次世代電力供給政策の提言(PDFファイル)

平成 23 年 4 月 28 日
参議院議員
小坂
憲次
次世代電力供給政策の提言
総 論
今回の大震災により東北・関東地方の多くの発電所が停止し深刻な電力不足が生じたが、
同時に福島原発の事故により原子力政策自体の見直しも課題となるなど、我が国の電力供給
体制の脆弱性が明らかとなった。
また、現状では、東日本・西日本の周波数が異なっているため、周波数変換所の容量で
ある計 100 万キロワット程度が上限で、東西の電力融通のボトルネック障害となっている。
東日本の電力不足に対する応急措置としては、ガスタービン発電の増強、休止中の火力
発電所の再稼働、自家発電やIPP事業の促進、電力需要のピークカット対策などが挙げら
れる。
しかし、この際に対症療法的対策ではなく、これまでも指摘されてきた東西の周波数が
異なるという我が国の電力政策上の問題に結論を出し、電力使用の効率化を図るためのスマ
ートグリッドや送電方法の高効率化を促進する政策的対応、そして、原発依存政策の見直し
も含め、太陽光や風力発電等の思い切った促進策など将来的なエネルギー源についてのビジ
ョンを提示する必要がある。
1.東西の周波数の統一
我が国の電源周波数は、東日本が 50Hz(ドイツ式)、西日本が 60Hz(米国式)となってい
ることは周知の通りである。この東西の周波数の統一は、戦後の復興期から長年にわたり議
論されてきたにも関わらず、必要なコストと時間が膨大であり、電力会社側にとってのメリ
ットが無かったために、実行に移されないできた。
一方で、家庭用の電気機器は、近年では多くが 50/60Hz 共用となっており、以前よりも周
波数統一に向けたハードルは低くなりつつある。
そこで、この大震災に伴う電力不足を機に、長年の懸案である東西の周波数統一に向けた
取り組みを開始すべきである。
周波数統一後は、電力の全国的な融通が可能になるとともに、現在のように両周波数に対
応した機器を製造する必要がなくなるため、工場など電力ユーザー側にとってのコストダウ
ン効果も期待される。
なお、周波数を統一する際には、50Hz 側、60Hz 側の双方が拠出する基金を設けるなど、
負担の公平化を図ることが重要である。
【提言】
○
全国の電源周波数を 25 年以内に統一し、電力不足の際の全国的な電力の融通や、
全国的な電力供給サービスが可能となるようにする。
○
そのため、まずは 50/60Hz のいずれに統一するか、議論を深めるべきである。
○
統一する周波数の決定後は、JIS 規格を改訂し、10 年以内に家庭用の電気機器を全
て新周波数にも対応することを義務付ける。また、20 年以内に工場等の設備も新周
波数に対応するようにする。25 年後までに発電設備を切り替え、周波数の統一を実
現する。
○
統一周波数の決定までの間、東北地方の復興に際して新規に導入する発電施設は、
両周波数に対応できるようにする。
2.新たな発電技術・電力供給体系の開発
今回の福島第一原子力発電所の事故を受けて、原子力発電の賛否をめぐる議論が活発に
なっている。現在の我が国の電力供給の状況を考えると、当面の間は、大規模電力の供給源
として原子力発電に頼らざるを得ないのが現実である。しかし、今後は、原子力発電所の新
増設について理解を得るのが困難となることが予想される。
そのため、自然エネルギー(再生可能エネルギー)利用の高度化、高効率発電の実用化、
大容量高効率蓄電技術の開発を推進するとともに、将来的なエネルギー源(メタンハイドレ
ード、原理的に暴走が起こらない安全性重視の核融合炉など)の研究開発と実用化技術研究
を推進すべきである。
同時に、家庭や事業所における太陽光発電・燃料電池の設置や小規模の発電事業促進と、
スマートグリッドを組み合わせることにより、分散型かつハイブリッドなエネルギー供給体
系を実現し、大規模な停電が起こりにくい仕組みを確立する。
【提言】
○
自然エネルギーを利用した発電技術の高度化(光電変換効率70%目標、地熱、風
力、波動)等を推進する。これにより、20 年後には、自然エネルギーにより電力の
50%以上を賄うことを目標とする。
(例)メガソーラー(大規模太陽光発電施設)、洋上風力発電、地熱発電、家庭・事業
所における小規模太陽光発電、太陽熱発電
○
環境配慮型の化石燃料発電技術を推進する。
(例)IGCC(石炭ガス化複合発電)、メタンハイドレートの活用
○
大容量高効率蓄電技術の開発を推進する。
(例)NAS(ナトリウム・硫黄)電池、亜鉛臭素電池、亜鉛塩素電池、レドックス・
フロー電池
○
安全な核融合炉の実用化に向けた技術開発を推進する。
○
スマートグリッドを活用し、家庭や事業所での太陽光・燃料電池などの小規模発電
や、小規模発電事業者による発電を組み合わせた、分散型かつハイブリッドなエネル
ギー供給体系を確立する。
3.その他の課題
上記の他、中長期的に取り組むべき課題として、電力ロスを削減することにより、電力
の利用効率を向上するため、以下のような取組を検討すべきである。
(1)標準電圧の 220 ボルト化
現在、家庭用電力の電圧は 100 ボルトが一般的であるが、多くの家庭では、配電盤ま
で 200 ボルトの電力が供給されており、家庭内の配線とコンセントの工事を行えば、200 ボ
ルトの電圧が利用できるようになっている。
家庭で利用する電圧を高めた場合、電化製品の能力が向上し、調理器具の調理時間や電
気自動車(EV)の充電時間を短縮できるなど、効果が大きい。
さらに、海外では 220-240 ボルトの電圧を採用している国が多く、これらの国との電気
機器の互換性を高めるためには、将来的に我が国では 220 ボルトの電圧とすることが望まし
い。
200 ボルトの電化製品は、オール電化住宅などでの普及も徐々に始まっているが、一般の
電化製品では商品数も少なく、十分浸透していない。そのため、将来的に、200 ボルトでは
なく 220 ボルトの電圧を標準とすることとし、電気機器の規格もそれに対応したものとすべ
きである。
なお、200 ボルトから 220 ボルトへの引き上げに関しては、設備的な問題はほとんど生じ
ないと考えられる(現在でも、電気事業法施行規則第 44 条において、200 ボルトの標準電
圧の場合、202±20 ボルトで供給することとされている)。
【提言】
○
20 年後までに、220 ボルトを家庭用の標準電圧とする。
○
そのため、家庭における 200 ボルト化工事に対する補助、200 ボルト化した家庭の
電気料金割引を行う。
○
家庭用の電気機器は、200-220 ボルト対応の普及を促進する。
○
家庭における 200-220 ボルト対応機器の普及が十分進んだ段階で、標準電圧を 220
ボルトに一本化する。
※ 韓国では 1973 年から 32 年間かけて 110 ボルトを 220 ボルトに切り替え、2005 年に
完了した。
(2)送電効率化のための技術開発
電力の利用効率のさらなる向上のため、直流送電や超電導送電など、送電技術の向上を
目指した技術開発を促進すべきである。
現在、一般の電力は交流で送電されているが、電気機器の多くは、コンセントからの交
流電流を、機器内部や外部アダプターで直流に変換して利用している。また、太陽光発電の
ように、直流で発電する方法の場合には、発電した直流電流を、交流に変換して送電してい
る。
こうした変換の過程では電力のロスが生じることから、直流で発電した電気をそのまま
直流で送電し、直流で利用することがでれば、電気の利用効率が向上する。
直流送電には、交流と比べて電圧の変換が難しいなど短所もあるため、交流送電を全て
代替するものではないが、直流送電の方がメリットがあると考えられる場合(例:家庭の太
陽電池・燃料電池の電力をそのまま家庭内で利用する場合、長距離・高圧の送電を行う場合)
には、直流のままで送電し利用する方法の開発・普及を推進すべきである。
また、直流送電とあわせて、電気抵抗をゼロにする超電導送電技術も研究されているが、
導入すれば送電効率の大幅な向上が期待できるため、技術開発を推進すべきである。
【提言】
○
送電技術向上のための技術開発を推進する。
例:家庭内での直流送電、HVDC(直流高圧送電)、超電導送電
以上
(参考)世界の主な地域の周波数・電圧
【50 ヘルツの地域】
国・地域名
電圧
アジア
日本(東日本)
100
中国
220
シンガポール、インド
230
オセアニア
ニュージーランド
230
オーストラリア
240
ヨーロッパ
イタリア、スペイン、ロシア
220
ドイツ、フランス、オランダ、ポルトガル
230
イギリス
230/240
中東・アフリカ
イラク、トルコ、エジプト
220
イラン
230
南アフリカ
220/230/250
【60 ヘルツの地域】
国・地域名
電圧
アジア
日本(西日本)
100
韓国、台湾
220
フィリピン
230/240
北米
アメリカ、カナダ
120
メキシコ
110/127/220
ブラジル
127/220
中東・アフリカ
サウジアラビア
※
127/220
電圧については、資料により多少異なるため、主なものを掲げた(実際に、地域
により異なる国もある)。