6-2 排煙設備

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6-2
排煙設備
関係条文インデックス
建築設備規定
2 排煙設備 ◆令126条の 2 ・ 3
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昭和46年の法改正で義務付けを行った「排煙設備の設置」は、火災が発生した際に人々が煙によって避難が困難になることを排除するこ
とが目的である。法のなかでも、人命を確保するための最も重要な項目となっている。円滑な避難活動を促すために不可欠な基準といえ
る。
⑴ 排煙関係インデックス
対象部位
居室
・
室
設置要・不要
【原則】
設置対象
設置が必要になる建
築物の延床面積
対象建築物もしくは対象条件
①
500㎡超
特殊建築物(法別表第 1
②
500㎡超
階数≧ 3 の建築物
* 3 層以上の建物が該当。
「地下 1 階+地上 2 階」
、「地下 3 階」などの建築物も対象
1, 000㎡超
200㎡以上の居室部分
すべて
排煙上の無窓居室
*設置免除あり ③
④
根拠法令
欄⑴∼⑷項)
令126条の 2 第 1 項
* 具体的な基準は令126条の 3 第 1 項で規定している
①
付室等
特別避難階段の付室
設置対象
*免除対象なし ②
③
非常用エレベーターの乗降ロビー
特別避難階段付室兼用非常用エレベーターの乗降ロビー
令123条 3 項 1 号
昭44建告1728号
平12建告1437号
令129条の13の 3 第 3 項第 2 号
昭45建告1833号
平12建告1437号
* 具体的な基準は、P198∼199参照
地下街
設置対象
基準詳細については右記条文参照
*免除対象なし
Point
令128条の 3 第 1 項 6 号
昭44建告1730号
・排煙設備の設置義務付け対象は、「建物の用途・居室・規模」等について、「特別避難階段の付室」について、「地下街」についての、大きく 3
つに分類される
・排煙設備が必要か否かの検討は「建物」と「居室」ごとに必要。規模や用途で「建物」に排煙設備が必要となる場合はその建物内の非居室や廊
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下等すべての部分に排煙設備が必要となる
・告示による緩和措置もあり、条件によっては排煙設備の設置が不要になるケースが多い
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⑵ 設置免除適用の条件
原則として排煙設備の設置義務がある場合でも、条件を満たすことで、設置義務が免除されることもある。
排煙設備の設置が免除できるか否かの判断は、計画中の建築物の
A 対象条件等 → B 検討部分の存する階数 → C 室の種別 → D 区画面積 → E 区画方法等 の順番でチェックしていくとわかりやすい。
A 対象建築物もしくは対象条件
排煙設備設置免除のための適用基準
病院・診療所(有床)
・ホテル・旅館・寄宿舎・児童福祉施設等
準耐火構造の床・壁、(法 2 条 9 号の 2 ロで規定する)防火設備で床面積100㎡
以内の防火区画
共同住宅の住戸
準耐火構造の床・壁、(法 2 条 9 号の 2 ロで規定する)防火設備で床面積200㎡
以内の防火区画
根拠法令
令126条の 2 第 1 項 1 号
学校・体育館・ボウリング場・スキー場・水泳場・スポーツの
すべて
練習場
令126条の 2 第 1 項 2 号
階段・昇降機の昇降路
すべて
令126条の 2 第 1 項 3 号
主要構造が不燃材料の機械製作工場・不燃物品保管倉庫・その
すべて
他同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの
令126条の 2 第 1 項 4 号
住宅・長屋の住戸
階数が 2 以下かつ床面積が200㎡以内で、換気有効面積≧居室床面積× 1 /20
平12建告1436号第 4 イ
自動車車庫、危険物の貯蔵場・処理場、通信機械室、繊維工場
不燃性ガス消火設備・粉末消火設備を設置
平12建告1436号第 4 ロ
B
高さ
C
D
室の種別 区画面積
居室
居室
*1
居室
31m
以下
100㎡
以内
*1
E
区画方法
内装制限
開口部制限
防煙区画
−
−
防火区画
準不燃
防火設備
−
不燃
(仕上げ、
下地とも)
−
備 考
・計画上、防煙区画や防火区画のできない地上の「居室」 令126条の 2 第 1 項かっこ書
で、下地・仕上げともに不燃材料で床面積100㎡以内ごと
平12建告1436号第 4 ハ⑶
に間仕切れば、排煙設備の設置を免除できる
・木造等で下地の不燃化が厳しい場合は、「防煙区画」もし
くは「防火区画+内装制限」を講じれば、排煙設備の設置 平12建告1436号第 4 ハ⑷
を免除できる
室* 2
100㎡
以内
防煙区画
−
−
−
平12建告1436号第 4 ハ⑵
室* 2
−
−
準不燃
防火設備
−
平12建告1436号第 4 ハ⑴
室
100㎡
以内
耐火構造の
床・壁
準不燃
防火設備
31m
以上
・高層階は低層階と比較して免除の適用条件が厳しい
・居室は免除対象外なので排煙必要
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排煙設備
平12建告1436号第 4 ニ
建築設備規定
* 1 法別表 1 欄の特殊建築物の主たる用途に供する部分で地下にあるものは除く(免除なし、排煙設備必要)
* 2 「室」とは、便所・局部的倉庫・更衣室・機械室・電気室等の非居室部分を示す
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根拠法令
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設置免除適用の条件
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排煙設備
設置免除の具体例
⑶ 設置免除の具体例
建築設備規定
【図表 1 】特殊建築物で500㎡を超えるケース(設置必要例)
2 階 事務所 200㎡
事務所
250㎡
物品販売店舗
300㎡
【図表 2 】階数≧ 3 で500㎡を超えるケース(設置必要例)
2階
事務所
50㎡
地階 事務所 200㎡
1階
階数≧ 3 で延べ面積>500㎡の建築物の階数とは、地階があれば地階も入
る。例えば、上図にて、階数= 3 、かつ、延べ面積=600㎡>500㎡
このケースは原則として居室・非居室・廊下等のすべてに排煙設備の設置が必要である
【図表 3 】延べ面積>1, 000㎡のケース(設置免除例)
事務所
150㎡
倉 庫
550㎡
延べ面積>1, 000㎡の建築物で床面積>200㎡の大居室がある場合(令126条
の 2 )は居室単位ごとにチェックする
上図にて、延べ面積=100+300+150+550+200=1, 300㎡>1, 000㎡
各事務所(居室)≦200㎡
∴排煙設備不要(ただし、排煙上無窓の検討は必要)
【図表 5 】防煙区画によるケース(設置免除例)
100㎡
居室
100㎡
居室
100㎡
100㎡
100㎡
ない既存不適格建築物であって、一の建築物であっても別
の建築物とみなすことができる独立部分(開口部のない準
耐火構造の床・壁又は常時閉鎖式等の防火設備で区画をし
1 階 事務所 400㎡
階数= 3 であるが防火区画のため各階(ごと)の
延べ面積=400㎡<500㎡
∴排煙設備不要
た部分)が 2 以上あるものについて増築等をする場合に、
増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、規定の
適 用 が さ れ な い こ と に な っ た(法86条 の 7 第 2 項、 令
137条の14)
【図表 6 】防火区画によるケース(設置免除例)
準耐火構造の壁
防火設備
ただし、100㎡以内ごとに防煙垂れ壁で区画され
ていても、排煙上有効な開口部が居室床面積の
1 /50未満であれば無窓の居室となり、排煙設備
が必要になる
100㎡
㎡であっても、別棟扱いの適用ができる(令126条の 2 第
2 項、昭48建告2563号・2564号)
なお、平成17年の法改正では、排煙設備規定が適用され
2 階 事務所 400㎡
排煙上有効な開口部(300× 1 /50以上)
防煙垂れ壁
100㎡
左図のように防火区画(耐火構造の床・壁又は常時閉鎖式
等の防火設備で区画)すれば、階数≧ 3 で延べ面積>500
3 階 事務所 300㎡
事務所
200㎡
倉 庫
300㎡
∴排煙設備必要(令126条の 2 第 1 項)
【図表 4 】区画による別当扱いが可能なケース(設置免除例)
(平面図)
事務所
100㎡
1 階 事務所 200㎡
▼G.L
特殊建築物・ 2 階建
延べ面積600㎡>500㎡
排煙上有効な開口部(400× 1 /50以上)
客室
100㎡
客室
100㎡
客室
100㎡
客室
100㎡
病院の病室、ホテル・旅館の客室等、比較的小規
模な室は、排煙上、無窓の居室でも100㎡区画に
することで排煙設備の設置が免除される。廊下に
関しても100㎡以内で区画できれば、排煙設備不
要となるが、100㎡を超えた場合に廊下の途中に
防火戸を設けて100㎡区画にすることは、避難上
支障があるので不適当である
客室
100㎡
客室
100㎡
客室
100㎡
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