現地法人の撤退に関連する日本の税務 - 中国税務 会計 国際税務と事業

現地法人の撤退に関連する日本の税務
海外進出の一因であった円高から一転し円安傾向にある為替相場。コスト高も
あり撤退の相談が増えていますが現地だけでなく日本の課税関係も理解してお
く必要があります。現地法人の撤退に関連して税務調査では①寄附金認定の問
題②子会社整理に伴う損失と損金算入時期の問題について経緯や事実関係が問
われます。また残余財産の分配においては利益区分(みなし配当か整理損益、
為替差損益)が問われます。
債務超過の場合は法的整理となるため裁判所等の関与を避けるため日系企業の
多くは子会社に対する売掛金や貸付金の債権放棄を検討します。この債権放棄
にあたって法人税法上は原則として寄附金と認識しますが、以下のすべての項
目に該当する場合は寄附金に該当せず損金算入することができます。
債権放棄の損金性チェック項目
□事業関連性のある子会社等(資本関係、取引関係、人的関係、資金関係)である。
□子会社等は経営危機(実質的債務超過で整理損失が生じ、支援がなければ整
理できない見込み)に陥っている。
□損失負担等を行う理由(将来のより大きな損失の回避)がある。
□損失負担額は合理的な必要最低限の金額であり自己努力がされている。
□整理計画の管理がされている。
□支援者の範囲は相当であり、支援者以外の事業関連性を有する者が損失を負
担しない合理的な理由がある。
□事業関連性からみて負担割合が合理的に決定されている。
子会社株式の評価損
事業継続中においては子会社株式の評価損の計上を検討します。内国法人の有
する子会社株式につき、子会社の資産状態が著しく悪化したため、その価額が
著しく低下した場合には、損金経理により評価損を計上することができます。
子会社の資産状態が著しく悪化したかの判定は、取得時の一口あたりの純資産
価額と当該事業年度終了の日における当該発行法人の一口あたりの純資産価額
で比較となります。円換算後の金額ではありませんのでご留意ください。
(参考)
内国法人と完全支配関係がある次の内国法人の株式については評価損の損金算入はできません。①清算中
の法人②解散が見込まれる法人③完全支配関係のある他の内国法人と適格合併を行う見込みがあるもの
西
山
会
計
事
務
所
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残余財産の分配
残余財産の分配(交付金銭等)を受けて資本等の金額を超える部分は、みなし
配当金として扱います。この場合のみなし配当金も要件を満たせば外国子会社
等からの受取配当金の益金不算入制度を適用することになります。
また、資本等の金額は原則として日本の制度に準じて計算されますので、企業
会計制度を採用している現地法人が材料等の受贈益を資本剰余金としている場
合は注意が必要です。
(前提) 取得時レート1元=12.5 円、残余財産の分配時レート 1 元=20 円
【元ベースで交付金銭等の額≦資本等の金額の場合】
(中国税務)
(日本税務)
元ベースでは損失のため課税なし
交
付
金
銭
等
8
元
<
資
本
等
1
0
元
出
資
金
1
2
5
円
<
交
付
金
銭
等
1
6
0
円
利益35円の内訳
為替差益 60円(8元×7.5)
整理損 △25円(2元×12.5)
【元ベースで交付金銭等の額>資本等の金額の場合】
元ベースで利益
利益175円の内訳
のため課税あり
交
付
金
銭
等
1
5
元
>
資
本
等
1
0
元
出
資
金
1
2
5
円
<
交
付
金
銭
等
3
0
0
円
みなし配当100円(5 元×20)
為替差益
75円(10 元×7.5)
(参考)毎年 5 月末頃の為替レート表
年度
1
10,000
年度
1
10,000
元
円
元
円
2015
2014
2013
2012
2011
20.03606 16.41955 16.39425 12.45439 12.46665 /円
499.1
609.03
609.97
802.93
802.14 /元
2010
2009
2008
2007
2006
13.38097 13.92331 15.21699 15.89547 14.03135 /円
747.33
718.22
657.16
629.11
712.69 /元
西
山
会
計
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