動物血液の凝固過程における流動挙動解析

動物血液の凝固過程における流動挙動解析
○篠﨑俊介1)、山口はるな1)、有富充利1)、渡邉宣夫2)、大内克洋3)
1)
株式会社DNPファインケミカル、2)芝浦工業大学、3)東京医科歯科大学
連絡先:[email protected]
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00
1.緒言
過去に血液の流動特性と体の機能・疾患の相関関係を明らかにする試みがなされて
来ているが、印刷インキに対して我々が提案した流動特性式を用いた流動挙動解析手
法を適用することで、異なった視点から血液の流動特性と機能との相関解析を試みた。
前報にて豚血液の凝固過程解析に関しては流動特性式が有用と示唆される結果を報
告した。
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2.目的
本検討は、血液の凝固能検査手法として一般的である活性化全血凝固時間(ACT)
との相関解析を行うことで、凝固機構をレオロジーから解明し、さらに新規な凝固能
評価手法としての本手法の可能性を見出すことである。
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3-1.インキとは
■新聞、雑誌、包装等の印刷や、インクジェット等に用いられる液状の着色材料。
■顔料(粒子)をバインダー(溶剤、樹脂)に分散させた不均一な液体。 10 -3Pa・s ~ 10 2Pa・s
成人健康者の
抹消血赤血球形態
各成分の分散状態のイメージ図
粒径20~80nm
顔料が凝集構造を
形成する状態
顔料が安定に分散する状態
顔料
樹脂
分散剤
溶剤
自己免疫性溶血性貧血の
抹消血赤血液形態
赤血球の凝集
版詰り、インクジェットのノズル詰り、沈降、増粘等
三輪他:血液細胞アトラス 第4版,p98等,1990.
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3-2.レオロジーと高次構造
インキ
原料
相関
相関
インキ特性値
高
次
構
造
レオロジー
一
次
構
造
印刷
印
刷
適
性
現象の定量化
顔料の凝集
インキ
(粒子連結性)
流動挙動を決める
樹脂、溶剤
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3-2.レオロジーと高次構造
インキ
原料
相関
相関
インキ特性値
高
次
構
造
レオロジー
一
次
構
造
印刷
印
刷
適
性
現象の定量化
特性
インキ特性値
スプレッド流度
粘着性 タック
飛散性 ミスチング
(粒子連結性)
インキ
距離
流動性 静置流動
顔料の凝集
つぼダレ
距離
ガラス板流度
印刷適性
高速回転
飛散量
増粘、つぼ上り
ドットゲイン
転移
増粘、紙剥け
転移
汚れ
流動挙動を決める
樹脂、溶剤
用途 : 新聞、チラシ、パッケージ
市販インキ “70点” の検討
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3-3.レオロジーとインキ特性値との相関性
インキ特性値
静置流動
低 速領域
ガラス板流度
スプレッド流度
タック
高 速領域
ミスチング
降伏項 S
△
△
×
×
×
粘性項 V
△
△
○
○
×
弾性項 E
○
○
○
△
○
m
n
p
0.40
0.20
0
0
0
0.15
0.12
0.37
1
0
0.45
0.68
0.63
0
1
○:高い、 △:中程度、×:低い
構造が
崩れる
凝集体
を単位
流れ出すのに必要な力
流れやすさ(流動性)
FLG
ガラス板流度
2.5
降伏項
インキ特性値 F
2
1.5
R
凝集体の
破壊を伴う
相関係数極大化
∝
粒子
連結性
流れにくさ(戻ろうとする力)
粘性項
弾性項
S m ・ V n ・ Ep
(m + n +p = 1
『 流動特性式 』
各項の寄与率を示す)
1
0.5
S
1
1.5
2
0.20
0.12
0.68
×V
×E
2.5
複雑な流動挙動を系統的に評価可能となった。
特許登録 ; 特許 5422248 (平25.11.29) 6
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4-1.豚血液および牛血液の凝固能と粘性
クエン酸Na/塩化Ca制御系
実験
■血液データ :
実験①クエン酸Na水溶液添加豚血液
実験②クエン酸Na水溶液添加牛血液
ヘマトクリット値 45%
ヘマトクリット値 43%
■凝固能調整 : 実験①塩化Ca水溶液添加
実験②塩化Ca水溶液添加
■ACT(活性化全血凝固時間)測定装置: HEMOCHRON401 (ITC社)
■レオメータ : AR-G2 (TA Instruments 社)
・測定時間 : 実験①採取後、24~36時間
実験②採取後、48~60時間
・測定温度 : 37℃
R = 0.9376
400
0
0.007
0.011
0.25M CaCl2aq
in 1ml blood /ml
0.015
ACT 607sec
1500
1000
0.01
10
100
1000
せん断速度 / s-1
R = 0.8437
500
0
0.007
0.001
0.1
2
η / Pa・s
800
0.1
2
η / Pa・s
ACT/sec
1200
実験② クエン酸Na水溶液添加牛血液
ACT/sec
実験① クエン酸Na水溶液添加豚血液
0.011
0.25M CaCl2aq
in 1ml blood /ml
0.015
ACT 384sec
0.01
0.001
10
100
1000
せん断速度 / s-1
6mPa・s at 100s-1
6mPa・s at 100s-1
クエン酸Na水溶液添加豚・牛血液 : 東京芝浦臓器㈱より購入
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4-2.豚鮮血の凝固能と粘性
ヘパリンNa制御系
実験③
■血液データ : 実験動物からの豚鮮血
ヘマトクリット値 30~46%
■凝固能調整 : ヘパリンNa注射液添加
■ACT(活性化全血凝固時間)測定装置: HEMOCHRON401 (ITC社)
■レオメータ : AR-G2 (TA Instruments 社)
・測定時間 : 採取後、3~12時間
・測定温度 : 37℃
実験③ ヘパリンNa注射液添加豚鮮血
η / Pa・s
0.1
ACT 660sec
0.01
0.001
10
100
1000
せん断速度 / s-1
4mPa・s at 100s-1
豚鮮血 : 東京医科歯科大学より提供
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4-3.豚血液および牛血液の凝固能とレオロジー挙動
クエン酸Na/塩化Ca制御系
0.06
0.12
S=σ 0 /Pa
400
0
0.06
0.12
400
V=G”/Pa
降伏項 粘性項 弾性項
F (ACT) ∝ Sm ・ Vn ・ Ep
1200
800
0.18
1600
0
0.06
1600
2
R = 0.0015
800
400
0.12
0.18
E=G'/Pa
0
0.00
1200
800
400
0
0.12 0.18 0.24 0.3
V=G”/Pa
0.10 0.20
S=σ 0/Pa
1600
R2 = 0.3587
ACT/sec
800
R2 = 0.8594
ACT/sec
400
1200
2
R = 0.7760
ACT/sec
800
0
0.00
1200
2
R = 0.3205
ACT/sec
ACT/sec
1200
実験② クエン酸Na水溶液添加牛血液
ACT/sec
実験① クエン酸Na水溶液添加豚血液
R2 = 0.8037
1200
800
400
0
0.020
0.026 0.032
E=G'/Pa
= σ0m ・ G”n ・ G’p
血液種
凝固制御
m
n
p
豚
牛
クエン酸Na/塩化Ca
クエン酸Na/塩化Ca
0
0
0
0.04
1.00
0.96
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4-4.豚鮮血の凝固能とレオロジー挙動
ヘパリンNa制御系
実験③ ヘパリンNa注射液添加豚鮮血
降伏項 粘性項 弾性項
F (ACT) ∝ Sm ・ Vn ・ Ep
= σ0m ・ G”n ・ G’p
血液種
凝固制御
m
n
p
豚(鮮血)
ヘパリンNa
0
0.74
0.26
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10
10
5. 実験結果からのモデル図
血液種
凝固制御
m
n
p
豚、牛
豚(鮮血)
クエン酸Na/塩化Ca
ヘパリンNa
0
0
0
0.7
1.0
0.3
弾性項E (p)
R
粒子
連結性
流れにくさ(戻ろうとする力)
粘性項V (n)
凝集体
を単位
凝集体の
破壊を伴う
流れやすさ(流動性)
血球成分例
:赤血球等
:血小板
血漿成分例
:タンパク質
:Ca2+
:ヘパリンNa
Ca2+イオン架橋反応による
血液成分の凝固。
ヘパリンNaが系内タンパク質と複合体を形成、
成分間の相互作用変化を伴う複雑な流動挙動
を示していると推察。
11
11
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6. まとめ、考察
■豚、牛血液について、クエン酸Na/塩化Ca制御系でACT測定とレオロジー測定を
実施。凝固能をインキの流動挙動解析手法により解析、貯蔵弾性率G’が支配的
であることが判明。
<考察>
Caイオン添加は、イオン架橋反応による血液成分の凝固と推察され、固体成分の
増加に伴う弾性率支配の現象が主として生じているものと思われる。
⇒インキにおける『高速領域』(回転)のミスチング(インキの飛び散り:弾性項支配)
に極めて類似した流動挙動を示していると考えられる。
■豚鮮血について、ヘパリンNa制御系でACT測定とレオロジー測定を実施。
流動挙動解析から、損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’が支配的であることが判明。
<考察>
多糖類であるヘパリンNaは系内タンパク質と複合体を形成することが知られている
ことから、ヘパリンNa添加は系全体のチクソ性の変化を生じると推察される。
⇒インキの『低速領域』、即ちインキに一定の弱い力/時間をかけた時の流動挙動
に類似し、成分間の相互作用変化を伴う複雑な流動挙動を示していると思われる。
(粘性項、弾性項が寄与)
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