切り枝(枝もの)の生産・・・ヒサカキ(ビシャコ)

平成 27 年 秋号
第 334 号(8)
和歌山県JA花き情報
切り枝(枝もの)の生産
・・・ヒサカキ(ビシャコ)のつくり方・・・
JA 和歌山県農営農対策部
技術参与 辻 圭索
2 栽培方法
(1)苗の育成
実生苗は、10 月上~中旬に種子を採取し、
11 月または 3 月に播種します。挿し木で
は、3 月、7 月、9 月に長さ 10~15cm 程度
和歌山県は温暖多雨で樹木の生長が活
のさし穂を鹿沼土、赤玉土などに挿しつけ
発です。そのため、生長した枝を収穫して
ます。実生苗は翌々春、挿し木苗では翌春
販売する切り枝栽培には大変有利で、神前
に 15~20cm 間隔で苗畑に移植します。根
に供える榊(サカキ)、仏前に供えるコウヤ
が十分に伸びるまでは、乾燥や強光に弱い
マキ、ヒサカキ(ビ シ ャコ )、シキミ(香の
ので寒冷紗のもとで育て、ひと夏経過後 30
花 )、そして 正月飾 り として欠 かせな いセ
㎝以上になったものを定植に用います。
ンリョウ等、全国有数の生産量を誇ってい
(2)植え付け
ます。
切り枝栽培は決して難しくなく、5㌔の
定植 1 ヶ月前に 10aあたり堆肥 500Kg、
ものを持てれば誰でもできます。市場から
鶏糞 150Kg を施用して耕起しておきます。
の注文数量に対応しきれていないほど需
春の出芽前(3 月)または秋伸び前(9 月)
要があり、価格もほぼ一定で推移していま
に 90×45 ㎝の千鳥に植え付けます。
( 2,400
す。なかでも、シキミとヒサカキ(ビシャ
株/10a)
コ)は、畑での栽培が可能なため、生産面
(3)仕立てと整枝
積の拡大が望める産物です。
仕立て方には、低台仕立てと高台仕立て
があります。低台仕立てでは、30 ㎝程度で
主幹を切断して3~4 本の主枝を伸ばし、
合計 70 ㎝程度の高さのところで切り戻し
ます。そ こから 出た亜 主枝は収 穫しま す。
写真1
ヒサカキ
今回は、手間のかからない切り枝である
ヒサカキの栽培方法を紹介します。
1 栽培適地
よく肥えた水はけのよい土壌で、半日以
図1
主幹の切断
主幹の切断や主枝の切戻しは、収穫を兼
ねて行うことができ、定植の翌年秋に収穫
するとも可能です。
上日光が当たる緩やかな傾斜地が適して
自生の放任樹では、上向きの強い枝(徒
います。乾燥が強い場所、一日中強い日が
長枝)を70㎝位のところで切り戻し、亜
射す場所は不適です。
主枝の発生を促しながら樹形を整えてい
きます。
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害虫では、地上付近の幹、枝の材を食害
するゴマフボクトウ、コウモリガ、枝で吸
汁するロ ウムシ 類、葉 を食害す るミノ ガ、
チャハマキの幼虫、葉肉を迷路状に喰い進
むハモグリバエなどが見られます。
整枝・間伐などの手入れをこまめにする
ことが病害虫の抑制につながります。
5 収穫
図2
ヒサカキの低台仕立て
(4)施肥
(1)収穫方法
低台仕立てでは、定植翌年から主幹切断
作業を兼ねて収穫しますが、新梢の伸長期
施肥時期は3月と5月です。3月には毎
は、品質が悪くなるので新葉が固まるまで
年堆肥を 500Kg/10a程度を施用します。
収穫を控えます。また、幹下のほうから出
施肥量は、3月5月ともに10aあたり各
ている主枝は力枝となるので、切りすぎな
成分量(N・P・K)で3~4Kg程度を施
いようにします。
用します。
上向きか斜め上向きに伸び、横枝が密に
ついた枝を出荷先の規格(30~60 ㎝)が確
(5)病害虫
病害では、葉に褐色の斑点を生じ下部の
葉から激しい落葉が始まる輪紋葉枯病、葉
に灰白色の病斑を生じる炭そ病、葉に白い
藻が発生する白藻病、葉に黒色のカビがつ
くすす病が見られます。
保できる長さで収穫します。このとき切り
枝の付け根の枝を5㎝以上残しておくこ
とで次の切り枝が確保できます。
彼岸前、盆前、年末の需要期にたくさん
出荷できるよう、普段の収穫量を調整して
おくことで、計画的な出荷を心掛けてくだ
さい。
写真2
輪紋葉枯病
5月~梅雨時期、9月~11月の多雨の
時期に降雨が続くと、輪紋葉枯病の被害が
激しくなります。
図3
収穫の仕方
切り枝時には、余分な主枝や病害を受け
写真3
白藻病
写真4
炭そ病
た枝・著しく曲がった枝を間引く整枝作業
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を行うことで、品質の向上や病虫害の抑制
本数
7~8本/束 程度
が図れます。
結束
輪ゴムで足元をしっかりとく
くる。(幅をもたせてくくり降
(2)出荷調整
収穫した枝は、病害虫の被害を受けた葉
や古葉を取り除き、綺麗な水でよく水揚し
ろす)
入数
100束
○大束
てから形を整えます。
出荷形態は、一掴みまたは1Kg で束ね、
大束はほとんどが小束にくくりなおし
10Kg の箱詰めにする大束と、7~8本程
て使われます。このとき、どれだけ多くの
度をくく った小 束(く くり)が ありま す。
小束が取れるかが単価に反映します。した
いずれの場合も出荷先の規格に合わせて
がって、小枝が多く綺麗な葉が多く付いて
作ります。
いるものが良いとされています。
茎の太すぎるものや、葉の悪いものは売
れません。光沢のある緑葉で、葉が密につ
き、小束に組みやすい枝ぶりであることが
高品質の条件です。
【大束の規格】
全長
結束
写真5
出荷調整作業
(3)出荷規格
仏花の 台と し て使わ れ ます。 このた め、
正味重量
10Kg
太さ
エ ンピツ の太さ以 上 のも の。
下葉取り
られます。
ると腐りやすため)
結束方法
【小束の規格】
30~32㎝
足の長さ
10㎝(葉部 20~22 ㎝)
重量
34~40g/束 程度
切り口から一握り程度の葉
をかき取る。(葉が水に浸か
花筒に入るように足元の細いものが求め
月
旬
1Kg
太すぎるものはダメ。
○小束(くくり)
全長
50~60cm
根本くくり
参考文献
「木の 国 森 の資 源の活 かし方 -和歌 山県特 用
林産物 生産の 手引 -」 和歌山 県林業 振興 課・
林業試験場
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下上中下
1年目
(苗木)
2年目
3年目~
定植
摘心
整枝
施肥
収穫
図4 ヒサカキ(ビシャコ)の栽培暦
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