研究室で役に立つ! センサ応用回路集

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センサ応用回路集
第4回 非接触電流センサ
「カレント・トランス」
松井 邦彦 Kunihiko Matsui
強磁性体
コア
1次電流 I 1(被測定電流)
①測定対象の配線を
ここに通す
2次電流 I 2
図 1 非 接 触 で AC 電
RL
流を測定できるカレ
ント・トランス
Vout
強磁性体コア
(貫通孔)
に
測定対象の配線を通すだ
けで電流が測定できる
2次側の巻き線の
巻き数N 2
Vout =
I1
N2
RL
写 真 1 ク ラ ン プ 式
AC 電流センサ CTL−6
−S32−8F−CL(ユー・
アール・ディー)
測定対象の配線を切断し
なくても取り付けできる
本連載では,さまざまなセンサを使った計測回路
の作り方を解説しています.第 4 回目に紹介するの
は,非接触電流センサ「カレント・トランス」です.
〈編集部〉
● 非接触電流センサの用途
次に示す製品や装置に応用されています.
●
インバータ
●
モータ
●
電源監視システム
(スマート・システム)
B −H アナライザ
電力計
● ロボット
● ソーラ発電システム
● 漏れ電流遮断機
● 電流ロガー
●
●
● 非接触で AC 電流を測定できる「カレント・トラ
ンス」
電流を測定するなら,抵抗(基準抵抗)を使ったシャ
ント抵抗型電流センサが一番簡単ですが,この方法は
測定したい電流の流れる経路をシャント抵抗型電流セ
ンサを使った測定回路内に引き込む必要があるので非
接触では測定できません.
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②閉じて固定する
カレント・トランスは,図 1 に示すように,強磁性
体コア(貫通孔と呼ぶ)に測定対象の配線を通すだけで
電流を測定できます.カレント・トランスは「AC 電
流センサ」という名前で市販されています.
▶代表的な二つの「AC 電流センサ」
① クランプ式AC 電流センサ…配線を切断しなくても
取り付けられる
写真 1 に示すのは,クランプ式 AC 電流センサ CTL
−6−S32−8F−CL
(ユー・アール・ディー)です.測定
対象の配線を通す貫通孔が開閉式になっているため,
既設の配線を切断しなくても取り付けできます.
従来は,たとえば 150 × 150 × 50 mm と大形で,値
段は数千円と高価でしたが,最近は 15 × 15 × 10 mm
と小形で,数百円と安価のものが入手できます.
② 空芯型AC電流センサ…数万Aの大電流を測定できる
被測定電流が 1000 A を超えるとコアの容積が大き
くなり,AC 電流センサは重く大きくなります.した
がって,大電流の測定には,コアをもたない空芯型を
使います.
空芯型は,被測定電流が数万 A までなら入手が簡
単です.2 次側の巻き線の巻き方を工夫し,S /N を改
善したコイル(ロゴスキ・コイルと呼ぶ)を使ったもの
も市販されています.
空芯型 AC 電流センサの出力は,被測定電流の微分
値です.周波数が高くなるほど出力が大きくなるので,
積分回路を入れて周波数特性を改善します.
2015 年 7 月号