中間赤外線で大きく増光した天体についての 可視・近赤外追究観測 小野里宏樹、板由房(東北大学)、小野謙次(東京大学)、深川美里(大阪大学)、 澤顕史、泉浦秀行(国立天文台)、中田好一、松永典之(東京大学) 我々は、恒星進化の決定的な場面である短時間にその構造を大きく変化させるような天体を探すため、IRAS、AKARI、WISE という 中間赤外線で全天サーベイを行った人工衛星のカタログデータを用いて大きく変光した天体を探し、全天で 11 天体をそのような天体の 候補として選出した。これら天体について先行研究はほとんどなされておらず、特に 7 天体に関しては完全に正体が不明であった。 その正体を探るため、岡山天体物理観測所 1.88 m 望遠鏡の ISLE、西はりま天文台のなゆた望遠鏡の MALLS、IRSF の SIRIUS で 観測を行い、その結果 4 天体については新しくその正体を明らかにすることができた。これらの中には YSO や O-rich、C-rich の evolved star が含まれていた。なお、この結果は Onozato et al. として PASJ に投稿し、2015 年 1 月 22 日に受理された。 1. Introduction 3. 結果 中間赤外線の光度の時間変化 IRAS 19574+4941 TiO TiO • 可視光、J-band に TiO の吸収 TiO • 近赤外線で非常に明るい(5~6 等) • 固有運動は小さい(~10 mas/yr) IRAS 19574+4941 の可視光と J-band のスペクトル → M 型の evolved star 2.5 1.4 TiO • 晩期型星の脈動 λFλ/λFλ (1.20µm) λFλ/λFλ (0.75µm) 2 1.5 1 1.2 1 0.8 0.5 0.6 • 原始星の間欠的増光 0 0.60 さまざまな研究が行われている 2MASS J22352345+7517076 • 星形成領域に属している • Ks band で 2MASS から4等もの変光 • スペクトルが featureless Ø 光球の放射を星周円盤が隠している → YSO Ø 原始星周りの降着円盤の不安定性 (右図、上) Ø 晩期型星内部の熱パルス(右図、下) V583 Cas • H-band に HCN+C 2 H 2 と C 2 の吸収が見られる → 炭素星 → IRAS、AKARI、WISE のカタログ データを比較し、上記のような非常に 熱パルス段階にあるAGB星の 光度の時間変化の見積もり (Althaus et al. 2005) 以下の手順でターゲット天体を選出した。 (1)IRAS、AKARI、WISE のカタログデータをマッチング 座標の差が 5” 以内である天体を同一天体と見なした (2)サンプルの選出 S / N > 3、IRAS の flux density quality が 3 (3)天体の選出(下のどれかを満たすもの) C 2 1 0.8 HCN+C 2 H 2 0.6 1.2 1 0.8 0.6 2.05 100 10 5” 4 5 6 7 8 9 Fν , WISE W 4 > 10 > 10 100 10 0 1 2 3 4 FRA12 5 6 7 8 9 10 FRW12 1000 100 10 1000 100 10 1 1 0.1 0.1 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 2.30 2.35 2.40 2MASS J 2 2 3 5 2 3 4 5 + 7 5 1 7 0 7 6 の K - b a n d の スペ ク トル -2.0 -1.0 0.0 1.0 1.60 1.65 1.70 1.75 0 50 100 150 200 250 300 350 MJD - 56292 IRAS 16241-4720 の JHKs –band の光度曲線 4. 考察 10-1 M 型の evolved star • ダストの量の変化 元々ダストがあまりないところに、多量の µm での光学的厚さ τ10 µm を ダストが生成された可能性と、元々多量に 10 変化させたときの SED の変化(M型) ダストがあったが、何らかの要因で急激に 紫: 0.01 緑: 0.1 水色: 1 橙色: 10 黄色 100 消えた可能性が考えられる → 中間赤外線や遠赤外線での excess が 小さいので、後者は考えにくい • 脈動 silicate の feature がある 10µm 付近では 中心星と内端のダストの温度を 1 桁程度までは変光してもおかしくは 変化させたときの SED の変化(M型) 紫: 中心星 2800 K ダスト 400 K なさそう。ただし、これまでの数少ない 緑: 中心星 3000 K ダスト 500 K 水色: 中心星 3200 K ダスト 600 K Mira 型変光星の 10 µm 付近での 橙: 中心星 3600 K ダスト 800 K モニター観測ではせいぜい 2 倍程度。 10-2 10-3 0.1 1 10 100 1000 λ [µm] 10-1 10-2 10-3 0.1 1 10 100 1000 λ [µm] 10000 Number of sources 10000 2.25 100 0.1 10 2.20 100 1 0.1 2.15 脈動や質量放出率の変化による中間赤外線での変光の大きさを 放射輸送コード DUSTY を用いて計算 1000 1 2.10 λ [µm] Normalized λFλ Number of sources Number of sources 1.55 V583 Cas の H-band のスペクトル 10000 1000 1.24 2.0 λ [µm] Fν , IRAS 12 Fν , IRAS 12 Fν , IRAS 25 Fν , IRAS 25 北天から 4 天体、南天から 7 天体を選出(正体が分かっているものは FU Ori 型星、T Tauri 型星、LBV、Post-AGB 星) 10000 1.22 1.4 Normalized λFλ Fν , AKARI L18W > 10 1.20 1.6 100 0 0.5 1 FRA25 1.5 2 2.5 3 FRW25 flux 密度の比のヒストグラム。紫色が全サンプル、緑色が選出条件を満たす天体 である。図から、今回選出した天体が非常に珍しい天体であることがわかる。 10-1 炭素星 • ダストの量の変化 質量放出率が桁で変わり、多量にダストが 生成されれば、1 桁程度までの増光は 11.8 µm での光学的厚さ τ11.8 µm を 変化させたときの SED の変化(炭素星) 説明が可能 紫: 0.01 緑: 0.1 水色: 1 橙色: 10 • 脈動 SiC の feature がある 11.8 µm の 付近でさえ大きく見積もっても せいぜい 3~4 倍まで。V583 Cas では 5 倍以上の増光が見られたので、 中心星の温度と内端のダストの温度を 変化させたときの SED の変化(炭素星) 脈動だけでは説明できない Normalized λFλ Fν , WISE W 3 1.18 λ [µm] 3.0 1.50 3 1.16 1.8 2 1.14 -3.0 0.4 1 1.12 IRAS 16241-4720 • Mira 型変光星のような光度曲線 • 周期が長い → 比較的大質量の Mira 型変光星 1.2 2. ターゲット天体の選出 0 1.10 -4.0 λFλ/λFλ (1.70µm) 珍しい天体を探した > 10 0.85 magnitude + constant ほとんどない 0.80 2 λFλ/λFλ (2.20µm) 小質量星の形成時の 質量降着率の時間変化 (Hartmann 2009) 変化するような現象は観測例が Fν , AKARI S 9W 0.75 • 短期間に生じる恒星の構造が大きく Number of sources 0.70 λ [µm] • 比較的定常な状態に関しては 0.65 10-2 10-3 0.1 3. 観測 1 10 100 1000 λ [µm] 100 Normalized λFλ 北半球の天体 • 岡山天体物理観測所 1.88 m 望遠鏡の ISLE Ø JHKs での撮像観測、JHK での分光観測 • 西はりま天文台のなゆた望遠鏡の MALLS Ø 可視光線での分光観測 南半球の天体 • IRSF の SIRIUS Ø JHKs での撮像モニター観測 10-1 10-2 10-3 0.1 1 10 100 1000 λ [µm] 紫: 中心星 緑: 中心星 水: 中心星 橙: 中心星 2800 K ダスト 400 K 3000 K ダスト 500 K 3200 K ダスト 600 K 3600 K ダスト 800 K
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