航 各 1 便
アムステルダム⇔福岡 アムステルダム発 水 金 日
KLM/AF 共同運航
中国路線 福岡⇔青島 福岡発 毎日 中国東方航空/JL 共同運航 各 1 便
福岡⇔武漢 福岡発 毎日 中国東方航空/JL 共同運航 各 1 便
*上海(浦東)経由
韓国路線 福岡⇔釜山 福岡発 毎日 大韓航空/JL 共同運航 各 2 便
福岡⇔釜山 福岡発 毎日 エアプサン/アシアナ航空共同運航 各 3 便
東南アジア路線
福岡⇔マニラ 福岡発 毎日 フィリピン航空/全日空共同運航 各 1 便
福岡⇔ホーチミン 福岡発 木 日 ベトナム航空/JL 共同運航 各 1 便
福岡⇔ハノイ
福岡発 月 火 金
土 ベトナム航空/JL 共同運航各 1 便
▽「熟考しなければならない事柄」
・新千歳の地理的優位性
・航空会社の路線開設方針
・アライアンスによる乗り継ぎのシームレス化
スターアライアンス加盟 27 社 ワンワールド加盟 15 社 スカイチーム加盟 20 社
(ANA 加盟)
・新千歳から道内空港への誘導
(JAL 加盟)
(例) 新千歳⇔女満別
ANA ボンバルディア
JAL
DHC8-Q400 74 席 *ANA ウイングス
ボンバルディア CRJ200 50 席 *ジェイ・エア
・日本航空は MRJ 32 機の導入を決定、初号機は 2021 年
地方路線への投入を予定している。
MRJ
78 席もしくは MRJ
92 席
・北海道企業の海外進出・輸出入
(例) ニトリファニチャー(インドネシア ベトナム)
・魅力ある観光地の創出
観光地の修景…長野県小布施町が行った町並み修景
地権者が対等な立場で話し合い美しく、活気ある町づくりを実現
観光地の食…ラビスタ函館ベイ水準の朝食 *主観的評価の一例です。
観光地における機能的な人的サービス…庭のホテル東京水準
*主観的評価の一例です。
観光地における情緒的な人的サービス…スナッフルズ水準(綺麗、美味しい、いい感じ)
北海道の観光価値の顕在化…各観光地に分散している観光価値の顕在化
サロベツ原野 利尻岳 ダイヤモンドダスト(朱鞠内等)
御神渡り(おみわたり)…塘路湖(とうろ)、屈斜路湖等
*世界自然遺産のような自然観光資源ではないが、先に述べました通り、十人十色
の時代にあっては何が魅力となるかは不明です。とにかく各観光地の情報を文字、
画像、映像で市場へ発信することが肝要です。
・時間距離を優先する観光客にとって、新千歳空港と道内各空港を結ぶ航空ネットワーク
の維持は不可欠です。しかし、改善すべき点はいくつかあります。
●HAC の機材 サーブ 3 機保有
●チャーター便利用による道内地方空港の利用促進
(例) フジドリームエアラインズ
*2015 年 3 月から JAL とのコードシェア便運航
*2015 年 3 月から 9 号機導入…エンブラエル 84 席 2017 年までに 11 号機導入
・ベトナム航空 *スカイチーム加盟
保有機材 2015 年 101 機 2021 年 150 機
北米⇔日本⇔ベトナム線
重視 新規路線 羽田⇔ハノイ 成田⇔ダナン
(参考)在釧路ベトナム社会主義共和国名誉領事館:釧路コールマイン
名誉領事 中島太郎氏
・ガルーダ・インドネシア航空 *スカイチーム加盟
2014 年グループ会社ガルーダ・インドネシア・ホリデイズが愛媛県で 2 日間のサイクリ
ングツアーを実施
(参考)在札幌インドネシア共和国名誉領事館:北海道ガス 名誉領事 佐々木正丞氏
最後に、北海道の観光価値とインバウンドの促進について述べたいと思います。先に
お話ししましたが、台湾市場の開拓、展開、成長に関しては約 20 年の月日を要してい
ます。航空会社と観光協会とのコラボでスタートした事業が実を結んだ結果でした。こ
の間、様々な文化交流も生まれ、台湾と北海道には親しい関係が構築されました。今後、
アジアの隣国等との関係構築はこのような先例をお手本にしなければならないのでは
ないでしょうか。資料 5 に示した通り、観光面より先んじて、既に、北海道の企業はイ
ンドネシア、ベトナム等との経済関係、人的関係を有しています。今後、これらの国民
の所得向上、北海道側からの働きかけによって新たな観光面での可能性が期待できるの
ではないでしょうか。新千歳空港は既に国際観光面でも大きな役割を果たしていますが、
今後、さらなる飛躍のためには、三つの国際観光振興策が肝要と考えています。
①観光スタイルの多様化に対応した北海道観光システムの構築
スイス政府観光局のホームページには外国人観光客が自分の観光スタイルに応じて
選択できる交通、宿泊、観光対象等の情報が提供されています。個人で自由にスイス国
内を観光したい観光客にとっては便利なツールとなっています。特に、トラベルパスは
切符の購入の不便さを解消し、お得感を提示しています。北海道においても外国人観光
客が 100 万人規模になった現在、このようなシステムを検討すべき段階なのではない
でしょうか。因みに、国内では都内 78 の美術館、博物館の入場券、割引券がつづられ
たお得なパス「東京・ミュージアム
ぐるっとパス」や「スルッと KANSAI 2day・3day
チケット」
、
「大阪周遊パス」等があります。
②ローカルな観光情報の提供
IT 化の進展により北海道各地から直接、観光市場に対して情報を提供できる環境が
整いました。画一的、標準的な情報以外の「驚き」、
「新鮮さ」に焦点をあてた情報は北
海道価値の一つとして認識されることになるかも知れません。例えば、「水」に関する
情報は他国の人たちにとっては魅力的な情報と認識されるかも知れません。京極ふきだ
し湧水、大雪旭岳源水、春採湖周辺、千歳ナイベツ川、乙部の湧水、利尻の甘露泉水等
多数の湧水だけの動画を提供することも一つのアイデアです。
③メイン・サブチャネルの維持
新千歳空港の直行便、経由便による流入出チャネルは、水道管の本管にあたる部分と
考えています。ここから道内空港への繋ぎ、つまりサブチャネルの維持が大事だと考え
ています。将来、航空会社の機材更新時期に、例えば、MRJ のような 78 もしくは 92
席を有する機材が導入されればサブチャネルの流量は増えることになります。そのため
には今から航空会社への働きかけが必要なのではないでしょうか。他方、地方空港を有
する地域が一体となって観光市場と地方空港を繋ぐ活動も重要な事であると認識して
います。国際チャーター便のこれまでの実績は地域経済に好影響を与えました。今後も
関連の活動は続けていただきたいと思っております。何れにせよ、オール北海道による
取り組みが必要なのではないでしょうか。ご清聴ありがとうございました。
(質疑応答)
1 取組の優先順位について
〇参加者
新千歳空港の今後の方向性として、9 ページにも記載のとおり、具体的なご提言をい
ただいたところであるが、優先順位として、どのような対策から取り組んでいくべきな
のか、ご教示いただきたい。
●越塚
新千歳空港のメインチャネルとサブチャネルの流動性を維持、向上させる努力は優先
されるべき事項と考えています。個人型観光の割合が高まれば、一定の流量がみられる
国際線乗り継ぎ客の北海道への誘導は重要性を増すと考えています。新千歳空港の国際
線発着枠の確保には時間がかかりますので、顕在化している需要に焦点をあてた対策に
も目を向けなければなりません。
2 空港周辺地域の取組について
〇参加者
講演の中でも、「国づくりの要は空港と港」というお話がありましたが、空港周辺地
域はである千歳市、苫小牧市において、今後の訪日外国人増加に伴う様々な効果を享受
するためには、どのような取組を進めていくべきか、ご教示いただきたい。
●越塚
既に、千歳観光連盟と済州特別自治道観光協会との姉妹提携は 30 年を超える歴史を
有しています。また、同連盟は設立以来、空路で結ばれる国内外との交流を重ねていま
す。加えて、周辺地域である苫小牧市、安平町、長沼町、由仁町、恵庭市、伊達市大滝
区と北海道中央南部観光交流会を形成し、連携を深めています。周辺地域が有する観光
資源の魅力は適宜、海外に発信されると共に海外メディアの取材先として当該地域が選
定されています。このような協働体制が各地で生まれ、活動が活発化すれば効果を享受
できるようになるのではないでしょうか。
3 新千歳空港からの 2 次交通について
〇参加者
講演の中でも、新千歳空港からの 2 次交通として、道内航空ネットワークが利用され
ているとのお話しがありましたが、空港から札幌へのアクセスなども含めて、訪日外国
人が利用しやすくなる 2 次交通アクセスのあり方について、先生のお考えをご教示いた
だきたい。
●越塚
概ね、2 次交通のあり方については以下のようなことが考えられます。
1)
新千歳空港と道内航空ネットワークのあり方
北海道を訪れる外国人観光客にとって魅力を提示している既存観光地へのアクセス、
例えば、女満別線は日本航空と全日空を利用できますので非常に便利です。また、その
後の 3 次交通に関してもバス、レンタカー、タクシーがありますので、網走、知床、北
見方面等への移動も容易です。加えて、釧路、稚内、函館、中標津への移動も容易です。
しかし、夏季の利尻線を除いて他の路線はありません。全ては無理だと思いますが、需
要を確保するための地域挙げての努力を重ねていただきたいと思います。
先に述べましたが、今後、各航空会社では機材の入れ換えが行われることになります。
個人的には日本の MRJ の導入が進み、道内路線に就航することを期待しています。出
来れば、ANA、JAL グループで導入していただき、新たな道内航空ネットワークが構
築されることを期待します。
2)
FLY&TRAIN、SHIP への期待
トワイライトエクスプレスが惜しまれて運行を終えました。最後の札幌発の切符を手
に入れた方は、前日に航空機で新千歳空港に降り、札幌市内に宿泊し翌日のトワイライ
トエクスプレスに乗車したそうです。それだけ時間、費用をかけても価値ある存在だっ
たようです。台湾人観光客は JR 北海道の特急に乗ることが大好きなようです。ツアー
の中には、
「大沼公園、八雲間、特急に乗ること」を組み入れたものもあります。今後、
プレミアムな列車の運行を期待する次第です。かつては座席買い取り方式でリゾート特
急が運行されていました。海外からの観光客が新千歳空港に降り立ち、南千歳駅発のプ
レミアム列車に乗り込む姿をいつか見たいと思います。他方、プリンセスクルーズが北
海道、サハリンクルーズを開始しました。需要は発展途上のようですが、将来、日本も
クルーズ時代を迎え、新千歳空港に降り立つ外国人観光客が苫小牧港からプレミアムな
船に乗る姿を見たいものです。
3)
北海道観光トラベルシステム・パスの検討
先に述べましたスイストラベルシステムのトップ画面、個人旅行には、旅の手配項目
として航空券の購入(スイスインターナショナルエアラインズ)、交通パス・乗車券の購
入(レイルヨーロッパ・スイスパス)、ホテルの予約(トルノス)、旅行会社(スイススペシ
ャリスト)が並び、旅のプランニング項目ではおすすめルート、旅の手引き項目では現
地お役立ち情報が掲示されています。特に便利で有益と思われるのは交通パス・乗車券
購入項目で、ここをクリックするとスイストラベルパスの購入画面に繋がります。
こうした 2 次交通をほとんど網羅し、割引特典が付いた仕組みは個人型観光市場に対
して訴求力を持つのではないでしょうか。札幌を中心に IT 関連企業の集積がみられま
す。例えば、(株)アジェンダは旅行会社向けトラベルシステム事業を行っています。そ
の一つ Bound Link は訪日旅行向けシステムで、ツアースケジュールの登録、手配情
報登録、多言語出力、金額情報登録、見積書作成等の機能を有しています。IT 関連企
業、行政、観光企業、交通企業等が中心となり、新たな北海道トラベルシステム・パス
を開発していただきたいと思います。