監督 ・ 原 案 ・脚 本 奥 本 はじ め

ちぎれん雲
監督・原案・脚本 奥本はじめ
決定稿
本作品を無断で使用することは固く禁じます。
また、実際上映される作品の内容と異なる場合もあります。
Copyright © 2015 奥本はじめ/プロデュースチームゆいのわ. All rights reserved
作品名「ちぎれん雲」
製作
プロデュースチームゆいのわ (戸田光啓・奥本はじめ・浦山陽子・新井祥子)
製作総指揮 戸田光啓
新井祥子
企画・製作 浦山陽子
製作進行
脚本協力
共同脚本
共同原案
奥本はじめ
戸田光啓
浦山陽子
石井絢子
原案・脚本 奥本はじめ
監督
【登場人物】
知一郎(48)
主人公
ゆきな(31)
奈良町にある雑貨屋の店長
ぷに子(18)
知一郎の娘。発達障害を持っている
多恵子(70)
知一郎の母。雑貨屋のオーナー
晴美(45)
知一郎の前妻の姉
多恵子の友人
満知子(67)
達也(48)
知一郎の友人
泰子(38)
達也の妻
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暗闇
ガタンゴトン。電車の音。
電車・車内(昼)
トンネルの中を走る電車。
車窓の外は暗く、車内の様子が反射して映っている。
知一郎「(声)また仕事、辞めてもた」
シートに座っている知一郎と娘のぷに子。
知一郎はボーっと対面の車窓を眺め、その横でぷに子は口を半開きにして居
眠りをしている。
知一郎にもたれかかってくるぷに子。
ぷに子を見る知一郎。
(回想)大阪・梅田のとあるカフェ(昼)
喪服姿で向かい合って座る知一郎(48)と前妻の姉、晴美(45)。
愕然として晴美を見つめる知一郎。
黙りこんでいる知一郎に声をかける晴美。
晴 美「……知一郎さん」
知一郎「……え?」
晴 美「ごめんね……だまってて。晴菜の望んだことだったし、万一にもお見舞いとか、
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来てほしくなかったんだって……あ、でもそれはね、弱り切った姿、見られたく
なかったんだと思うの」
知一郎「そう……ですか」
晴 美「あっと言う間だったの……入院して……あっと言う間……」
何も言えない知一郎。
晴 美「さすがに四十九日の法要ぐらいは……伝えておいてた方がいいと思ったのよ……
元旦那さんには」
知一郎「ありがとう……ございます」
申し訳なさそうに首を振り、コーヒーを飲もうとする晴美。
知一郎「あの……ところで」
コーヒーを口へ運ぶ手が止まる晴美
晴 美「ぷに子ちゃんのこと?」
知一郎「……まぁ……はい」
晴 美「母も最近あまり体の調子が良い方じゃないし……私もやっぱり家族があるし……
さすがに」
知一郎「あ、もちろんそんなことわかってます。僕が引き取ります」
晴 美「そう……」
ホッとしたように何度かうなずくと、コーヒーを口に運ぶ晴美。
(回想)堂島川・川沿い(夕方)
足取り重く歩いている知一郎とその少し後ろを猫背でついて歩く娘のぷに子
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(18)
学校でもちょっとイジメにあってたみた
晴 美「(声)ぷに子ちゃん、あんなでしょ?
いでね。晴菜もため息ばっかりついてた。どう見ても見かけは普通だし、良い子
なんだけどね……かわいそうに」
立ち止まりため息交じりに振り返り、ぷに子を見つめる知一郎。
ぷに子も立ち止まり上目づかいに知一郎を見る。
電車・車内(昼)
ぷに子から車窓へ視線を移す知一郎。
その瞬間電車はトンネルを抜け車窓に生駒から眺めた街の景色が広がる。
平城京跡の風景(昼)
平城京跡の中を走り抜けていく電車。
カメラ空へチルトアップ。
メインタイトル「ちぎれん雲」
知一郎の実家・知一郎の部屋(昼)
いくつかの引越の段ボールが置かれている。
部屋を見渡している知一郎とぷに子(猫背)。
知一郎「なんや、俺の荷物だけしか届いてないやん」
ふすまを開け母の多恵子を大声で呼ぶ知一郎。
お母ちゃん!」
知一郎「お母ちゃん!
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段ボールの一つに腰を降ろすぷに子。
知一郎、ぷに子の頭を軽く叩き
知一郎「座るな!」
ぷに子、仕方なくその場に立ち尽くす(猫背)。
知一郎の母、多恵子(70)が部屋にやってくる
多恵子「なんか用かいな」
俺のしか届いてないやん。ぷに子のはまだかいな」
知一郎「荷物は?
多恵子「知るかいなそんなもん。運送会社違うのに」
段ボールを見て
多恵子「あんたはこんだけかいな」
知一郎「事前に持って来てたからな、これで全部や」
段ボールを足で軽く蹴る多恵子。
知一郎「なにすんねん」
知一郎を無視してぷに子に近づく多恵子
多恵子「ぷにちゃん、おやつ買ってるから、食べといで」
ほとんど表情を変えず喜ぶぷに子。
ぷに子「いえーい」
部屋を出て行くぷに子。
多恵子、知一郎の肩をパチンと叩く
知一郎「いたっ」
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いったいどないすんのんな!」
多恵子「知一郎!
知一郎「なにがや」
離婚したとおもたら、今度は娘連れて帰って
多恵子「これからにきまってるやないか!
来るし」
知一郎「しゃぁないやないか、死んでから聞かされたんや……俺が育てるしかないやろ」
多恵子「それはわかるけど、仕事まで辞めんでよかったやろ」
知一郎「何回も言うたやんけ。俺の勤め先は残業が多いんやて。休日出勤もあるし、(小
声になって)そりゃぷに子がもうちょっと普通やったら……」
食べていかなあかんねんで」
多恵子「それでも仕事は必要や!
知一郎「だーかーら!フリーランスでやっていくて言うてるやん。俺はプログラム作れる
んやから。なんとかするって」
多恵子「(ため息)アホや……やっぱりお父ちゃんの子や……」
ぷに子が部屋に入ってくる
ぷに子「なんか来た」
多恵子「やっと来たんかいな?」
首を傾げるぷに子。
知一郎の実家・玄関(昼)
知一郎と比べ何倍もの量の段ボールが積み上げられている。
段ボールの宛名を確認する知一郎。
家の奥に向かって怒鳴る知一郎。
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これお前の荷物やんけ!
いったい何持ってきたんや!」
知一郎「おい、ぷに子!
その横を取りすぎる多恵子。
フリーランス」
多恵子「そしたら、お母ちゃんは忙しいから。ちゃんと片付けるんやで!
知一郎「名前みたいに言うな!」
家を出て行く
これ運ぶん手伝え!
のんびりおやつ食うてる場合とちゃうわ!」
知一郎「ぷに子!
奈良町・とある店(昼)
店にやってくる知一郎。
知一郎「すいませーん」
店の中から店主の達也が出て来る。
どないしたんや!」
達 也「はーい。(知一郎を見て)おいおい知一郎!
知一郎「今日から、こっちで暮らすことにしたんや」
達 也「実家に戻ってきたんか?」
知一郎「うん」
達 也「お前、離婚して独身貴族満喫中って聞いてたけど、どないや」
知一郎「どないやって言われてもな」
子「いらっしゃいませ」
そこへ達也の嫁、奏子が帰ってくる。
独身は……いやぁ、独身かぁ、うらやましいな」
達 也「やっぱ自由でええやろ?
奏
慌てる達也(慌てて奏子に駈け寄る達也)
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子「かなこです。はじめまして」
達 也「へへへ!知一郎、紹介しとくわ。俺の嫁さん。ハガキで写真送っただけやもんな」
奏
達 也「こいつ、知一郎っていうねん。高校時代のつれ!うん……(しらじらしく奏子の
方に手を回す)お前も早く再婚せぇよ!」
奏子、回した手を外させて横目で恥ずかしそうに睨む。
苦笑する知一郎。
奈良町・とあるカフェ(昼)
知一郎と達也がテーブル席に着いている。
達 也「まじかそれ……で、結局娘と二人で奈良へ戻ってきたんか」
知一郎「うん」
達 也「大変やな……」
知一郎「まぁ、なんとかなるかなとは思てんねんけど……おかんもおるし」
達 也「でも、プログラマってええよな……そうやってフリーでも稼げるんや……。俺な
んかインターネット見るくらいやもんな」
知一郎「いや……フリーランスも結構しんどいんやで……自分で営業して、トラブル対応
もしなあかんし……当然仕事なかったら給料ゼロやしな……」
達 也「そやな……楽な仕事てないわな……」
少し場がしんみりとする
達 也「とにかく、また近いうちに飲もうや」
知一郎「うん」
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知一郎の実家・台所(夕方)
帰って来る知一郎。
台所を通り過ぎようとして、愕然とした表情で見直す。
台所の床一面に広げられた食器類と、その横でまだ広げようとしているぷに
子。
知一郎「ぷに子……お前、なにやってんねん」
黙り込むぷに子
知一郎「どないすんねんなこれ!」
黙り込むぷに子
知一郎「黙ってたらわからへんやん……こんなに広げたら片付けられへんやん」
黙り込むぷに子。
知一郎「なんでこんなアホみたいに食器持ってきてん」
ぷに子「家にあったから」
知一郎「あったら全部持ってくるんか!」
何も言い返せないぷに子
足れ
知一郎「食器なんか、自分が必要なもんを何個か持ってきたらええんちゃうんか!
へんかったら買ってもしれてるやろ?違うか?」
何も言わないぷに子
なぁ……考えろや!……ちょっとは」
知一郎「お前……アホちやうか?
そこへ多恵子が帰ってくる
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多恵子「なんやこれ……どないしたんや」
知一郎「(力なく)ごめん……ちょっと手伝うて……」
呆然と眺める多恵子。
知一郎の実家・居間(夜)
晩御飯を食べている知一郎とぷに子、そして多恵子。
食卓の上にはトンカツ、千切りキャベツ、味噌汁が並んでいる。
三人の食器の内、知一郎と多恵子は同じ柄の食器を使っているが、ぷに子だ
け違う食器である。
感心したようにトンカツを見つめる多恵子と、すでに黙々と食べ始めている
知一郎。
しかしぷに子は一つだけ柄の違う食器が気に入らない様子。(知一郎と多恵
子はそれに気づいていない)
多恵子「これ、ぷにちゃん作ったん?」
ぷに子「うん」
知一郎「こいつ引っ越しの片づけ一つもでけへんから晩飯くらい作れて怒ったんや……ほ
んならまぁ、これが出てきたっていうか」
さすが女の子やなぁ。これお
多恵子「いやぁ、たいしたもんやんか。いや、立派立派!
母ちゃんに習たんか?」
嬉しそうなぷに子。
食べ始める多恵子。
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多恵子「うん、おいしい!」
トンカツにかぶりつく知一郎とぷに子が同じように見えて微笑んでしまう多
恵子。
知一郎の実家・浴室の前(夜)
浴室の中からぷに子の鼻歌が聞こえている。(朝はどこから)
イントロから歌っているぷに子。
多恵子がやってくる。(ぷに子の声に立ち止まる)
あの空越えて雲越えて~」
ぷに子「(歌)朝はどこから来るかしら~。
もう夜やで」
多恵子「(小声で)うるさい子やな……(声を上げて)ぷにちゃん!
ぷに子の歌が止まり、立ち去ろうとする多恵子。
ぷに子「夜はどこからくるかしら~。あの星越えて月越えて~」
呆れたように戻ってくると声を上げる多恵子・
多恵子「こらぷにちゃん!」
知一郎の実家・居間(夜)
くつろいでいる知一郎。
多恵子、ぷに子が歌っていた鼻歌を口ずさみながらやってくる。
知一郎の姿を見てため息をつく多恵子。
多恵子「ちょっと」
知一郎「なんや……」
多恵子「ぷにちゃんどないすんの」
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知一郎「どないするて……」
多恵子「高校途中で辞めて今まで何してたんや」
知一郎「俺に言うなや……あいつが中学上がる前やで、離婚したん」
多恵子「親として知らんぷりやったんか」
知一郎「何の連絡もくれへんかったし……しゃぁないやないか」
多恵子「こっそり見に行くとかできたやろに」
知一郎「ストーカーやんけ」
多恵子「はぁ……かわいそうに」
知一郎のそばに座りお尻をパチンと叩く
知一郎「いた!」
仕方なさそうに座りなおす知一郎。
知一郎「俺かて何もかもが突然すぎて混乱しとんねん。あんたとはやっていかれへん!
言うて離婚されて、知らん間に死なれて、ぷに子だけ残されて……パニックやで」
呆れたように知一郎を見る多恵子。
多恵子「パニック?……(鼻で笑って)パニック?」
知一郎「なんやねんな」
多恵子「あんた見てる方がパニックになるわ……あんた、ぷにちゃん引き取るために仕事
辞めたんとちゃうやろ?」
知一郎「なにがぁ……」
多恵子「なにがぁ(口真似)って言うてことは図星やな」
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知一郎「はぁ?」
多恵子「小さいころから変わらんわ……どうせ考えてたんやろ、会社辞めたいなぁって(
知一郎を睨む)どうせ一人やしなんとかなるやろ~って」
ふて腐れたようにうつむく知一郎
多恵子「ぷに子ちゃん引き取らなあかんようなって、ちょうどええ口実ができたて……そ
う思てると私は見てるんやけど」
知一郎「(図星なのをごまかすように)違います」
多恵子「(ため息)まぁええわ……そや、あんたらをここに置いたる代わりに、私の条件
を一つ飲み」
家には金入れる言うたやん」
知一郎「条件?
お前いくつやねん」
多恵子「そんなん当たり前や!
うつむく知一郎。
多恵子「明日、私についといで」
邪魔くさそうに頭をかく知一郎。
それを見ている多恵子。
奈良町・町中(午前)
街中を歩く知一郎と多恵子。
奈良町の店の開店準備をしている人や、行きかう人とあいさつを交わしなが
ら歩いている多恵子。
通りがかった多恵子の友人、満知子(67)が声をかけてくる
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満知子「おはようさん」
多恵子「おはようさん」
満知子「知一郎ちゃん!久しぶりやね」
知一郎「ご無沙汰してます……」
多恵子「出戻りやけど、またよろしく頼んますわな」
知一郎「出戻りて……」
(多恵子を見て)そしたらまたね」
満知子「まぁ人生いろいろ……がんばりや!
去って行く満知子。
知一郎「なぁお母ちゃん」
多恵子「なんや?」
もしかして」
知一郎「あの人……俺の事情とか知ってんの?
多恵子「あぁ、だいたいこの辺りの人知ってるんとちゃうか?」
知一郎「ええ?!」
先手必勝や。よう覚えとき」
多恵子「変に隠す方が、悪い噂てたつんやで?
さっさと歩いて行く多恵子。
唖然とする知一郎。
周りの視線が気になる。
雑貨屋・店先(午前)
店の前にやって来る多恵子と知一郎。
知一郎「あれ……ここって、おじいちゃんの店があったとこやん」
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多恵子「そうや」
知一郎「蚊帳売ってたんとちゃうの」
多恵子「継いでくれてはった人も亡くなってしもてな……一度はこの物件も手放そうかて
思ったんやけど、ちょうど借りたい言うてくれはる人がおってな」
知一郎「へぇ」
店に入っていく二人。
雑貨屋・店内(午前)
雑貨が並べられた店内。
多恵子「あれ、店長どこおるんやろ……」
店の奥へ入っていく多恵子。
店内の商品を見て回る知一郎。
店の中央に設置されているテーブルに気付き腰を降ろす知一郎。
カバンからノートパソコンを取り出し、プログラムを始める。
店内に戻ってくる多恵子。
多恵子「何やってんの」
知一郎「仕事や」
多恵子「そんなんせんでええから、あんた今日からここで働き」
店内に貼ってある求人チラシを手に取り知一郎にかざす多恵子。
チラシと多恵子の間を視線が移る知一郎。
知一郎「え?」
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多恵子「嫌とは言わせへんで!さんざん今まで勝手に生きて、挙句に一度は出た家に子連
れで転がり込んできたんやからな」
仕方なさそうにパソコンに目を向けて作業を再開する知一郎。
知一郎「わかったよ」
満足気な多恵子。
そこへ店長のゆきなが店に入って来る。
ゆきな「あ、すみません、いらっしゃ……なんやオーナやないですか」
多恵子「ゆきなちゃん、今日からこの人、ここで面倒みてんか」
ゆきな「え?」
多恵子「心配せんでええ。私の息子や。こきつこたって」
ゆきな「息子さん……て……あの離婚されたっていう?」
ゆきなをムッと見る知一郎
ゆきな「あ、すみません」
多恵子「そうや、バツイチ子持ちで実家に転がり込んできた知一郎や」
今度は母親を睨む知一郎。
多恵子「情けないことに今無職やからな、悪いけどしばらくここで面倒見たって」
知一郎「無職とちゃう。フリーランスのプログラマや」
プログラムを始める知一郎。
その姿に興味を持ったゆきな、知一郎の背後に回って画面を覗きこむ。(結
構顔を近づけて来る)
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自分の体を少し反らす知一郎。
目を輝かせ画面を見つめるゆきな
ゆきな「すごーい……頭いいんですね」
知一郎「いや、別に(悪い気はしない)」
知一郎の腕をつかむゆきな
知一郎「え?」
ゆきな「お願いしたいことがあるんです」
知一郎を引っ張るように立ち上がらせるゆきな。
知一郎「ちょっと……」
こっち」
ゆきな「こっちです!
店の外へ引っ張り出そうとするゆきな
ゆきな「多恵子さん、すみませんちょっと店見ててもらえますか」
多恵子「え……うん、まぁええけど」
店の外へ知一郎を引っ張り続けるゆきな
ムタサン・裏庭(午前)
店裏の空き地にゆきなに引っ張って来られる知一郎。
ゆきな「こっちです、こっち!」
知一郎「なに……なんなんですいったい!」
裏庭にある水道の蛇口から水がポタポタと流れ出ている。
その蛇口を見下ろす知一郎とゆきな。
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知一郎「これは……」
ゆきな「水漏れ」
ゆきな、満面の笑顔で知一郎を見つめる
知一郎「そのようですね」
知一郎「?」
ゆきな「なおして!」
知一郎「ムリです」
ゆきな「あんな難しそうなことできる人なんやから。できる。きっとできる」
胸の前で手を合わせて、感動したように
知一郎「いやいや、プログラムできるからってなんでもできるわけやないですよ」
ゆきな「ううん、大丈夫!」
多恵子「(声)ゆきなちゃーん。ちょっと店長!」
ゆきな「(店の方を見て)はーい!(知一郎を見て)よろしくお願いします」
嬉しそうに軽い足取りで店に戻っていくゆきな。
蛇口を見つめる知一郎。
水漏れの箇所を指で押さえてみたりする。
雑貨屋・店内(午前)
レジで客の精算をおこなっているゆきな。
商品を客に渡す。
ゆきな「おまたせしました。ありがとうございます」
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店の出口まで見送りをするゆきな。
ゆきな「お気をつけて!」
多恵子がコーヒーを入れて店の奥から出て来る。
多恵子「コーヒー入ったで」
ゆきな「わー、ありがとうございます」
テーブル席に着く二人。
ゆきな「(一口飲んで)多恵子さんの入れてくれるコーヒーってほんまおいしいわ」
多恵子「そーか?」
しばらくの間
多恵子「何やってんの?」
ゆきな「なにがですか?」
多恵子「今日から来た新入りは」
ゆきな「あぁ、裏の水道なおしてもらってます。水漏れしてたんで」
多恵子「ええ?!(大声)」
驚くゆきな
多恵子「プラモデル一つよう作らん子にそんなこと頼んだん?」
ゆきな「え……だってプログラムできるくらい器用な方なのに……」
多恵子「違う……あんたそれは違うよ……」
多恵子、入口の方を見てやっぱり、と言った表情で首を横に振る。
それを見て振り返るゆきな。
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店の入り口にずぶぬれで立っている知一郎。
知一郎「すみません……やっぱり……無理」
ムタサン・スタッフ部屋(午前)
ずぶ濡れで立っている知一郎の元へゆきながバスタオルを持ってやって来る。
ゆきな「ごめんなさい、変なこと頼んでしまって」
知一郎「いえ……別に」
バスタオルを受け取ろうと手を差し出す知一郎。
ゆきなは、それを気にせずタオルを広げて知一郎の頭を拭いてやる。
知一郎「いやちょっと」
ゆきな「いいからいいから、ほら、じっとして」
頭を拭き続けるゆきな。
知一郎「あの……すいません……」
ゆきな「なに?」
知一郎「服……脱ぎたくて……寒いから」
ゆきな「あ……ごめん……なさい」
ゆきな、部屋の出口付近で後ろ向きになる。
ゆきな「こんな濡れるんやったらシャンプーでも置いといたらよかったね」
ゆきなの発言に、クスッと笑う知一郎。
ゆきなも後ろを向いたまま笑う。
奈良町・町中(夕方)
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知一郎と多恵子、一緒に歩いている。
知一郎「あぁ腹減った……」
多恵子「ろくに働きもせぇへんくせに何言うとんねん」
知一郎「なぁ、俺マジであの店で働くんか?」
多恵子「そうや、従業員募集しててんけどな、なかなか見つかれへんかったから、私が手
伝うてやってたんや」
知一郎「あの子……一人でやってるんかいな」
うん、そうや。雑貨屋をするのが夢やってんて。地道にがん
多恵子「ゆきなちゃんか?
ばってるええ子で……」
知一郎「へぇ」
多恵子「地道にな……あんたと違って」
知一郎「俺もがんばってるわ」
多恵子「あー、私もお腹すいた……今夜は何かな」
何かなって」
知一郎「え?
多恵子「さっき電話してなぷにちゃんになんでもええから晩御飯こしらえといてって頼ん
どいたんや」
知一郎「ふ~ん……まぁあいつもそれくらいは役にたたんとな」
知一郎の実家・居間(夜)
食卓に並んだトンカツと千切りキャベツと味噌汁。
呆然と見つめる知一郎と多恵子。
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ぷに子、とんかつにかぶりついている。
知一郎「2日連続……」
多恵子「ぷにちゃん、トンカツそんな好きなん?」
うなずくぷに子。
多恵子「……そうか。まぁカレーも作りすぎたら2~3日続くしな……まぁ一緒やわな」
知一郎「嫌いやないからええけど」
多恵子「食べよか」
食べ始める知一郎と多恵子。
雑貨屋・店先(昼)
店先の陳列を整えている知一郎。
そこへ友人の達也がやってくる。
達 也「やってるなぁ、フリーランス」
知一郎「うるさいわ(笑)」
達 也「なぁ、知一郎、明日の夜暇か?」
知一郎「明日……うん別に空いてるけど」
達 也「じゃぁ久しぶりに飲みに行こうや。お前の出戻り歓迎会」
知一郎「出戻りは余計や!」
達 也「じゃ、明日。また連絡するわ」
知一郎「おお」
店に入って行く知一郎。
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雑貨屋・店内(昼)
ゆきな「チチ」
知一郎「チチ?」
ゆきな「知一郎さんだから、チチでいいでしょ」
知一郎「チチ……ですか?」
ゆきな「呼ばれたことない?チチって」
知一郎「ないですよ……今まで一度も」
ゆきな「へぇ、みんなセンスないなぁ……同じクラスに知一郎なんて名前の人いたら絶対
にチチっていうけど」
知一郎「絶対に……って」
ゆきな「うん。絶対(自信満々)」
知一郎「なんか決定的ですね」
ゆきな「……あ、そうそうチチお昼にしたら?」
知一郎「あ、はい。でもお先にどうぞ」
ゆきな「いいっていいって。よかったらこれ」
ゆきな、お弁当箱を差し出す。(何も包んでいない)
知一郎「なんで」
ゆきな「オーナー……あ、多恵子さん言ってたよ、あの子は独身になってきっとろくなも
のを食べてないって。栄養失調やからあんな体してんねんって……それほんと?」
知一郎「(ため息)これは生まれつきです」
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ゆきな「そう。ならよかった。あと……お詫び」
知一郎「なんの?」
ゆきな「この前びしょびしょにしてしもたから……私のせいで」
知一郎「あれは……」
レジへ向かうゆきな。
知一郎、嬉しそうにお弁当の蓋を開けると、中身は焼きそばとおにぎり。
女子らしい中身を期待しただけに驚く知一郎。
ゆきな「あ、ほんと先に食べて」
知一郎「あ、はい。いただきます」
お弁当を見つめる知一郎
ぷに子の部屋(昼)
カーテンを閉め切ってパソコンをしているぷに子。
多恵子が部屋に入って来る。
多恵子「ぷにちゃん、あんた今日も晩ご飯作ってくれんの?」
うなずくぷに子。
多恵子「そしたら、買い物いくやろ?」
うなずくぷに子。
その横で部屋のカーテンを開ける多恵子。
多恵子「ついでに、これ買って来てくれへん?」
ぷに子の横にメモを置く。
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メモを横目で見るぷに子。
多恵子「これ、お金な」
千円札をメモの上に置く多恵子。
多恵子「そしたら、頼んだで」
不安そうにうなずくぷに子
ぷに子「うん……」
部屋を出て行く多恵子。
ぷに子立ち上がって、音がしないようにカーテンを閉める。
奈良町・町中(昼)
歩いているぷに子。
ポケットから多恵子からのメモを取り出し見つめる。
困り顔で歩き続ける。
満知子の家・縁側(昼)
多恵子の友人
縁側に座りお茶を飲んでいる多恵子と友人の満知子。
満知子「でもにぎやかになってよかったやんか」
多恵子「確かになぁ……一人は寂しいなぁて思たこともあるけどな……なんか複雑やわ」
満知子「知一郎ちゃんも大変やな、独身貴族やったんがいきなり子持ちに逆戻りて……シ
ングルファーザーってやつやん」
多恵子「いうても娘も年頃やしな……正直どない接してええんかわからんのとちゃうかな
……」
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満知子「どんな子なん……変わってるて」
多恵子「うん……(言いにくそう)発達障害があるて言われてるんや」
そうなん……最近、たまに聞くけどな」
満知子「ええ?
多恵子「それが原因なんやと思うけど、友達もあんまりでけへんかったみたいやし、中学、
……そんなこともあって中退して、そ
高校となるにつれてイジメっていうの?
の矢先に母親が死んでしもて」
満知子「そうかいな……」
多恵子「別に、他の子とそない変わらへんねんけどな……ところどころっていうか……」
雑貨屋・店内(夕方)
レジ近くのテーブルに置いてある知一郎のパソコンを興味深そうに見ている
ゆきな。
そこへ知一郎が戻って来る。
チチのパソコンさわって
ゆきな「あ、お帰り。(パソコンを見て)触ってないからね!
ないから」
微笑む知一郎
知一郎「いいですよ。触っても。別に重要なものとか今入ってませんし」
ゆきな「いいっていいって……ダメ、さわれない」
本当にいいですよ」
知一郎「なんでですか?
ゆきな「壊れる」
知一郎「壊れないですよ」
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ゆきな「壊れるんやって……私昔からそう……人のもの、特にこういう機械系は触ると壊
す人間っていうか……」
知一郎、苦笑しながらゆきなに近づき、ゆきなの手をつかむとパソコンに乗
せる
ドキッとするゆきな
知一郎「ほら、壊れない」
キョトンとした顔で知一郎を見るゆきな。そのまま視線を店の入り口に移し
目を丸くする。
店の入り口にたたずんでいるぷに子。
知一郎「どないしてん……」
ゆきな「え?」
知一郎「娘です……僕の」
ゆきな「ああ……へぇ……」
さりげなく握っている知一郎の手を外すゆきな。
雑貨屋・店先(夕方)
店先に立つ知一郎とぷに子。
知一郎「お前、なんでこんなとこおんねん」
ぷに子「わからんようになって」
知一郎「なにが?」
ぷに子、多恵子から預かったメモを見せる
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知一郎「おばあちゃんに、頼まれたんか?」
うなずくぷに子。
知一郎「薬局で買えるやろ」
うつむくぷに子。
察する知一郎。
知一郎「っていうか、道に迷ったわけや……」
うなずくぷに子。
知一郎「でもお前、ようこの店まで来れたな……(ぷに子の様子を見て)もしかして……
奇跡的にたどり着いた?」
うなずくぷに子。
知一郎「おいおい、まじか……ま、ええわ、これお父ちゃん買うから。お前もう帰り」
ぷに子「うん……」
知一郎「なに」
知一郎を上目づかいで見るぷに子
知一郎「そうか……迷子やねんな」
雑貨屋・店内(夕方)
店内のテーブルに座っているぷに子。
ぷに子にジュースをさしだすゆきな。
ゆきな「はいどうぞ」
ジュースに手を伸ばすぷに子。
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知一郎「ぷに子、ありがとうは?」
ぷに子「(小声)ありがとう」
ゆきな「いいえ」
ジュースを飲むぷに子。
お前いくつやねん」
知一郎「ぷに子……いただきますは?
ぷに子「慌てて口に含んだジュースを飲み込み)いただきます」
ゆきな「いいから(苦笑してゆきなを見る)」
知一郎「今日はもうすぐ終わるから、一緒に帰ったらええ」
うなずくぷに子。
知一郎「ちょっと在庫整理してきます」
ゆきな「はい」
出て行く知一郎。
ゆきな、ぷに子の近くに座る。
ゆきな「ねぇ、なんでぷに子って呼ばれてるの?」
ぷに子「文子やから……お父さんが……」
ゆきな「へぇ、文子やから……ぷに子か……なるほどね」
ぷに子「最初は嫌やったけど、お母さんもぷに子って呼ぶようになって」
ゆきな「そっか……私も、ぷに子ちゃんって言い方がかわいいと思うよ。私、ゆきなって
誰からもゆ
言うんやけど、ゆきなって名前他にあまり変えようがないでしょ?
きな、とか……いいとこゆきちゃんとかやから……なんかつまんないっていうか
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ぷに子ちゃ
さ……絶対いいよ、ぷに子ちゃんって……ねぇ、私も呼んでいい?
んって」
うなずくぷに子。
ゆきな「ねぇ、ぷに子ちゃんってさ、家で晩御飯作ってるって聞いたんやけどほんと?」
うなずくぷに子。
何か得意な料理あるの?」
ゆきな「すごい!
うなずくぷに子。
ゆきな「なになに?」
ぷに子「……トンカツ」
私下手くそやわ……いいなぁ……トンカツが得意なんや……」
ゆきな「トンカツ?
ぷに子「お母さん……一生懸命教えてくれた。トンカツとキャベツが作れたら生きていけ
るからって、入院するまでずっと」
ゆきな「そう……絶対おいしいんやろね」
ぷに子「おいしいよ!」
ゆきな「ねぇ、今度食べさせてよ」
うなずくぷに子
やったー楽しみ」
ゆきな「ほんとに?
ぷに子「今日……」
ゆきな「ん?」
ぷに子「今日作るから……おいで」
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雑貨屋・倉庫(夕方)
整理できていない倉庫内。
商品の整理をしている知一郎。
棚の上から大量のロウソクが落ちて来る。
ため息交じりにロウソクを拾い集める知一郎。
ゆきなとぷに子が店から出てくる。
知一郎が片付けているロウソクはどうでもいい様子。
ゆきな「チチ」
知一郎「はい」
ゆきな「今日、お邪魔するね?」
知一郎「はい?」
ゆきな「ぷに子ちゃんがね、私に晩御飯作ってくれるって。トンカツ」
知一郎「ええ?!」
ゆきな「オーナーには私から電話したから」
知一郎「なんか……言ってました?」
ゆきな「うん……喜んではくれたけど……(不思議そうに)そんなにトンカツ食べたいの
って」
?
知一郎「そりゃそうやろな……」
よろしくね」
ゆきな「私なるべく早くお店閉めていくから!
知一郎「はぁ……」
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ゆきな、ぷに子を見て
ゆきな「おいしいの、期待してるから!」
はにかんだようにうなずくぷに子。
知一郎「(小声)トンカツ……」
知一郎の実家・台所(夜)
トンカツの仕込みをしているぷに子。
それを背後で見つめる知一郎と多恵子
知一郎を引っ張ってとなりの部屋へ行く多恵子。
知一郎の実家・居間(夜)
多恵子「お腹は減ってんねんけどな……さすがに連続でトンカツっていうのはな」
知一郎「そんなん、俺かてそうやわ……だいたいお母ちゃんがいらん買い物さすからこな
いなんねやん」
多恵子「それくらいできる思うやん」
知一郎「とにかく、筋金入りの方向音痴なんや……中学までは家の近所やってんけど、高
校になって電車で通うようになったら、道がわからんいうて……しばらく送り迎
えしたんやで」
多恵子「ほんまかいな……」
知一郎「って嫁の姉ちゃんが言うてた」
多恵子「ええ……」
知一郎「奈良町は路地が多いから……あいつにとったら迷路やと思うわ」
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多恵子「そりゃ悪いことしたな……」
知一郎「とにかく、なんでもかんでも頼まんとってや」
多恵子「そやな……きをつけな……」
多恵子の言葉を遮るように玄関のチャイムの音。
多恵子「あ、来たんかな……」
知一郎「俺出るわ」
知一郎の実家・玄関(夜)
扉を開ける知一郎。
大きな紙袋を提げたゆきなが立っている。
知一郎「どないしたんですか……それ」
ゆきな「去年の売れ残り……処分しようと思って……よかったらあげるから、後で見て」
知一郎「あ……はい。(自分が片付けたのに……)まぁとにかくどうぞ」
ゆきな「おじゃましまーす」
家に入って行くゆきな。
知一郎の実家・居間(夜)
ゆきなを連れて知一郎が入って来る。
知一郎「おい、ぷに子、ゆきなさん来たで」
ゆきな「ぷに子ちゃーん来たよー」
台所から多恵子の大声
これどないするん!」
多恵子「(声)ぷにちゃん!
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台所の方へ慌てていく知一郎とぷに子。
知一郎の実家・台所(夜)
所狭しと並べられたいろんな形の器。
うなだれているぷに子。
困り顔の多恵子。
知一郎とゆきなもやってきて驚く。
知一郎「なにやってんねん!」
多恵子「ぷにちゃん、どないしたんいったい」
知一郎「またこんなことやってるわ……何がしたいねん」
何も言わないぷに子
思ってること言うてみろや」
知一郎「黙ってたらわからんやろ!
ゆきな、優しく微笑んでぷに子に近づく。
ゆきな「すごいいっぱいあるね……私雑貨屋してるからこういうの好き。何か探してたん
?」
ぷに子「……無いから」
ゆきな「無い?」
うなずくぷに子。
よかったら一緒に探すよ」
ゆきな「何を探してたん?
ぷに子「お皿とか……お茶碗とか」
知一郎「なんぼでもあるやないか!」
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ゆきな、知一郎をキッと睨んで
ゆきな「私が聞いてるの」
ゆきな、ぷに子を見て
ゆきな「どんなやつを探してるの?」
ぷに子、知一郎をチラッと見る
ゆきな「大丈夫、私に教えて」
ぷに子「同じの……」
ゆきな「え?」
ぷに子「同じお皿とか、お茶碗とか……四つ揃ってるのが無くて……みんな同じので食べ
たかったから」
納得して苦笑いする多恵子。
そんなことかと思いながらも、怒った自分に後悔する知一郎。
ゆきな「私もぷに子ちゃんの家族と同じ食器でって、思ってくれたんや」
うなずくぷに子。
ゆきな「ぷに子ちゃん、やさしいね……そんなやさしくしてくれたのぷに子ちゃんが初め
て」
多恵子「ごめんな、ゆきなちゃんがいつ来てもええに、おばあちゃん今度おそろいの食器
買っとくわ」
知一郎「とりあえず、片付けよう……な」
うなずくぷに子。
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ゆきな、何か思いついたような顔。
ゆきな「そうや、いい考えがあるわ……この食器、ちょっと隣に運ぼう」
知一郎「なんで?」
ぷに子ちゃんも!」
ゆきな「いいから、ほら手伝う!
言われるままに器を集めて隣の部屋へ持っていく知一郎たち。
知一郎の実家・居間(夜)
器のアップ。器の上に小さなロウソクが置かれている。
そのロウソクに灯りがともる。
*
*
*
部屋中に置かれた器にロウソクが置かれ灯りがともっている。
ゆきな「チチ、電気消して」
電気を消す知一郎。
ロウソクに部屋が照らし出される。
ロウソクの炎を見つめるゆきな、そして多恵子とぷに子。(満面の笑顔)
その様子を見つめる知一郎
多恵子「なんかきれいやね」
ゆきな「去年仕入れすぎて余ってたロウソクです……倉庫にまとめて置いてあったから」
笑顔で話すゆきなを唖然と見つめる知一郎。
知一郎、ぷに子の傍へ行く。
知一郎「(小声)ロウソクまとめたん、俺やねんけどな……」
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